悔しい気持ちが成長につながる。桐谷美玲が体現する“残念女”の大逆転劇
悔しい思いをすることはたくさんあるだろう。では、その悔しさをバネにどこまで努力ができるか? 映画『リベンジgirl』の主人公で、性格以外はパーフェクトな“イタイ女”、宝石美輝(たからいし・みき)が失恋をきっかけに目指すのは総理大臣! 突拍子のない考えに思えるが、彼女はいたって本気。美輝を演じた桐谷美玲の「自分の思いに嘘をつかず、まっすぐなところが魅力」という言葉同様、美輝はどんな逆境にも正面からぶつかっていく。そんな姿が、「見返してやる!」という思いを抱いたことのある、すべての女子の背中を力強く押してくれる。
撮影/川野結李歌 取材・文/渡邉千智 制作/iD inc.少女マンガに出てくるような、愛されキャラをイメージ
- 主人公・宝石美輝が、人生最大の失恋をきっかけに政治の世界に飛び込み、失恋の“リベンジ”を図る映画『リベンジgirl』。桐谷さんが演じる美輝は、容姿端麗、頭脳明晰ですが、“性格に難あり”なイタイ女。台本を読まれたときの美輝のイメージはいかがでしたか?
- 素直にイタイ女だなと感じました(笑)。自分とは真逆の性格をしているし、美輝を演じるのは大変なんじゃないかなと思っていました。
- 美輝と桐谷さんの性格は真逆なんですね。
- 私は、美輝みたいに自分自身をしっかり持っているわけじゃないし、行動力もない。「目立ちたい! 私を見てほしい!」っていう思いもまったくないので、美輝に共感できるところがなかなかなくて。でも、最初から最後まで、まっすぐで自分の思いに正直なところは美輝の魅力だなと思いました。
- 実際に演じてみて、難しさは感じましたか?
- とにかくやるしかないという思いで撮影に臨んだのですが、蓋を開けたら演じるという点で苦戦したところはあまりなかったように感じます。ただ、美輝はものすごくしゃべるので、バーッと話すなかで「ここは美輝の意思があらわれているところ」というのが流れてしまわないようにするのは難しかったです。
- たしかに、美輝は人の話を聞くというよりは、自分本位で終始しゃべりたおしているイメージです。
- そうなんです。だからこそ、美輝のしゃべる勢いを落とさないように、というのは意識した部分です。私のなかで美輝は、『白鳥麗子でございます!』(講談社)の麗子さんみたいな…傲慢なところはあるけれど、憎めない愛されキャラだと思ったので、そういった少女マンガの主人公のようなイメージを大事にしていきました。
- フィクションである少女マンガのようなイメージを大事にされたとのことですが、演じているのは生身の人間。美輝にリアリティを持たせるように意識された点はありましたか?
- 外では自信満々に振る舞っていますが、自宅での姿や妹の美咲(竹内愛紗)との会話のなかでは、普通の女の子なんだという“差”は見せたいと思っていました。三木(康一郎)監督とも、「美輝って普通の部分があってもいいよね」という話をしていたので、外ではちょっと頑張ってしまっているだけなのかも、という部分を垣間見せられたらいいなと考えていました。
- 自宅での美咲とのシーンは、気を遣わない姉妹の関係性が出ていますよね。そのほかに、美輝を演じるうえで、監督からはどんなディレクションがあったのでしょうか?
- 最初のほうは、上から目線な感じというのを大事にしていたので、「腕を組んでしゃべってみて」とかですね。あと、私もどれくらいのテンションで美輝を演じたらいいか考えていたので、「どれくらい思いきりやればいいでしょうか?」と監督にお聞きして。「とにかく突き抜けてやってください」と言われたので、思いっきり感情を表現していきました。
美輝の“政治家ファッション”に注いだこだわり
- 政治家の息子の斎藤裕雅(清原 翔)に失恋したことへの“リベンジ”で、ド素人の美輝が選挙戦に躍り出ることになります。選挙カーに乗って有権者たちに訴えかける、演説シーンの撮影はいかがでしたか?
