人と社会をつなげる分身ロボット「OriHime」、開発のきっかけは「絶望的な孤独感」だった

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「自分がもうひとりいたらいいのに」。そんな願いを実現させたロボットがあります。ロボットの名前は「OriHime」(オリヒメ)。

 

この「OriHime」は、「分身ロボット」。引きこもりや病気、介護や育児などの理由で自由に外出できない人たちが、自分に代わって社会参加するためにも使われています。

このユニークなロボットを開発しているのは、株式会社オリィ研究所。今回は、所長の吉藤オリィさんを訪ね、ロボットに込めた思いや夢を聞きました。

ロボスタ×ライブドアニュース「次世代ロボットの夢」特集
コンセプトは「心の車いす」。もうひとつ身体が欲しいという想いで生まれた分身ロボット
 
―2010年12月に「OriHime」を発表してから約8年がたちますね。
 
 
吉藤
 そうですね。8年前は地下鉄ではケータイの電波が入らないなど、ネットワーク環境も不十分でした。そう思うと、現在はモバイル通信がどこでも利用できて高速、Wi-Fiも充実していてロボットを活用するためのインフラが整いましたよね。
 
私たちが開発している「分身ロボット」は専門用語で「テレプレゼンス」ロボットと呼ばれています。遠隔でもその場にいるような臨場感が味わえる技術です。当時は「Skypeでいいじゃないか」とか「AI(人工知能)が搭載されていないの? そんなもの今どきロボットって言えるの?」などと言われてきましたが、私達がやろうとしていることの意義が少しずつ理解されるとともに、分身ロボットへの理解も深まってきたと感じています。
 
吉藤
 私は、テクノロジーの進化によって時代が少しずつ変わっていくと思っています。しかし、それって大学で研究しているだけのレベルでは不十分で、その研究をきちんとビジネスにして、啓蒙活動もやっていかなければ世の中は変わらないな、とも思っています。
 
「研究で技術を向上させること」「啓蒙活動で皆さんに知ってもらうこと」「ビジネスで実際に使ってもらうこと」の3つをセットにして、グルグル回して進化させていくことで、ようやく時代は変わる。登校できない子どもたちが「OriHime」のような分身ロボットで学校に通うことが許可されるような、現在の段階に8年かかってようやく到達した、という感じです。
 
―改めて「OriHime」はどんなロボットか、簡単にお聞かせいただけますか。

 
吉藤
 うちの研究所ではもともと車いすを作っていたのです。でも、車いすに乗ることができない人もいる。そこで「身体」は運べなくても「心」を運ぶことができないだろうか、という視点でコンセプトを検討し、たどり着いたのが分身ロボットでした。すなわち「OriHime」は「心の車いす」なのです。

名前の由来は織姫と彦星が元になっているのですが「離れている人に会いたいという気持ちはあるけれど物理的な移動はできない」、「心だけでも移動して会いに行きたい」という発想から名付けました。
 
―OriHime(織姫)ということは、女性のイメージですね。

 
吉藤
 そういうわけではありません。分身なので、操作する人が男性ならロボットも男性に、女性なら女性の分身になれるデザインを意識しています。なぜ名前が「織姫」の方かと言うと、私が折り紙の先生をやっていて“オリィ”というあだ名だったので、オリヒメが良いと考えたんです(笑)。もともとは自分の分身が欲しかったんです。
 
―吉藤さん自身の分身…。

  
吉藤
 私は体調を崩したことがきっかけで3年間、不登校で引きこもっていた経験があります。勉強・運動もできず、友達もいないという状態で、唯一の趣味が折り紙だったんですよ。その当時「もうひとつ身体があったらなぁ」といつも考えていました。
 
―吉藤さんのそのような経験から、「OriHime」の着想は生まれたんですね。今、「OriHime」は、どのような場所で使われているんですか?

 
吉藤
 台数にして300台ぐらい、企業では約70社が採用してくれています。それらは全てレンタルで使われています。なので、使ってくれた人の数はもっと多いですね。個人の場合は、難病を含めて、病気やけがなどで入院している方が使われています。

企業の場合は、ほとんどがテレワーク目的です。特に育児中の方が多いですね。例えば育児で会社を3年間、休んでしまうと復帰は難しくなってしまいます。企業としても優秀な方がいなくなってしまうのは困りますが、もちろん育児をやめろとは言えません。そこで、自宅で育児をしながら、「OriHime」で職場に参加して、コミュニケーションを図ったり意見を言ったりするという使い方が多くなっています。
 
―Skypeではダメなのですか?

