高杉真宙、忙しさの中で変わり続けて得た“自信”――「仕事が楽しい!」

ひと握りの者だけに訪れる、ブレイクと言われる現象の真ん中で、高杉真宙は変わり続けるものと、変わることのないものを静かに見つめる。2017年だけで6本の映画が公開。葉山奨之とのW主演ドラマ『セトウツミ』(テレビ東京ほか)もいよいよ放送開始。担当マネジャー曰く「年末までほぼ休みがない状態」。疲れていないわけがない。作品ごとに向き合うべき課題も山ほどある。それでも、21歳は力強く笑う。「自分でも不思議なんですけど、忙しくなるほど、この仕事がどんどん楽しくなってくるんです」――。

撮影/平岩 享 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.
スタイリング/石橋修一 ヘアメイク/堤 紗也香
衣装協力/ニット¥39,000、カットソー¥8,900、パンツ¥22,000(イロコイ/イロコイヘッドショップ:tel.03-3791-5033)、シューズ¥21,000(Amb/ハイブリッジインターナショナル:tel.03-3486-8847)、その他(スタイリスト私物)

見どころである関西弁の会話劇。抱くのは…不安?

めまぐるしく変わり続ける街・東京。その中心で、100年以上にわたり、変わることなく旅立つ人を見送り、夢を抱えてこの街に来た人々を迎えてきた東京駅で、今回撮影させていただきました。
地方のロケに行くときに東京駅を使うことはあるんですけど、じつは駅前の広場に来るのは初めてなんです。TVで出てきても「改札はいつも通るけど、(駅前の広場は)どこなんだろう?」って思ってました。やっと東京に降り立ったって感覚ですね(笑)。東京タワーを見たとき以来の感動ですね!
東京暮らしもだいぶ長くなりましたね。
もう人生の3分の1くらいかな? この先いずれ、東京にいる年月のほうが長くなっていくんですね。このあいだ、「もう東京人でしょ?」って言われてハッとしたんですよね。もちろん、実家は大好きだけど、東京ももう自分にとって落ち着く場所になりつつあるんだなって。
『セトウツミ』は此元和津也さんの人気漫画を原作に、葉山奨之さん演じる瀬戸小吉と高杉さん演じる内海 想というふたりの高校生が、放課後に河川敷で、ただ“しゃべるだけ”というコミカルな作品ですね。ここまで撮影されて、いかがですか?
正直、不安が大きいですね。それは撮影に入る前からわかっていたことではあるんですが、関西弁での演技がやはりすごく大変です。僕は決して器用なほうではないので、一度にふたつ、みっつのことをできるタイプではないんですが…。
まず関西弁の習得があって…。
そのうえでセリフを覚えて、内海として生きていなくてはいけない。どうしても関西弁を気にしすぎて、それができているのか不安で。
単に関西弁を話す主人公というだけでなく、瀬戸と内海の会話が物語の中心、いや会話しかないと言っても過言ではないです。難しいでしょうが、かなり鍛えられそうな現場ですね。
そうなんです。それはすごくうれしいです。会話の掛け合いだけで見せるということは、僕自身、ずっと必要だと思っていた部分、自分が持っていない、身に着けたいと感じていた部分でもあって。
掛け合いのリズムやテンポで、見る人を引き込みたい?
どうやったらそれが身に着くんだろう? って、ずっと試行錯誤してきた部分なんです。『セトウツミ』はまさに、無駄なものを削って会話だけで魅了する作品。しっかりとそこを見せられるようにと頑張っています!
何度も同じシーンを繰り返し、完成度を高めていく舞台と違って、連ドラは日々、撮影が進んでいくので、その場でアウトプットしていかなくてはいけないですね。
まさに、吸収しては吐き出しての繰り返しです。“間”と“テンポ”を意識して、採点付きのカラオケを精密にやっているような感覚になりますけど(苦笑)、かといって、そこにとらわれすぎても面白くはならないですし。でも、テンポがよすぎて漫才になってもダメなんですよ。
ステージでボケたり、どついたりしてお客さんを笑わせるわけじゃなく、あくまでも日常の会話ですからね。
そうなんです。そうなると『セトウツミ』じゃないんです。でも、ついテンポよくいきたくなっちゃうんですけどね(苦笑)。やっと最近、そういう部分を意識しながらできるようになってきたのかな…?
お調子者で“ボケ”の瀬戸に対し、内海はクールな“ツッコミ”ですね。
表情もそこまで動かすことなく冷静に突っ込むので、内海をどんなふうに人としてナチュラルに動かしたらいいかと考えつつ。

