マイナーチェンジされたロードスター(右)と「ロードスターRF」(筆者撮影)

マツダが「ロードスター」シリーズ(排気量1.5Lエンジンを搭載するソフトトップモデルと2.0Lエンジンを搭載するハードトップのロードスターRF)のマイナーチェンジを行った。


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新車発表から一定の期間を経て実施される変更を一般的にはマイナーチェンジと呼ぶが、マツダではマイナーチェンジと呼ばず「商品改良」と呼ぶ。ちなみに、ソフトトップモデルが2017年11月に商品改良を行っていたので、今回は現行のND型ロードスターとして2回目の商品改良となる。

2回目の商品改良では2.0Lエンジンを搭載するRFがより大きく進化した。「SKYACTIV-G 2.0」と命名された直列4気筒DOHC 2.0リッターエンジンに手を加えることで、出力とトルクの両方を引き上げつつ、エンジンの最高許容回転数を従来型から700回転高めて7500回転までを常用域としたのだ。これにより1.5Lエンジンを搭載するソフトトップモデルの美点であった高回転域まで気持ちよく回るエンジン特性をRFも手に入れたことになる。

大幅に性能向上した新型2.0Lエンジンの特徴

改良型2.0Lエンジンの具体的な変更点は高出力化。従来型では最高出力158馬力/6000回転、最大トルク20.4kgfm/4600回転であったスペックを、26馬力向上させつつその発生回転数を1000回転高めた184馬力/7000rpmに。一方、最大トルクも0.5kgfmを向上させた20.9kgfmへと高めつつ、その発生回転数を600回転下げ4000回転とした。これにより、低〜中回転域でのトルク特性が向上し、高回転域ではパワフルさが加わった。これが新型2.0Lエンジンの特徴だ。

この大幅な性能向上はエンジン内部の各部に対して手を加えたことで達成されたものだ。まず、シリンダー内に空気を送り込むための吸気ポートに高回転/高出力化に適した「コモンポート形状」を導入。さらに、シリンダー内のピストンを各27g軽量化したうえで、高強度ボルトや肉厚の最適化によって41g減量したコンロッドを組み合わせている。

改良型2.0Lエンジンを搭載するRFは大幅な性能向上を果たしたわけだが、公道試乗の前にはワインディングロードを模したクローズドコースで限界付近の特性を安全に体感することができた。常用回転の上限値である7500回転までしっかり回して走らせると、26馬力(158馬力→184馬力)の出力向上を果たした新型は、およそ3000 回転を過ぎたあたりから車体が軽くなったかのように速度の乗りが良くなり、さらに4000回転を超えるころには力強さもグンと増してくることが確認できた。

これまで、高回転域まで一気にのぼりつめる気持ちのいいエンジン回転フィールは、1.5Lエンジンを搭載するソフトトップモデルの専売特許だった。1.5Lは絶対的なパワーこそ2.0Lに及ばないが感性に訴えかける気持ちよさは断然上にくる。


ロードスターRFの力強さはグンと増した(筆者撮影)

従来型の2.0Lは加速力で比べれば1.5Lを数段上回るものの、6000回転の手前で回転フィールが鈍り(1.5Lは7500回転までほぼ加速力は鈍らない)単調な加速フィールに終始していたため、正直なところ筆者は若干のストレスを感じていた。つまり、従来型の2.0Lは意図的に中回転域を主体としたパワーフィールが特徴であったのだが、同じロードスターでありながら1.5Lと2.0Lでパワーフィールに大きな違いがあった。

筆者は2015年式ソフトトップモデル(Sスペシャルパッケージ)オーナーの1人でもあるため、そうした大きなキャラクターの違いに多少の戸惑いを感じていた……。その点、改良型の2.0Lエンジンは1.5Lのパワーの出方をそのまま上乗せした相似形のように感じられ、ゆえにロードスターがシリーズを通じワンボイスで語ることができるようになった。ストンと腹落ちした気分ですがすがしい。

公道試乗でもそうした改良型2.0Lエンジンの気持ちよさは体感できた。アイドリングの直上である1000回転辺りでゆっくりクラッチミートしてリズムよくシフトアップを繰り返しながら加速させると、澄んだエンジン音と1.5Lエンジンの相似形に近いストレスのない回転フィール、そして排気量相応の力強さが組み合わされた新鮮な走行特性を披露する。

1.5Lエンジンの改良ポイント

対して、1.5Lエンジンを搭載するソフトトップモデルは、1回目の商品改良となる2017年11月にサスペンション特性を含めた特性変更が行われていたため、2回目となる今回はエンジンに小規模な改良が施されたのみ。カタログスペックでは出力で131馬力→132馬力、トルクで150Nm→152Nmとわずかに向上しているが、それが実用域となるとさらに伸びしろは増える。ここが1.5Lエンジンの大きな改良ポイントだ。

6速MTモデルでのクラッチミートポイントと重なる1000rpmでのトルク値は7Nm向上し、4500rpmでシフトアップを行った際はレブリミットである7500rpmに至るまで全域にわたって2Nm向上した。

残念ながら今回は、筆者のマイカーと同じ6速MTモデルに試乗することができず、6速ATモデルのみの試乗であったが、プログラムの見直しによってアクセルの操作量に応じたシフトアップ抑制制御が最適化されていたり、カーブ手前でのブレーキングに応じたダウンシフト制御の正確さが増していたりすることが確認できた。

進化し続けるロードスターシリーズ

ロードスターシリーズを通じて先進安全技術である「i-ACTIVSENSE」の機能強化が行われ、光学式カメラを使った歩行者検知型の衝突被害軽減ブレーキ「アドバンストSCBS」、超音波ソナーを使った後退時の衝突被害軽減ブレーキ「SCBS R」が備わった。さらに、試乗した6速ATには前後の誤発進抑制制御機能(センサーは超音波ソナー)が装備される。


ステアリングのテレスコピック機能の追加が大きな変化だ(筆者撮影)

ステアリングには、これまでの上下42mmのチルト機構に加えて、前後30mmに及ぶ待望のテレスコピック機能が追加された。調整幅はほかのマツダ車が装備するテレスコピック機能の半分となる30mmなのだが、筆者の身長170cmにとって効果は大きく、左右に大きくステアリングを切り込んだ際でも肩がシートのバックレストから離れることがなくなり、同時にシートポジションを1ノッチ下げることができるため足元スペースにもゆとりが生まれた。万が一の衝突時には下肢への加害性軽減も期待できる。

このように2回の商品改良を通じて運動性能や実用性を向上させつつ、数々の先進安全技術も追加された。この先も爆発的な販売台数の増加は見込めないだろうが、それでも世界中にロードスターファンは存在し続ける。その意味で、こうした継続的な進化をこれからも望みたい。