 
吉藤
 「モニターでやればいいじゃないですか」という意見も結構いただくのですが、テレビ電話って、育児中の方、特に女性にとっては実はハードルが高いんです。例えば、「化粧する暇がない」「家の中を見られたくない」「子どもが会話に入ってくるかもしれない」などがその理由です。その点、「OriHime」だと、顔を見られないし、「OriHime」が動けばその人が動いているように見えるし、その人の声もするので、ちゃんとそこに存在している感覚になります。そういう意味でテレワークではロボットの方が円滑に使えます。
「孤独」を消すために人工知能で友達を作ろうとした
 
―先ほど、「自分の分身が欲しかった」とおっしゃっていましたが、ロボットや人工知能の研究を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

 
吉藤
 私はめちゃくちゃ“コミュ障”なんですよね。小学校や中学校で友達の輪に入るとか、コミュニケーションを取るっていうことを放棄してきた人間だったので。なので、最初は「人工知能を研究して友達を作ろう」って考えだったのです。そのときに命とは何か、性格とは何か、とかを深く考えましたね。
 
―リアルな友達を、人工知能やコンピューターで作りたかった?

 
吉藤
 そうです。それが18歳のときの私にとってのモチベーションだったんですね。このモチベーションはすごく高いですよ(笑)。17歳のときに孤独を消そうと決意しました。そして孤独を消すためのファーストステップとして、友達が必要だと考えたのです。
 
―孤独を“消す”…。吉藤さんにとって、孤独って一体どんなものですか。

 
吉藤
 まず、私は「孤独」=「誰からも必要とされていないと感じること」だと定義しました。孤独はストレスです。もちろん何がストレスになるかは人によって違いますが、例えば「教室の端でひとりで折り紙を折っている」状態。単純に、人と話すより、折り紙の方が好きだからひとりでいるのかもしれません。ですが、友達の輪に入れずに寂しく退屈だから折り紙を折っている可能性もあります。後者の場合はストレッサー(ストレスの原因)になり得ます。

そうすると、体調を崩したりして身体が弱くなった際、たまりにたまったストレッサーが溢れ出てきて、心がポキッと折れるときが来ます。それがストレスと呼ばれるものですね。ストレスを感じたとき「自分のことを理解してくれる人がいない」とか「自分は何やってるんだろう?」などと感じることがあります。これが、ここでいう「孤独」ですね。
 
―実際に感じた、吉藤さんの孤独はどんなものだったのでしょう。

 
吉藤
 私が不登校になったときも、世間的には「学校は行かなくてはいけないもの」という認識がありました。私の父が教師をやっているので、周りから「吉藤先生のお子さんは、学校にも行かず一体何をしているのかしら?」と言われるんです。本当に家族には申し訳なく思いました。

学校に行かないのに外出するのは変だから、習い事などにも行けるはずもありません。かと言って、家にいると親のつらそうな顔を見ることになります。次第に「自分はもういなくなった方がいいんじゃないか?」と感じ始めます。気分が落ち込んでいるマイナス思考の状態で、朝起きて、いざ学校に行こうとするとお腹が痛くなります。このとき、猛烈に孤独を感じましたね。
 
学校にも家にも居場所がない、どこにも居場所がない。もう「この世に私の居場所なんて存在しないのではないか?」と感じて、この世からいなくなりたいと思うのですよ。
 
―その状況からどのように立ち直ったのですか?

 
吉藤
 まず、人間は「孤独の悪循環」から抜け出さないといけません。この「孤独の悪循環」とは「人と会わないと、どんどん思考力が低下する」→「会話もないので滑舌が悪くなる」→「人と会話するとショックを受けそう」→「やっぱり引きこもる」みたいなものです。こうなると、どんどん人に会うのが怖くなってしまいます。そこでこの悪循環を何とかして断ち切るために、どこかで自分に自信を付けなければなりません。ですが、いきなり「俺自信あるわぁ!」と鼓舞しても、躁鬱(そううつ)状態になることがあるのであまり長続きしません。無理しちゃダメなんですよ。
 
人間は人間でしか癒せない
 
吉藤
 結局、友達を作ろうと人工知能の研究を始めたものの、人工知能で人間を癒すのは今の技術ではとうてい難しい、という結論に至りました。私自身は、親や先生が必死で支援してくれたお陰で、なんとか学校に戻れるようになりました。もし、「ドラえもん」みたいなロボットに「君は行けるよ! 頑張れ」などと言われたとしても、素直に外に出られたかと思うと、それは違っていただろうと感じています。

人間関係は嫌なこともあるけど、それでも、折り紙を折って誰かに「すごい!」ってほめられた瞬間に、少しだけでも感じられるんですよ。「自分は有用な人間なんじゃないか」って。コミュニティにちゃんと関係を持てる誰かがいて、自分にも何か出来そうなことがある。だから、まずはそのコミュニティに入ることが大切だと考え、僕はそこから立ち直っていきました。
 
―「すごい!」とほめてくれるのがロボットではやはりダメなのですか?

