相葉裕樹×池田純矢、舞台の“ドタバタ”バックステージを描き出す!

舞台上でセットの仕込み、劇中劇、バラしまでの一連の流れを生で見せる、ミュージカル「HEADS UP!/ヘッズ・アップ!」。本来、表立って語られることのない舞台スタッフのバックステージでの奮闘を、さまざまなジャンルで活躍する役者たちが時にアツく、時にコミカルに、時にしっとりと描き出していく。2015年の初演から引き続き出演する相葉裕樹と、今回の再演で初出演となる池田純矢も、本作について「誰が見ても面白い作品!」と太鼓判を押す。

撮影/川野結李歌 取材・文/渡邉千智 制作/iD inc.

誰が見てもわかりやすく、純粋に楽しめる王道ストーリー

2015年に上演され、第23回読売演劇大賞 優秀演出家賞を受賞したミュージカル「HEADS UP!」。キャストを一部新しくした再演が12月14日からはじまります。相葉さんは前回から引き続き、池田さんは今回が初出演となりますね。お稽古がはじまっていかがですか?
池田 再演の難しさを感じています。ほぼ初演から続投のみなさんですし、初演というひとつの成功のかたちができているぶん、稽古も土台はできあがっていて。初演だと、「ここはこうしよう」とディスカッションして作っていくことが多いですが、「ここはこうなるから、こういう動きをしてください」という再演ならではのハードルの高さを感じて、稽古に臨んでいます。
池田さんが演じるのは、地元の劇場にやってきた舞台チームの手伝いをするアルバイトの青年・佐野慎也ですね。
池田 今の稽古の段階では(※取材が行われたのは11月中旬)、動きは初演と同じようにやってみています。再演なので、まずはそこからやっていかないと全体の動きが変わってしまうんです。
▲池田純矢(役:佐野慎也 【アルバイトくん】)
相葉さんはいかがですか? お稽古に入られて、初演の感覚が戻ってきましたか?
相葉 それがびっくりするくらい忘れていて(笑)。僕自身も稽古に入ったら感覚が戻ってくるだろうと思っていたんですけど、2年でこれだけ忘れてしまうんだ、とショックを受けながら稽古をしています。
池田 ははは。
相葉 だから、新たに作り直す気持ちのほうが大きいですね。前回の映像を観て、段取りをなぞりながら稽古に臨んでいる最中です。まずはひと通り全部やってから、ひとつずつ演出がつくのかなという段階です。
▲相葉裕樹(役:新藤祐介 【舞台監督】)
物語は、1000回公演を終え、華々しく終了すると思っていた名作ミュージカルが、主演俳優の鶴の一声から地方の古い劇場で1001回目を上演することになるというお話。キャストのみなさんが、舞台監督から照明、美術、俳優と舞台に携わる役職を演じ、実際に舞台上でセットの仕込みから劇中劇、バラしまで見せるという、舞台が上演されるまでの一連を描きます。
池田 起承転結がはっきりと描かれていますし、「ここでアツくなりたい」「ここでほっこりしたい」「ここであっと驚きたい」という組み立てがわかりやすいですよね。王道を貫いている作品なのでとても観やすいですし、純粋に誰が観ても面白い作品だなと感じます。
相葉 舞台の裏方を描いた作品はあまりないと思うんです。しかも、仕込みから劇中劇、バラしまで観せる。たとえば、照明を吊りながら歌うシーンがありますが、照明を吊り上げる様子は、きっとみなさん観たことないと思うし、僕らも経験したことがなかったので、それをお客様の目の前で描くというのは、とても面白いなと思いました。
池田 うん。それをミュージカルで表現するというのも面白いんですよね。
相葉 そうそう。楽曲も耳障りのいい楽しい曲や、つい口ずさんでしまいたくなるものもあるので、ミュージカルをはじめてご覧になる方でも楽しめると思います。

