軽自動車にはめずらしい「スカイフィールトップ」を採用

 ダイハツの新型軽クロスオーバーのタフトが販売好調だ。2020年6月10日の発売から1カ月で月販販売台数目標の”控え目”な4000台に対して、なんと約4.5倍の約18000台に達したという。空前のSUV、クロスオーバーブームが後押ししたことは間違いないが、タフトに関して、多くの人が勘違いしているかもしれないことがある。

 それは、タフトがスズキ・ハスラーのガチライバルではないか? ということだ。ダイハツには以前、キャスト・アクティバというモデルがあり、それは間違いなくハスラーの対抗馬だった。が、ハスラーに押され、キャスト・スタイルを残して消滅した経緯がある。では、タフトはキャスト・アクティバの後継車なのか。それも「違います」とタフトの開発陣は断言する。じつはタフト、ダイハツ的にはテリオス・キッドの後継者として位置付けているのである。

 しかも、キャラクター、コンセプトからして、ハスラーとは大いに異なる。ハスラーが可愛いゴツい、カラフルなボディカラーも用意した老若男女向けのクロスオーバーなのに対して、タフトはずっとスクエアでワイルド。ハマーやジープラングラー、それこそトヨタの自衛隊向けのメガクルーザーのような雰囲気を醸し出している。レイクブルーメタリック、フォレストカーキメタリック、サンドベージュメタリックといったアースカラーのボディカラーがメインカラーであることも、そんなキャラクターを象徴しているではないか。どうしてもハスラーをライバル視したいのであれば、むしろ、ハスラーとジムニーの中間的キャラクターと考えれば、そこそこ納得がいくかもしれない……。

 ただし、クロスオーバーSUVとしての走破性については、ある部分、逆転している。そもそも初代ハスラーは雪国のユーザーの熱いリクエストに応えて登場したクルマでもあり、雪道はもちろん、悪路の走破性にも特化した軽クロスオーバーである。実際、タフトの本格SUVに相当する最低地上高190mmは立派だが、走破性に関する付加機能としては、グリップサポート機能のみ。

 対するハスラーは、4WD車のみながら、滑りやすい路面での発進をサポートするグリップコントロール、急な下り坂でブレーキを踏まなくても時速約7km/hにコントロールしてくれるヒルディセントコントロール、さらに2代目となる新型では、これまた雪国のユーザーの要望に応え、エンジンの出力を自動で制御するとともに、ブレーキ制御も併用するスノーモードも完備しているという具合だ。

 そう、意外かもしれないが、悪路走破性によりこだわっているのは、ハスラーのほうなのである。また、装備、使い勝手面での売りも異なる。タフトは軽自動車ではめずらしい、ガラスルーフが前方視界の一部になるスカイフィールトップを標準装備。これはハスラーには望めない装備である。

 一方、ハスラーには、荷室の奥行を可変できる、後席スライド機構を装備するとともに、室内の奥行のすべて、前席まで使ったフルフラットアレンジが売りとなる。結果、ハスラーは車中泊が可能。純正アクセサリーとしてもアウトドア、車中泊関連のアイテムが豊富に揃えられている。その点、タフトの純正アクセサリーには車中泊アイテムは見当たらない。じつはそれ、タフトの”割り切り”コンセプトのひとつで、車中泊をお望みなら、ウェイクをどうぞ……ということなのである。

商品力は極めて高いと言える!

 では、タフトはどんなユーザーに向いているのだろうか。基本は若い男性ユーザーで、1人または2名乗車のパーソナルユースがメイン。クルマに個性の強いワイルドなファッション性を求め、ライトアウトドアを楽しみ、ACC(アダプティブクルーズコントロール)がGターボに標準装備されるだけでなく、NAモデルのGにもクルーズパックとしてOP設定されていることから、高速走行の機会が多いユーザーにもぴったりだ。もっと言えば、ハマーやシープラングラーのようなワイルドにもほどがあるクルマに憧れてはいるものの、実際にはコンパクトなクルマに乗りたいユーザーにもうってつけということになる。

 ハスラーはカラフルなボディカラー、丸目ヘッドライトのキュートさから、女性でもファッションの一部として気軽に付き合える1台。もちろん、ボディカラーによっては老若男女にフィットする。雪国、アウトドア、車中泊、悪路といったキーワードにも応えてくれるし、ACCが付くターボモデルなら、軽自動車ナンバーワンと言ってもいい乗り心地の良さから(タフトの乗り心地はエクステリアデザインに合わせ!? 硬めだ)、高速走行もラクラクで、ロングドライブにも適している。後席使用時にも荷室スペースをある程度確保したいユーザーにもうってつけである。

 超人気で、依然として納期に時間のかかるジムニーに関しては、やはりマニアックな本格軽クロスカントリーモデルだけに、素人が気軽に乗って大満足できるクルマとは言い難い。道なき道を行くことに喜びを感じる本格的な悪路走行を好むアウトドア派や、それこそ僻地の過酷な条件下でクルマを使わなければならない、走破性を最重要視するユーザーにこそ使ってもらいたい”道具”的価値が分かる人向けだ。逆に言えば、都会の足に使うには、ファッション性はともかく、もったいなさすぎるクルマなのである。

 男のボクとしては、そうした3車のキャラクター分け(仮)からも、タフトは今の時代の空気にぴったりだと思える。メルセデスベンツのGクラスが富裕層にウケているのは周知の事実だが、そんなノリが100万円台で、スカイフィールトップやダイハツ最新の先進運転支援機能=ACCを含むスマアシ、なんとロッキー用のフレームを使った軽自動車最上級のかけ心地&自然かつ安心感絶大なサポート性を持つ前席、軽自動車としては最先端のダイハツコネクト、車内用ダイハツWi-Fiなどとともに手に入るのだから、商品力は極めて高いと考えるべきだろう。よーく見ればハスラーの二番煎じ、ガチライバルでは決してないのだが、軽クロスオーバーの王者、ハスラーの牙城を脅かす存在であることは、間違いないと思える。

 ダイハツは若い男性ユーザーをメインターゲットにしているため、「男は黙ってタフト」と言いたいところだが、草食系男子、草食系グルマに嫌気がさしている、タフトの頼りがいがありすぎるタフでスクエアな男気あるデザインに惚れ込む女性ユーザーも、きっと多いのではないだろうか。