池松壮亮&菅田将暉の映画版『セトウツミ』を見て…。

ふたりでの会話ですから、言うまでもなく高杉さんだけでなく、瀬戸役の葉山さんの存在も重要になってきます。葉山さんとは初共演ですか?
それが、僕らもお互いにずっと「はじめまして」だと思ってたんですよ。でも、ある取材で記者さんから「おふたりは映画『渇き。』で共演されていますけど」と言われて「え?」って(笑)。
『渇き。』で高杉さんは、ヒロインの加奈子(小松菜奈)を取り巻く不良たちのリーダー・松永を演じてますね。葉山さんは…。
僕が演じた松永が殺されるとき、その周りにいるうちのひとりで金髪の男です。だから、同じシーンでわりとガッツリと共演してたんですけど、お互いにそのことを認知してなくて…(苦笑)。
どちらかが覚えてて、どちらかが覚えてなかったら気まずいですけど…。
ふたりとも覚えてなかった。今回、お会いしてお互いに、普通に「はじめまして」って挨拶してました(笑)。
テイストのまったく異なる作品で再会を果たしたわけですね。ご一緒されてみての印象は?
奨之くんのことを僕は、どちらかというと内海っぽい印象で見てたんですよね。それこそ瀬戸だけじゃなく、内海も演じられるんじゃないかなって。でも会ってみたら、瀬戸っぽさが強くてびっくりでした。“陰”のタイプかと思いきや、ガッチリ“陽”で、明るく現場を引っ張ってくれます。奨之くんが瀬戸でよかったなってすごく思います。
ちなみに『セトウツミ』は昨年、映画も公開されていて、そちらでは内海を池松壮亮さん、瀬戸を菅田将暉さんが演じられています。
今回のドラマの話をいただくよりも以前に、最初に映画化のニュースを聞いたとき、僕は原作は読んでいたんですが「このふたりでやっているのを見てみたい!」って思った記憶があります。
以前から、インタビューさせていただくたびに、ドラマ『35歳の高校生』(日本テレビ系)で共演され、その後、スターへの階段を駆け上がっていった菅田さんの存在の大きさについては、お話されていましたね。
菅田さんはもちろん、池松さんも素晴らしい役者さんですし、自分が主演させていただくとなると、おふたりの存在はどうしても意識しちゃいます。あのふたりで映画化されたというのは、プレッシャーでもあるし、「頑張らなきゃ!」というエンジンの“燃料”にもなってますね。
ということは、ドラマ主演が決まった後で、あえて映画をご覧になったんですか?
見ました! いやぁ、面白かったです。自分が内海をやってるからこそ、感じる部分もたくさんありますね。ここをこんなふうに自然に、面白く見せられるのかって。もちろん、「意識しない」「あえて見ない」という選択肢もあると思うんです。
無意識に影響されるのを嫌って、そうされる方々も多いかと思います。
でも、自分はそこを意識したうえでやりたかったし、意識せずにいられなかったです。
そういう意味で、今回のドラマ版ならではの魅力、葉山さんとのコンビだからこその面白さはどんなところにあると思いますか?
映画を「意識している」と言いましたし、僕だけでなくスタッフ、キャストみんな「別物を作ってやる」という気持ちがあるのはたしかなんですけど、違う人間が演じている時点で、絶対に変わってくるものなんですよね。無理して「変えよう」と意識しなくていいのかなと。僕と奨之くんの“間”と“テンポ”に、瀬戸と内海を感じていただければと。

「若い子にはどんな話を振ったらいいのか」で悩む!?