実際の舞台制作チームにヒアリングし、役を研究

相葉さんが演じるのは、哀川 翔さんが演じる敏腕舞台監督・加賀美 賢治のもとで修業を積み、1001回目の地方公演を統括することになった新人舞台監督の新藤祐介。照明を吊るシーンもそうですが、普段は役者さんとして舞台に立っているなかで、舞台監督の仕事の様子はどう勉強されたのですか?
相葉 前回は、実際にKAAT(神奈川芸術劇場)の劇場を使って照明の吊り方や使い方を学ぶ研修がありましたが、今回は稽古場で教えてもらうことが多いです。あとは、各セクション…僕だったら舞台監督に「こういうときはどうしますか?」とおうかがいし教えていただいています。
たとえば、どんなことをお聞きになったんでしょう?
相葉 「本番前にインカムで何を話しているんですか?」など、実際どうしているかうかがい、動きに反映していきました。
池田 僕は、舞台のことを何も知らないアルバイトなので、実際に舞台上では誰でもできる仕事しかしていないんです。「この荷物を運んで」って言われたら、言われた通りに運ぶくらい。だから、逆に何も知らないくらいの感覚でいいので、勉強するという意味では困ることはないです。
相葉 そうだね。
池田 僕は自分で舞台を作っているんですが、自分の作品をやっているときも、仕込みバラしでアルバイトの子を呼ぶんです。派遣で来る子もいれば、大道具会社の関係で来る子もいるし、役者の卵も多いです。その子たちにお願いする仕事も、僕が今「HEADS UP!」でやっていることと変わらないので、「何をやればいいんだろう」ってボケーっとしているくらいがリアルなのかなと思います。
「HEADS UP!」も、原案・作詞・演出のラサール石井さんが、舞台の仕込みバラしに来る役者の卵たちの姿を見て、構想10年をかけて作った作品なんですよね。
池田 さすがに佐野みたいなガラの悪いやつはいないですけど、舞台の作り方を勉強しに来る子が多いんです。あと、じつは仕込みバラしは日当がそこそこよくて(笑)。劇団の研究生の子とか、公演がないときにいろんな劇場の仕込みバラしのアルバイトをやっていることが多いです。

座長・哀川 翔の器の大きさ、スター性に感激

お稽古場の雰囲気はいかがですか?
池田 座長の翔さんがとにかく優しいです。
相葉 大らかなんですよね。
池田 すごくハッピーな方なんですよ。
相葉 「ケンカは負けたことがない」とおっしゃっていて、たぶんキレたら怖いんだと思うんですけど…基本的には器の大きな方で、まさにスターだなとすごく思います。いるだけで場が成立するというか…そういうの、感じない?
池田 すごく感じる。
相葉 僕にはないな、と(笑)。
哀川さんからコミュニケーションをとってくださるんですか?
相葉 そうですね。
池田 はじめてこの現場でお会いしたんですけど、僕が「はじめまして」ってご挨拶する前から「よろしくな!」って言ってくださって。
相葉 しかも、カブトムシをもらっていたよね?
池田 もらいました!
9月26日に行われた舞台の記者会見でも、池田さんは「哀川さんからカブトムシをもらいたい」っておっしゃってましたね。
池田 はい。稽古がはじまってから1週間経たずにもらえました。
相葉 早っ! って思いますよね(笑)。
どういう流れで、もらったんですか?
池田 顔合わせのあとにみんなでご飯に行ったんです。隣に翔さんが座っていて、いろいろお話をするなかで「本当にカブトムシが欲しいんです」、「あ、そうなの?」と。そのとき、サタンオオカブトの説明をしていただいて、僕はあまりよくわかっていなかったんですけど、次の稽古の日に、「ほい!」ってサタンオオカブトの幼虫をいただきました。
相葉 幼虫なのに、すごく大きいんですよ。
舞台の公式ツイッターにお写真が上がっていましたが、本当に幼虫!? ってくらいの大きさで…。
相葉 あんなしっかりした幼虫をもらったら、ちゃんと育てなきゃだよね。LINEグループもあるので、成虫になったらちゃんと報告しなきゃね。
池田 羽化しました! ってね。
「HEADS UP!」出演者のみなさんのLINEグループがあるんですね。
相葉 初演のときにできて、そこからずっと稼働しています。でも、だいたい翔さんですね。朝の4時、5時くらいに、釣りで獲った魚を手にした写真が上がってきて。
池田 おおお!
相葉 「もう起きてるんだ!」と(笑)。翔さんを中心に盛り上がっています。
おふたりでLINEのやりとりはされますか?
相葉 いや、しないですね。
池田 しないですね。たまに連絡するくらいで。「HEADS UP!」が久々の共演なので、会見の前に「明日よろしくお願いします」っていうLINEは送りました。
相葉 ……ありましたっけ?(笑)
池田 はい。送りました(笑)。
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