AFC U19アジア杯予選に臨むU-19日本代表の国内合宿にトレーニングパートナーとして参加していた帝京長岡高FW安野匠が、合宿最終日の流通経済大とのトレーニングマッチでゴールという結果でアピールした。2006年生まれで一つ下の学年にあたるが、来季はJ2仙台への加入が内定しており、すでにプロ基準を求められる立場。日本代表としては8月にU-18世代初招集を果たしたばかりの18歳がここから“下剋上”を狙っていく構えだ。
夏のインターハイで全体2位の5得点、高円宮杯プレミアリーグWESTで全体8位の7得点を挙げるなど帝京長岡高の得点源を担う安野はこの日、流通経済大とのトレーニングマッチに前半30分過ぎから前線の一角で出場。試合終了までの約60分間にわたってプレーした。大会を控える他の選手よりも出場時間は長かったが、代表チームに求められるハイプレスを絶えず継続。その上でひたむきにゴールを狙う姿勢も際立っていた。
「(トレーニングパートナーなので)失うものがないというか、とにかく爪痕を残そうという気持ちだけだった。とにかく走って、止まる時間をなくして、点を取ってという自分のいいところをアピールしようとして試合に臨んだ」。その目論見どおり、投入直後の前半33分には“一発回答”のゴールも決めてみせた。
得点は左サイドからのクロスボールに対し、相手DFの前に入ってヘディングで決めた形。「一回相手の裏を取ってから、(クロスが)ニアに入るだろうという予測で相手の前に入った」という駆け引きでも上回っていた。また前半37分にも果敢なミドルシュートでGKを強襲し、こぼれ球からMF佐藤龍之介が追加点。ゴールに向かう姿勢でU-19日本代表のコーチ陣に猛アピールした。
今回は3日間の活動となったが、「学ぶものもたくさんあったし、自分がそういう世代を代表する人たちとプレーできる経験を得られているのは嬉しい」と喜びを口にした安野。8月のSBS杯で初めてU-18日本代表として“日の丸”を背負う経験をしていた中、「この経験も活かして、将来A代表に入れるように、まずはこのU-19日本代表に入れるようにしていきたい」とさらに一段上の野心も芽生えたようだ。
また安野にとって、今回のU-19日本代表活動は単なる経験以上の大きな意味があった。それはAFC U19アジア杯予選の正規メンバーに選出されていた帝京長岡高の先輩のMF廣井蘭人(筑波大)の存在だ。安野が入学した当時、廣井は3年生の絶対的中心選手として君臨。「みんなの憧れ」だったと振り返る。
そんな廣井とこの日、後半45分間は同じチームでプレー。「ファーストタッチが本当に上手いし、止めて蹴るもしっかりしているし、周りが見えているのですごくやりやすかった」。そう手応えを口にしつつ、「高校時代は一緒にプレーできる機会は少ししかなかったけど、こうして上のレベルで一緒にできたのはすごく誇らしい機会だった。でも誇らしいだけじゃなくて超えていかないといけないと思います」と大きな刺激を受けた様子だった。
今回のAFC U19アジア杯予選には参加が叶わなかったが、同世代が予選を突破した上で安野が成長を遂げていけば、来年初旬に開催されるAFC U19アジア杯本大会でのメンバー入りも期待される。すでに内定先の仙台で練習参加も経験していることもあり、いまの実力では「まだまだ全然足りていない」と成長意欲が尽きることはない。
そうした明るいキャリアを切り拓いていくためにも、残り半年間の高校生活では結果を追い求めていく構えだ。「プレミアも選手権もあるので、高校生活をいい形で終わらせたい。プレミアではまだ(首位を独走する)大津を抜けるように頑張りたいし、選手権では帝長史上初の全国を獲りたい。個人としても次のステップに進むために得点王とか、守備でもみんなに評価されるような結果を残していきたい」。その先に大きな未来を思い描く。
(取材・文 竹内達也)
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