芝居を見ると、すぐクセを探してしまう。ミスター平成仮面ライダー・高岩成二の役者魂

12月22日に公開される映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』は、2000年から放送された『仮面ライダークウガ』から、現在放送中の『仮面ライダージオウ』(ともにテレビ朝日系)までの、20作品の平成仮面ライダーが競演する映画だ。高岩成二は、そのほとんどで主役の仮面ライダーを演じた俳優/スーツアクター。齢50にして激しいアクションの最前線に立ち続け、“ミスター平成ライダー”ともいわれる鉄人だが、その素顔は驚くほどに謙虚で温和だった。

撮影/川野結李歌 取材・文/箭本進一 制作/iD inc.

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もっとも難しかったのは“職業・仮面ライダー”のブレイド

『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』は、平成最後の『仮面ライダー』映画となります。撮影の際にはどんな思いがありましたか?
これまでにも歴代仮面ライダーが勢揃いする映画はありましたが、今回はなんといっても平成最後です。クウガからジオウまでがずらりと並ぶ姿を見て、ずいぶん長くやってきたんだな…と思いました。そのほとんどを僕が演じてきたわけですからね。
感慨もひとしおだったのではないかと思います。
とはいえ、僕の体はひとつしかありません。すべてを演じるわけにはいかないので、後輩たちにも任せています。かつて僕が演じていた仮面ライダーを、後輩たちが演じている様を見るのも感慨深いものがありますね。まさか、こんなに長く続くとは思わなかったですから。
今まで演じてきた中で、一番難しかった仮面ライダーというと?
難しかったのは(2004年の)『仮面ライダー剣』の仮面ライダーブレイドです。普通の青年である剣崎一真が会社組織に所属して、仮面ライダーをやってお給料をもらう…というコンセプトだったので、特徴が掴みづらかったところがあります。「ブレイドといえばこれ」という特徴を作れなかった唯一の仮面ライダーです。
個性豊かな複数のキャラクターを高岩さんひとりで演じわけた、『仮面ライダー電王』(2007年)が出てくるかと思ったのですが。
イマジンという怪人が憑依して人格が変わる仮面ライダーですから、最初は難しいかなと思っていたのはたしかです。でも、フタを開けてみるとかなり特徴のあるキャラクターたちだったので、今振り返るとやりやすかったんじゃないかと思います。
ほかのライダーはいかがでしょう?
『アギト』(2001年)も難しかったですね。変身前である津上翔一は記憶喪失なうえ、変身後に発する台詞もわずかでしたから。翔一が記憶を取り戻したあとで、変身後のアクションを変えたのも難しかったです。
平成仮面ライダーとしては初めての作品だったうえに、キャラクターとしても難しかったわけですね。
後半の『仮面ライダーゴースト』(2015年)や『仮面ライダー鎧武』(2013年)では、主人公が10代という設定ですから、また違った難しさがありました。50歳の僕とはかなり年齢が離れてますからね(笑)。

役者のクセを見ながら、毎年二人三脚でキャラクターを作る

平成仮面ライダーシリーズでは、毎年新たな俳優が主役として抜擢されます。彼らとはどうコミュニケーションを取っているのでしょうか。アクション指導をされることも?
撮影現場でも、仕事に関して話すようなことはあまりなくて、基本的にはプライベートなくだらない話をしてます(笑)。
そうだったんですね。高岩さんといえば、変身前の俳優とシンクロした演技に定評があります。前もって綿密に演技プランを話し合っているのかと思いました。
演技プランを詰めて、みっちり話し合って…ということはそんなにありません。僕と役者さんとでお互いの演技を見ながら、ひとりのキャラクターを二人三脚で作り上げてます。
まさにプロ同士の仕事ですね。
僕は役者さんのお芝居を見て、すぐにクセを探してしまうんです。振り向くときに2段階踏んでいるとか、相手と目を合わせてもすぐに視線を外すとか、役者さんのそれぞれに個性やクセがありますから、変身後のお芝居には積極的にそれらを取り入れていきます。役者さん側でもそれは同じで、とくに竹内涼真(泊 進ノ介/仮面ライダードライブ役)なんかは僕のクセを良く見てましたね。
普段から人間観察を欠かさない。まさに役者魂ですね。
養成所では先生から口をすっぱくして「人間観察をするように」と言われてました。だから今も人間観察は好きですよ。周りの仲間たちも、監督やカメラマンのモノマネをすることが多いですし。

