[画像] サッカー日本代表の攻撃的3バックシステムが猛威 10月のサウジアラビア戦、オーストラリア戦はどうなる?

 2026年W杯アジア3次予選の第2節。初戦となったホームでの中国戦で大勝した日本は、勢いをそのままに、再びアウェーのバーレーン戦でも5−0で勝利を収めた。


サッカー日本代表はバーレーンにも大勝でW杯アジア3次予選2連勝 photo by Fujita Masato

 アジア最終予選にあたるラウンドがホーム&アウェー方式になった1998年大会以降、日本がアウェーの地でこれほどの大差で勝利したことはない。特に中東開催の試合では、環境的な影響も含め、実力を発揮できない傾向にあったのが、これまでの日本代表だった。

 その意味で、近代日本サッカー史という視点で見た場合、今回のバーレーン戦は画期的な試合になったと言っても過言ではないだろう。

【バーレーンは中国と異なる対策】

 もちろん、スコアのみならず、日本が試合内容で相手を圧倒したことも特筆すべき点と言える。中国戦同様、相手との実力差が鮮明になったのは後半になってからだが、相手のシュートを浴びた前半立ち上がりの11分と13分以外、危うく見えたシーンはほぼ皆無。試合は終始、日本が主導権を握り続けた。

 ポイントになったのは、4−4−2(攻撃時は4−2−3−1)のバーレーンに対して、引き続き森保一監督が両ウイングバック(WB)にアタッカーを配置する攻撃的3バック(3−4−2−1)をチョイスしたこと。中国戦同様、日本にとっては布陣のかみ合わせ的に戦いやすかったことが、試合を支配できた要因のひとつになった。

 ただし、同じ4−4−2でも、バーレーンは中国とは異なる戦術を用意していた。

 中国は、敵陣でボールを保持する際は3−2−5になる日本に対し、最終ライン4人が左右にスライドを繰り返すことで対応しようとしたが、バーレーンは、左ウイングの8番が堂安律をマークすべくポジションを下げたため、5バックに変形。

 一方、右ウイングの7番は、ボール奪取後に町田浩樹の左脇のスペースを狙える場所にポジションをとったため、陣形は中盤やや右寄りの5−3−2。中盤を左右に広げられた場合は2トップの1枚が下りて5−4−1にシフトチェンジした。いずれも、日本の前線5人に最終ラインの5人が、守田英正と遠藤航にはダブルボランチの4番と14番がマークする格好だ。

【前半、相手の裏を狙った日本】

 もうひとつ中国と違っていたのは、バーレーンがボール奪取後のカウンターまで準備していたことだった。2月に就任したバーレーンのドラガン・タライッチ監督は、テクニックと推進力を兼備する7番をカウンターの起点に設定した。

 日本にとっては、前線5人が相手の5バックとマッチアップする状態だったため、縦パスのルートを見つけにくいうえ、7番の存在によってカウンターを警戒せざるを得ない。そのため、ボランチやセンターバック(CB)からリスキーな縦パスを打ち込めず、攻撃のテンポを上げられない現象が起きていた。

 7番の存在以外にも、もうひとつバーレーンはカウンタールートを用意していた。それは板倉滉の右脇のスペースで、つまり堂安の背後を狙う左の8番にロングボールを配給することで、日本陣内深くに進入するルートだ。その結果、三笘薫と堂安は、中国戦と比べて攻撃に集中できない状況になっていた。

 ちなみに、その狙いが垣間見えたシーンは、前半に4度あった。15分は右CBの16番のロングパスの精度が低く未遂に終わり、21分には堂安のヘッドをかすめて大外の8番にボールがわたるも、これはオフサイド。25分のカウンターシーンでは右サイドで7番がドリブルで日本のプレスをはがしてから左に展開。ただ、これもオフサイドになった。

 アディショナルタイムにも、16番が堂安の背後にロングフィードを供給しており、結果的に堂安と競り合った8番にボールが当たってゴールキックとなったが、攻撃面で明確な狙いが見て取れたという点で、中国戦とは様相の異なる前半になったことは間違いなかった。

