■ 第27節

5勝12敗位9分けで15位。降格圏となる16位のヴィッセル神戸との差が「1」のみと残留争いの真っただ中のFC東京がホームの味の素スタジアムでアルビレックス新潟と対戦。新潟は26節で首位の名古屋グランパスに4対1と完勝した。MFマルシオ・リシャルデスが2ゴール、MF三門が1ゴール1アシストの活躍を見せた。ACL圏内を目指して勝ち続けるしかない状況である。

ホームのFC東京は<4-2-2-2>。GK権田。DF椋原、森重、今野、中村北。MF徳永、梶山、石川、羽生。FW平山、大黒。DFキム・ヨングンが外れてDF今野とDF森重のセンターバックコンビ。MF梶山とMF羽生がスタメンに復帰し、MFリカルジーニョがベンチスタート。そして大怪我から回復してきたロンドン世代のMF米本が待望のベンチ入りを果たした。

対するアウェーの新潟は<4-2-3-1>。GK東口。DF西、千葉、永田、酒井。MF三門、本間、マルシオ・リシャルデス、ミシェウ、曹永哲。FW大島。26節の名古屋グランパス戦は出場停止だった韓国代表のFW曹永哲が復帰。MF三門がボランチに下がって、MF小林慶がベンチスタート。

■ 悔やまれるドロー

試合は序盤からFC東京が右サイドMF石川の突破から何度もいい形を作る。しかし、FW大黒が決定的なヘディングシュートを外すなど、先制点を奪えない。一方の新潟はMFミシェウにボールが集まるがMFミシェウが不調。ミスを連発する。

嫌な流れだったが、新潟は前半終了間際にゴール正面の絶好の位置でフリーキックを獲得。これをMFマルシオ・リシャルデスが鮮やかに決めて先制する。MFマルシオ。リシャルデスは今シーズン11ゴール目。フリーキックからは6ゴール目。新潟が1対0でリードして折り返す。

後半はFC東京が盛り返してくる。何度か惜しいチャンスを作った後の後半16分にペナルティエリア内でFW平山がDF永田に倒されてPKを獲得。MF梶山が決めて同点に追いつく。MF梶山は2ゴール目。

両チームが勝ち越しゴールを目指す中、後半ロスタイムに新潟が左サイドから大きく展開し、上手いコントロールでペナルティエリアに侵入したDF西がMFリカルジーニョに倒されてPKを獲得。ラストプレーで絶好の勝ち越しのチャンスを得る。しかし、MFマルシオ・リシャルデスのキックがGK権田に止められて勝ち越しならず。

結局、そのまま1対1で試合終了。新潟は悔しいドローとなった。

■ 脅威のフリーキック

新潟はまさかのMFマルシオ・リシャルデスのPK失敗で勝ち点「2」を失った。後半は劣勢になっていたが、最後の最後で絶好のチャンスを迎えたが、エースのMFマルシオ・リシャルデスが失敗してしまった。

最後のPKは残念だったが、それにしてもMFマルシオ・リシャルデスのフリーキックは脅威的としか言いようがない。これで今シーズンはフリーキックから6ゴール目。シーズン最多記録を更新している。この日はゴール正面の絶好の位置からのキックで、蹴る前からゴールがプンプンにおっていたが、その通り、鮮やかに決めて見せた。

MFマルシオ・リシャルデスのキックが新潟の武器であることは対戦相手も分かっているはずで、FC東京も「出来るだけゴール前でフリーキックのチャンスを与えないように。」と考えていたはずであるが、自らのドリブルでフリーキックを獲得し、予感通りにネットに沈めて見せた。毎年恒例で、オフが近づくと、MFマルシオ・リシャルデス争奪戦が始まるが、確かにこういう選手が一人いることで、チーム力は格段にアップする。

