緻密な役作りから熱烈キスシーンまで…加藤 諒×青木玄徳×佐奈宏紀が明かす、舞台「パタリロ!」の裏側
30年以上にわたって愛されている奇想天外なギャグ漫画『パタリロ!』(白泉社)が、個性派俳優・加藤 諒の主演で舞台化されたのが、2016年冬のこと。原作者の魔夜峰央氏が太鼓判を押すほどの“完全再現”ぶりが話題を呼んだ。第2弾新作公演については初演のラスト、舞台上で大胆にも予告されていたのだが、このたび正式に決定したということで、パタリロ役の加藤、バンコラン役の青木玄徳、マライヒ役の佐奈宏紀の3人にインタビューを敢行。噂にたがわぬ、ハチャメチャな舞台の裏側が明らかに……!
撮影/宮坂浩見 取材・文/花村扶美 ヘアメイク/小林麗子(raftel)
歌いながら次回予告! 戸惑いながらも「やるしかない」
- 2018年春に、舞台「パタリロ!」★スターダスト計画★の公演が決定しました。初演のラスト、お客さんの前で『次回予告だNEXT!』を歌いながら第2弾の予告をされたのには驚きましたが、みなさんはどのタイミングで知らされたんですか?
- 加藤 歌詞を読んだときに(笑)。
- 青木 まさか、歌詞で次回作を発表するなんて思ってもみなかった。
- 佐奈 そのときはまだ、半信半疑でしたよね。でも言っちゃったんだから、やるしかないでしょ、みたいな(笑)。
- 加藤 初日に『次回予告だNEXT!』を歌ったとき、客席がうわーってなったのがすごくうれしかったです。『パタリロ!』らしいっていうか。
- 佐奈 なんでもアリ、みたいな。でもよくよく考えたら原作にすごく忠実な感じがしましたけど。
- だからこそ、役作りも大変だったと思うんですが、どのように準備されたのでしょう?
- 青木 僕は佐奈くんから原作の漫画を借りました。
- 佐奈 舞台が決まってから全巻揃えたんです!
- 加藤 スゴいんですよ、佐奈ちゃんは! 漫画全巻とさらにアニメのDVDまで!
- 佐奈 『パタリロ!』に関するあらゆるグッズを集めました。
- 青木 僕はそれを借りて読んで、原作の流れを見ながら役作りの参考にさせてもらいました。
- バンコランは、イギリス情報局秘密情報部の凄腕エージェント。諜報員としての技能の他に、「眼力」と呼ばれる視線を向けた者を惹き付ける能力があり、バンコランに視線を向けられた美少年はみんな虜になってしまいます。
- 加藤 キラーバンコラン(笑)。
- 舞台でも目から“美少年キラービーム”を出しながら登場するシーンは、いきなり釘づけになりました(笑)。
- 青木 ライト、持ってるやんって(笑)。あれは演出家の(小林)顕作さんの手腕で、僕はもう身を任せてやるだけだったので。
- 加藤 でも、バンコランは読み合わせのときから僕のなかの脳内再生とぴったりすぎて、本当に素晴らしかったです。
- 青木 ありがとう(笑)。
- 加藤 最初から仕上がってたからね〜、ツネくんは。
- 佐奈 ツネくんが演じるバンコランに対して顕作さんが、何をやっても大爆笑するっていう。だから、ハマってるんだなって思いました。
- 加藤 『恋のスナイパー』を歌いながらツネくんが階段を降りてくる場面、普通に降りてるだけなのに、「あの降り方、好き!」って喜んでたもんね(笑)。
「パタリロとしても座長としても、ふさわしい」
- 佐奈さんが演じたマライヒは、女性のような美貌を兼ね備えた美少年です。
- 佐奈 マライヒは男の子だけど、僕は個人的な役作りとして、いかに完全な女になれるかということを意識しました。変に男の部分を残そうとは思わなかったですね。
- 演出家の小林さんからは何か言われましたか?
- 佐奈 「いいよ、可愛いよ! どんどんやっちゃっていいよ!」って言われて、もうノリノリでやっていたら「気持ち悪っ!」って言われるまでになってしまいました(笑)。自分としては、「気持ち悪い」が最終的な正解なのかなって思ってるんですけどね。
- 誰か参考にした女性はいましたか?
- 佐奈 この人!という特定の女性はいなかったんですけど、宝塚歌劇を参考にさせていただきました。原作を読んで、『ベルサイユのばら』のような高貴な印象を受けたので。手先の動きなどを参考にしました。
- 『パタリロ!』の豪華な世界観と宝塚は、通ずるものがありますね。
- 佐奈 ただ、舞台化しようとしてもタカラジェンヌはみなさん美しいので、パタリロをやれる人がいないと思うんですよ。でも、ここにいました!(と加藤さんを指す)。奇跡。
- 加藤さんがパタリロを演じると発表された段階から、あまりにもぴったりだと大絶賛されていましたが、その期待に応えなければ、とプレッシャーを感じたりはしませんでしたか?
- 加藤 座長で真ん中に立つというプレッシャーのほうが強かったですね。役作りの面では、最初は、自分のなかでいい子ちゃんいい子ちゃんしているパタリロ像を作っちゃっていて、顕作さんから「もっと腹黒さを出したほうがいい」とアドバイスをいただいたんです。それでズル賢くてちょっと腹黒いけど、でも憎めないようなパタリロ像を作り上げました。
- 加藤さんのパタリロは、おふたりから見ていかがでしたか?
