完結した『犬夜叉』の世界を、再び紐解く覚悟を胸に。『半妖の夜叉姫』の制作舞台裏

1996〜2008年の12年間にわたって『週刊少年サンデー』(小学館)で連載された『犬夜叉』(原作:高橋留美子)は、宝玉・四魂の玉をめぐる妖怪と人間、そして半妖の戦いを中心に描いた戦国御伽草子だ。

2000〜04年にはアニメ『犬夜叉』が、原作完結後の2009〜10年には『犬夜叉 完結編』が放送され、今なお世界中で愛され続けている不朽の名作である。

そんな『犬夜叉』の世界観を引き継ぐ新作オリジナルアニメ『半妖の夜叉姫』が、2020年10月から放送を開始した。『犬夜叉』の人気キャラクターである殺生丸(せっしょうまる)の娘が主人公という衝撃の設定に、驚いた犬夜叉ファンも多かったはずだ。

演出、劇伴、キャストの芝居など随所ににじむ犬夜叉テイストと、新たなキャラクターと『犬夜叉』のキャラクターが画面内で入り乱れることへの感動、まったく先の見えないミステリアスな展開で、再び世界中のファンのハートを鷲掴みにしている。

放送開始から1クールが経過したものの、未だ物語の全容は見えていない。気になる作品のこれまでとこれからについて、佐藤照雄監督と仲 寿和プロデューサーへの対談インタビューを敢行。ふたりの言葉には、『犬夜叉』への愛と、その世界観を継いで新たな物語を紡ぐことへの覚悟がにじんでいた。

取材・文/後藤悠里奈 制作/リアルコーヒーエンタテインメント

犬夜叉ファンにも楽しんでもらえる仕掛けを用意した

放送が始まって1クールが経ちました。おふたりの元に反響は届いていますか?
仲 反響、スゴいですよね。とくにSNSは。
佐藤 そうですね。僕もTwitterをやっているので、世界各国からリアクションをいただいていて。やっぱり注目度が高い作品なんだなと感じています。

公式アカウントへのコメントを見ると、ほとんどが海外からのものなんですよね。改めて『犬夜叉』が世界的な人気を誇る作品だということを実感しますし、『半妖の夜叉姫』がその世界観を受け継ぐ作品ということでプレッシャーも感じつつ、頑張っております。
企画の発案は、アニメ『犬夜叉』や『名探偵コナン』でプロデューサーを務めたytv Nextryの諏訪道彦さんだそうですね。おふたりは、企画を聞いた当初はどう感じましたか?
仲 「1回キレイに閉じた物語をまたやるんだ!? どうやるの!?」という気持ちから始まりました。

最初に話を聞いた時点では、どういう話にするのかはまだフワッとしていて。「殺生丸の娘の話にする、かも」ぐらいのレベルだったんですよ。「たしかにそういう形なら、やれることはあるのかな」と思いました。
佐藤 2〜3年前から「やりたい」という話はあって、留美子先生や諏訪さん、『犬夜叉』スタッフ陣たちがずっと温めていました。

ただ、『犬夜叉』の物語自体はとてもキレイに終わっていますし、『あれから』(完結後の後日譚を描いた特別編)のあとがきにも、「『犬夜叉』でやり残したことはないぞ」というような留美子先生のお言葉があったくらいで。

それに触ることには相当の重責がありましたし、僕自身もいち犬夜叉ファンとして「キレイに終わった作品でまた新しい物語を作るには、どういう形にしたらいいのか」といろいろ考えさせられました。

犬夜叉ファンが観てくださると思うので、皆さんのなかにある『犬夜叉』という作品を壊さないよう、なるべく納得する形でリリースしてあげられればいいなと思っていました。
『半妖の夜叉姫』のターゲット層としては、犬夜叉ファンをメインに考えているのですか? それとも、『犬夜叉』を知らない新しい層が中心なのでしょうか?
仲 僕らとしては、新しいキャラクターを好きになってもらいたいという思いがまずあるので、そういう意味では新しい方々を意識していますね。