Jリーグの過去を振り返ってみると、創世記にはジーコ(鹿島)、エドゥー(横浜F)といったフリーキッカーがいて、日本人でも、MF三浦淳宏(横浜フリューゲルス)、MF中村俊輔(横浜マリノス)、本田圭佑(名古屋グランパス)といった名フリーキッカーが出現してきたが、ここ最近のプレーを見ていると、MFマルシオ・リシャルデスのフリーキックは。彼らと肩を並べるレベルにあるのではないかと考えられる。

■ 曹永哲がブレーキ

ただ、チーム全体のパフォーマンスは26節の名古屋グランパス戦と比べると大きく見劣りした。トップ下のMFミシェウが散々な出来だったことが1つの大きな理由であり、MFミシェウが難しいパスを狙う過ぎてリズムを壊してしまった。MFミシェウがフィジカルがないので、厳しいマークに合うとミスが出てしまう。

さらにMF曹永哲も期待外れだった。名古屋戦は左サイドにMF三門が入って素晴らしいパフォーマンスを見せたが、MF曹永哲が戻ってきて、元の布陣に戻したがうまく機能しなかった。MF曹永哲は今シーズン飛躍を遂げた選手の一人で、リーグ戦は11ゴールを挙げている。韓国代表にも選ばれていて、先日の日韓戦でもベンチに入っていて韓国代表の将来のエース候補として期待されている逸材である。

今後の対戦で、日本代表もMF曹永哲に悩まされることがあるはずで、彼の左サイドからの突破と中に切れ込んでからのシュートが新潟の得点源の1つになっているが、素晴らしくチームにフィットしているという状態ではない。チームとしてMF曹永哲を生かし切れていない部分も、MF曹永哲自身がうまく流れに乗りきれていない部分もあって、レベルアップする余地は残っているが、26節のMF三門のプレーが良かっただけに余計に物足りなさを感じてしまった。

■ やや厳しい判定

新潟にとって少し納得できないのはPKシーン。確かにDF永田の手がFW平山の行く手を阻んでいたようにも見えたが、ゴールに向かっていたプレーではなくて、不運な判定といえた。FC東京は後半にカウンターでチャンスを作っていたが、フィニッシュが決まらずに苦しんでいた。新潟の守備陣は対応できていただけに厳しい判定だったといえる。

判定を下したのは吉田寿光レフェリー。日本人レフェリーの中では安定していて、評価の高いレフェリーであるが、ここ最近は「どうなのか?」と思う判定が少なくない。個人的に、引き金になっているのは、J2の第25節のサガン鳥栖とヴァンフォーレ甲府の試合で、後半に甲府のFWハーフナー・マイクのシミュレーション気味のプレーにPKを与えたシーンであるが、あのから、ちょっと落ち着かないような気がしてならない。

DF永田とFW平山のプレーだけを見ていると、「個人的にはPKではないと思うが、PKを取る人がいてもおかしくない。」と思うが、合わせ技一本的な感じで、吉田レフェリーには不信感を覚えてしまう。改めてレフェリーは大変な仕事である。

■ 権田のスーパーセーブで勝ち点「1」

一方のFC東京は試合終了間際にPKを与えてしまったが、日本代表のGK権田がスーパーセーブで防いで、何とか勝ち点「1」をもぎ取った。夜の試合で16位のヴィッセル神戸が敗れたので、勝点差は「2」。まだまだ安心出来る状況ではないが、「0」に終わるよりははるかに良かったといえる。

このチームもタレントはそろっていて15位の低迷するようなチームではないが、相変わらず歯車はかみ合っていない。この時期になると、ダイナミックに立て直すのは難しいので、ごまかしながら勝ち点を重ねていくしかないが、それぞれの選手はそれなりに頑張っているのにうまくいかない、というしっくりこない状況が続いている。この日はボランチに入ったMF徳永も強さを生かして好プレーを続けていて、極端に出来の悪い選手はいなかったが、フィニッシュが決まらなかった。




[マルシオ・リシャルデス (まるしお・りしゃるです) ]

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