社内政治がテーマ、と言われると心が熱くなる企業小説を思い浮かべる方もいるかもしれないが、そういう作品ではない。不気味さと奇妙なゆるさとが共存している小説だ、それでいて、無意識な部分を刺激するような鋭さがある。主人公が勤務する社之杜社は、二十年前に現在の場所に移転し、地元企業である野乃花社を吸収合