5月24日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「空からニッポンを拓く!〜密着!第3のエアライン〜」。ANAグループが新たに始めたエアライン「エアージャパン」。ターゲットは東南アジアのインバウンド客で、フルサービスキャリアでもなくLCCでもない「第3のジャンル」への参入となる。
「エアージャパン」の狙いは、迎え入れた外国人を地方へと呼び込むことだが、かつてANAで地方再生請負人と呼ばれた峯口秀喜社長の戦略は成功するのか。
一方、一般人には縁遠い存在のビジネスジェット。その間口を、価格破壊で広げようとする新たな会社「マイクロジェット」が誕生した。「スカイマーク」の元社長・西久保愼一さんが会長を務める会社で、西久保さんはこれまでにないビジネスジェットを創ろうと奔走。新たな市場を切り拓こうと動き出した“異色のエアライン”に密着する。

【動画】サービスと価格を両立させた異色のエアライン「エアージャパン」の全貌

「空飛ぶ物産館」が地方を救う!?…“日本初”異色のエアライン




成田空港に本拠を構える「エアージャパン」は新しい航空会社ではなく、ANAグループの中でアジア路線の運航を担当してきた会社。これまでは社名を出さず、CAもANAの制服を着て乗務していたが、そのエアージャパンに、時代のニーズに応えた新たなエアラインを作ることが課せられた。


エアージャパンの社長に抜てきされたのは、峯口秀喜さん。峯口さんは整備士としてANAに入社後、地方活性化の事業に携わり、無名だった北海道・白糠町をサポートすると、その後、白糠町はふるさと納税に参入。寄付金額が全国トップクラスに。ANAの地方再生請負人とも呼ばれている。こうした実績が買われ、かじ取りを任された峯口さんは、「アジアからお客様を日本に持ってきて、大都市圏だけではなく、地方の活性化につなげていくことが我々のミッション」と話す。
去年7月、新潟県・津南町。日本有数の豪雪地帯を峯口さんが訪れた。待ち受けていた桑原悠町長は、早速、訪日客の誘致について相談する。新幹線の最寄り駅は越後湯沢だが、駅から車で約1時間かかるため、観光客が足を延ばしてくれないのが悩みだ。
峯口さんは津南町活性化に向けた取り組みを提案し、「イベントはバカにできない。できるだけバカバカしいイベントの方がいい。毎年やっていくうちにだんだんファンができ、いろんな人たちが来る。雪掘りは映像を見て大爆笑した」とアドバイスを送る。


峯口さんが大爆笑したのは、「雪下にんじん掘り競争」。雪で隠れた特産のニンジンを探し、多く掘り出したチームが勝ちという実に単純なイベントだが、アドバイスを受けた町長は、「エアージャパンを通じていろいろ実現していくと、とてもうれしい」と前を向く。


峯口さんに託されたエアージャパンの客室乗務員たちも津南町に足を運び、訪日客に興味を持ってもらうため、自分たちでオリジナル動画を作ろうとしていた。


8月、タイ・バンコク。エアージャパン最初の路線にバンコクを選んだ峯口さんは、日本大使公邸を訪れる。盛大なイベントが行われる会場で、峯口さんは登壇するやいなや、機内でも販売する雪下ニンジンで作られたジュースやミネラルウォーター、雪下ニンジンを掘る大会など、真っ先に津南町を紹介。地方のアピールに多くの時間を割くのが、新たなエアライン・エアージャパンのやり方だ。

11月、埼玉県・川越市。この日、峯口さんを待っていたのは地元の観光事業者の人たち。峯口さんは「川越は、タイの方にもっと来ていただきたいとのことで、ニーズがマッチしている」といきさつを話す。コロナ禍を経た今、川越には多くの訪日客が押し寄せているが、夕方が近づくと、あれほどいた人たちが消えてしまう…。みんな日帰りしてしまうのだ。
峯口さん、これを利用できないかと考えていた。


今年2月9日、成田国際空港。エアージャパン初フライトの日。初便の搭乗率は約96%で、好調なスタートを切ることができた。


事前に予約する機内食は13種類から選ぶことができ、親子丼や寿司など、日本らしいものばかり。料金は、成田・バンコク片道1万7000円からで、ハイシーズンでも5万円ほどだ。



