身長を伸ばす手術があることを知っているだろうか? いわゆる「骨延長」と呼ばれる手術は、全身麻酔手術で骨を折って、人間の再生能力を出すため装具を使って少しずつ骨を伸ばしていく方法だ。ロシアのイリザロフ医師が開発したこの方法では、骨と一緒に筋肉や血管、神経なども伸ばすわけだが、かなりの痛みが伴うと言われている。
 身長を伸ばす手術は、アメリカ、韓国、アルメニアなどで行なっているが、トルコで手術を受けた50代の女性がいる。彼女はトルコ・イスタンブールにある「LLC」という病院で内部にネイルと呼ばれる髄内釘を挿入して骨を延長していく技法で、なんとトータルで18センチも身長を伸ばしたという。身長を伸ばす手術をなぜ受けたのか、費用はいくらでどうやって工面したのか。自らの手術経験をX(旧ツイッター)で発信している、ねこさん(55歳・@Neko_PRECICE)に話を聞いた。

◆パンツが似合う女性にあこがれて「骨延長」

――どうして身長を伸ばしたいと思われたのですか?

ねこ:そうですね。昔から低身長が嫌でした。「151センチって別に病的には低くないよね」ってよく言われるんですけど、私の場合パンツが似合うカッコいい女性に憧れていたんで、ずうーっと背が高かったらなあと思っていました。イリザロフ法というこの手術のことも知っていたんですけど、30代は仕事第一で働いていたので忘れてたんです。でも40歳で結婚して、42歳で早期退職して時間ができたことでコンプレックス解消を諦めきれなくなりました。何しろ、朝起きたら「あぁ背が高かったらなあ」って思うんです。

――どれぐらい身長を伸ばしたのですか?

ねこ:まず2021年にトルコに行き、膝下6センチ、膝上6センチ伸ばして、151センチから163センチになりました。そして2023年に2回目の手術をするためにトルコへ再び行き、今度は膝下4センチ、膝上を2センチ伸ばして169センチになりました。私はいつも7センチのヒールを履いていたせいか、163センチになった時はあまり気が付かれませんでしたね。ただ、169センチになった時は、合計で18センチ伸びたので、さすがに反響はすごかったです。

◆18センチの骨延長。費用は2100万円

――身長が18センチも伸びたら、印象ははっきり変わりますよね。費用はどれぐらいかかりましたか?

ねこ:1回目は1100万円。2回目は1000万円で、合計2100万円ぐらいです。当時は1ドル110円ぐらいのレートでしたが、今だとトルコのスーパーインフレとの影響もあって3000万円は下らないと思います。

――では、割と早めにやって良かったかなという感じですか?身長を伸ばす手術は、いろいろな国でやっているようですが、トルコで手術した理由はなんですか?

ねこ:24時間サポート、3食付きのパック料金だったからです。私の場合、退院後から女性スタッフが夜間のトイレからシャワーまで全部身の回りの世話をしてくれました。アメリカは、入院費だけで週150万円もかかるのに(多くの方が日帰りを選択)、処方箋を書いてもらったら薬局は自分で行かなくてはいけない。韓国も通訳、常備薬(風邪薬やサプリなど)や個人の車椅子貸切代など全てに別途費用がかかってきて、肉体的にも、精神的にも想像ができなかったんです。トルコは手術費用、生活費など込みでお金がかからないので、だから私は日本から10万円持っていきましたけど、2021年の1回目の渡航時は全く使いませんでした。

◆リハビリ中に通訳として仕事も

――では、実際にどうやって手術を受けたのか、教えてください。

ねこ:トルコに渡る直前には家でストレッチをたくさんやってから行きました。この手術をすると踵がつかなくなる症状が出るので、特にアキレス腱は鍛えましたね。トルコに着いたら、空港まで迎えに来てもらって、翌日に検査、2日後に全身麻酔で、まず膝下の手術をしました。生まれて初めての全身麻酔だったんですけど、目が覚めたらもうかなりグロッキーな状態で、まぶたも重くて目も開けられないほどでした。点滴で痛み止めを入れていたので、痛みはそれほどではなかったんです。ただ5日目に退院して車に乗ろうとして、足を曲げた瞬間はすごく痛かったです。