アメリカに「単身赴任中」の上沢直之の「雑草魂」には、目を見張るものがある。

 レッドソックス傘下の3Aウースターでプレーする上沢が5月16日(現地時間)、ヤンキース傘下の3Aスクラントン戦にリリーフ登板し、5回を投げ7安打2失点、3四球2奪三振の熱投を演じた。勝敗などは付かなかったが、今季3Aの5試合で2勝1敗、防御率4.88となっている。

 上沢は4月28日にメジャー初昇格し、5月2日のジャイアンツ戦でデビュー。初登板は2回を無失点に抑えたが、翌3日のツインズ戦では2回1失点でメジャー初失点を喫し、8日に再びマイナーに降格した。

 5月16日の試合は、再降格後2度目の登板だった。メジャーリーグを取材するスポーツライターが言う。

「今季、一度もメジャーでの登板がなく、現在は負傷者リスト入りしている藤浪晋太郎に比べれば、メジャー再昇格は近いでしょうね」

 上沢にとってメジャー定着は、家族のためにも成し遂げなくてはならない夢だ。上沢は2017年12月に、北海道出身の当時24歳の一般女性と結婚。2年後に第1子の長女が誕生し、2022年7月には第2子の長男が生まれた。自らのSNSに、生まれたばかりの子供を抱いた写真をアップするほどの子煩悩だが、子供がまだ小さい上、現在はマイナー暮らしで先の保証がない。とても家族を呼び寄せる状況にはないのだ。

 所属チームのあるウースターで、球団が借り上げたアパートで暮らしている。しかも2ベッドルームで、1リビングしかない部屋での共同生活。同居人はもちろん、外国人だ。

 マイナー選手には当然ながら、大谷翔平や山本由伸のように、専属通訳はつかない。そのため、慣れない英会話で、ルームメートと必死にコミュニケーションを図る毎日だ。他チームと試合をするためには4時間程度のバス移動もざらで、場合によっては座席の確保が難しく、床に座らされるとのウワサもある。まさにビクビクの毎日を送っているのだ。

 本来はかねて憧れ、最初にマイナー契約を結んだレイズでの昇格を目指していたが、あえて投手陣が手薄なレッドソックス移籍の道を選んだ。

「日本では大谷以下、メジャーで華々しく活躍する選手ばかりが報道されるが、上沢は海外移籍を目指す日本人選手に希望を与える」(前出・スポーツライター)

 今後も雑草・上沢から目が離せない。

(阿部勝彦)