前回、前々回と関連した話になるが、日本のスポーツ文化についてもう少し突っ込んでみたい。プロ意識の乏しさについてはこれまで述べてきたとおりだけど、今回はその構造についてだ。
Jリーグが開幕して17年経った。「企業スポーツからの脱却」、「地域密着」など、ヨーロッパのクラブスポーツ文化を目標とする理念を掲げてスタートしたはいいが、17年経った今、現状を見ると、どこかでその理念が忘れ去られてしまったようだね。
現在のJリーグのあり方は、日本リーグ時代とほとんど変わっていない。ヨーロッパ型のクラブスポーツとは大きくかけ離れた、相変わらずの企業スポーツだよ。それでいてプロ野球ほど予算も獲得できず、金銭的には貧しい。選手の年俸も決して高くなく、子どもたちが安心して夢を持てるフィールドとは言えないね。
なぜこうなってしまったのか。理念が単なるビジネスに成り代わってしまったのはなぜなのか。
原因のひとつに人事が挙げられる。親会社の営業部長や人事部長といった肩書きの人間が、ある日突然サッカーチームの社長になる。これがJリーグの現状だよ。そうではないクラブもあるけど、大半はこうした体制下で運営されている。
ひとたび社長になれば、競争も株主総会も選挙もない。役割は、親会社から与えられた予算内で、チームを“管理”すること。それ以上でもそれ以下でもない。
たとえば、クリスティアーノ・ロナウドを獲得してサポーターを盛り上げ、世界に向けてアピールを繰り返すレアル・マドリーのフロレンティーノ・ペレス会長と、Jリーグクラブの社長とでは、座る椅子は同じでも、役割やビジョンがまったく違うんだ。あっちはオーナーで、こっちは雇われ店長みたいなものだ。
だから、Jリーグクラブの社長には、決定権がない。先日も、横浜F・マリノスが中村俊輔獲得に“失敗”したということがあった。そしてその原因は斎藤正治社長にあるとも報じられたね。
でもあれは、正確にいえば失敗じゃない。単に、「日産自動車」にお金がなかっただけだよ。斎藤社長はサポーターと親会社に挟まれて、自分の力ではどうしようもできず、つらい立場だったと思う。
親会社からしてみれば、Jリーグクラブは、関連事業の一環に過ぎない。チーム名から企業名をはずし、地域名を入れたことで、それぞれ土着のサポーターが増えてきたのは事実であり、それは素晴らしいことだ。でも内実は、まだまだ文化と呼べるものではないね。
こうしたあり方は、変えていかなければならない。企業から独立し、会長やチームのオーナーを選挙で選出し、地域に愛され地域に還元するクラブ。そうしたスポーツ文化に変えていくために、おかしいことをおかしいと、言い続けていくしかない。全部密室で決まっちゃうんだから、外野である僕らにできることはそれだけだよ。(了)
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セルジオ越後 (サッカー解説者)
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