福山 潤が駆け抜ける“超過酷”な夏 ――爽やかな新曲とともに「前へ前へ、進む!」
2017年の福山 潤は、いつにも増して疾走している印象だ。声優の仕事で多忙を極めながらも、アーティストとして2月にシングル、6月にアルバムをリリース。さらに今回、配信楽曲『Hi-Fi-Highway→』を発表し、9月にはライブイベントも控えている。「過酷だった」と振り返りつつも、とても楽しそうに語る彼の姿は、夏の朝陽に照らされて、軽やかに、瑞々しく映る。「飽きないことをやり続けるのが、僕のルーティン」と断言する福山 潤は、今後も“楽しいこと”を探し続けていくのだろう。
撮影/祭貴義道 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.スタイリング/浅井直樹 ヘアメイク/小田桐由加里
福山が発案。タイトルの矢印(→)に込められたもの
- 8月23日にリリース配信された『Hi-Fi-Highway→』ですが、どんな曲になりましたか?
- ひたすら爽やかな曲になりましたね。シングル『KEEP GOING ON!』とアルバム『OWL』で歌わせていただいた曲は、どちらかと言うとイケイケなノリのものが多かったんですが、今回はみなさんと一緒に歌えるような楽曲にしたいなあと思い、制作させていただきました。
- 歌詞もすごく前向きな内容ですね。
- これまでと同じく、「前へ前へ、進んでいこうよ」といった内容になっていますが、今回はとくに「みんなで進んでいこう」というイメージですね。そういった意味も含めて、爽やかさを前面に押し出した楽曲になっています。
- 9月24日に行われるスペシャルイベント『福山潤・ひとりのBocchi Show』でのライブ向け楽曲ということで、「みんなで」というキーワードが出てきた感じでしょうか?
- そうですね。「みんなで一緒に歌いながら、僕自身も前へ進んでいけたらいいなあ」っていうようなことは、曲を作っていただく際にお話したので……この曲の雰囲気や歌詞で、自然と感じられるような表現をしていただけたと思います。
- 背中を押してもらえるような歌詞ですね。とくにお気に入りのところはありますか?
- 「いつでも忘れない」から始まるラップ部分が好きなんですが、とくに「いっそ不安なんて忘れろ」から「それだけだろ」までのところが好きですね。「不安なんて忘れろ」っていうのがいいですよねえ。不安を「感じろ」じゃなくて「忘れろ」って、無理なことは言っていないんです(笑)。
- 実際に歌ってみて、いかがでしたか?
- 楽しかったですねえ。シングルからアルバムと、ずーっと歌ってきたなかでの最後のレコーディングではあったので……ひとつひとつリズムに乗って、歌ったり、ラップしたりしてきたこと全部が、この曲にフィードバックできたらいいなあって思いながら歌いました。爽やかな曲なので、細かいことを考えずに曲の雰囲気に乗っていけて、感じたままに歌わせていただけたっていうのも大きいですね。
- 作詞・作曲を担当された設楽哲也さん、ミズノゲンキさんとは、どんなお話をされましたか?
- リハーサルで歌った際に、大まかな方向性は「想像していたとおりです」と言っていただけました。ただ、サビからラップにかけて僕は最初、もっと力を入れて歌っていたんですね。ですからその部分に関しては、「ライブならともかく、レコーディングではもうちょっとサラッといきましょうか」とアドバイスをいただきました。あと、設楽さんとミズノさんも含めて、みんなで重点的に話したのが、タイトルについてですね。
- 今回は、『Hi-Fi-Highway→』というタイトルですが。
- ええ。タイトルをどうするかっていうのと、この矢印をどうするか……めっちゃ密に話しました(笑)。
- この矢印、とても気になりますね(笑)。
- 「Hi-Fi-Highway」が最初、確定ではなく“カッコ仮”の状態だったんですが、「いいタイトルだよねえ」ってみんなで話していて。ほかにもいろんなタイトルを出してみましたが、いろいろ考えた結果、やっぱり「Hi-Fi-Highway」がいいと。でも、「前に行こう」っていう気持ちも出したいから……「矢印をつけたらどうですか?」って(笑)。
- 福山さんが提案された?