  
吉藤
 ほめてくれるのが、人工知能ではなく人間だと信じられるのなら可能性はあります。なぜ、ほめられて嬉しいかというと、相手が自分と同じ生命体で、「君がやっているのはすごいことなんだよ」と教えてくれる、それが嬉しいのです。
 
―それが「OriHime」が自律ロボットではなく、その向こう側に人がいる遠隔操作の分身ロボットである理由でもあるんですね。

 
吉藤
 そうですね。私がやりたいことは結局、「人間同士のコミュニケーションを支援すること」なんですね。
 
相手がどう感じるかを「演劇」から学ぶ
 
―「人間同士のコミュニケーションを支援したい」という思いが、「OriHime」の原点なんですね。

 
吉藤
 そうです。そこから、ロボティクス(ロボット工学)を学ぼうと思い、早稲田大学に入りました。「コミュニケーションを支援するツール」を作りたい私が、コミュニケーションのことを知らないのはおかしいと考え、色々なサークルに入りました。社交性を身につけられるのかな? と思い、社交ダンス部に入ったりもしました(笑)。

このとき特に興味を持ったのが演劇です。台本通りに演じることで、かっこ良い人格や嫌な人格などが表現できるんです。台本に人への見せ方のヒントがこと細かに記載されているのです。これならコミュニケーション能力があるような見せ方ができると確信しました。
 
―なるほど! 脚本や台本が学びの参考書だったのですね。

 
吉藤
 映画や舞台を見ていると、どういう動きをすると、人がどう感じるかが分かってきます。例えば、パントマイム。この動きって本当に壁があったら、普通はやりませんよね? 実は、人に見せる動きと、本当の動きって違うのですよ。
 
吉藤
 ロボットを作ることでも演劇の世界でも、重要なことって余計な情報を相手に与えないことなのです。例えば、首を激しく左右に振りながら「はい、先生」と言うと、混乱や不信感に繋がるじゃないですか。

実は初号機の「OriHime」は足まで作りました。でもそうするとコミュニケーションにとっては逆に情報量が多すぎてしまうんです。例えば、「はい、先生」と手を挙げるとき、我々は手先と腕を伸ばして、手を挙げますよね。他にもガッツポーズをするとき、友人に手を振るときなど、手を挙げるという動作には色々なシチュエーションのサインが含まれています。一方で、足を挙げながら「はい、先生」という場面は少ないということで、「OriHime」にはつけませんでした。

ロボットがその形である必要性は、周りに人間がいるからだと考えています。つまり、そこに命が宿っているように錯覚させることが重要なんです。
 
―ですが、足がついている初号機も、別の魅力や用途がありそうです。

 
吉藤
 初号機は、横への移動のほか、片足立ちもできるしジャンプもできます。確かに今見ても、なかなか良いじゃんって感じはします(笑)
 
―デザインも吉藤さんが担当されているのですか?

 
吉藤
 全て私がデザインしています。ロボットを作る人間は、「なぜ、この見た目なのか」という解は、絶対に持っておくべきだと思っています。特に、そのロボットが、人間を喜ばせたり、命を感じさせたりすることを意識するのであれば、ロボティクスの物理的な制御工学以上に、演出や演劇から学ぶべきだと思います。

実際、ロボティクスを勉強している人ってロボットのことは考えていても、自分のことはあまり考えていない人が多いように感じます。でも私は、ロボットを制御しようとしている人間が、自分の体も制御できないってちょっと変だなと思うのです。ロボットはただのツールです。私の場合、ロボットは人と人をつなぐツールです。つまり私自身がどう振る舞ったら、相手がどう感じるか、これを知ることがロボットデザインへの手がかりになると考えます。
 
―「OriHime」のデザインで工夫した点はありますか?