瀬戸と内海以外のキャラクターも魅力的ですね。
映画版では出てこなかったキャラクターも含めて、原作の登場人物がほとんど出てきます。個性的なキャラがいっぱい…というか、個性的なキャラしかいない(笑)。僕、本番中に笑っちゃうことっていままでなかったんですよ。
共演者の芝居に?
というか、本番で笑うってなしでしょ。シチュエーションとしても、仕事をしているという意味でも。でも今回、つい笑っちゃうんですよ。ダメですね(苦笑)。キャラが強いって、それだけで罪なことなんだなって思う毎日です。
瀬戸が思いを寄せる、ヒロインの樫村一期(かしむら・いちご)(清原果耶)も、単なる美女ではなく、かなり面白いキャラですよね?
まともそうに見えて変ですよね。相当おかしいでしょ!(笑) 個人的に一期と、もうひとりの女の子、ハツ美(片山友希)の会話がすっごい楽しみです。 個性的な人たちが出てくるたびに「瀬戸&内海、頑張ろう!」って自分を奮い立たせてます(笑)。
一期を演じている清原さんとは、ドコモのCMで一緒のシーンはないながらも、共演されているんですよね。CMでは、高杉さんは高橋一生さんの青年時代を演じていて、清原さんは娘役ですが、今回は同級生です。
不思議というか面白いですよね、そういうの。というか、清原さん自身はリアル10代の15歳なんですよ。15歳の子が自分と同級生の役って…大丈夫かな? という感じで、遠くから見つめながら「本当に若いんだなぁ…」と(笑)。
高杉さんもまぎれもなく“若手俳優”ですが(笑)。
21歳って意外と大人なんだなって。こうやって人は、大人になっていくのか…という思いで現場にいます…。「童心を忘れない」という気持ちを大切にして、ここまでやってきたつもりだけど、こういう積み重ねでちょっとずつ、忘れていくものなのかもしれないなって(笑)。学年で5つ違うってことは、僕が小6のときに小学校入学ですからね…(笑)。
今回、連続ドラマ主演という点に関しては、どのような意識で臨んでいらっしゃいますか?
“主演”ということに関しては、これまでの舞台や映画でもそうなんですけど、すごく強い意識を持って現場にいるというわけではなく。いや、もちろんみんなを引っ張るということがしっかりできればいいんですが…。
ご自身でまだその域にまでは達していない…?
僕がいままで見てきた主演俳優のみなさんは、本当に素敵な方ばかりで、それこそ堂々と現場にいて、みんなを引っ張っていくカッコいい人たちが多かったです。やはり、そういう存在に僕が急になれるかというと、それは高望みだと思います。だからこそ、当たり前のことをして現場にいようと。
無理をして“主演”、“座長”としてふるまうのではなく。
挨拶から始まって、当たり前のことを積み重ねて、現場の空気を作っていければいいなと思っています。もちろん、いつかは自分がこれまで見てきた先輩方のような主演を務められるようにと意識している部分もあります。
少し話が戻りますが、それこそ主演として、年下の清原さんとのコミュニケーションなどは…?
そうなんですよ(笑)。
すみません、何が「そうなんですよ」ですか?(笑)
最初にどう話しかけたらいいのか? 若い子にどんな話を振ったら会話が弾むんだろう? とか、そんなことを考える年齢に自分もなったんだなぁ…って(笑)。
「いまの若い子にはどんな話題を…」という思考自体が“オジサン”ですよ!(笑)
いや、本当そうなんですよ(苦笑)。「若い子たちと何を話したら…」とおっしゃっていた先輩方の気持ちはこういうものだったのかと。5歳違うと、見てきたものがけっこう違うんで「誰と仲がいいの?」と聞いて、答えが返ってきてもわからなそうで…。奨之くんが話してるのを横で聞きつつ、微妙に混ざろうと…(笑)。
撮影が進んで、距離は縮まりましたか?
いまはもう、かなり話しますよ! 清原さんも奨之くんと同じく大阪出身なので、よく関西弁を教えてもらったりしています。
この現場に限らず、年下の共演俳優さんが以前よりも増えてきたかと思います。以前は現場で最年少ということが多かったでしょうが…。
リアルに実感してますね。スタッフさんでも以前は年上の方ばかりでしたが、今回の現場は同い年の方がいて。なんだかんだでここまで、いろんな作品に参加させてもらって、年齢を重ねてきたんだなと感じてます。
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