- 矢印は僕が言いましたね。「前へ進む」ということをタイトルにも出したいっていうのは、設楽さんやミズノさんの意見でもあったので、いろんなパターンを出しましたが……。「Hi-Fi-Highway」って響きがいいし、ハイウェイという言葉だけで、スピードを出して進んでいくようなイメージもあるので、「タイトルはこのままがいいんじゃないですかね? ハイフンがふたつ入ってるから、最後に矢印をつけたらどうでしょう?」っていう、ものっすごく安直な(笑)。
- いえいえ、絶妙なアイデアだと思います。
- いやあ、僕のアイデアはいつも安直なんで(笑)。それが、意外にも「あ、いいね」って言っていただけて、この矢印が表記できるかどうかを調べて(笑)、こうなりました。
音楽を作る面白さを実感…今は歌うことが純粋に楽しい
- 先ほどもお話にありましたが、今年はシングル、アルバム、そして今回と、たくさん歌ってこられています。以前お話をうかがったときに「正直なところ、歌は苦手なジャンルに入っていた」とおっしゃっていましたが、今現在、「歌う」ということをどう感じていますか?
- 楽しくなってきましたね。今回の一連のプロジェクトに入るときは、すでに歌が苦手という意識はなかったので、すごく楽しませていただきましたが……そうそうたるメンバーにご協力いただいているのもあって、最初は僕自身、力が入りすぎていた部分もあったんですよね。それがだんだん、いろんなタイプの楽曲に触れたり、コントもやっていくなかで、音声にまつわるコンテンツを作るということ自体が、面白いものだと実感できたんです。
- そういう意味で、楽しくなってきた?
- そうですね。できあがったアルバムを通して聴くと、「曲の順番が変わるだけで、全体の雰囲気って変わってくるなあ」っていう発見もあって。自分のなかでも、「だんだん、こういうことができるようになってきたなあ」っていう感覚も芽生えてくるので、今、純粋に歌うことは楽しいですね。さらに、「この曲はもっとこうしたいな、ああしたいな」っていう願望や欲求が、より出てきたなあと思いましたね。
- じつにいろんなタイプの曲を歌われてきていますが、歌いやすい曲調などはありますか?
- もともと僕はしゃべるテンポも早いので、速い曲のほうがやりやすいですね。速い曲って難しいんですけど、性には合ってるなあって思います。シングル『KEEP GOING ON!』に収録されていた『ランプジェンガ』が、アルバム『OWL』でリミックスされてテンポが速くなったんですね。リミックスなので僕は歌い直していませんが、できあがったものに合わせて歌ってみると、すごく歌いやすかったんです。
- オリジナルの『ランプジェンガ』は、ゆったりとした曲調ですね。
- そうなんですよね。オリジナルは息を調整しないと歌えないところもありましたが、リミックスを聴いたときに、「このテンポだったら、全然余裕だなあ」って思ったり、新たな発見もあったりしましたね。
- 新たな発見というのは?
- 「バラードとして歌ったものが、リミックスされたらこんなに雰囲気が変わるんだ!」って思ったんです。いろんなアーティストの方のリミックスアルバムも聴いてはいますが、実際に自分で歌ったものという実感があるなかでリミックスされると、「こうなるんだ!」って、自分の体に落ちてくるので、それは今回いろいろやらせてもらったなかでの、ひとつの発見でしたね。
- 「こういうタイプの曲を、もうちょっと歌ってみたいな」っていうのはありますか?
- 森久保(祥太郎)さんに詞を書いていただいて、(井上)日徳さんに作曲していただいた『TORPEDO』ですね。それまでゴリゴリのロックって歌ったことがなかったので、正直なところ、「俺、ロック合うのかなあ?」って思っていたんですね。でも、森久保さんはずっと「潤くん、ロック合うよ」って言ってくださっていて。それで、実際に歌ってみるとめっちゃ楽しくてですね、できあがったものを聴いても、「ノリノリで歌ってんなあ、俺」って思いました(笑)。
- それも新たな発見ですね。
- そうですね。僕は従来、『Go Ahead』みたいな雰囲気がすごく好きなんですけど、森久保さんと日徳さんの『TORPEDO』で、とても新鮮な出会いができたなあと感じましたね。なので、こういった感じを、またちょっと違った形でもやってみたいなあと思いました。
- たしかに、『TORPEDO』は福山さんのまた違った一面が見られる、カッコいい楽曲でした。
- でしたねえ。あと、森久保さんの歌詞の感覚が、すごく性に合っているといいますか、歌詞自体がとても腑に落ちる内容だったんですよね。だから、収録のときもすごくノッて歌っていましたね。
イベントでは“新たな福山 潤の一面”を見せたい
- 今回の一連のリリースで、いろんな“福山 潤”を発見できたと思うのですが、それらをひっさげて、『福山潤・ひとりのBocchi Show』が行われます。
- そうですね、このタイトル……「ひとりのBocchi」って、「頭痛が痛い」と同じ表現なんですけど(笑)。
- (笑)。どんなイベントになるでしょうか?
