車の運転中、他の車のドライバーが窓から唾やたんを吐いたり、吸い殻をポイ捨てしたりしているのを見たことはありませんか。

見るだけで不快なものですが、それが自分の車に飛んできたときは最悪です。車が汚れ、ブルーな1日になってしまいます。

マナー違反であることは疑いようがありませんが、車からの唾吐き、吸い殻のポイ捨ては、そもそも法的にはどのように規制されているのでしょうか。鬼沢健士弁護士に聞きました。

●唾吐きやポイ捨ては法律違反に相当する行為

――車から唾を吐くことは、法的には問題になりますか?

車から唾を吐く行為については、軽犯罪法1条26号に反する可能性があります。

・軽犯罪法1条26号 街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者

――車から吸い殻をポイ捨てすることについてはどうでしょうか?

車から吸い殻を捨てる行為については、廃棄物処理法16条や道路交通法76条4項4号・5号に反する可能性があります。

・廃棄物処理法16条 何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。

・道路交通法76条4項 4号 石、ガラスびん、金属片その他道路上の人若しくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げ、又は発射すること。 5号 前号に掲げるもののほか、道路において進行中の車両等から物件を投げること。

このように車の窓から唾を吐くとか、吸い殻を捨てる行為はもはやマナー違反にとどまらず、法律違反に相当する行為です。

――これらの行為からトラブルに発展することもありそうです。

今年は悪質なあおり運転が話題となり、あおり運転に対する処罰感情が非常に高まりました。ドライブレコーダーをつけている車が増えてきており、唾吐きやポイ捨て行為が録画されていることもあるでしょう。

今のところ、唾吐きやポイ捨てで処罰されるケースは多くありませんが、いつ処罰感情が高まってもおかしくありません。

もちろん話題にならなければしてもいいというわけではありませんが、これまでこうした行為をしてきてしまった人は十分に注意しましょう。

●唾吐きやポイ捨てで車が汚れたりキズがついたりしても、責任の追及は容易でない

――唾吐きやポイ捨てで、何か民事上の問題になることはありますか?

例えば、走行中に窓から唾を吐かれたり、ゴミを捨てる行為にびっくりした他の車が事故を起こしてしまった場合には、事故によって発生した損害の賠償をすることになる可能性があります。

――吐かれた唾で自分の車などを汚されたとき、相手に賠償を求められるのでしょうか?

唾は洗い流せばすぐ落ちるでしょうし、それだけで車に乗れないとか価値が落ちるということはないでしょうから、賠償を求めることは難しいでしょう。

仮に賠償請求が認められたとしても、極めて少額になると思われます。非常に不快な行為ですが、現実的に追及できる責任はほとんどありません。

――吸い殻で車にキズがついた場合などはどうでしょうか?

吸い殻で車に焼け痕などがついた場合には、修理が必要ですから修理代を請求することが可能です。

しかし、法的に求めることが可能であったとしても、実際に運転中の相手のナンバーをおぼえ、ナンバーから相手を特定する必要があるなど多くの手間や負担がかかることを考えると、実際の賠償を得られる可能性は決して高くないでしょう。

【取材協力弁護士】
鬼沢 健士(おにざわ・たけし)弁護士
交通事故、労働、家事問題(離婚・相続)を取り扱う。
事務所名:じょうばん法律事務所
事務所URL:http://www.jobanlaw.com/