ただ、『犬夜叉』が放送していた当時からだいぶ時間が経っていて、当時『犬夜叉』が好きだった方たちのなかには親になられた方もいると思います。『犬夜叉』が好きだったお父さんお母さんと、新しい作品として触れてくれるお子さん、親子2世代で観ていただけるのがいちばん理想なのかなと思います。
佐藤 三姫(とわ・せつな・もろは)を演じる声優の皆さんも、ちょうど子どもの頃に『犬夜叉』を観ていたという世代なんですよ。わちゃわちゃしながら毎週アフレコをやっていますね(笑)。

新しいターゲット層には、この『半妖の夜叉姫』をきっかけに『犬夜叉』を振り返ってもらって「『半妖の夜叉姫』に登場した妖怪も出ている」と思ってもらえたらいいですし、逆にかつて『犬夜叉』を観ていた方には「あのときに出てきた妖怪だ」という視点で『半妖の夜叉姫』を楽しんでもらいたい。

そのためにいろんな仕掛けや要素を作中に散りばめています。
仲 留美子先生のほかの作品を好きな方がちょっとニヤッとできる仕掛けも、たまに入っているんですよね。第2話で出てきた不良たちとか、第9話の猿のギャグとか。
『犬夜叉』を知らない方を意識しつつも、もちろん犬夜叉ファンの方も楽しめるような作品作りをされているというわけですね。
佐藤 とくに『半妖の夜叉姫』の世界観で『犬夜叉』のキャラクターを出すときには、イメージが壊れないようにすることをいちばんに考えています。観た方が「こういうキャラじゃなかった」と思わないように。

もちろん出すときには、留美子先生にシナリオの段階で必ず確認をしてもらっていて。「これだったらいいんじゃないですか」と言っていただけた形でシナリオに落とし込んでいくという流れでやっていますね。
仲 『犬夜叉』キャラの登板は、新しいキャラクターたちの出番を食いすぎないように、でも出た以上は“格”を落とさないように、というのは気をつけているところですね。
ファンのあいだでは、『半妖の夜叉姫』から『名探偵コナン』という放送順も、かつての『犬夜叉』→『コナン』という流れを彷彿とさせると話題になっていましたね。その編成は、読売テレビさんのこだわりだったのでしょうか?
佐藤 ゴールデンでやっていた19〜20時の枠の順番がそのままですからね。それを懐かしんでくれるのはありがたいですね。
仲 こだわっていたかどうかはわからないのですが、最初からそこ(『コナン』の前)の枠で放送することは決まった状態でした。結果的にそうなったというのはあるかもしれませんけど、制作側としてもやっぱり「前と同じだ」というのは感じましたよね。
佐藤 (山口)勝平さん(犬夜叉役。『名探偵コナン』でも工藤新一/怪盗キッド役として出演)も2連チャンで出演している、みたいな(笑)。
仲 枠のつながりもそうですし、10月クールOPテーマがSixTONESさんだと聞いたときも、ジャニーズ事務所のグループが歌ってくださることに「『犬夜叉』の流れと同じに見えるな」と(編注:過去にはV6やタッキー&翼が『犬夜叉』の主題歌を担当していた)。

やっぱり『犬夜叉』のときと同じ構造になっているのは、僕らとしても気になるところです。
▲犬夜叉(CV:山口勝平)
▲日暮かごめ(CV:ゆきのさつき)