- アルバムをかなり凝った作りにしちゃったので、みなさんの期待が膨らんでいるかもしれませんが、アルバムのコントをそのままやるのは不可能なので……やるのは可能ですが、たぶんみんな「あれ?」ってなると思います(笑)。あれは、ビジュアルがないから面白いコントになっているんですよね。なので、アルバムに収録されている歌を生でライブとしてやらせていただく予定ではあります。
- 2000人近く入る、市川市文化会館大ホールで行われるイベントですが、こういった大規模な場所で、個人名義でのイベントは初めてですよね?
- 初めてですねえ。トークショーもライブもやったことがないので……せっかくだから、お遊び的なものも含めて、全部ごちゃ混ぜにしてやっちゃおうと思っています。「ひとりのBocchi Show」って言ってますが、櫻井(孝宏)さんと、OOPARTZのおふたりに来ていただくことになっておりますので(笑)。
- シングルとアルバム、両方に参加されたみなさんですね。
- ええ、そうなんです。今回のプロジェクトで、OOPARTZさんには全面的に協力していただきましたが、イベントに来られるお客さまのなかには、まだOOPARTZさんのパフォーマンスを知らないという方もいらっしゃるかもしれないので、おふたりの素晴らしいパフォーマンスを知っていただける機会になるんじゃないかなと思います。
- 櫻井さんとは何をされるのでしょう?
- 「何をしようかな?」って思っています。まあトークなんですが、普段からずっと話しているので、「改まって何を話せばいいんだろう?」って(笑)。これまでは僕が櫻井さんのトーク番組やラジオ、イベントなどで迎えられることばっかりでしたが、今回、僕が櫻井さんを迎えるっていうのが、なんか照れるなあって……恥ずかしさもあります(笑)。
- 櫻井さんには「身ひとつで来てください」という感じでしょうか?
- そうですね。コントのときも、櫻井さんのバランス感覚に任せて「もう、思うようにやってください」と……これ、僕が言われたら一番嫌なんですけど(笑)。でも、ゲストでお呼びする以上は、普段の僕と櫻井さんの掛け合いがどんな感じなのかっていうのを、お客さまに楽しんでいただけるとは思います。いつもけっこう変な会話ばっかりしてるんで(笑)。
- それは面白そうですね(笑)。
- そういった、僕が今まであまりステージ上で見せていなかった一面を、今回お見せできればいいなあとは思いますが、テンションがあがっちゃうと僕、スイッチ入ってどうなるかはわからないです(笑)。あとはまあ、来ていただいた方が「なんだこれ?」って思うようなものも、ひとつぐらいは提供したいなと思っていますね。
- みなさんの前で「アーティスト・福山 潤」として歌うということで、緊張はありますか?
- 緊張は常に、どういうものでもするんですけど、緊張したって自分にできることは何も変わらないので、僕が今やれることをやるだけですよね。歌のプロジェクトについては僕……本当はこういうことを言うのはダメだと思うんですけど、あえて言わせていただいてるのが、「やるたびに進歩していますよ」ということなんです。僕が歌のお仕事を初めてやらせていただいたときのことを知っている方だったら、たぶん……感涙ものかと(笑)。
- 感涙ですか(笑)。
- 「歌がうまくなったねえ」って言っていただけるように(笑)、頑張ろうと思います。あと、僕のなかのささやかなプロジェクトとして……今って歌が上手な人が多いじゃないですか。そんななか、カラオケや学校の歌の授業が得意じゃないっていう人もいると思うんですよ。でも、「ちゃんとやれば、うまくなるからね」って。程度の問題はありますが、そういった勇気を与えられたらいいなあと思っているんです(笑)。
- なるほど。
- もちろん、僕の最初の歌の活動をご存じない方にも楽しんでいただけるように、まず僕自身が楽しみたいですよね。やっていて楽しいかどうかって、とても重要だと思うので。何曲も連続してイベントで歌うなんてやったことがないので、どうなるかはわかりませんが、せっかくいただいたチャンスなので、みなさんと一緒に楽しめたらなあって、お披露目できる機会をありがたく思っています。