- 何百人ものエキストラさんに入っていただいて演説シーンを撮影したので、美輝が何かを言うたびによくも悪くもリアクションがあって。実際の選挙演説もこんな感じなんだろうなという疑似体験ができたのは、なかなかできることじゃないので、とても貴重に感じました。
- 美輝が政党の公認候補になるためにいろんな政党を回って、自分を売り込むシーンも印象的でした。
- あのシーンでは、各政党の代表を演じてくださったみなさんがとても豪華で。いろんな方々があのシーンを盛り上げてくださいました。それこそ、台本になかったようなことも起こったくらい(笑)。あのときの美輝のファッションやメイクも個性的ですし、やっていてとても楽しかったです。
- ファッションと言えば、選挙戦での美輝のピンクスーツの姿が印象に残ります。目につくピンク色のスーツは、とても美輝らしい姿だなと思いました。
- 美輝は、どちらかと言うと政治家らしいファッションやメイクはしていないんですよね。ただ、選挙戦が進んでいくにつれて、ジャケットスタイルやセットアップ姿も見せていますよ。
- そういった美輝の衣装の選定には、かなりお時間をかけたのだとか。
- そうなんです。衣装合わせに何時間もかけていただいて。監督とスタイリストさんとディスカッションしながら、私から「こういうのがいいんじゃないか」と提案させていただくこともありました。
- 桐谷さんが印象に残っている美輝の衣装は?
- やっぱり、ピンク色のスーツ姿です。私自身も一番美輝っぽい衣装だと思っていたので、劇中の印象的なシーンで使われていてうれしかったです。ピンク色のスーツが美輝を象徴する衣装になったなと感じています。
- 実際に美輝のような政治家がいたとしたら…。
- すごく目に入りますよね(笑)。でも、美輝のようにファッションを大事にしているところは、若い世代に向けて、選挙に興味を持ってもらえるひとつのきっかけになるんじゃないかなと思います。
女子ならキュンとする? 俊也のツンデレの振り幅
- 傲慢なところはあれど、裕雅に恋心を抱く美輝の様子は夢見る等身大の女の子だなと思いました。美輝の恋愛観についてはどう感じましたか?
- 美輝は、恋愛ムードに入ったらどっぷり浸かってしまうタイプだと感じていました。だからこそ、裕雅といるシーンもわかりやすくイチャイチャとした雰囲気を作っていきました。ザ・少女マンガ感が出ているんじゃないかなと思います。
- わかりやすく恋愛シーンを演じるのは恥ずかしいものですか?
- 普段、絶対にないシチュエーションだったりするので、私はとても楽しかったです。手を握られて、目をじっと見つめられて「俺は美輝に夢中なんだ…」って言われることはないじゃないですか(笑)。清原くんと楽しくやらせていただきました。
- 結果、裕雅には失恋をしますが、選挙戦を戦うなかで美輝のサポートをしてくれる選挙秘書の門脇俊也(鈴木伸之)と心の距離を近づけていきます。
- 俊也は、美輝に何があっても助けてくれる、どんなピンチでも駆けつけてくれるヒーロー的な部分がありますよね。それでいてツンデレでもあったりして。ツンとデレの差が激しいんです(笑)。
- ツンとデレの差の激しさに、桐谷さんがキュンとすることも?
- そういうギャップは俊也の素敵なところだなと思いました。ふいに笑ったり、照れたり…俊也の表情…“笑顔のバリエーション”は、監督もこだわって撮っていた部分です。
- 笑顔のバリエーション?
- 「ここはそんなに笑っていない笑顔」、「ここは照れながらの笑顔」、「ここは満開の笑顔」と、いろんなバリエーションの笑顔を細かく指示していました。
- そういう、笑顔の細かな変化を見ていくのも楽しみですね。俊也を演じた鈴木さんの印象は?
- 一生懸命で真面目で…すごく俊也のような方だなと思いました。だからこそ、演技中の俊也のセリフの圧がスゴくて。「だから、イタイ女なんだよ!」って言われるときの目が本気で怖かったです(笑)。でも、俊也のような方だから、美輝と俊也の関係性は作りやすかった気がします。
- では、女性キャラクターとのつながりで印象に残っているものは?
- 一番印象に残っているのは、裕雅の彼女のひとりだった百瀬凛子(佐津川 愛美)との関係。最初は凛子のことをバカにしていた美輝ですが、成長するなかでどんどん凛子の痛みがわかっていって。美輝は「凛子のために何かしてあげたい」と思うし、凛子も「美輝が頑張っているから私も頑張らなきゃ」という関係になっていくのは素敵だなと思いました。
- 馬場ふみかさんが演じた、仲手川 万里子はどんな印象ですか? 美輝とはミスキャンパスを競った仲であり、ゆくゆくは美輝の選挙戦を手伝う存在になります。
- 配役を聞いたとき、馬場ふみかちゃんは万里子のイメージにぴったりだなと思っていたんですが、実際会ってみるとちょっと男前の一面があって。でも、あの万里子の可愛さを表現されていて本当にスゴいなと思いました。万里子みたいな子がいたら、絶対に惹かれちゃいますよね(笑)。
- あの女子力の高い感じは、男性だったらイチコロかもしれません(笑)。女性からすると、友達にすると一番心強いタイプですよね。
- たしかに! 万里子は友達にするとすごく心強そうです。