女子バレーボール日本代表は、現地時間9月24日からオランダのアーネムで開催される世界選手権に出場する。4年に一度開催される世界選手権はバレー界で最も歴史が古く、かつ規模が大きい大会。当然、今年度の代表活動でも一番の目標となってきた。


エースとして大きく成長した主将の古賀紗理那

 5年ぶりにチームの指揮を執る眞鍋政義監督は、日本を離れる前のオンライン会見で「目標は3次リーグ進出だが、今回は1次、2次と非常に厳しいゾーンに入っている。一致団結してベストを尽くしたい」とコメント。眞鍋監督は2010年の世界選手権で銅メダルを獲得しているが、再びメダルを獲得するための条件について次のように語った。

「ネーションズリーグ(VNL)は8連勝のあとに5連敗。スピードがあるバレーをしているので、その分精度を高めていかないと、世界の強豪と互角に戦うことは難しいと感じました。サーブも大きなウエイトを占めていますね。ジャンプサーブを打つ選手には、90kmを出すことを目安にするように話しています」

 その言葉どおり、今年の6、7月に行なわれたVNLで連勝を重ねていた時は、眞鍋監督が掲げる「スピードバレー」とバックアタックがうまく噛み合っていた。大きく成長したエースの古賀紗理那が、速いトスを打ちこなすだけでなくバックアタックでも得点を重ねた。

 さらに、筑波大学時代から注目されていた井上愛里沙が国際舞台でも花開き、古賀とのダブルエースとなるかと期待されたが......各国にマークされ始めてから井上は思うように得点できなくなっていった。ライトアタッカーも多くの選手を試したがうまく回らず、途中から守備型の林琴奈が担当するようになった。それでも、9月9日から18日までフランスで開催されたパリオリンピックプレ大会では、準決勝までの5試合をすべてストレート勝ち。決勝のフランス戦も1セットを落としたのみで優勝を果たしている。

 VNLからプレ大会を通して、チームの現状が見えてきた。

 VNL後半で勢いが落ちた井上は、プレ大会ではスタメンを維持できるところまでは復調。遅咲きのエースだが、世界選手権ではVリーグMVPの意地を見せてほしい。セッターに関しては、VNLでは関菜々巳と松井珠己が激しくスタメンを争っていたものの、世界選手権に向けた合宿で松井が外れ、東京五輪の正セッターだった籾井あきが選出された。

 籾井は昨季五輪が終わったあと、Vリーグの前半は休養して後半から復帰。今年度の代表で途中からの選出になったのはケガが原因だったようだ。プレ大会を見る限り、第1セッターは関で間違いないだろうが、決勝のフランス戦は第1セットを奪われてから籾井にチェンジしたあとに流れが大きく変わったため、十分なアピールになっただろう。

 関はボールの下に走り込むのが早く、乱れたパスもトスにできる力がある。一方の籾井は、176cmと女子のセッターとしては長身で、サーブレシーブを高めに返しても大丈夫という安心感をレシーバーに与えることができる。タイプが違う2人を、世界選手権本戦でどう使い分けるのかに注目したい。

 プレ大会の決勝で不安をのぞかせたのがサーブだ。古賀が4セット合計で両チーム最多の26得点と、絶対エースの存在感を遺憾なく見せつけて勝利したが、チーム全体のサーブミスがなんと18点。これには眞鍋監督も「サーブで崩さないと世界相手には通用しない、と常に言っているが......」と苦笑い。「(サーブは)やはりメンタルでしょうね。世界選手権でも大きなカギになると思うので、あと少しですが精度やスピードを高めていきたい」と気を引き締めた。

 さらなる課題は、ミドルブロッカー陣。VNLから多くの選手を試してきたが、プレ大会でも横田真未、小川愛里奈、ベテランの島村春世とスタメンは定まらず、試合途中で選手を交代させていた。島村以外の2人は170cm台で、世界のミドルブロッカー陣に比べると高さはかなり劣る。そのためプレ大会中には、6年ぶりに代表復帰したアウトサイドヒッターの宮部藍梨(181cm)がミドルブロッカーとしても起用された。

 宮部は金蘭会高校時代にシニア代表を経験したあと、アメリカの大学でプレーしてきた。ミドルとしての動きはまだスピード感に欠けるが、やはり高さは魅力。妹の宮部愛芽世も代表メンバーに残っているため、姉妹での活躍を見たいところだ。

 世界選手権に向け、主将の古賀紗理那は「劣勢の時に、選手それぞれが"ひとり"になってコートが広くなってしまう。そこで私が声をかけるなどして、孤立する人を出さずにチーム力で勝っていきたい」と意気込みを話した。

 眞鍋監督は世界選手権での目標を「ベスト8」と定めているが、さらに上の「ベスト4」も視野に入れている。2010年の世界選手権、2012年のロンドン五輪で銅メダルを獲得した経験から、「オリンピックでメダルを獲るには、2年前の世界選手権でもメダル、少なくともベスト4に入っていなければいけない」という計算があるのだろう。

 コロナ禍で東京五輪が1年延期されたため、就任初年度で世界選手権という大きな試金石を乗り越えなければならなくなった眞鍋監督だが、どういった采配を見せるのか。初戦のコロンビア戦(現地時間9月25日14:15/日本時間で同日の21:15)から、目が離せない試合が続きそうだ。