11日、共謀罪についてインタビューに答えた民主党の平岡秀夫衆院議員。(撮影:徳永裕介)

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衆院法務委員会で審議中の「共謀罪法案」について、民主党修正案提出者の平岡秀夫衆院議員(同委員会所属)は11日、東京都千代田区の衆院第2議員会館でライブドア・ニュースのインタビューに応じた。平岡議員は、刑期4年以上の619の犯罪を適用対象にし、「国際組織犯罪防止条約に従っただけ」とする政府・与党の主張に「一理ある」としながらも、条約の一部を留保してでも、犯罪が発生してはじめて犯罪として処罰する国内法の基本原則に沿った立法をすべきとの考えを示した。

 共謀罪新設の根拠となっているのは2000年11月に国連で採択された「国際組織犯罪防止条約」。日本も同12月に署名し、同条約は03年に発効している。同条約は、適用範囲を原則として越境組織犯罪に限定しているが、共謀罪については国内法に共謀罪の導入を求めている。その際、共謀罪の適用犯罪は越境性(他国に影響を与えたり、国をまたいで活動すること)を要件にしないと規定。このため政府・与党は、同条約に沿った法案を提出した。一方、民主党は条約の趣旨から、共謀罪の対象は国際犯罪に限定するよう求めている。



── 共謀罪新設の根拠とされている「国際組織犯罪防止条約」は、テロ対策が目的とされているのですか。

 テロ対策という人が多いですが、条約そのものは人身売買や麻薬取引などを国際的・組織的にやっている人たちを取り締まっていくものです。条約に適用犯罪の種類がリスト化されておらず、単に長期4年以上の自由刑に当たる犯罪を対象にするということになったので、「テロ対策にも役に立ちますね」と、テロ対策が前面に押し出されてきた感があります。テロ対策ならテロ対策の条約を作ってから、国内法整備をしていくべきです。

── 政府・与党案では、619もの犯罪が共謀罪の適用対象になったり、越境性(国際性)を犯罪成立の要件にしていません。条約の規定に従っただけと主張していますが、政府・与党案の問題点はどこですか。

 政府・与党の主張に一理あるとは思います。ただ、共謀罪は日本の法律の基本原理からは外れている罪だと認識した上で、審議していかなければいけません。条約にも「自国の国内法の基本原則に従って必要な措置をとる」(第34条1項)とあります。

 越境性や重大犯罪については、確かに具体的なことが書いてありますが(※1)、越境性については専門家の間でも議論があります。条約の趣旨は国際的な組織犯罪を防止することなので、民主党は条約の目的と両立できる点については、条約を留保(※2)してでも国内法制化して大丈夫だという立場に立っています。

── 承認の段階では、留保について議論はなかったのでしょうか。

 留保するのはあくまでも政府であって、国会ではないんですね。留保付き賛成というのはなく、賛成か反対かだけです。ただし、問題点については承認の審議段階で、当時の民主党政権がしっかりと指摘しています。

── 留保は政府がする行為なので、政府に下駄を預けることになりませんか。

 政府は憲法に基づき、条約を締結する権限を有しています。政府は法律を変えるわけにいかないので、条約と違っているところは留保するなり、解釈宣言するなりして条約を締結していかなければなりません。何の問題もありません。

── では、民主党案が採択された場合、政府に対して留保の働きかけをしていくのですか。

 働きかけをしなくても、政府は当然にやらざるを得ないでしょう。

── 条約締結各国の共謀罪への対応は、どうなっていますか。

 共謀罪がないドイツやフランスは、参加罪で対応しています。米英やカナダは共謀罪が既にあります。それらの国は、新たに国内法を整備する必要がない状況で条約交渉をしています。こんなに大騒ぎして新しく法律をつくらなければいけないのは日本だけです。

── 民主党は与党と修正協議に入ったと報道されています。

 与党は、条約の文言の範囲を超えることが絶対できないという立場です。我々は文言にとらわれず、条約の趣旨と両立できる範囲で修正を考えたい。越境性の問題や、対象犯罪を「長期4年の自由刑」「長期5年超の自由刑」のどちらかにするかが焦点でしょうね。

── どんな見通しですか。

 むこう(与党)の出かた次第でしょう。



※1 条約の第34条2項には、国内法では共謀罪について、越境性(国際性)を適用対象の要件しないと規定されている。また、「重大な犯罪」については、条約第2条に「長期4年以上の自由を剥奪する刑、またはこれより重い刑を科することができる犯罪を構成する行為」と定められている。

※2 日本の場合、条約は国会の承認を経て、政府が天皇に批准書の認証を行わせる。条約の締結などについて定めたウィーン条約では、政府は批准の段階で条約の一部を留保できると規定されている。

【了】

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■関連リンク
国際組織犯罪防止条約(外務省HP)