「頭に入ってこない」「なんとなく読み応えがない」文章を“記憶に残す”意外なテクニック

ネットで多くの記事や書籍が読める時代に、デジタルと紙の媒体をうまく使い分けるコツとは? 奥野宣之さんが上梓した『ちゃんと「読む」ための本 人生がうまくいく231の知的習慣』より、一部を抜粋して紹介する。

紙とデジタルの「チェンジ」

購読スタイルはしょっちゅう見直しましょう。とくに電子版で気に入ったものを紙での購読に切り替える「紙チェンジ」は、ひじょうに重要です。

たとえば、電子版の日経新聞を読んでいて「この統計データの解説記事は繰り返し読んで頭に入れたい」と思ったら、コンビニに行って紙の日経を買う。雑誌の読み放題サービス「dマガジン」で注目すべき連載を見つけたら、書店で実物を買ったり紙の定期購読に切り替えたりする、といった具合です。

「電子で読めるのにさらにカネを払うなんて!」と思うかもしれませんが、何度も読み返したり、じっくり味わって印象に刻んだりといったケースでは、紙の方が圧倒的に有利なのです。

「紙チェンジ」はお金を払うだけの価値がある、と断言しておきましょう。

現代は、ネット上でタダ同然で読めるコンテンツがあふれているせいか、紙バージョンを購入すると聞くと損するように思いがちです。しかし、本当に頭に残る読み方をしたければ、考え方を変える必要があります。サブスクの読み放題やデジタル版はあくまで「お試し用」の仮の姿であって、真の姿である「紙」を入手するのにカネを支払うのは当然なのです。

とくに毎号、保存したい記事がいくつも出てくるような雑誌なら、迷うことなく定期購読を申し込んで「紙チェンジ」すべきでしょう。

逆に、紙で読んでいて「これはそんなに集中して読まなくていいな」と思ったものは、「電子チェンジ」します。

紙から電子版の購読に切り替えてもいいし、定額の読み放題サービス(サブスク)を活用するのも手でしょう。雑誌の場合、「dマガジン」のラインナップに入っていなくても、アマゾンの読み放題サービス「キンドル・アンリミテッド」で読めるケースもあるので、チェックしてみてください。

電子にはない紙の「手触りや風合い」が、
記憶に残りやすくする

私の場合、前述したように新聞は基本的に電子購読して、土曜日だけ「紙チェンジ」しています。ストレートニュース中心の平日紙面は、電子版でざっと読めば充分だからです。

もし「電子版では頭に入ってこない」とか「なんとなく読み応えがない」といったことなら、それは「紙で読むのに適したもの」かもしれません。新聞の電子版や雑誌のサブスクはよく無料期間付きの体験キャンペーンをやっているので、気軽にいろいろ試してみるといいでしょう。

紙で読むメリットは、通知などの邪魔が入らず腰を据えて向き合えることに加えて、印象に残りやすい点です。判型や装丁、レイアウトといったそれぞれの特徴があるのはもちろん、紙の硬さや厚み、めくったときの弾力や振動、それに手触りや風合いも雑誌によって微妙に異なります。それにモニタと違って、紙面上の位置といった固有の〝住所〞もある。

このような「背景情報」と、記事や写真といったコンテンツとが組み合わさった結果、「独特の体験」として印象に残りやすくなるのではないでしょうか。

定期購読者なら毎月読んでいる雑誌の触り心地をすぐイメージできるし、日経を紙と電子でW契約している購読者なら、電子版を紙面レイアウトで読むより、紙で読む方が頭に残るのを実感しているでしょう。

読むという行為において「触覚」は、ふだんあまり意識されることはありませんが、じつは大きなウェイトを占めているのです。

さらに、紙チェンジするといろいろと取り回しが効くのもポイントです。

ネット上の記事を「これ読んでみて」を同僚にメールで送ってもたぶん見てくれませんが、一緒にランチにでも行って切り取ったページを渡せば、その場で情報共有できるし、会話も広がります。

ちゃんと「読む」ための本 人生がうまくいく231の知的習慣(PHP研究所)

著者:奥野宣之

2023年4月22日

\1,760

‎ 352ページ

ISBN:

978-4569854489

毎日5分だけ文章を味わえば、人生が変わる!「本を読む時間がない」「集中できない」と嘆くあなたに朗報!累計70万部超の「情報整理の達人」が教える、書く力と話す力を同時に伸ばす「すごいリーディング」

「タイパ(タイムパフォーマンス)が悪い」からと読書を敬遠する人が増えている。

だが、本に限らず何かをじっくり読むと、知識以上に得られるものは多い。なにより「言葉を扱う能力」が劇的に向上する。それは著者自身が経験し、証明してきたことでもある。本書では、新聞記者、ライター 、作家として20年にわたり「文章」を扱ってきた著者が実践し続ける、「スマホと距離を置く方法」や「自分に大切な文章だけを頭に残す方法」などを公開(その数、じつに231!)。本に線を引いたり、新聞を切り抜いたりして印象に刻むなど、一見するとコスパが悪そうな「習慣」ばかりだが、あなたの人生にきっとプラスになる。読む力が落ちていると言われる現代人に向けて、“丁寧に読む面白さと気持ちよさ”を教えてくれる。「近ごろ読書不足だから、ちょっと読んでみようか」といった気持ちで、ぜひ本書を手に取ってほしい。