根本的な部分を詰めないと、キャラクターは生まれない

続いて、『半妖の夜叉姫』の物語がどうやって作られていったのか伺っていきます。先ほど仲さんから「最初に話を聞いたときは、“殺生丸の娘の話にする、かも”という段階だった」という話がありましたが、方向性についてはその後、別案なども挙がったのでしょうか?
▲日暮とわ(CV:松本沙羅)
令和の時代に生きる現代っ子。14歳の女子中学生。10年前、時代樹(じだいじゅ)のトンネルで現代にタイムスリップ。かごめの弟の草太(そうた)に助けられ、娘として育った。武道が得意で、不良達に絡まれてはケンカ沙汰を起こし、転校を繰り返していた。今は女子校の聖ガブリエル学園に編入。現代にやってきた、せつなともろはと出会い、せつなの眠りを取り戻すため、戦国時代に戻ろうとする。男装は戦いやすいため。実は戦国時代に生きる殺生丸の娘。
▲せつな(CV:小松未可子)
14歳。琥珀(こはく)がお頭を務める妖怪退治屋に参加し、妖怪退治を生業にしている。実は4歳の頃、双子の姉のとわと別れ別れになったが、10年後、もろはと共に現代にタイムスリップ。とわと再会する。しかし、夢の胡蝶(こちょう)に眠りを奪われたため、幼い頃の記憶がない。とわが姉だと言っても信じない。せつなの眠りを取り戻そうとするとわともろはと共に、戦国時代に戻ることになるが……。冷静沈着で物事に動じない様は殺生丸譲りと思われる。
▲もろは(CV:田所あずさ)
14歳の賞金稼ぎ。妖怪退治をしては、退治した獲物(妖怪の首や牙や身体)を、賞金首を取引する屍屋獣兵衛(しかばねやじゅうべえ)に売っている。妖刀・倶利伽羅丸(くりからまる)の使い手。通り名は「化殺しのもろは」。赤色真珠付きの貝の器に入った紅を差すと「国崩しの紅夜叉」となって大暴れする。性格は明朗快活。せつなやとわと比べると一番世間慣れしている。実は犬夜叉とかごめの娘だが、幼い頃からひとりで生きてきたので、両親のことはほとんど知らない。
仲 そのまま、そのときの話を前提に進んでいった形でした。

ただ、娘にするにしても、双子なのかひとりっ子なのかといった娘像はなかなか定まらなかったです。「この段階でどういう性格のキャラ像でいくかが決まってないと、放送のタイミングを含めて見直さなきゃいけないかも」というラインギリギリまで定まらなくて(笑)。
佐藤 留美子先生と直接お話させていただいて、決めていった感じですね。
留美子先生からはどんなお話があったのですか?
仲 キャラクター像に対して、「設定だけだと、なんでこういうしゃべり方なのかわからない」や「なんでこんな服装するのかしっくり来ない」というご指摘がありました。

とくにとわが、「こういうキャラクター像で、だからこそ男装をしている」という部分を留美子先生に理解して、納得していただくのにすごく時間がかかって。そこがいちばん苦労した部分ですね。
佐藤 留美子先生的に、せつなやもろはは「こういう子なんだね」というのがストンと降りてきたそうなんです。

でも、とわだけは、どういうふうに成長していくのか、どういう芯を持った子なのかというところをしっかりと煮詰めて固めていかないと、話の展開でブレてしまうのではないか、と。

そういう点で、とわのキャラクターを決めていく作業はとても大変でしたね。
仲 設定だけじゃなく、(『犬夜叉』でシリーズ構成を務め、今作でも同職を担う)隅沢克之さんに1〜2話の脚本をざっくりと書いてもらい、「こういう話の流れのなかでは、とわはこういう対応を取ります」「こういう言葉遣いをします」というところを留美子先生に見ていただいて。

そのうえで「でも、やっぱりこういう言葉遣いはいらないんじゃない?」というように整理していきました。
とわが男装をしているのは「ケンカがしやすいから」と本編中で説明されていましたが、それも、そうやって固めた設定のひとつなのでしょうか?
仲 そうです。いろんな理由を考えて、たくさんのアイデアが出た結果、逆にあそこまでシンプルなところに落ち着きました。
佐藤 留美子先生がポロッと「“ケンカしやすいから”とかでいいんじゃない?」とおっしゃったんですよね(笑)。僕らは、すごくこねくり回した理由付けをいろいろと考えていたんです。「女の子として嫌なことがあったから」とか。