- 佐奈 パタリロとしても座長としても、諒くんは本当にふさわしかったと僕は思います。
- 青木 僕も一緒です。
- 加藤 いやだ〜! もぉ、ちょっと〜! ホントに? ホントに?
- 佐奈 本当に(笑)。現場の空気を諒くんが作ってくれてたし。でもそれは狙ってやってるわけじゃなかったから、もともと諒くんに備わっている座長気質なのかなって。
- 加藤 いやいや……。でも本当に僕も、佐奈ちゃんとツネくんにはすごく支えられたよ。感謝してもしきれないくらい。ステージ上でふたりだけでお芝居するときは、安心して演じられたもん。
- 原作者の魔夜峰央先生は、みなさんに何かおっしゃってましたか?
- 青木 僕がいちばん印象に残ってるのは、千秋楽のラストのカーテンコールで、諒くんの親御さんや親戚の方が見に来ていたんです。そのときに、魔夜先生があいさつをされたんですけど、諒くんに向かって「君は本当にパタリロそのものだ。地球外生命体だ!」って(笑)。
- 加藤 そう! 僕もあのとき魔夜先生が、突然そんなことを言うからドキッとした〜。
- 青木 親御さんがどんな顔をされているか気になってチラッと見たら、“地球外生命体!? …あ〜、あ〜、あ〜(納得)”みたいなリアクションでした(笑)。
- 魔夜先生にとっては、最大の誉め言葉だったんでしょうね。
- 加藤 そうだと思いたいです!(笑)
- 佐奈 原作者の方に、「そのものだ」って言われるなんてスゴいですよね。
バンコランとマライヒのラブシーンに原作者も大興奮
- 魔夜先生は稽古場にもいらしたんですよね。
- 加藤 通し稽古を見に来られたときに、魔夜先生がいちばん興奮してたのが、マライヒとバンコランのラブシーンでした。
- 佐奈 声が震えてましたよ。「いいぃぃ〜よぉぉ〜!」って(笑)。
- 稽古の段階から本気でキスをしていたという。
- 佐奈 最初はやっぱり躊躇してたんですけど、一時を境に……。
- 青木 その意味深な言い方はやめて(笑)。男同士なのでやっぱり普通にきついじゃないですか。慣れるまではなかなか難しかったですよ。でも、なんとか僕らの努力が実を結んだというか。
- 加藤 このふたり、キスの時間が日に日に長くなっていくんです!
- 青木 なってないわ!(笑)
- 佐奈 「今日、〇〇食べたでしょ?」とか、そんな会話を男の人とするとは! みたいな。「唇やわらかいね」とか「緊張してたでしょ?」とか。
- 青木 ちょっと待って。あんまりしゃべりすぎると全部書かれるから。自分の身は自分で守らないと。
- すべて書かせていただきます(笑)。ちなみに、長い長いラブシーンのとき、会場がざわついていたのには気づきましたか?
- 青木 僕はわからなかったです。
- 加藤 もう夢中だったからね、うんうん。
- 青木 違う!(笑)
- 加藤さんはふたりのラブシーンを見ていかがでしたか?
- 加藤 いやーもう、回数を重ねるたびに、ふたりがラブラブになっていくのが目に見えて……。僕、舞台上だと喫煙所に隠れているので、音だけが聞こえてくるんですよ。で、最初はチューしてる感じだったんですけど、だんだん佐奈ちゃんの吐息がまじってきたりして、“わ〜、ヤバくない?”って興奮してました。
- 佐奈 完全に変態じゃん!(笑)
- 加藤 そう、僕たち変態の集まりです(笑)。
- 青木 諒くんと魔夜メンズの(佐藤)銀平さんとのキスシーンも、日に日に長くなっていってたよ!
- 加藤 ウソでしょ〜!?
- 青木 目がマジになってた。
- 佐奈 稽古場からそういう節はありましたけどね。
- 加藤 稽古場のときは、銀平さんの唇がすごく乾燥してカピカピしてたんです。でも、本番になったら熱が入っちゃったのかわからないけど、銀平さんの唇がちょっと湿ってて、それで一瞬ためらったり…っていうのはありました。
- 青木 なんでキスシーンの話で盛り上がってるんだ。
- 加藤 キスシーンにはいろいろありましたね(笑)。
- ご家族やご友人の反応はいかがでしたか?
- 佐奈 僕の親は『パタリロ!』を知っていたので、最初に「マライヒ役なんだ」って話したら、「ちょっと待って」って明らかに動揺してましたけど(笑)。舞台は楽しんでくれてました。
- 青木 うちの親は……「お前もこういう俳優になったか」って言ってましたね。
- 加藤 どういうこと?(笑)
- 青木 わからないけど、幅広くいろんな演技ができる俳優になったねってことだと俺は思ってる(笑)。
- 加藤 僕はお姉ちゃんがちょうど妊娠中で、お腹が大きくてもうパンパンのときに見に来てくれたんですけど、「赤ちゃんがすっごく動いた」って(笑)。
- 胎動が!? 無事に生まれましたか?
- 加藤 はい、元気な男の子でした。
- 青木 よかった、よかった。
- 加藤 でも…少し心配なのが、甥っ子なんですけど、女の人に抱っこされるよりも、男の人に抱っこされるほうがうれしいみたいなんです。
- 青木 あの日に覚醒したんだ!
- 加藤 パタリロの何かが、子宮内でバーって広がったのかもしれない(笑)。