 
吉藤
 特に目は工夫しました。はじめは目を丸くしたり、黒目を入れてみたりしたんです。でも、そうすると一気に「OriHime」自身がキャラクター性を持ち始めてしまうんですね。「OriHime」というキャラと、操作している人間のキャラが対立してしまい、どちらが喋っているのかよく分からなくなってしまう。また、黒目が入ると少しのズレがすごく気になるんですね。違う方向を見て話しているとやはり違和感があります。そのような理由で黒目をなくしたデザインにしました。
 
「OriHime」を使って働けることを知ってほしい
 
―実際に使っている方からはどんな反応がありますか?

 
吉藤
 これはALS(筋萎縮性側索硬化症)などの病気で、手足が不自由な方々が、「OriHime」を使い、眼球の動きだけで描いた絵です。
 
―眼球の動きだけで、これほど素敵な絵が描けるんですね。知りませんでした。

 
吉藤
 今の「知らなかった」という反応が実は一番多くて、一番つらいひと言でもあるんです。これだけ啓蒙活動をして、Twitterなどで話題になっていたとしても、「OriHime」でできることを知らない人はまだまだたくさんいる。そして、ALSなどの難病で亡くなった方のご家族に言われるのです。「あと半年はやく知っていれば…」と。

現在、日本だけでALSの患者さんは約1万人います。発症から3年ほどで手足が不自由になり、身体は動かないけれど、意識だけはハッキリしているという状況になることが多いです。家族に「ありがとう」のひと言も言えず、何もしてあげられない。一方で、家族を自分の介護に付きっきりにさせてしまう。「もう自分はいなくなった方がいいのではないか?」そう考え、呼吸器を付けないと生き続けることができない、となったときに、呼吸器をつけないことを選ぶALSの患者さんが日本に約7割います。日本はまだ少ない方で、世界的に見ると死を選ぶ方は9割です。

そんな方々に、先ほどの絵を描いてくれた榊浩行(さかきひろゆき)さんの現状を知ってほしいのです。彼は、ALSで体を動かせない状態ですが、「OriHime eye」の視線入力で、趣味の絵も描けるし、Facebookで友達と会話もできます。また、「OriHime」を使い、現在も職場に出社し、給料を貰っているのですよ。この事例を知ってもらって、「まだ自分にもできることがある!」と少しでも希望につなげてほしいと、強く願っています。
 
―情報の有無が生き方を分ける可能性もあるのですね…逆に、言われてうれしかった反応はありますか?

 
吉藤
 「OriHime」を開発したばかりの頃に使ってくれた、国立成育医療研究センターに入院している男の子の反応がうれしかったです。彼は3カ月ほどひとりぼっちで無菌室の部屋にいました。ご家族は会いに行けるのですが、頑張って通っても毎日1時間程度しか会うことができません。彼にとっては1日のうちの1/24しか家族に会えないのです。

どんどん無気力になっていく彼に、「OriHime」の動かし方を教え、1週間試してもらうことにしました。最初は、ご家族も彼も「変なものが来たよ」という感じで、あまりやる気がなかったんですよね。ですが1週間後、使用延長のお願いをされたんです。最終的には、退院するまでの1ヶ月間、「OriHime」を使い続けてくれました。

そのとき、彼がアンケートに「家族と一緒にテレビを見たのがよかった」と書いてくれました。家族が「OriHime」本体をリビングなどに置いて、彼はモニターごしに「OriHime」を通して家族と「一緒に」過ごす感覚を味わってくれたのだなと思ってうれしくなりました。また、ご家族の方も「OriHimeが動くと、あぁ息子が操作している、と、息子が側にいることを感じられた」と言ってくれました。
 
吉藤
 「OriHime」を作ってから1年半は、「本当に役立つのだろうか?」という不安が結構ありました。ようやく、ロボティクスで存在感を伝達することに成功したなという手応えを感じた瞬間でしたね。
 
仕事を続けられる可能性を研究し続ける
 
―話は変わりますが「働くTECH LAB」って何でしょうか。

 
吉藤
 オリィ研究所では、「OriHime」を通してオフィスに“出勤”していた、昨年亡くなった番田雄太(ばんだゆうた)君をはじめとして、いろいろな仲間たちが社員として働いています。育児や病気などさまざまな理由で働くことができない方が、仕事を続けられる可能性を研究して、企業で活用してもらうためのプロジェクトです。
 
―オリィ研究所ではテレワークをしている方は多いんですか?

