リゾート建築の巨匠、ジェフリー・バワ熱が止まらない!
旅行先としての人気沸騰から数年。今なお面白い国、スリランカ。いや、一周まわってますます面白さを増している!?
ということで、今回の特集では、5人のスリランカ好きが、“次にスリランカに行ったらやりたい3つのこと”をテーマに、その魅力を熱弁。
ということで、今回の特集では、5人のスリランカ好きが、“次にスリランカに行ったらやりたい3つのこと”をテーマに、その魅力を熱弁。
第1回は、スリランカを代表する建築家“ジェフリー・バワ”がテーマ。年末年始の休みには、スリランカ旅行をぜひ候補に!
案内人
田中 亜衣(たなか・あい)
田中 亜衣(たなか・あい)
【スリランカでしたいこと1】
ヘリタンス・カンダラマで映画の主人公気分を極める
ヘリタンス・カンダラマで映画の主人公気分を極める
ジャングルに眠る巨大遺跡のような趣も… ©Heritance Kandalama
そもそも、私がスリランカを訪れた理由は、スリランカを代表するリゾートホテル「ヘリタンス・カンダラマ」に泊まりたかったから。初めてその姿を建築誌で見たときは、鳥肌ものだった。雄大なジャングルに潜むように建つホテルは、まるでジブリ映画に出てきそうな佇まい。この出合いが、リゾート建築の巨匠、ジェフリー・バワを知るきっかけにもなったのだ。
ジェフリー・バワは、スリランカを代表する数々のホテルや国会議事堂、寺院、大学まで、多くの作品を世に残した伝説の建築家。南国の大自然と見事に共生した建築様式は「トロピカル・モダニズム」と呼ばれ、アマンリゾーツの創業者であるエイドリアン・ゼッカ氏も影響を受けたそう。2003年に亡くなってからも、スリランカ旅行の目的に「バワ建築巡り」を挙げる人は多く、唯一無二のバワ建築に世界中の人が魅了され続けている。
レイクサイドのインフィニティプール。実はインフィニティプールの生みの親はジェフリー・バワなのだ。
スリランカの豊かな自然と一体化したリゾートは、バワ建築の真骨頂。その最たるものが、バワリゾートでは唯一内陸に建設された「ヘリタンス・カンダラマ」だ。スリランカを代表する名建築だけあって、「もう泊まったよ〜」という声も少なくないはず。
岩と一体となったホテルのロビー。
建物の最上階はかろうじて姿を見せている。これも数年たったら蔦で覆われそう。
それでも、このホテルは2回目以降の滞在にこそ、魅力があるのではないかと思っている。極端なことを言えば、1回目の滞在は“下見”という位置付けでもいいくらい。
なぜか。
それは、「ヘリタンス・カンダラマ」では、一日中ドラマティックなことが起こるから。そして、それを1回の滞在で味わい尽くすのは至難の技。(長期滞在するなら別として…)
なぜか。
それは、「ヘリタンス・カンダラマ」では、一日中ドラマティックなことが起こるから。そして、それを1回の滞在で味わい尽くすのは至難の技。(長期滞在するなら別として…)
朝起きてカーテンを開けるとこの眺めが。
私の場合、初回の訪問では「え〜! そんな楽しみ方があったの〜?」ということが多々。部屋の前の廊下の何気ないところに置いてあるベンチ。実はサンセット観賞の特等席だった。そうとも知らず出掛けてしまっていたり……。リゾートで暮らしている象にまたがってカンダラマ湖を散策しながら、建物の全貌(端から端まで全長約1km!)を眺めるのもできなかったことのひとつ。最終日にリゾートをくまなく歩いたつもりだけど、なんだか肩に力が入っちゃって、心の底から楽しめたのか…。
バワのお気に入りの場所。世界遺産・シーギリヤロックを望む。
一方で、初めてにしては大満足な出来事も。
早朝、部屋から廊下に出ると目の前を数え切れないほどのツバメが颯爽と飛び交っているではないか! 鳥の声が響く廊下に立ち、飛び回るツバメに囲まれていると、気分は森に暮らすプリンセス!? さっきまでジブリって言ってたのに、たちまちディズニーの世界、こんにちは。