でも、「そういうことではないんじゃないかな」という話にもなり……。シンプルでもストンと落ちるものがあればいいんだと気づかされましたね。
キャラクター像の根底の部分から、留美子先生は関わっていらっしゃるんですね。
佐藤 僕自身もキャラクターを作るうえで、留美子先生とお話をさせていただいてとても勉強になりました。留美子先生の考え方はとてもロジカルで本当に素直なんです。「こういう子だから、こういう行動はしない」、「こういうことは言わない」とか。

だからこそ、作品を観る方が、根底にあるものを見てくれる。「根本的な部分をちゃんと詰めていかないと、キャラクターって生まれないんだな」ということを、頭ではわかっていましたが、改めて痛感させられました。

アニメでは隅沢さんをはじめ、何人も案を出してくれる方がいますが、留美子先生と編集者さんで話し合って作っていく漫画はすごく大変なんだろうなと思いましたね。

“とわをきっかけに話が動く”という構図を意識しています

キャラが固まり、ストーリーを練っていく段階では、隅沢さんに何かオーダーされたことはあったのでしょうか?
仲 『半妖の夜叉姫』では、まず隅沢さんが第1稿となるシナリオを書いてくださったところからスタートしています。

それに対して、こちらのほうから「この先の展開を考えて、ここを気にしてほしい」「こういう仕掛けを入れてほしい」というお話をさせていただきました。

具体的に言うと、当初はもろはの立ち位置に関する話が多かったですね。もろはがいちばん動かしやすいキャラクターだというのがあったのですが、なるべく意識して、ちゃんととわやせつなのほうが前に見えるように気にかけてほしい、と。
佐藤 ライターさんにとって、もろはは“小さい犬夜叉”みたいな感じなんですよね。それで自然と話の中心に持っていってしまうところがあって。

でも、今回はとわとせつなという殺生丸の娘たちが主人公であることを気にしたうえで書いてほしい、と。

というのも、もろははああいうキャラクターでとてもわかりやすいですし、せつなも殺生丸の女性バージョンという方向性があるのですが、そのふたりのベクトルが際立つと、どうしてもとわが沈んで見えてしまうんですね。「主人公が周りの曲者たちのなかに沈んでしまいがち」というのは、“オリジナル作品あるある”なので。

だからなるべく、とわを中心に持ってきて、彼女をきっかけに話が動くという構図を意識する必要があったんです。その部分は物語を組み立てるときに、とくに重視していただいた部分ですね。
続いて、主人公3人の魅力を教えてください。まずはとわからお願いします。
仲 とわに関しては、殺生丸譲りの銀髪で、男の子っぽい格好をしていて、女性がカッコいいと思うような外見をしています。

でも、意外と価値観は現代っ子っぽく、せつなにも作中で言われていますけど、甘さがあるんですよね。そういうバランスのキャラクターって、これまであまりいなかったんじゃないかと思います。

一方で今の段階だと、行動の目的が何なのかという部分がまだ弱いかな、という点もありますよね。
佐藤 仲さんも言うように、とわには中途半端な優しさや甘さがあって、それがせつなやもろはと旅をすることでどう変わっていくか。その成長を楽しみにして、物語を観てもらいたいです。

今のとわはどっちつかずで、ヤキモキしちゃっている方たちもいるのではないでしょうか(笑)。

そんな主人公が何を経験して、どう気持ちが変わっていくか。最終的に「とわ、変わったな、大人になった」と思ってもらえる子になったらうれしいですね。
仲 成長の余地がいっぱい残されているという部分こそが、彼女の主人公らしいところなのかなと思います。逆にせつなは、わりとスタンダードなキャラクターですよね。でも、一方で、なんだかんだで優しい面もあったりして。
佐藤 ちょっとデレたりしますからね(笑)。

先ほど「殺生丸の女性バージョン」と言いましたけど、彼女のさり気ない優しさは殺生丸と一緒なのかなと思っています。キャラクターの方向性のベクトルがわかりやすいところが、彼女の魅力になっています。
せつなは、とわのことを冷たく突き放しているようで、でも気にもかけていますよね。「夢の胡蝶の呪いを解かなくてもいい」と言いつつも、夢の胡蝶を探すとわに付き合ってあげたりもしていて。
佐藤 第3話の「おいそれと認めるわけにはいかない」というセリフのとおり、せつなはとわを姉妹として認めることができない。