 
吉藤
 病気のために出社できない社員はふたりいます。今回、取材の手配でやり取りしてもらった女性もテレワークです。他にも育児中のお母さんも「OriHime」を使ってテレワークで出勤してくれています。
 
―新たに、身長120センチの大きな「OriHime-D」を作った目的も気になります。

  
吉藤
 「肉体労働ができないことによって、テレワークではうまくいかない業務もあるんじゃないか」と考えたからです。先ほどの絵を描いている榊さんなどは、ALSになる前から働いていらっしゃったから、どう人に指示を出せば、どう動いてくれるかということを経験値として知っています。「OriHime」では、こうした知的労働はできますが、いきなり知的労働をやれと言われて、難しいと感じる人もいます。
 
まずは社会を知ることから始めようというとき、最初にとりかかりやすいのが、肉体が必要な労働です。その肉体を作りたいがために、「OriHime-D」を作りました。
 
―肉体が必要なケースもあることに、どのようにして気付いたのですか?

 
吉藤
 番田君が理由です。彼は「OriHime」を作ってきた仲間のひとりで、毎日「OriHime」で出勤してくれていましたが、やることがない瞬間もあるわけです。そのとき「仕事をくれ」と言われても、仕事を見つけるだけでも時間がかかったりします。自分から会話を聞いた中で、課題を見つけてくれた方が、お互いのために良いと思いました。
 
例えば、会議に出席してきてくれて議事録を取ってくれるとか、お客さんを案内してお茶を持ってきてくれるとか、肉体があり、自由に動けるからこそ役割を見出すこともできるのではないかと気が付きました。
 
吉藤
 ここで告知があります。店員が全員「OriHime-D」のカフェを、期間限定10日間、2018年11月26日(月)〜30日(金)、12月3日(月)〜7日(金)に行います。場所は、日本財団ビルの1Fです。アニメ作品「イヴの時間」とコラボさせてもらって、その劇中で舞台となるカフェの雰囲気を作ります。

「OriHime-D」を動かしているのは、さまざまな事情で外に出ることができない人たちです。ネットで募集したところ、かなり多くの反響がありました。今回、1日に24席、10日で240席しかテーブルをご用意できないので、席の予約もクラウドファンディングで募りました。考えに共感してくださった方に支援いただくと、リターンとして、来店していただく「お客様」という役割で実験に参加できるという形です。(編注※11月13日現在、すでにクラウドファンディングは成功し、受付を終了しています)もちろんカフェの周りからはどなたでも自由に見学することが可能ですから、ぜひ見に来てほしいと思います。
 
―ぜひ、お伺いします! 最後に、「OriHime」が普及したら、100年後にどんな未来が待っているか、聞かせていただけますか?

 
吉藤
 「適材適所時代」です。人手が足りていないところが発見されると、そこに対してそれぞれ得意な分野の人たちが配属されて、みんなが最適な役割に巡り合っている社会です。全ての人が自己有用感・自己肯定感を配分されている時代ですね。
 
吉藤オリィ 
株式会社オリィ研究所代表取締役所長。分身ロボット「OriHime」や視線入力装置「OriHime-eye」を開発。小学校5年生から約3年半引きこもり、不登校に。奈良県で折り紙を教える会の会長を務めている。折り紙から「オリィ」というあだ名に。2012年、青年版国民栄誉賞と言われる「人間力大賞」受賞。2016年にはフォーブス誌のアジアを代表する30歳未満の若者を選出する「30 UNDER 30 ASIA」に選ばれた。
ロボスタ×ライブドアニュース「次世代ロボットの夢」特集について
 
この特集では、ロボット情報を専門に扱うウェブマガジン「ロボスタ」とライブドアニュースが手を組み、新進気鋭のロボット開発者5組に「10年後や100年後、ロボットのいる世界はどうなっているのか?」を取材します。

聞き手はロボスタの若手ライター、里見優衣さん。
里見優衣(右)/「ロボット女子」を名乗るライター。「テクノロジーをもっと分かりやすく」をモットーにライター活動中。今年で3年目。スタートアップでPalmiというロボットの広報担当がきっかけでロボットに目覚める。その後LIGという会社でドローンをジャンプさせ、スカートめくりの要領でパンツを見るなどして迷走。危うく「パンツ女子」になる羽目に。最近の日課はaiboの散歩。
ロボット好き代表として、吉藤オリィさんに素朴な疑問をぶつけてくれました。

吉藤さん、ありがとうございました! 次回の更新にもご期待ください。
制作/ロボスタ
企画/ライブドアニュース
デザイン/桜庭侑紀
ロボスタ×ライブドアニュース「次世代ロボットの夢」特集