 逆に、日本の攻撃の狙いも中国戦とは異なっていた。自陣深くに引いて守った中国と違って、バーレーンはDFラインを高めに設定。縦のコンパクトさをキープすることで日本の攻撃に対抗しようとした。そのため、それを分析したと思われる日本は、前半からDFラインの背後を盛んに狙った。その術を熟知する南野拓実を右シャドーに配置したのも、おそらくその狙いがあったからだろう。

 それを裏付けるかのように、中国戦ではわずか1本だった守田の1試合におけるロングパスの本数が、この試合では13本を記録し、板倉も1本から4本、遠藤も2本から4本に増加。1試合トータルでも中国戦の25本からバーレーン戦では39本に増えている。

 いずれにしても、前半は相手のハンドで得たPKを上田綺世が決めて先制したものの、日本の決定機は三笘のクロスに堂安が合わせた開始9分のシーンのみ。さらにクロス5本、縦パス5本と、どちらも中国戦を下回るスタッツで、前半から日本が圧倒的な攻撃を見せたわけではなかった。

【相手を揺さぶった日本が後半有利に】

 とはいえ、ボール支配率は70%を記録するなど、酷暑のなかでエネルギーを無駄に消耗せず、被カウンターを回避しながら相手を揺さぶって疲労させたという点で、日本が一枚も二枚も上手だったと見ることもできる。ある意味、その効率性が後半のゴールラッシュの呼び水となった。

 バーレーンにとって不運だったのは、失点直後の前半37分に7番が負傷交代を強いられたことだった。代わって入った11番はカウンターの起点になれず、後半に入ると守備に追われて最終ラインに吸収されてしまい、バーレーンは自陣で6バックスを形成。中盤がさらに薄くなり、2トップが下がることでコンパクトさを保とうとしたため、「6−4」という悲劇的な陣形で日本に終始押し込まれる格好となった。

 こうなってしまった時点で、タライッチ監督のゲームプランは完全に崩壊した。

 そんななか、後半開始から右WBを伊東純也に代えた日本の攻撃が活性化。前半からピストンを繰り返した8番には、もはやフレッシュな伊東のテクニックとスピードについていくだけのスタミナと集中力はなく、反撃時に日本陣内に攻め上がる余力もなかった。

 加えて、日本の攻撃で変化があったのは、鎌田大地が下がってプレーするシーンが増えたこと。代わって鎌田が空けたスペースを2列目から狙ったのは守田だった。このふたりの入れ替わりの動きにバーレーンはついていけず、次第に6人になったDFラインにギャップが増え始めると、日本の攻撃はそのギャップを突くスルーパス主体に変化した。

 後半開始早々の47分に生まれた2点目は、鎌田が三笘に出したスルーパスを相手DFがカットした直後に南野が即時回収し、三笘、鎌田、伊東とつないで、最後に上田がフィニッシュ。61分は、右に開いて守田からパスを受けた鎌田を起点に、守田が上田のポストプレーを活用して自らボックスに進入してゴールが生まれ、64分も、鎌田のスルーパスを三笘が折り返し、ゴール前に飛び込んだ守田が合わせるかたちで日本が追加点を奪っている。

 結局、後半は81分に小川航基が加点した日本がバーレーンを圧倒。ボール支配率が前半の70%から76.1%に上昇しただけでなく、クロス本数も11本に増加。スルーパスが増えた分、くさびの縦パスは4本に微減したが、前半と比べて日本の攻撃は確実に破壊力を増していた。そういう意味で、相手の問題も影響したとはいえ、日本にとっては申し分のない試合になったと言えるだろう。

【10月の2試合もこのまま行くか!?】

 注目されるのは10月に予定されるアウェーでのサウジアラビア戦と、ホームでのオーストラリア戦だ。

 勝っている時に大幅な戦術変更をするとは思えないので、おそらく森保監督は次のサウジアラビア戦でも攻撃的3バックをチョイスするだろう。対するサウジアラビアもオーストラリアも4バックを基本布陣としているが、またバーレーンとは違った日本対策を練ってくるはずで、その対策の精度はもっと高くなる。

 現状、日本の攻撃的3バックに大きな課題は露呈していない。ほぼ一方的にゲームを支配したので、とりわけ守備面の問題点は見えてこない。攻撃的3バックの完成度を高めていくためにも、10月の2試合でどのような課題が浮き彫りになるのか、要注目だ。