スーパー大手の永輝超市は新型コロナの流行下でも業績を伸ばした(写真は永輝超市のウェブサイトより)

新型コロナウイルスの流行による「巣ごもり消費」の広がりが、中国の小売業界の構造を変えつつある。

スーパーマーケット大手の永輝超市は4月29日、2019年の通期業績および2020年1〜3月の四半期業績を発表した。2019年通期の売上高は前年比20.36%増の848億7700万元(約1兆2732億円)と、積極的な新規出店などで前年並みの成長率を確保。しかし純利益は5.63%増の15億6400万元(約234億6000万円)にとどまり、アナリストの事前予想を下回った。

ところが、中国での新型コロナの流行期に重なった2020年1〜3月期の業績は予想を超える目覚ましい伸びを見せた。売上高は前年同期比31.57%増の292億5700万元(約4388億5500万円)、純利益は同39.47%増の15億6800万元(約235億2000万円)と、この四半期だけで2019年通期を上回る純利益を稼ぎ出したのだ。

宅配サービスの6割弱が自社アプリ経由に

好業績の背景には2つの要因がある。1月下旬から3月にかけて各地の生鮮市場(訳注:野菜、肉類、魚介類などを扱う個人営業の小規模店舗が集まる市場)や飲食店が閉鎖されたなか、営業を続けたスーパーの来店客数がわずかながら増えたこと。そして巣ごもり消費の拡大で、スマートフォンのアプリから注文を受けた商品を自宅まで届ける宅配サービスが大幅に伸びたことだ。

1〜3月期の宅配サービスの売上高は20億9000万元(約313億5000万円)と、前年同期の3.4倍に急増。総売上高に占める比率は7.3%と前年同期より4.5ポイント上昇した。国泰君安証券のリポートによれば、永輝超市の宅配サービスの注文数は2月1日の1日だけで20万件以上、2月8日には30万件を突破し、注文1件当たりの金額は100元(約1500円)に達した。

永輝超市は2019年からアプリを通じた宅配サービスに注力してきたが、新型コロナの影響でいち早く成果が表れた格好だ。自社アプリ「永輝生活」を通じた注文は、2020年3月には宅配サービス全体の売り上げの57%を占めた。


本記事は「財新」の提供記事です

同社はさらに、ネット通販大手の京東集団、生活アプリの美団点評、出前アプリの餓了麽(ウーラマ)など他社のプラットフォーム上にも積極的に進出している。例えば京東の宅配アプリ「京東到家」経由の注文に対応する永輝超市の店舗は、2019年末には485店に増加した。

(財新記者:孫良慈)
※原文の配信は4月29日