――制作前やレコーディング中に、お二人とはどんな話をしましたか?

中川:松本さんとは去年のシングルとかで何度かお会いしているんですけれども、細野さんとは初対面で。松本さんと細野さんが目の前に揃って、ポケモンの映画のスタッフさんも揃ってという大変な会議がありまして(笑)。しかもその時に松本さんの「情熱大陸」のカメラもあって、私の虚弱な胃がもう破裂しそうになりまして(笑)、どうしようかと思ったんです。

松本さんと細野さんがお互いにお仕事するのが久し振りだったらしくて、その時に「嬉しいな」みたいなことを言い合っているのを見て、また感動して泣きそうになっちゃって。「どんな歌にしようか?」みたいな会議だったんですけど。「とにかくポケモンの映画を観た子供達は、悲しくて恐くて辛くて泣くとかじゃなくて、感動して泣くことを覚えるので。私も1作目の小林幸子さんの歌を一生忘れられないぐらいジワーッとしてしまって、すごく印象的なので。子供達にもそんな気持ちを受け継ぎたいなと思うのです!」と言って。松本さんは「お孫さんのために書いた」と仰っていましたね。

レコーディングの時も細野さんのご実家のスタジオで、松本さんもわざわざ軽井沢から駆けつけて下さるという嬉しいことがあって。2人でレコーディングブースに並んで入って来て、「ここはこうなんだ」って同じ所を指差して指導して下さったり、もう本当に「今、起きていることは夢なんじゃないか?」という瞬間の連続でした!

――歌と声優のお仕事とで、何か意識的に使い分けていることはありますか?

中川:不思議ですね。昔から自分の声に対してコンプレックスがすごかったんですけど、今もテレビから流れてくると「イヤー!どうしよう?」みたいな感じで、もう恥ずかしくて聞けないんですよ(笑)。でも、やっぱり歌うことも大好きだし、女の人の歌を聴くのも大好きだし、もちろんアニメ、声優さんにはすごく憧れがあるので、こんな同時にやらせて頂けるのはすごく嬉しいですし。でも、しゃべっている声と歌声は全然変わるし、もちろんポケモンの声なので、「普段の自分に無い声を作らなきゃ」と思って。

最初に予告編とかをアフレコした時は結構難しくて、「動いている所に声をズレないようにしっかり当てなきゃ」ということしか考えられなかったんですけど。「普通に声を出すと、ちょっと声が年を取りすぎてるから、もっと幼稚園ぐらいの気持ちで」と言われて、「無理だー!」って思ったんですけど(笑)。本番では、ギザみみピチュー達がまだ色もついていなくて線の状態なんですけど、今までのポケモンの映画を観てもう何度も泣きそうになったあの感覚が線画の状態で何度も襲ってきて。

3年連続で、最初は人間の役で、去年がアンドロイドで、今年ポケモンで、どんどん人間じゃなくなってきているんですけど(笑)。「今こういう目線で世界の中にいるんだ」とか「生きてるんだ」というピチューの気持ちも分かって、今年が1番苦労せず、人間の役の時が1番苦労しましたね(笑)。結構長いシーンも一発OKになったりしたのが嬉しかったです。セリフが「ピー」とか「チュー」とかしかないんですけど、いっぱいあって(笑)。その中で距離感とか感情とかを全部表わさなきゃいけないので「どうしよう!?」と思ったんですけど、やっぱり「ギザ」という言葉の連動からか(笑)、彼女の気持ちが分かりました。