浦和レッズが、天皇杯決勝でベガルタ仙台を下し、今季国内最後のタイトルを手にした。

 今季の天皇杯決勝は、そもそも来年1月5日にアジアカップが開幕することに配慮して、例年の1月1日ではなく、12月24日に行なわれることになっていた。

 ところが、鹿島アントラーズがAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を制し、12月12日開幕(現地時間)のFIFAクラブワールドカップに出場することになったため、急きょ天皇杯の日程が前倒しに。12月5日に準決勝、9日に決勝が行なわれるという、何とも慌ただしいスケジュールに変更された。

 試合に臨む選手たちにすれば、12月1日にJ1最終節を終え、本来ならひと息入れて、気分も新たに天皇杯に臨めるはずだったのだから、肉体的にも、精神的にも、準備が難しい状況になったのは間違いあるまい。

 そんななか浦和は、準決勝の鹿島戦、決勝の仙台戦を、ともに1-0でしぶとく勝ち切った。


天皇杯を制した浦和レッズ

「来季、ACLで戦うために、天皇杯(の優勝)は不可欠なものだった。浦和はACLを2回獲っている。ACLを戦えないという状況は避けたかった」

 オズワルド・オリヴェイラ監督がそう話したように、ACL出場のラストチャンスにかける、浦和の執念が実った結果だった。

 GK西川周作は「毎年、何らかのタイトルを獲れるのが、浦和の強み」と語ったが、これで浦和は、2016年ルヴァンカップ、2017年ACL、そして今季の天皇杯と、3季連続でタイトルを獲り続けている。

 2015年以前は、あと一歩でタイトルを逃すことが何度もあった浦和だが、天皇杯での準決勝、決勝を振り返っても、セットプレーを生かして効率よく得点し、あとは割り切って守りを固める。そんな勝負強さが身についてきたように見える。MF長澤和輝が語る。

「前半のいい時間帯に点を取って、試合巧者のように点を取られないよう、試合を進められた。こういう戦いでは点を取ることも大事だが、取られないことも大事。トーナメントの戦いができた」

 とはいえ、浦和がいい形で攻撃を組み立てることができず、守備に回らざるを得ない試合展開だったのも確か。決勝を見ていても、チーム全体が連動し、ダイナミックに人もボールも動いていたのは、仙台のほうだった。

 シーズン最後に一冠を確保したとはいえ、内容的に言えば、来季への期待が大いに高まるものには見えなかった。

 今季からキャプテンを務めたMF柏木陽介も、「勝ち切る強さは、チームとしての成長」と手応えを口にしつつも、「正直、内容については『よかった』と言える試合ではなかった」と言い、こう語る。

「勝ち切れるようになったことは確かに強みだが、勝ちにこだわったガチガチのサッカーは(ACLで対戦する)中国や韓国のチームが得意なところだし、それだけでは勝ち上がれない。天皇杯では、内容よりも勝つことにこだわって結果を出せたが、来季に向けてはキャンプから戦術的な部分を、もっとつめていく必要がある」

 オリヴェイラ監督が今季途中に就任し、第10節から指揮を執った浦和は、その直後こそ、思うような結果を出せなかった。だが、ワールドカップ開催にともなう中断期間中に、静岡で1週間ほどのトレーニングキャンプを行なったことで状況が好転。ハードなメニューを課すことで、「フィジカル的なところを向上させるだけでなく、戦術的なところも浸透させた」(オリヴェイラ監督)というチームは、中断明けの第16節以降、10勝5敗4分けと巻き返した(第15節までは4勝6敗5分け)。

 鹿島で監督を務めた時代には、J1で3連覇を成し遂げたブラジル人指揮官が、「まずはモチベーションを上げることが必要だった。選手が、練習に対する姿勢は、少し意欲が低下していると感じた。無気力な姿があったし、後半になるとパフォーマンスが落ちる試合が多かった」と振り返ったチームは、シーズン後半、徐々に成績を回復させていった。今季J1では、開幕戦から5戦勝ちなし(3敗2分け)のスタートだったことを思えば、最悪の事態は脱したのだろう。

 しかしながら、J1のラスト5戦では、1試合ごとに勝ちと負けを繰り返すなど成績は安定せず、強さは完全なものとはなっていない。優勝した天皇杯でも、その試合内容はすでに記したとおりだ。

「選手に自信をつけさせ、意欲的な姿勢にさせることが重要だった」(オリヴェイラ監督)という浦和にとって、12シーズンぶりに天皇杯を制覇したことは、”勝ちグセをつける”という意味で非常に高い価値を持つ。実際、自信にもなっただろう。

 だが、2006年以来、J1優勝から遠ざかる浦和の真価が問われるのはこれからだ。

 喜んでばかりはいられない。