『I.W.G.P.』がミュージカルになってよみがえる! 大野拓朗×染谷俊之「池袋は僕たちのホーム」

老若男女問わず多くの人が足を運ぶ池袋は、かつてカラーギャングたちが集い、縄張り抗争を繰り広げていた街でもある。そんな池袋のカラーギャングの姿を描いた『池袋ウエストゲートパーク』(文藝春秋)が20周年を迎える今年、ミュージカル化される。主人公・マコトを務めるのは、NHK連続テレビ小説『わろてんか』でキースを演じる大野拓朗。カラーギャングのリーダー・タカシを演じるのは、多くの舞台で活躍する染谷俊之。このふたりによるどんな化学反応が見られるのか。池袋を舞台に、男たちのアツい思いがぶつかり合う。

撮影/川野結李歌 取材・文/渡邉千智 制作/iD inc.

呼び方は「染くん」と「拓朗くん」に落ち着きました!

過去にはドラマ化もされた、石田衣良さんの名作『池袋ウエストゲートパーク』(文藝春秋)。今回、『池袋ウエストゲートパーク SONG&DANCE』としてはじめてミュージカル化され、12月23日から上演されます。大野さんと染谷さんは、今作で初共演となるんですよね。
大野 はい。はじめて会ったのは、今年1月ですね。
染谷 僕がミュージカル『ロミオ&ジュリエット』を見させてもらったときです(大野さんはロミオ役)。歌もうまいし、何てカッコいい人なんだ! と思って。
大野 いやいやいや。見に来てくれてありがとうございました。
染谷 背が高くてスラッとしていて。ロミオの姿がぴったりで、まさに王子様だなと思いました。第一印象は「王子様」というイメージですね。
とのことですが、大野さんは染谷さんに対して、どのような印象を?
大野 そのときに、「キングです」(『池袋ウエストゲートパーク』で染谷さん演じるタカシの呼び名)と紹介されて。僕は「キングと言うよりプリンスじゃん!」って思って。
染谷 いやいや(笑)。ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』は本当に面白くて、スタンディングオベーションしてしまいました。
大野 うれしい! ありがとう!
▲マコト役・大野拓朗
今日(※取材日)の撮影中、お互いに何と呼び合うかお話されていた姿が印象的でした。大野さんが染谷さんのことを「染さま」と呼ぶことを染谷さんが却下されていて…(笑)、結局、呼び名はどこに落ち着いたんでしょう?
大野 「プリンス染さま」です!
染谷 いやいや、「染くん」に落ち着いたんですよね!?(笑)
大野 それから、「プリ染さま」に落ち着きます!
染谷 ははは! 原型がなくなっちゃっているじゃないですか!
大野 のちのち、「プリちゃん」になります。
染谷 ええっ!?(笑)
▲タカシ役・染谷俊之
大野 ははは! 結果、「染くん」に落ち着きました。
染谷 僕は、「拓朗くん」に落ち着きました。
大野 次第に「拓朗」と呼んでいただいて。
染谷 はい。今は“くん”をつけているんですが、徐々に取れたらなと思っています!
公演のタイミングでどう呼び合ってるのか、とても楽しみです! 本作で大野さんが演じるのは、池袋イチの“トラブルシューター”マコト。カラーギャングたちが集まる池袋に住んでいる、物語の主人公です。
大野 マコトはまっすぐでピュアでナチュラルな…本当に一番“凡人”に近いというか。カラーギャングたちが縄張り争いをしている池袋にいながら、意外とマコトは普通の人。見に来てくださるお客様と同じ目線にいるのかなと思っています。
染谷 すごく感じるんですけど、マコトってどちらかと言うと受けの姿勢ですよね。流されるままに物事が進んでいくというか。だからこそ、お客様はマコトと同じような目線で舞台を見られるんじゃないかなと。
大野 中盤になってからは、その印象がガラリと変わる部分もあります。でも、基本的には中立の立場ですね。キングや、池袋に現れるカラーギャング「レッドエンジェルス」のリーダー・京一(矢部昌暉)のカリスマ性がスゴいからこそ、普通でいるマコトが惹き立つんだろうなと思います。
マコトとタカシは学生時代からの友人で、タカシはマコトに信頼を抱いていますし、あとから現れる京一もマコトのことは一目置いています。マコトには、それだけ惹かれる何かがあるんですね。
大野 マコトは本当にフラットなんです。たとえ池袋でどんな悪いことをしていようが…悪いことはもちろんダメと言うけど、人に迷惑をかけていないことだったら「面白いことしてんじゃん」って思えるタイプ。器が大きい、全員を受け入れられる人間なんです。

稽古中に感じる、お互いのマコト&タカシっぽい一面

では、染谷さんが演じるカラーギャング「G-Boys」のリーダー“キング”ことタカシはいかがでしょうか?
染谷 彼は生い立ちがかなり壮絶で。もともと池袋のボスだった兄がいたのですが、入院中の母が亡くなったその日に、兄も死んでしまって。兄がいない今、池袋を乗っ取られないようにするために、誰かがまとめないといけない状況でキングになったんです。「感情が年に2回しか出ない」という描写があるんですが、じつは心にアツいものを秘めているヤツなんですよね。
大野 そうだね。
染谷 だからこそ、「ドライアイス」という言葉がぴったりだなと思いました。
大野 うん! 触ったら火傷するしね。
染谷 冷たくて熱い…みたいな部分があるなと感じました。
そういった深いバックボーンを落とし込んで演じるのってすごく難しそうです。
染谷 難しいですね。だからこそ、今後の稽古(※取材が行われたのは11月下旬)でもっと作り上げていきます。ただ、タカシがずっと秘めているもの…寂しさや辛さっていうのは、あえて表に出す必要はないなと思いながら、探りつつ稽古をしています。
大野 それはすごくストイックな考え方ですよね。だって、もう僕は稽古場の段階で「タカシだな」って思っていますよ。このプリンス感だって…。
染谷 プリンス感…!(笑)
大野 (笑)。プリンス感にどこかミステリアスさも秘めているというか。ほかの人とは違う何かを持っている雰囲気がありますよね。あとは、すごくみんなに慕われる人なんだなっていうのは感じていて。
染谷 いやいやいや!
大野 そんな姿にタカシはすごく重なります。本当にキングの人柄というか。
染谷 そんなこと全然ないですよ。
大野 それを頑張って役作りでされているのかもしれないですけど、僕は稽古の段階からタカシらしさを感じているので、このキャスティングは本当にぴったりだなと思いました。
逆に、染谷さんから見て、稽古場の大野さんの姿にマコトっぽいと思う部分はありますか?
染谷 お話をいただいて、小説を読んでいるときからすごくイメージはぴったりだなと思っていました。実際に、お稽古場に入って大野さ…あ、拓朗くんが…。
大野 ははは!
染谷 すみません、ぎこちなくて(笑)。マコトを演じる拓朗くんのお芝居はすごくナチュラル。いつのまにか見入ってしまって、それこそタカシがマコトに惹かれる感覚というか。それに、気さくな方なので、拓朗くんを中心に笑顔が絶えないし、人柄って大事だなと感じています。
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