衆院法務委員会で審議中のいわゆる「共謀罪法案」について、社会民主党の福島瑞穂党首は12日、東京都千代田区の参院議員会館でライブドア・ニュースのインタビューに応じた。福島党首は、何も実行していない段階で罪になる共謀罪の新設に反対する考えを改めて表明した上で、「選挙のない今年は、1999年に成立した盗聴法など5つの法律のバージョンアップが起こる」との認識を示した。

 共謀罪新設の根拠となっているのは、各国が協力して国際組織犯罪を防止することを目的に2000年11月に国連で採択された「国際組織犯罪防止条約」。国会では03年5月に承認されたが、共謀罪などが盛り込まれていたため政党では社民党だけが反対した。政府・与党は、同条約を批准には共謀罪など国内法の整備が必要と主張し、619の犯罪を対象にした法案を提出した。野党・市民団体などからは政府・与党案に対して、対象を国際犯罪に限定していないなどの問題点が指摘されている。


──共謀罪に反対する理由は何ですか。

 何も行為を実行していないのに、処罰されるのはおかしいからです。たとえば「あいつなんて死んでしまえ」と言うことと、実際に殺すまでにはものすごく距離がある。行為があって初めて処罰するというのは、刑法の原則です。やっていないことをなぜ処罰できるのでしょうか。

 また、既遂がとても早まります。例えば、選挙事務所で「アルバイトを雇って電話をかけてもらおうか」と話して、30分後にやめることにしても既遂です。唯一有罪から免れる方法は、密告しかありません。

 政府案は619の犯罪で成立して、対象がとても広い。それに越境性を要件にしていません。市民団体や労働組合、会社や行政も場合によっては対象に入りうる。現在、与党が提示している修正案では「労働組合の正当な活動は除外する」とされていますが、何が正当な活動か分かりません。しかも「除外する」ということは、適用対象に入ることが前提です。民主党案が適用対象について越境性を条件にしていることは1つの前進。しかし、社民党は共謀罪自体に反対しているので、民主党案にも反対です。

──今、政権側が共謀罪を提供してきた背景は何だと考えますか。

 自自公政権(小渕内閣)だった1999年、盗聴法、国旗国歌法など5つの法律が成立しましたが、06年はそれらのバーションアップが起こる年です。

 盗聴法が共謀罪。国旗国家法は教育基本法の改悪法案。憲法調査会の設置(国会法の改正)は国民投票法案の論点整理。周辺事態法は在日米軍の再編。住民基本台帳法の改悪は、入国管理法の改悪法案につながっていきます。

 共謀罪をやっていると、すごく盗聴法のことを思い出します。共謀罪が施行されると盗聴の拡大が起こるかもしれない。共謀したという証拠はないのだから。

 99年、06年、いずれも大きな国政選挙がない年です。やはり国民を監視したいのではないでしょうか。

──どうして監視したいのか。権力者は、いつまでも権力者でいられないと思いますが。

 いや、いつまでも権力者でいるために監視するんじゃないですか。危ない人間はできる限り早く芽を摘み取りたいのでしょう。しかも恣意的に。

──共謀罪の新設でいったい誰が得をするのかよく見えません。

 そうですね。共謀罪の推進派はテロ対策を掲げていますが、ギリシャの政治家ゲオルギオス・A・パパンドレウ氏は「保守主義者がテロからの保護について話す時、彼らはしばしば私たちの自由を取り上げようとする」と話しています。

 もちろん犯罪を取り締まった方がいいですが、行為がない段階で処罰するようでは、恐怖政治になってしまいます。ただ、自分が権力を持っていれば、みんなが何を考えているか監視したいという欲求はあるのではないでしょうか。

 監視社会は階層社会であり、高コスト社会になる。そして、とても息苦しい社会です。みんなが息苦しくて幸せにならない社会は、どこかでおかしくなると考えます。【了】

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