役者さんより早く設定をいただき、僕が先行してキャラクターを作ることも多かったです。(2002年の)『仮面ライダー龍騎』の城戸真司(須賀貴匡)、(2003年の)『仮面ライダー555』の乾巧(半田健人)、(2006年の)『仮面ライダーカブト』の天道総司(水嶋ヒロ)なんかは、先行パターンだったりします。
高岩さんが先行されるのはどういう場合なのでしょう?
『龍騎』は、スケジュールの都合ですね。アクションシーンから撮影が始まることになりましたから、そうすると僕がキャラクターを作らないといけない。僕はちょいちょいアドリブを入れるタイプなんですが、そうしたアドリブを拾ってもらったりもしました。監督さんからは「(アドリブのおかげで)龍騎というキャラクターが見えました」と言っていただけましたし。
アドリブに関して印象深いエピソードはありますか?
ファイズは必殺技の「クリムゾンスマッシュ」を出す前に、腰を落として肘をももの上に置くんですが、これは偶然の産物だったりします。当初は単に腰を落とすだけだったんですが、撮影でライティングの準備を待っているとき、疲れてきてしまって肘を置いて休憩したら、このポーズを使おうということになりました。変身前の乾巧というキャラクターにもアウトローでラフなところがあるので、イメージにピッタリだと。

現場が遠くても、出番がなくてもついてきた。竹内涼真の努力

先ほど、竹内涼真さんのお話が出ましたが、歴代の主役の中でとくに印象に残っている方はいますか?
それこそ竹内は、自分の出番がないにも関わらず、遠くのロケ地まで自腹でついてきてました。それで僕のシーンの撮影を見ているんです。今までこういう人はいなかったので、とくに印象に残りましたね。

もちろん、みんなそれぞれに努力していました。(2009年の)『仮面ライダーW』の菅田将暉(フィリップ/仮面ライダーW役)や、『仮面ライダージオウ』の奥野 壮(常磐ソウゴ/仮面ライダージオウ役)なんかは、テレビドラマのお芝居自体が初めてでしたし。
しかも、普通のテレビドラマとは違う特撮の世界ですからね。
朝が早い現場が毎日続いたり、ビデオ合成があったりと独特ですから、撮影所の近くに部屋を借りていた人もいます。みんな、影で頑張っていたんでしょうね。
そうやって表には若手の役者さんがいて、高岩さんはいわば裏を支える立場かと思います。改めて、スーツアクターという仕事の魅力を教えていただきたいのですが。
僕としては、スーツアクターという仕事ではなく、俳優をやっている意識ですね。俳優さんが小道具や衣装を借りて表現するのと同様に、僕たちは『仮面ライダー』のマスクやベルトを借りて、カメラの前でアクションとお芝居をするわけです。これはスーパー戦隊のチームも意識は同じだと思います。
たしかに、スーツアクターという単語自体が近年生まれたものですからね。
気づけばスーツアクターというカテゴリで括られていた…という感じがありますね。もちろん、こうした呼び方をしていただくのはまったくかまいません。

唯一違うのは、マスクをかぶるから顔の表情でお芝居できないといったところでしょうか。ただ、スーツアクターもマスク越しに台詞をしゃべったり、表情を作ったりもしますから、そう考えるとやはり俳優ですね。

ヒーローショーでは手振りや動作を大きくしますが、テレビや映画では顔のアップもありますから、マスク越しに表情が出るようなお芝居をしなければならない。顔の細かな角度で意味合いが変わってきてしまうし、喜怒哀楽が読み取れないと成立しないんです。
ちなみに、『仮面ライダーゴースト』では、敵幹部のジャイロを演じていましたが、普段と意識は変わらずだったのでしょうか?
そうですね。お芝居のやり方自体は変わらないんですが、顔を出すのが十数年ぶりだったので、すごく緊張しました(笑)。首の角度でお芝居をすることが多いんですが、ジャイロのときは顔が出ているから「眉でお芝居をしてもいいんだ」って気づいて。ただ、身に染みついているので、なかなかそうしたお芝居ができなかったですね。

