あの大先輩が走ってきた…! 忘れられないふたりの出会い

沢城さんはどのタイミングで野沢さんを「マコさん」と呼ぶようになったのでしょうか?
沢城 みんなが「マコさん」と呼んでいるから、他の選択肢はないです(笑)。
野沢 私、「野沢さん」って呼ばれたことがないんですよ!
えっ、キャストの方からもスタッフの方からもですか?
野沢 この世界の方はみんな「マコさん」ですね。「野沢さん」と呼ぶのはクライアントさんくらい(笑)。
沢城 世代が近い方にとっては愛称だと思いますが、私たちは敬意を込めて「マコさん」と呼んでいます。
そうだったんですね。おふたりがはじめて会ったのはいつなんでしょうか?
沢城 同じ事務所なので会うことはありますが、ちゃんとお仕事でご一緒するのは今回が初なんです。ご主人の塚田(正昭)さんと共演していたので、私の中ではずっと「塚田さんの奥様」っていう印象でした。こうして認識していただくのは、かなり最近になってからですよね。
野沢さんの中で、沢城さんの第一印象はいかがでしたか?
野沢 お世辞でも何でもなくてね、若くて可愛い! 前に主人と同じ事務所だった方が今はナレーションもしてるっていうから、その番組を見ていたんですよ。それで(沢城さんを)見かけたときに急いで追いかけて、「聞いてるわよ」って声をかけたんです。
沢城 ナレーションのお仕事もさせていただくようになったけれど、全然うまくいかないなって悩んでいるときでした。私の帰り際に、大先輩が、わざわざですよ? 後ろから走って追いかけてきてくれて、「見てるわよ」って。この一言で頑張れるなあ、私もいつか(後輩に)やってあげようって思いました(笑)。
素敵なお話です…! では、沢城さんが声優になってから気づいた野沢さんのお芝居のスゴさって、どんなところでしょうか?
沢城 マコさんのアフレコを見ると、私がやっていることって文字を読んでいるだけなんだなと思わされます。マコさんのお芝居には理屈が一個もないんですよ。目玉おやじがしゃべっているだけという当たり前のことなんですが、普通はその「当たり前」ができないんです。
どんな違いがあるのですか?
沢城 「喜怒哀楽」っていう表現がありますが、普通は「喜」だけの状態でいることってほとんどないですよね。人の感情は連続しているから、「喜」の中にもミルフィーユのようにいくつかの感情の層がある。でもお芝居になると、「喜」だけを大きく演じてしまいがちなんですが、マコさんは違うんです。ずーっと連続している感情の一部分だけを抜いても、そこに詰まっているたくさんの気持ちまで表現しているんです。

プレッシャーを感じるより、役と向き合う作業が大事

今回の『鬼太郎』だけでなく、他の作品でもキャスト変更を経験されてきたおふたりですが、「役を引き継ぐ」ということについてはどう思われますか?
野沢 あまり「引き継ぐ」と意識したことはないんです。今回だって私、鬼太郎が成長して父親になったという感覚ですから。
なるほど…。沢城さんはいかがですか?
沢城 自分が引き継ぐときは多大なプレッシャーを感じますが、誰かに引き継がれるときには「どうぞ愛してやってー!」ってすごく切り離せるんですよね。私たちの作ったものは、私たちの作ったもの。見た目が同じでも作り手が変わればまた違うものになるので、「次も上手くいったらいいな」と心から思うんです。だから本当は、プレッシャーを感じるよりも、役と向き合うことに集中するのが一番大事なんじゃないかな……と。
野沢 うんうん、そうだね。
沢城 周りの声が大きいと、そこに気をとられがちになるけれど、もっともっと集中するべきは日々のミニマムな取り組み。それをしっかりやることで、広く楽しんでもらえるものが作れればいいなと思いながら、私も頑張っています。
では最後に、おふたりが今までに声優のお仕事をされてきて、幸せに感じた瞬間を教えてください。
沢城 声優が日々やっている作業って、台本をいただいて、自分の役にひたすらチェックを入れたり大量の直しを確認したりするっていう、すごく地味なことが続くんですね。でもある日、「私は日本のアニメという世界中の人に見てもらえるものに携わっていたんだ、今日も頑張ろう!」って気がつくときがあって。日々の淡々とした作業とその気持ちの温度差が、不思議に感じる反面、幸せを実感する瞬間でもあるんです。
野沢 私は子どもからファンレターをもらったときです! 前に「僕の宝物をあげるよ」って書いてある手紙をもらったんですけど、子どもって人に宝物をあげるなんてできないでしょ。いったい何をくれたんだろうって開けると、牛乳瓶やビール瓶のフタとか、自分の気に入った絵が描いてあるチラシをちぎったものが入ってるんですよ。最高でしょう! 子どもから宝物をもらえるだなんて…。声優をやっていなかったら、そんな経験はありえませんからね。
沢城みゆき(さわしろ・みゆき)
6月2日生まれ、長野県出身。O型。『デ・ジ・キャラット』の新人声優オーディションで審査員特別賞を受賞し、声優デビュー。幅広い役柄を務める演技派声優として知られており、代表作に『デュラララ!!』シリーズ(セルティ・ストゥルルソン)、『HUNTER×HUNTER』(クラピカ)、『ルパン三世』(峰 不二子)など。2009年から2011年にかけて「声優アワード」を3年連続で受賞。2015年にも助演女優賞を受賞している。『報道ステーション』(テレビ朝日系)などのナレーションでも活躍中。
    野沢雅子(のざわ・まさこ)
    10月25日生まれ、東京都出身。O型。3歳で子役として映画デビュー。10代の終わり頃から声優業をはじめ、『鉄腕アトム』のゲスト出演でアニメデビュー。その後、『ゲゲゲの鬼太郎』第1作でアニメ初主演を果たす。代表作に『ど根性ガエル』(ひろし)、『銀河鉄道999』(星野鉄郎)、『ドラゴンボール』シリーズ(孫悟空、孫悟飯、孫悟天)などがあり、日本のトップ声優のひとりである。2017年、『ドラゴンボール』関連のゲームにおける「ひとつのビデオゲームのキャラクターを最も長い期間演じた声優」「ビデオゲームの声優として活動した最も長い期間」の2項目でギネス世界記録に認定された。

      出演作品

      アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』
      フジテレビほかにて4月1日放送スタート! 毎週日曜午前9時から
      http://www.toei-anim.co.jp/kitaro/

      © 水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション

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