プロ19年目を迎えた小野伸二が充実の日々を送っている。

 昨夏に加入したため、FC琉球でキャンプを迎えるのは初めて。半年以上、温暖な気候で練習を積んだ甲斐もあり、万全のコンディションで日々のメニューを消化してきた。「怪我もなくやれている。このリズムを崩さないようにしたい。何歳になっても試合には出たいので、負けないように激しくトレーニングをしたいと思います」とは小野の言葉。浅黒く焼けた肌が充実ぶりを物語っていた。

 今季2度目の実践となる1月30日の大宮戦(0●1)では、35分ハーフの後半頭から出場。4-2-3-1のダブルボランチに入り、運動量は抑えながらも熟練の技を随所に見せる。正確なボールタッチと的確なポジショニングでボールを受けると、柔らかなパスを前線に供給。“小野らしい”ワクワクするプレーも健在だ。後半半ばに見せた相手の虚を衝くアウトサイドパスは流石の一言で、遊び心が存分に詰まっていた。

 攻撃面で確かな存在感を示したなかで、光っていたのはそれだけではない。的確なコーチングだ。とりわけ、目を惹いたのは守備時の指示出し。「僕自身が守備を好きではないので(笑)」と悪戯っぽく笑ったが、身振り手振りを交えながらチームメイトを動かしていた。大宮戦を振り返り、小野は言う。

「攻撃はアイデアが生まれてくるけど、守備は組織でやらないとうまくいかない。そこで大事になるのは声。それが選手の助けになると思うし、(守る上で)自分の助けにもなると思う」

 個で違いを作ることも重要だが、いかにチームで戦えるか。日本代表やヨーロッパの舞台で様々な経験を積んだ“稀代のプレーメーカー”は誰よりもその重要性を理解している。だからこそ、そうした声掛けを絶やさなかった。
 
グラウンドで大きな影響を与えている小野。その存在感は絶大で、若手の成長を促す役割でも一役買っている。なかでも声を大にして説くのは、チャレンジの重要性だ。

「簡単なミスが多すぎるのは良くない。判断ミスはしょうがないけど、技術的なミスや、やってきたことができない、チャレンジができないなどの、消極的なミスに関しては自分たちで厳しく受け止めないといけない。チャレンジしてのミスであれば、逆に褒めた方が次につながると思う。そういうものにチャレンジする意思だとか、そういうものをもっと芽生えさせていいものを作っていきたい」

 実際にプロ2年目のGK猪瀬康介も、大宮戦の前に小野から助言を受けたと言う。

「伸二さんからはチャレンジする大切さを教わりましたし、今日の試合前もどんどんビルドアップにチャレンジしろよと言ってもらえた。そういう意味で経験のある選手が言う言葉は重たい」(猪瀬)

 実際に小野はピッチ外で積極的に声を掛けており、昨シーズンの途中には若手を連れて食事に行く機会があったという。すぐそばにいる最高のお手本――。“レジェンドの存在”がチームの成長をさらに促すのは間違いない。

 コンディションは申し分ない。あとは結果を残すだけだ。最高のシーズンにするために試合に出場しながら、ピッチ内外でチームのために献身する。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

【画像】華麗なタッチで魅せる小野伸二の厳選ショット!