家でカメラを回したら、僕のだらしない姿が映ると思います(笑)

『仮面ライダー』の人気上昇とともに、高岩さんがメディアに出ることも多くなりました。たとえば、オフの際に街で声をかけられることもありますか?
そうした機会が格段に多くなりました。昔のヒーロー番組では、我々のような俳優は「影の存在」と呼ばれていて、「絶対表に出るな」と言われていたりもしましたから、大きな違いですよね。
プライベートでもヒーローらしい立ち居振る舞いを心がけているのでしょうか?
そこは全然気にしてないですね。普通にだらしない格好をしていますし(笑)。ただ、職業病…というわけでもないんでしょうけど、姿勢は良いほうだと思います。ショップのウインドウで自分の歩いている姿を無意識にチェックしていることもありますから。
1年を通して同じ役を演じないといけないという点で、体型を維持するために食べるものを制限していたりはしますか? たとえば、お酒はあまり飲まない、鶏のささみしか食べないとか。
そうしたことはまったくないですね。好きなものを食べられないと、ストレスが溜まっちゃいますから(笑)。僕の家で24時間カメラを回したとしたら、だらしない姿が映ると思いますよ。
体のラインが出ますし、減量中のボクサーのような食生活を送っているものだとばかり思っていました。
体を見て「でかくなってるなぁ」と思うときは、少し絞ったりもします。でもそれもまあ、気が向いたときですね。近年は仮面ライダーに装飾がたくさんついて大きくなっているので、自然と筋肉が付いてパンプアップしちゃうんです(笑)。
重いスーツでアクションをするわけですから、撮影がそのままトレーニングのようなものですね。
歴代作品だとブレイドの強化形態、キングフォームは、通常のブレイドが、さらに鎧のようなパーツを装着している状態ですから重いんです(笑)。放送中のジオウもですね。レジェンドライダーの力を借りるためのモジュールがたくさんついているからなんですよね。

「まだまだ負けない」という覇気とともに戦い続ける

現在50歳にしてアクション俳優として現役を張っているわけですが、同じアクション俳優の後輩たちについてはどういった思いを抱かれていますか?
若いだけあって熱量がありますね。僕自身も、まだまだ負けないぞ!という気持ちもなきにしもあらずです。若い俳優たちに比べると、アクロバット的なパフォーマンスは落ちるかも知れませんが、周囲から求められれば、それだけのものをこなせるだけの力があると思ってます。
たとえば、今作の映画撮影の際、後輩たちに「もっと、自分の演じたライダーに近づけてほしい」というような指導をされましたか?
アクション面を指導するというより、仮面ライダーごとに特徴のあるしぐさをアドバイスするといったところでしょうか。彼らもそれぞれにスタイルは違いますし、僕の動きを真似するにも限界がありますから。
では、後輩たちにアドバイスをするとしたら?
アクロバットは上手なんですけど、表現の引き出しがまだ少ないですね。表現の引き出しが少ないと役をいただけないですし、監督も安心して任せることができませんから。
アクロバットの技巧も大切だけれど、やはり演技力が大事であると。
たしかに僕たちはアクションを担当してるんですが、アクションもお芝居の中のひとつです。今はお芝居に重点を置く監督が増えてますから、表現の引き出しを増やしてほしいですね。
高岩成二(たかいわ・せいじ)
1968年11月3日生まれ。埼玉県出身。B型。高校在学中からジャパン・アクションクラブ(現・ジャパンアクションエンタープライズ)の養成所に入所。後楽園ゆうえんち(現・東京ドームシティアトラクションズ)のアトラクションショーを経て、1988年、『仮面ライダーBLACK RX』のライダーマン役でテレビドラマに出演。2000年からの平成仮面ライダーシリーズでは、2001年の『仮面ライダーアギト』以降、ほぼすべての主役仮面ライダーを演じる。2018年9月2日からは『仮面ライダージオウ』(全国テレビ朝日系 午前9時から放送中)に出演中。

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出演作品

映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』
2018年12月22日(土)ロードショー
http://www.movie-taisen.com/

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、高岩成二さんのサイン入りポラを抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2018年12月20日(木)12:00〜12月26日(水)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/12月27日(木)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから12月27日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき12月30日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
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