「したくないことをちゃんと考える」峯田和伸が教える、将来の夢の見つけ方
魂のこもった熱い歌で聴く者の心を揺さぶるロックバンド・銀杏BOYZの峯田和伸。NHK連続テレビ小説『ひよっこ』への出演をはじめ、映画やドラマで見せる独特の存在感と、どこまでも自然体な演技が話題を呼んでいる。2月10日から公開されているアニメーション映画『ぼくの名前はズッキーニ』の吹替版では、声優に初挑戦。演じる役は「9歳の少年」とのことだが、峯田はどんな子ども時代を過ごしていたのか。40歳を迎えた今、これから大人になる世代に伝えられることとは…。
撮影/祭貴義道 取材・文/古俣千尋 制作/iD inc.初の声優に挑戦! 「なるべく自然に演技できたら…」
- フランス発のストップモーション・アニメーション映画『ぼくの名前はズッキーニ』。峯田さんは日本語吹替版で、主人公のズッキーニの声を担当されました。声優のお仕事は今回が初めてとのことですが、挑戦してみていかがでしたか?
- まったくやったことがなかったので、最初は不安でしたね。スキルもないですし…。ただ、そんな自分でもできる作品だったらやりたいなと思って、まずは作品を見させていただいたんです。
- では、映画を見てからやってみようと決めたんですね。
- そうなんです。そうしたら、ズッキーニやまわりの友達もみんな、声の出し方が「ふつうの子」っぽくて。発声の仕方が、演技をしすぎていないというか、大げさなものではなくて、本当に「ふつうの会話」をしているのが聞こえてくるような感じだったんです。それを見て自分でもできるのかな、って。
- この作品(フランス語版)では子どもの声を、アマチュアの子どもたちが演じているそうですね。
- すごくいいですよね。だから自分も、なるべく自然な感じでできればいいなと思いながらやりました。ただ、それがうまくいっているかどうかは正直わからないんですけど…(笑)。
- 吹替版のズッキーニの声、とても自然な感じでしたよ!
- 自分では、全然わからないんです(苦笑)。
- 今作は、母親を亡くして孤児院に入った9歳の少年・イカールが新しい居場所を見つけていくストーリーです。ズッキーニとは、母親がつけてくれた愛称で、彼はその名前を大事にしています。ズッキーニを演じるうえで気をつけたところはありますか?
- 子どもの声のマネはできないので、吹替前のDVDをいただいてからは、なるべくズッキーニの表情をよく見るようにしていました。役作りとまではいかないですけど、なるべく自分がその表情に近づいて、寄っていくような…そういうところから声が出たらいいなと思って。
- 峯田さんから見て、ズッキーニはどんな子でしょうか?
- もの静かな子、ですね。あと最初に顔を見たときに、何となく子どものときの自分に近い感じがしました。
- 目がクリッとしていて、どこか顔も峯田さんに似ていますよね!
- それ、監督にも言われました!(笑)
- 峯田さんのInstagramにはクロード・バラス監督とのツーショットが載っていましたね。監督とはどんなお話をされたんですか?
- 今話したようなこととか、あとは「カミーユ役の麻生久美子さんは、自分にとって特別な人なんだ。だから今回のキャスティングはスゴいんだ!」って伝えました(笑)。
映画で共演「麻生久美子さんは、ぼくの“恩人”です」
- 日本語吹替版のキャストも豪華ですよね。ズッキーニがひと目惚れする少女・カミーユ役は麻生久美子さん。ズッキーニを心配してときどき会いに来てくれる警察官・レイモン役はリリー・フランキーさんが担当されています。
- 収録のときも3人一緒だったんですけど、すごく楽しかったです。麻生さんとぼくがせっかくいい感じでやっているのに、リリーさんが下ネタを言いながらジャマしに来たりして(笑)。
- 麻生さんとは映画『アイデン&ティティ』をはじめとした映画やドラマで共演し、昨年は銀杏BOYZの『骨』のMVにも出演されていますね。峯田さんにとって、麻生さんはどんな存在ですか?
- “恩人”ですね。15年前に初めてお芝居の仕事をした映画『アイデン&ティティ』のときの相手役で。あのときもし相手役が麻生さんじゃなかったら、ぼくはやれていなかったかもしれない。それぐらいいろいろ助けてもらったんです。あのときからぼくは、映画やお芝居の仕事をやるようになりましたし。
- そのときのことで、印象に残っていることはありますか?
- 当時、お芝居なんて全然やったことがないから、本当に何もかもわからなかったんですよね。もしかしたら失礼なこともしちゃっていたかもしれないんですけど、麻生さんは「峯田くんのままでいいよ」とか「そのままでいてください」みたいな感じで言ってくれて。
- 素敵なエピソードですね。
- 何もできない自分を肯定してくれたような感じがして、嬉しかったんですよね。隣にいてくれるだけで、不思議な安心感があって。だから今回もご一緒できて本当によかったです。
独創的すぎる…!? 峯田少年の夏休みの自由研究
- 今作には、孤児院にいるいろんな子どもたちが登場します。見ているうちに、自分の小さい頃を思い出すような作品ですよね。
- 本当に、そう思います。ぼくにも、ズッキーニの友達で最初は彼をいじめているシモン(声/浪川大輔)にそっくりな友達がいたんです。そいつはケンカも強くていろいろ悪さもするんですけど、一本ちゃんと筋が通っているところがあって、たまに優しくて…。ぼくは大好きでしたね。この映画を見ながらそいつのことを思い出しました。
- そうなんですね。峯田さんご自身はどんな子どもだったんですか?
- ズッキーニほどおとなしくはなかったですけど、近いかもしれない。根っこは、家で本を読んでいるのが好きなヤツだったんで。ただ、どこかで笑いを取りたいなとは、思っていたかもしれません(笑)。
- 「ズッキーニ」というのはあだ名で、本名はイカールですが、峯田さんの子どもの頃のあだ名は?
- つい最近思い出したんですけど、名前が和伸なので「カズノコ」っていうあだ名がありました(笑)。
- 食べもののあだ名! そこもズッキーニと似てますね(笑)。
- そうなんです。ズッキーニみたいに自分から言ったりはしてないですけど、友達からふざけて言われてました。あれは小学校のときだったかな。
- 小学校のときといえば、峯田さんが以前ブログと著書『恋と退屈』(河出書房新社)に書いていたエピソードが衝撃的でした。小学校の夏休みの宿題で、お母さんと一緒に桃太郎の話をねつ造したという…。
- そうそう! うちのお母さん、変な人なんです(笑)。小学4年生の夏休みの自由研究で、ひとりずつ何か調査をしてみんなの前で発表しなくちゃいけなくて。テーマが決まらなくてお母さんに相談したら「桃太郎について調べるのよ!」と。資料を集めて、桃太郎の話に隠された真実を解き明かすのよ!みたいな…。
- 桃太郎の真実…すごいテーマです(笑)。
- ふたりでいくつか図書館をまわって、いろんな桃太郎の本を借りてみたんですけど、結局あんまり面白い話が出てこなかったんですよね。それで、ぼくがあきらめかけていたら、お母さんが「ねつ造して、面白い話を考えて絵本にすればいい」って言い出したんですよ。
- たしか、ストーリーもかなりぶっ飛んでいましたよね。「桃太郎は仲間を全員殺されながらも、最後は片方の腕を失って血だらけで勝利した」という…。
- 先生に怒られましたね。「自由研究とはいえ自由すぎる」って(笑)。