でも、とわというひとりの人間としては、彼女のよさがわかるところもあるんじゃないでしょうか。「とわのよさはわかるけど、姉としては認めない」という、せつなのラインの引き方と、そのラインをいつ超えるのかという点も、注目していただきたいですね。

果たしてせつながとわを「とわ姉ちゃん」と呼ぶ日が来るのかどうか……。
第11話ではとわがハイタッチをしようとしたら、一瞬乗りかけるなど、少しずつ距離が縮まっている感じがします。
佐藤 徐々に徐々に、ですね。そのなかで、いざとなったときにふたりの思いがどう交差するのか、楽しみにしておいていただけるとうれしいですね。
仲 あの話数でも、とわと仲良くしているように見えるけど、とわが膝枕をしてもらおうとするとそれはダメなんですよ。そこはラインを引くんだな、と興味深く観ていました(笑)。
続いて、もろはについて。
仲 もろはも、わりと見たまんまですよね(笑)。
佐藤 犬夜叉とかごめのハイブリッド。セリフ回しで犬夜叉っぽいところもあれば、行動がかごめっぽく理解力があったりとか。

そういう意味では、観てくださる方にも馴染みやすいキャラクターなのかなと思っています。今、ギャグ系は全部もろはに比重がいってしまっているからというのもありますけど(笑)。
仲 最初のほうの話数では活躍度が高かったと思うけど、最近はオチ担当になっていますよね(笑)。第10話も戦いに連れていってもらえなかったり、第11話でもせつなの巻き添えを食らったりとか。

先ほど、「もろはが中心になりすぎないように気をつけた」というお話をしましたが、その結果で割を食ってしまった形で、少し申し訳なさがあります(笑)。でも、来週(1月23日)放送の第16話はもろはの担当回になりますので、ぜひ楽しみにしていてください。
佐藤 たくさん活躍しますし、もろはが育った境遇が描かれる重要なエピソードになります。なぜ賞金を稼がなくてはいけないのか、獣兵衛さんとはどんな関係なのか、という話も出てきて。それを観ていただけると、彼女の今までの行動に「だからこういうことをしていたのか」と合点がいくのではないでしょうか。

構成としては、第15話でとわとせつなの過去が、第16話でもろはのバックボーンが明かされて、さらに今後、せつなの幼少期の話が出てきます。そこまで観ていただけると、この作品のだいたいの全貌が明らかになると思います。

1クール目は種まきの時期でしたが、それが今後、どんどん木の実が実り落ちてくるという構成になっていますので、ぜひ引き続き、お楽しみに。

弥勒のキャスティングは『犬夜叉』時代の音響監督に依頼

続いてキャスティングについて教えてください。キャスト陣はどういう軸で決めていかれたのですか?
佐藤 基本的にはオーディションです。ある程度シナリオを進めないと音響監督の名倉 靖さんも役の方向性をつけられないので、シナリオが溜まった段階で、キャラクターをイメージできる方々を集めてオーディションを行いました。

ちょうどコロナ禍が大変になりつつある時期で、本当に10月から放送できるのかという懸念もあったりして。
仲 決め手の軸としては、3人のバランスですね。何名かずつ候補を絞らせていただいたあと、この方がこのキャラだったらこういうバランスかな、というのを見て決めていきました。
佐藤 どうしても3人の会話劇になることが多いので、同じような音のトーンや似たようなしゃべり方になることを避けるために、そこを想定したうえでキャラ作りをしていきました。

