三森すずこ、“自分を演出しない”姿が周りを自然と笑顔にさせる!

三森すずこに会うと笑顔になる。この日、取材スタッフが用意していたカップケーキを見るなり、「わー、かわいい! 私、今日は甘いものを食べないって決めてたんだけど…食べちゃお!」とパクリ。「おいしー!」の言葉と愛らしい表情に、その場にいた全員から笑みがこぼれる。そんな彼女の8thシングルのタイトルは『エガオノキミヘ』。周りの笑顔を引き出す天才・三森すずこの魅力の原点は、意外にも女子校にあった――!?

撮影/川野結李歌 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.

「三森すずこが映像付きで走る」アドトラックに感動!

前回のインタビューでお話をうかがいました、7thシングル『サキワフハナ』ですが、オリコンシングルチャートで、自己最高ポイントを獲得し、7位にランクインしたということで、周りの方の反応などはいかがでしたか?
劇場版アニメ『結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章-』の主題歌だったというのもあって、みんなに浸透するのがすごく早かった印象ですね。でも、最高記録とか、7位とかっていうのをあんまり実感していなかったんですけど……個人的な喜びがあって。
個人的な喜びですか?
MVが流れるアドトラックが街を走って、すごい嬉しかったんです(笑)。自分では一度も見られなかったんですけど、街を歩いていた先輩から、「三森すずこが映像付きで走って行ったよ」ってLINEが来ました(笑)。
映像付きは、街でも目立ちますよね。
映像付きって、嬉しいですよね。MVを流しながら走っているほかのアーティストさんのアドトラックを、「いいなー」って思いながら見てたから、とても嬉しかったです。
10月11日にリリースされる、8thシングル『エガオノキミヘ』ですが、こちらは10月から放送されているテレビアニメ版『結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章-』のオープニングテーマ曲ということで、2作連続テーマ曲を担当されています。
私自身、鷲尾須美を演じているのもあって、すごく特別感のある作品なので……キャラクターソングではなく“三森すずこ”として主題歌を歌わせていただけるっていうのは、この作品に関わるメンバーとして、仲間として、とても「ありがたいな」というか、「嬉しいな」っていう気持ちですね。
前回はオリエンタルな曲調でしたが、今回はどんな曲になりましたか?
そうですね、前回は全体的にオリエンタルで、ちょっと強さもあって……大きな世界観で描かれた曲でしたが、今回はまたガラッと雰囲気が変わっています。もちろん、『結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章-』の世界観は作曲を担当された蔦谷(好位置)さんにお伝えして作っていただきましたが、「大きなこの世界」というよりは、「私とあなた」みたいな、前回とはまた全然違う雰囲気の曲だなあと、新鮮でしたね。
作詞は前回と同じく、中村彼方さんが担当されたということですが。
曲の世界観は蔦谷さんに、作詞は『結城友奈は勇者である』の世界観を熟知されている彼方さんにお任せして。そうやっておふたりにお任せして作っていただいたので、プレゼントをいただいたような感じですね。
タイトルの『エガオノキミヘ』は、どこから出てきたのでしょうか?
前回は「幸せをもたらす花」という意味で、『サキワフハナ』ってカタカナ表記にしたんですけど、今回も……候補はいくつかあった中で、「またカタカナでいこう」みたいな(笑)、みんなで話し合った結果、そうなりましたね。
『サキワフハナ』と『エガオノキミヘ』は、対のようなイメージもあります。
同じ作品のテーマ曲なので、前回からつながっている感じを出したかったんですよね。ただ……今までは「花」など、自然のものに対しての畏(おそ)れや願いでしたが、今回は人と人とのあいだのお話なんです。自分が大切に思っている相手に伝えたい思い。作品のストーリーで言うと、三ノ輪 銀というキャラクターに対しての思いなので。
なるほど。「笑顔」はそこからきているんですね。
そうなんです。銀ちゃんがいつも笑顔で、元気いっぱいな女の子だったので、『エガオノキミヘ』というのは、銀ちゃんに対してのタイトルという感じなんですよね。

