ノースウェスタン大学の研究者が、5つの器官の細胞を培養して女性の生殖系をオンチップモデル化したシステムを使い、女性の月経周期を再現することに成功したと発表しました。システム名はEVATAR。現在のところ、この研究からはホルモン分泌の反応を確認できただけですが、研究が進めば再発性流産の原因を調べたり、受胎調節や効果的な避妊薬の開発にも大きく役立つ結果が得られるかもしれません。

体外受精の方法がおよそ50年も大きく変わっていないことからもわかるとおり、女性の生殖系に関する研究はあまり活発に行われてきませんでした。よってそのメカニズムは未だ解明されない部分が残されています。

最近は組織培養による研究によっていくつかの成果が発表されているものの、たとえば女性の月経周期の複雑さなどはいまだに理由がはっきりしていません。

研究チームはこの月経周期の謎を解明する第一歩として、女性の生殖器官をミニチュアモデル化した特殊培養容器「EVATAR」をつくり出しました。このシステムではいくつかの臓器細胞(卵巣、卵管、子宮内膜、子宮頸部、肝臓)をセルごとに培養し、それらを流れる血液やホルモンの流路を備えます。

そして、そこに下垂体ホルモンを注入してシステム内のホルモン分泌を活性化したところ、月経サイクルで発現するエストロゲンと黄体ホルモンの濃度変化が月経の開始と同様の反応を見せることを確認しました。さらに、排卵や妊娠初期のホルモン濃度の変化も再現したとのこと。

この方法は、生殖器官とその周辺の病気の研究にも役立つはずだと研究チームリーダーのテレサ・ウッドラフ氏はコメントしています。

ただし、現状ではこのチップシステムは生殖器官のすべてをモデル化できているわけではなく、たとえば妊娠してから形成される胎盤などについては調べることができません。

それでも、モデル化によって妊娠しにくかったり流産しやすい人の体質を再現して調べたり、まったく新しい不妊治療薬、または避妊薬などの開発、さらには子宮頸部の病気の作用などを調べられるようになるとのこと。将来的にそれら問題を解決できるようになる可能性が高まったことはまちがいありません。