俳優・東出昌大の周辺が風雲急を告げている――。

現在、主演するドキュメンタリー映画『WILL』が公開中。そして3月には映画『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』に出演。

さらにこのタイミングでYouTubeチャンネルを開設。このところネット民からは”再ブレイク”を期待する声も上がっている。

「映画『WILL』は、事務所に所属していた‘21年に企画がスタート。しかし狩猟をやっていることが公表できずに一旦、中止となりました。

ところがその年、東出に新たなスキャンダルが発覚。事務所を離れ、フリーになったことから企画が復活した、言ってみれば“いわく付き”の映画と言うわけです」(ワイドショー関係者)

“瓢箪から駒”と言うべきか。思わぬことから甦った今作。しかしなぜ東出は、狩猟の世界に魅せられたのか。

その理由は、滞在した地方のビジネスホテルの書棚にあった一冊の本にある。現役の猟師である千松信也氏が書いたバイブルとも言われる文庫本『僕は猟師になった』を読破。感銘を受けた東出は29歳の時、免許を取り狩猟の世界に飛び込んだ。

映画では都会を捨て、山に逃げ込んだ当時の東出の姿が赤裸々に描かれている。

「ガスも水道もないところに暮らし、1人で山に分け入り、獲物を追い銃で鹿や猪を仕留め食べる。東出は山を歩きながら、これまで生きて来た人生を振り返り、未来に思いを馳せる。

そこにはスキャンダルにまみれ、みずからの命すら断ちかねなかった人間・東出昌大の”再生”の物語が隠されていると言ってもいい」(制作会社プロデューサー)

東出はこのドキュメンタリーの取材を「なぜ受けたのか」と言う問いに対して

「自分の子供たちが父親の名前を検索して最低の父親だと思い、自分の出自を恨むこともあるかもしれない。その時少しでも、僕が一生懸命に向き合っていたと言うことを、どこかで感じてもらえるかもしれない」

と告白している。

そんな東出の内面の葛藤を映画の中で代弁しているのが、ラップグループ「MOROHA」の歌ではないか。

アコースティックギターを奏でるUKと、メッセージ性の強いリリックが魅力のMCアフロのラップ。武道館ライブの映像と東出の映像がシンクロすることで、山で生きる東出の心の内側をあぶりだしてゆく。

「映画の舞台挨拶に登壇したアフロは、『会場を出たら”東出許すまじ”と言う人もいる。それを受け入れる覚悟ができた男が、どう生きていくか。自分はそんな誇れる友人のそばに立っていたいと思う』といえば、東出は『人間社会で一生懸命生きてもしんどい人、心がきつい人がいると思う。回り回ってこの劇薬が、誰かの心を救う作品になったら』と、今作への思いを口にしています」(前出・ワイドショー関係者)

事務所を解雇され、芸能界を去って行くかに見えた東出昌大。しかし、山での暮らしを経て、東出は俳優として確実に進化を遂げていると指摘する声もある。

「フリーになってからは、以前のような大作に出ることもなくなりましたが、ネット史上最大の事件を映画化した『Winny』。日本アカデミー賞優秀作品賞などに輝いた話題作『福田村事件』などの注目作で確かな爪痕を残しています」(前出・プロデューサー)

関東大震災直後に起きた虐殺事件を描いた映画『福田村事件』では、渡し舟の船頭・倉蔵を演じている東出。出征中の友の妻(コムアイ)に手を出す間男役であり、満州から引き揚げて来た主人公の妻・静子(田中麗奈)と渡し舟の上で艶シーンを演じるなど、今までない役どころに挑戦。監督の森達也氏は

「東出さんには、野性的な色気や浮世離れしたスケール感があってハマり役。撮影しながら惚れ惚れした」

と賞賛の声を惜しまない。

「オウム事件を扱ったドキュメンタリー映画『A』などで知られる森達也監督が初めて”劇映画”を撮ると知った東出は、みずから出演を志願。狩猟生活の中で勝ち取ったリアリティ溢れる演技は、以前の東出には見られなかった迫力を感じます」(制作会社ディレクター)

俳優・東出昌大の再生の記録でもある映画『WILL』。近頃の東出は『ムーミン』に登場する、旅を愛するスナフキンに見えなくもない。

一部の報道によると『コンフィデンスマンJP』の続編の企画も囁かれる。東出昌大の”再ブレイク”は、いよいよ現実味を帯びて来たのかもしれない――。

文:島右近(放送作家・映像プロデューサー)
バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版