[画像] ホテル代高騰でインバウンド向け“二重価格”が急増中…外国人は日本人よりは2〜3割高く設定

 先日、都心(中央区)のビジネスホテルを予約して改めて宿泊代の高騰に驚いた。1カ月前の予約で、平日のシングル料金は1万7000円が最安値だった。昨年同時期に泊まった時は1万2000円、一昨年は7500円だったことを考えると値上げに驚くほかない。

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 東京への出張で都心のビジネスホテルに泊まることの多い神戸国際大学の中村智彦教授がこう言う。

「気軽に泊まっていたホテルが高くなり過ぎて泊まれなくなり困っている。出張のビジネスマンも都心のホテル料金が高過ぎて、川崎や大宮、川口といった郊外のホテルに泊まるビジネスマンが増え、日帰り出張やオンラインで出張の仕事を済ませるという声が多く聞こえています」

 コロナ禍で苦しんだ観光業界は客足がコロナ前に戻る一方、ホテル・旅館の宿泊代は高騰を続けているのだ。

 JNTO(日本政府観光局)が9月18日に発表した8月の訪日外国人観光客数は、293万3000人と、前年同月比で36%の増加、コロナ前の2019年同月比でも16.4%の増となり、7カ月連続で前年同月の過去最高を更新している。

 こうしたなか、訪日外国人観光客向けのホテル料金や商品価格が変化を見せ始めているのである。帝京大学非常勤講師で旅行アナリストの鳥海高太朗氏が説明する。

「平日のビジネスホテルで宿泊代が3万円から4万円ということも珍しくありません。インバウンドで都市部に訪日外国人観光客が集中している結果、サービスや商品に二重価格が生じているんです。歴史的な円安と観光客増加の影響から、外国人向けに日本人観光客より2〜3割高い料金設定をしているんですね」

 国内では二重価格とはいわないまでも、学生割引、シニア割といった料金格差はあるし、自治体が始めている宿泊税もそのひとつといえる。海外の観光地ではインドのタージマハル(外国人観光客はインド人の約20倍)、エジプトのピラミッド(外国人約1800円、自国民約200円)など二重価格が一般的になっている。

■日本人観光客の減少

 ただ、需要に伴うとはいえ宿泊料金の高騰で懸念されるのが日本人観光客の減少だ。北海道の観光地や京都など国内観光地は宿泊代の高騰で観光客の減少が明らかだという。また、ホテルを利用する若者も減っているというのが先の鳥海氏だ。

「都内開催のコンサートやイベントでホテルに泊まらず夜行バスを使う若者が増えるなど、若者のホテル離れが心配です。円安で割安感を持つインバウンドの観光客に二重価格の影響はないと思いますが、接客に外国人を採用するなど付加価値を付けることは考えられます」

 二重価格の設定は、サービスなど各方面で検討、実施が始まっている。

(木野活明/ジャーナリスト)