夕方に、プールサイドのバーで一杯飲んでいると、おもむろに目の前の岩山に登る老人が……。何やら細い竹の筒のようなものを握りしめている。と、岩山の中腹で腰を下ろし始まったのは、伝統楽器であろう笛の演奏。眼前には暮れなずむ雄大な自然。心に響く笛の音。なんて贅沢な時間。
早朝、部屋から廊下に出ると目の前を数え切れないほどのツバメが颯爽と飛び交っているではないか! 鳥の声が響く廊下に立ち、飛び回るツバメに囲まれていると、気分は森に暮らすプリンセス!? さっきまでジブリって言ってたのに、たちまちディズニーの世界、こんにちは。
夕方に、プールサイドのバーで一杯飲んでいると、おもむろに目の前の岩山に登る老人が……。何やら細い竹の筒のようなものを握りしめている。と、岩山の中腹で腰を下ろし始まったのは、伝統楽器であろう笛の演奏。眼前には暮れなずむ雄大な自然。心に響く笛の音。なんて贅沢な時間。
余計なBGMのないリゾートに響く、美しい笛の音。
そんなこんなで、ヘリタンス・カンダラマへの再訪は、“2周目のスリランカでやりたいこと”に間違いないのだ。
樹木の成長と共にその姿を変えていく外観。
©Heritance Kandalama
©Heritance Kandalama
【スリランカでしたいこと2】
ジェフリー・バワの自邸に泊まる
ジェフリー・バワの自邸に泊まる
バワの生前の暮らしをダイレクトに感じられる場所。それはバワが40年間住んでいた自邸。コロンボの閑静な住宅街にある邸宅は「Number(ナンバー)11」と呼ばれていて、予約をすれば旅行者でも気軽に見学することができる。
ナンバー11の入口。
驚くのは、15年前にバワが逝去してからも生前と同じく、馴染みのアーティストの作品がしつらえられ、座っていた椅子が無造作に置かれ、寝室のベッドまでもがそのままに置かれていること。なんとなく、人が暮らし続けているような温もりみたいなものを感じるのだ。
リビングルーム。家具や調度品も、生前のまま残されている。
光と風、水が調和した自然美溢れる空間。
もともと4軒の小さな家を改築して1軒の邸宅にしたバワの自邸では、至るところにバワリゾートの原型を見つけることができる。屋外と屋内がシームレスにつながっていることで心地よい風が抜ける造りや、光の入り方でさまざまな表情を魅せる空間。足を進めるたびに感動の連続。
至るところにバワが集めた調度品や、リゾート家具のプロトタイプが並ぶ。
愛車のロールス・ロイスも。
そんな、バワの美意識の全てが詰まった自邸。実は、宿泊できるのだ!(どうりで人の温もりが(笑))1回に付き一組限定で、2つのゲストルームとリビングルーム、共通のバスルーム、涼み廊下、ルーフテラスを利用することができる……。ってほとんど1棟まるごと貸し切り状態!
バワの自邸で一晩過ごしてどっぷり彼の世界に浸れば、すっかりジェフリー・バワ通に。
バワの自邸で一晩過ごしてどっぷり彼の世界に浸れば、すっかりジェフリー・バワ通に。
【スリランカでしたいこと3】
ジェフリー・バワの旧オフィスを訪ねる
ジェフリー・バワの旧オフィスを訪ねる
自邸探訪の後は、バワがオフィスとして利用していた建物へ。現在は「パラダイス・ロード・ザ・ギャラリー・カフェ」として営業されている。
美しいコリドーは一見の価値あり。
オフィスといっても、トロピカル・モダニズムは健在。エントランスからは、光と水の調和が美しいコリドー(回廊)が続き、中庭には蒼々とした植栽が葉を伸ばし、テラコッタの床とのコントラストが絶妙。テラス席で食事を楽しみながら、当時の様子に思いを馳せるのも一興です。
現在は、コロンボでも人気のカフェに。
編集・文/田中亜衣
イラスト/篠塚朋子
イラスト/篠塚朋子