歌詞の中に散りばめられた、作品へのオマージュ

歌ってみて、いかがでしたか?
すごく……切なかったですね。銀ちゃんが今後どういった運命をたどるのか、すべて知っているのでそう思うのかもしれませんが。歌っていると、どうしても気持ちが暗くなっちゃって。でも、「暗い」というよりは、「ノスタルジック」な感じに持っていけたらなあって思ったんですよね。銀ちゃんと一緒に過ごした思い出などの、素敵な記憶がキラキラとよみがえるようなイメージで、ノスタルジックな雰囲気が出せたらいいなと思いました。
歌い出しも印象的でした。
いまだかつてない、優しい感じで入っています(笑)。優しさがあふれている感じですね。
とても細く、繊細に入っていますよね。
そうですね。頭のところはとくに音数も少ないので、何回も挑戦しました。全部録り終わってから、もうちょっと強く歌うバージョンとか、か細いバージョンとか、頭サビだけいろいろ試しましたが、一番切ない音色のものをチョイスして、初めから切なさ全開でいってみようと思いました。
とくにお気に入りの部分はありますか?
じつはですね、歌詞の中に同級生3人(鷲尾須美、乃木園子、三ノ輪 銀)の名前が入っているんです。「片隅」、「銀色に輝いた」、「その頃も今もそう」って……。みんなの名前がかくれんぼしていて、すごいかわいいなって思いました。
あ、本当だ! 入ってますね。
ふふふ。あと、劇場版『結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章-』の副題になっていた、「たましい」、「ともだち」、「やくそく」が歌詞の中に、全部入っているんです。そういったところも楽しんでもらえるんじゃないかなって思います。
それは、彼方さんのアイデアだったのでしょうか?
そうです。彼方さんがすごくこだわって入れてくださって。
三森さんにとってはサプライズ?
そうですね、知らなくて。歌詞を初めて手にしたときに「あれ? もしかして?」って思いました。スゴいなあって。あと、個人的には「春風 花が踊る」から「綿雪 すくい上げた」までのこの、春夏秋冬……大好きな銀ちゃんのことをずっと思って過ごしている年月、季節の移り変わりの表現がすごく美しくて、お気に入りです。
彼方さんらしい繊細な表現で、切なさが増しますね。
彼方さんが収録当日までこだわって、何回も変えていらっしゃったんですが……歌詞が生まれる瞬間に立ち会えたなあって。レコーディング中にブースの外から、「そこはやっぱり“綿雪 すくい上げた”にしてください」とかっていうやりとりがあって。彼方さんのその、女性らしい、すごく繊細な世界観の歌詞が私は大好きで、素敵だなあって思います。
彼方さんがレコーディングに立ち会われたんですね。
そうなんです! だから、「街路樹 赤に染まる」とかも、当日ふいに生まれた言葉だったりするんですよ。
季節の言葉が入っていなくても、情景で春夏秋冬を表現しているところが素敵ですね。
そう! 間接的な言葉だからこそ、情景が思い浮かびやすいというか……どんどん時が経っていく感じがして、切なさが倍増しましたね。オケ(※ボーカル以外の伴奏部分)も“蔦谷さん節”で、キラキラしていて、いろんな音が響いているのがすごく素敵でした。

ロケ地の学校に懐かしさを感じて…ジャケット撮影秘話

カップリング『Colorful Girl』はどんな曲になっているのでしょうか?
PandaBoYさんにお願いしたんですが、『エガオノキミヘ』とはガラッとタイプの違う、ものすごく盛り上がりそうな楽曲になりました。「ハーモニーをたくさん重ねて、厚みのある、だけどポップな曲にしたいです」って、無理なお願いをしたのですが(笑)……PandaBoYさんの中では、「PandaBoYさんにお願いしたいです」って言った瞬間にもう、やりたいイメージというか、テーマがあったんですよね。
どんなテーマですか?
私のステージを観てくださったときに、いろんな表情があって、「カラフルガールだな」って思ったそうで。それをなんとか歌で表現したいということで、今回、すごくいろんな色が出てくるんです。曲の途中で、みんなでMIMORIN BRADE(サイリウム)の色を変える場面があって……ボタンをポチポチ押していくと、順番に色が変わっていくんです。その指示を私が出すっていうくだりがあって、それは今から楽しみにしています。
ライブで歌うと、さらに楽しそうですね。
うんうん、楽しみです! 12色出てきますが……「グリーン!」とか、「ピンク!」とか言っていって、最後のほうは、ライトグリーン、ライトブルー、ライトピンクっていう、絶妙な色の違いっていう(笑)。ふふふ。
前作でも、カップリング曲には三森さんが実際に踊ったタップダンスの音を入れていましたが……表題曲では作品の世界観がしっかりと描かれて、カップリング曲では三森さんの色がすごく出ているというのは、パッケージとしてバランスがとても良いなあと思います。
たしかに。表題曲のほうは、描かれた世界観の中での人物を演じるイメージで歌っていますが、カップリングのほうは素の状態で、お芝居の本編とアンコールみたいな感じですね。メリハリがあって楽しいんですけど、同じ人物が歌ってるって思われないんじゃないか……落差があって(笑)。
「お芝居の本編とアンコールみたい」っていう表現は、すごく三森さんらしいと思います。そういうイメージで、三森さんはいろんなものを見ているのかなって。
そうですね(笑)。私、歌に関してはいつも、そういうふうにイメージしてるかなあ……。
CDのジャケット写真は、学校で撮影されたということですが。
彼方さんに『エガオノキミヘ』の歌詞を説明していただいたときに、「“懐かしい友達に会いに行く”みたいな感じの曲なので、懐かしい場所に行ったり、懐かしい人に会ったときのような、嬉しいんだけど切ない、ノスタルジックな気持ちを大事に歌ってください」って言われて。まさにそれを表現したジャケットになっているんですよね。
なるほど。
制服じゃない私服の私…大人になった私が、懐かしの校舎に戻ってきて、窓の外を見ていたり、「懐かしいなあ」って、思い出に浸っているようなジャケットになっています。
学校でのロケはいかがでしたか?
すごく……新鮮。久しく、学校に行ってなかったので(笑)、「学校って、こんな感じだったよなあ」って思いました。とっても暑い日に撮影しましたが、秋っぽい衣装で、秋色全開でした。教室の中に風が吹いてくるイメージだったので、風をいっぱい吹かせたんですよ……目をシュパシュパさせながら。乾燥との戦いでしたね(笑)。
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