光に対して闇があるように、世の中にも“表と裏”があります。
 大半の人は“表の世界”に生きますが、ふとした時に夜の繁華街で、人気のない路地裏で“裏の世界”の入口を垣間見ることも。
 メディアで詳しく取り上げられることはほとんどなく、実態がわかりにくいこの世界に深く潜入し、そこで生きる人々の姿を明かしているのが『笑う裏社会』(島田文昭/著、フォレスト出版/刊)です。

■深夜のハシゴに注意!抜群にヒドイぼったくりバー
 夜も更けた時間帯に繁華街を歩いていて、客引きに「お兄さん、今日は飲み?遊び?」と声をかけられた経験がある人は多いはず。こんな時に気をつけなければならないのが「ボッタクリ」です。
 著者の島田さんが取材した人の中に、被害者から「抜群にヒドイ」と評判のボッタクリバーで店長を務める人物がいるそう。
 その人物によると、この店の手口は、まずテーブルについた女の子が「私、占いに凝ってるんだ。生年月日教えてー」「電話番号教えて!」と客から個人情報を聞き出した後にスピリタスで割ったサワーで泥酔させ、財布からカードを抜いてATMで有り金を引き出します。そして、眠り込んでいる客をタクシーに押し込んで、取材当時都内にあった店から「木更津までお願いね」といって送り出す、というもの。
 目が覚める頃には一文なしで木更津にいるという寸法で、もはやボッタクリどころではないレベルの犯罪行為です。これは確かにヒドイ…。
 そして、カードの暗証番号に生年月日や個人情報にまつわる数字を使うのは絶対にやめましょう。

■理不尽で凶暴な「ヤカラ」
 関東ではあまり馴染みのない言葉ですが、おもに関西圏で使われるスラングに「ヤカラ」というものがあります。
 これは、理不尽でたちの悪い振る舞いをする人を指す言葉なのですが、彼らの凶暴さは想像をはるかに超えています。
 10年以上前、東京の裏カジノが何店舗も荒らされたことがありました。島田さんによると、その荒らしとは、とにかく大金を賭け続けて、勝てばそれでよし。負けると態度を豹変させ、ディーラーを拉致するというものでした。
 そして人気のない山に連れていき、痛めつけて「私がイカサマをしてお客様のお金を巻き上げました」と自供(?)させます。その音声をカジノの後ろにいるヤクザ組織へ持ちこみ、このケジメはどうつけるのかとねじ込むのです。
 もちろんとんでもない行為なのですが、度胸だけは半端ではないと妙に関心してしまったりしなかったり。

 ここで取り上げたのは本書のごく一部。一読すればもっと深くて刺激的で、怖いけど関心を禁じきれない裏社会の実像が見えてくるはず。
 でも、やっぱりこういう世界とは実際に関わりたくはないですね。
(新刊JP編集部)