シートは革張りで、席はすべてエコノミークラス。ビジネスクラスがない分、座席間隔に余裕があり、一般的な格安航空会社よりも広くなっている。サービスと価格を両立させた、これまでにないエアラインだ。初フライトを見届けた峯口さんは、先を見据えたある作戦を実行する。


3月23日、東京・新宿でバスツアーが企画された。参加者は日本在住のタイ人で、約20人が参加。一行が向かったのは川越で、舟に乗って花を愛でる優雅な遊びを堪能。続いて小江戸・川越の散策を楽しむ。江戸時代からの名物・サツマイモを味わい、創業100年の飴屋さんでは、昔ながらの作り方にみんな興味津々。この飴は、エアージャパンの機内でも販売されている。この日、川越はちょうど桜の咲き始めで、絶好の撮影スポットにみんな満足気だ。
春を堪能した一行は、バスに乗り関越道で北へ。トンネルを抜けると、そこには美しい雪景色が! 日本に住んでいるとはいえ、やはりタイの人にとって雪は珍しいようだ。

午後5時、一行は新潟・津南町のホテルに到着。川越と津南を回る特別ツアーを仕掛けた峯口さんは、「地方活性を考えた時、地方にどう人を送るか。川越と津南を結びつけると、面白い化学反応が起きるのでは」と話す。ツアーはまだまだ続くが、果たして客の反応は?



ビジネスジェットでニッポンを拓く…復活を賭けた男の挑戦!




山梨・清里。自然の中でのんびりと暮らしていたのは、格安航空の先駆け「スカイマーク」の元社長・西久保愼一さん。ガイアは2013年、西久保さんに密着取材していた。


2004年、航空業界に飛び込み、独自の手法を次々と打ち出して会社を急成長させた西久保さん。しかし、ライバル会社が相次いで市場に参入すると、業績は一気に悪化。スカイマークは経営破綻し、西久保さんは表舞台から姿を消した。西久保さんはこの時のことを「いっとき高収益が出て、自分の考えた策が当たって図に乗っていた」と振り返る。
セミリタイアした西久保さんだが、若者たちの熱意にほだされ、再び航空業界へ復帰することに。


去年8月、乗客4人のジェット機で、好きな時に好きな場所へ運ぶサービスを生み、航空局から事業の許可を得たのが「マイクロジェット」(東京・新宿区)。社員は全員パイロットだ。2021年に航空大学校を卒業した高橋良さんは、コロナ禍でパイロットの採用が少ない中、起業することを選択。西久保さんは、会長として彼らをサポートする決断をした。
小型ジェットのチャータービジネスは日本ではまだなじみが薄く、主な会社は4社ほど。
マイクロジェットは日本で初めて専業の会社として参入し、新たな市場の開拓を狙っている。


去年10月、鳥取。西久保さんが事業許可の取得後初となるフライトに招待したのは、鳥取県の平井伸治知事。「海外の富裕層のお客さんを日本の観光地に運ぶ計画をしている。鳥取は海外の人が喜びそうな観光資源が多い。まず知事に乗ってもらってビジネスジェットを理解してもらう」と西久保さん。マイクロジェットは東京や大阪から交通の便の良くない地方へ訪日客を運ぶツアーを準備中で、その足がかりとして、まず鳥取県を選んだのだ。

操縦するのは社長の高橋さんで、小型ジェットに乗るのは初めてという平井知事。西久保さんは、「ヨーロッパに行った時はよくプライベートジェットを使っていたが、1日4、5カ所回れる。4カ所ぐらい回ろうと思ったら、普通3日はかかるが1日で回れる」と効率の良さを説明する。飛行を終え、取材陣が待ち受ける中、平井知事は「素晴らしい空の旅。インバウンド含めた富裕層の観光旅行商品、ビジネス利用も考えられる」とアピールした。

西久保さんに続き、若きパイロットたちも動き出す。訪ねたのは、民間では日本最大の医療法人、徳洲会。離島を含め、全国に76の病院を持つ組織だ。高橋さんが“ビジネスジェットの利便性が医療にも役立つ”と訴えると、担当者は「全国でオペをするドクターの移動負担を減らしたい」と話し、利用を検討してくれることになった。

そして、初フライトから7カ月…マイクロジェットに新たな展開が!

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