[画像] 部下の管理能力が高い上司が1on1ミーティングでさりげなくやっている「9つのこと」

1on1ミーティングは上司・部下における対話や面談のひとつの形態です。部下の育成やモチベーション向上を目的としていますが、会社からの要請でわざわざ場所と時間をして定期的に実施しているものの、上司にとっても部下にとっても単なる負担にしかなっていない、というケースは少なくありません。本記事では、小川隆弘氏による著書『成果が出る1on1 部下が自律する5つのルール』(ごきげんビジネス出版 ブランディング)から一部を抜粋・再編集して、1on1の基本となる「9つの心得」を解説していきます。

対面で行う1on1、9つの心得

1on1ミーティングの基本中の基本となる「9つの心得」をお示しします。著書などにより多少の表現は違っていても、次の9点は基本中の基本です。これさえ実践できれば1on1はある程度成功する、といっても過言ではありません。それほど重要ですが、1on1に苦労している企業が多いことは、基本の「9つの心得」が十分できていないことを示しているのではないでしょうか。

1.ふたりきりになれる静かな部屋を確保する(習慣化後はカフェでもどこでもOK)。
2.時間が少し延長してもいいように、ゆとりをもって臨むこと。
3.座る位置は部下に対して90度から120度くらい、斜めになるように座る。
4.やや前のめりの姿勢をとる。
5.少し柔和な笑顔をする。
6.顔を部下のほうに向け、目を見る。
7.うなずき、あいづちを必ずする。
8.時々オウム返しをして、部下の話を確認する。
9.部下の話すペースにあわせ、ややゆっくりめに話す。

1〜3は事前準備です。多くの方はすでに実践済みでしょう。

では、4〜9はいかがでしょう? 自信がない方も多いのではないでしょうか。とくに4「やや前のめりの姿勢」を実践していますか? イスに浅く腰かけ、背に体重をかけていませんか? 足を組んだり、腕を組んだりしていませんか? 実はこうした態度や姿勢は、「部下への関心の裏返し」と相手は感じてしまいます。部下が「自分には関心がないんだな」と感じていたら、どうでしょうか? あなたが部下の立場なら、自分に関心を示さない上司をどう思いますか? 前のめりの姿勢は意外と重要なのです。

また、忙しそうな態度や顔つきになっていませんか? これも要注意です。自分では気づかずこのような態度になってしまっている場合があります。再度セルフチェックをお願いします。

うなずき、あいづちはどうでしょうか? 1on1研修では、「必ずうなずきをしましょう」と教わっていると思います。データでの裏付けも論文で出ています。静止したCGよりもうなずきのあるCGのほうが好ましさ、近づきやすさで30〜40%アップした、というものでした※1。また、1回1秒程度のうなずきが親近感を与える報告もあります※2。科学的にも、うなずきをおろそかにしてはいけないのが明白になっているのです。

4〜9は傾聴の基本でもあります。よって、「1on1の9つの心得」ができれば半分以上の成功、といえるのは決して過ぎた表現ではないのです。意識しないとできないのが4〜9です。1on1の成果に悩まれている方は、まずはここを毎回意識し、実践してください。1年ほどで上達すると思います。

「9つの心得」がすべてできていれば、1on1のレベルはもう中級クラスといっていいでしょう。なかなかのレベルなのです。自信をもって引き続き部下と対話してください。私は9項目を意識して徹底したところ、部下の反応が1年ほどで少しずつ変わっていくのを実感しました。その変化は、やがて大きな成果につながることになります。

※1「うなずき・首振り動作が人物の好ましさと近づきやすさに及ぼす影響」2017年、山形大学人文社会科学部/大杉尚之,北海道大学文学部/河原潤一郎

※2「CGキャラクタを用いた多様なうなずき動作に対する印象評価」ヒューマンインターフェース学会論文誌24(1―4):2022年、p.249-262、岡山県立大学大学院情報系工学研究科/北村美和子、黒川智司,岡山県立大学情報工学部/石井裕、渡辺富夫

「わかる」と「できる」は違う

1on1は上司・部下における対話や面談のひとつの形態です。1対1の対話ですから、何もむずかしいことをしようとしているわけではありません。「部下とよりコミュニケーションを取る」といった、社会人にとってごくふつうのことです。

ところが、わざわざ場所と時間を設定して1対1でコミュニケーションを取ろうとするため、また、会社からの要請もあるため、特別なことに考えすぎている側面もあります。実際に「9つの心得」が身についている多くの上司の方にとっては、1on1は大きな負担になっていません。IT関連企業や新たなサービスを展開している新興企業の多くの管理職は、日々粛々と1on1を実践・継続されています。過大な負担とまではなっていないようです。優先順位もありますが、その理由のひとつは「9つの心得」が自然と身についているからでしょう。

私も当たり前のこと、つまり「9つの心得」を実施し、継続してみたのです。いろいろな失敗を経験しながらも、あたまでわかっていたことを、とにかく実践・継続しました。すると、「わかる」から「できる」になったのです。できた理由は実際にやってみて継続したにすぎません。

多くの上司の方は、さまざまな研修を受講し、1on1を理解されています。しかし、「できる」までなっていなかったり、実施したことにしていたりする場合も散見されます。まずは実践・継続しましょう。

1on1の定義は種々ありますが、「部下の成長支援を目的に、上司と部下が1対1で定期的におこなう対話」です。上司のための対話ではないことに留意する必要があります。

あなたが実施した直近の1on1を思い出してみましょう。「9つの心得」はできていたでしょうか? この点を意識するだけでも変わっていきます。ぜひ意識して臨んでみましょう。

オンライン形式の「4つの心得」

1on1はコロナ禍の影響でオンライン形式でも実施されています。オンライン形式での留意点として、次のことが挙げられます。

1.顔は明るく大きめに映っていますか?
4.カメラ位置は目と同じ高さですか?
3.3〜4割程度カメラを見ていますか?
2.リアクションやジェスチャーは、対面時より3割オーバーにしていますか?

リアルの面談と違い、オンライン形式では画面越しに相手を見ることになります。相手も同様です。画面越しの場合、細かなアクションや微妙な表情に気づきにくくなります。4つの留意点を意識することで、相手の微妙な変化に気づきやすくなるでしょう。

小川 隆弘

キャリアコンサルタント、コーチ、研修講師

※本記事は『成果が出る1on1 部下が自律する5つのルール』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。