とわは考え方も行動も現代的で、もろはだったら感情で動く。逆にせつなは殺生丸みたいに常に冷静沈着で、状況を俯瞰で見て判断し、何が最善かを見据えて行動に移す。

そういう、それぞれのキャラクター性があったうえで、なおかつ3人で会話したときに聞き取りやすいというようなバランスを見てほしい、ということを名倉さんにオーダーさせていただきました。
殺生丸や犬夜叉、かごめといった親世代の声と似ているか否か、という観点はなかったのでしょうか?
仲 そこは軸としては全然気にしていなかったです。外見と本編での動き、キャラクター性に合っている方というところで考えを進めていきました。

3人のバランスを取るとき、双子のバランスを調整するのは難しそうということもあり、そこから一歩引いた立ち位置のもろはを先に決めていきました。最終的に、とわ&せつなとのバランスを見て、再度もろはも検討して確定に至りました。
3人娘以外のキャスト選考の軸は?
仲 そこはもう名倉さんにおまかせでした。たまに確認や意見を求められることはありましたけど。

たとえば、理玖(CV:福山 潤)は、最初はもっと女性的な声という案もあったんです。でも、佐藤監督と話したところ「男性のイメージで」とのことだったので、その方向性で考えていただいています。
▲理玖(CV:福山 潤)
故・辻谷耕史さんに代わり、保村 真さんが演じた弥勒も話題でしたが、そちらのキャスティングも名倉さんが?
▲弥勒(CV:保村 真)の過去(写真上)と現在(写真下)の姿
佐藤 保村さんに関しては『犬夜叉』時代に音響監督をやっていた鶴岡陽太さんにお願いして、選んでいただきました。そこに関しては、『半妖の夜叉姫』というより『犬夜叉』の範疇であろう、と。

もちろん、視聴者の皆さんも変わることがわかっていらっしゃったというのもあると思いますが、第1話放送時に「弥勒さまだ!」「全然違和感がなかった!」というお声をたくさんいただくことができました。

僕は、辻谷さんとは弥勒でお世話になる以前にも、音響監督としてお世話になることが多くて。当時の僕はペーペーの演出だったのですが、その後『犬夜叉』の現場で会ったときにも「どうも〜」と話してくださって。

すごくドキドキしながら演出していて、テストのときに、皆さんの口パクが全然合わなくてアワアワしていたら、「合わせるから大丈夫だよ!」と声をかけてくださいました。そんな、すごく気さくに接してくださった姿が、とても思い出に残っているんです。

若くして亡くなられてしまったのが本当に残念だったのですが、今回、同じ事務所の後輩でもある保村さんに後任として頑張っていただけて、とてもいいキャスティングになったんじゃないかなと思っています。
仲 佐藤監督、「保村さんが、ほかの作品でご一緒したときと今回とで、全然雰囲気が違う」って言っていましたね。
佐藤 第1話に関しては、大先輩である『犬夜叉』のキャストの皆さんと一緒にやらなきゃいけないのもあって、すごく緊張されていたみたいで。

第13話の弥勒の回では、ある程度リラックスされていましたね。「あのときはすみません、ガチガチに緊張してました」っておっしゃっていました(笑)。

昨今の流行りとは一線を画した画面作りに

『犬夜叉』の世界観を受け継ぐ作品だということを視聴者に感じさせるために、演出面で工夫していることはありますか?
佐藤 画面作りですかね。あまり流行りに乗らないといいますか。すんなり「『犬夜叉』っぽい」と思ってもらえる、『犬夜叉』でやっていたカット割りや見せ方を使っていて、昨今の流行りとは一線を画していると思います。

変な言い方にはなりますけど、ちょっと古くさい作りをしているという感じですね。「10年くらい前の作品ってこんな感じだったよね」みたいなことをわざとやることで、『犬夜叉』の雰囲気を出すようにしています。

そのほかの部分では、セリフ回しは隅沢さんがディレクションされていますし、音響スタッフも『犬夜叉』のチームにそのままやっていただいているので、とくになんの説明も必要なく。そういう部分では、だいぶ楽をさせていただいています(笑)。

僕にとって『犬夜叉』は、フリーの演出になって初めての作品だったんです。演出のいろはを教えてくれた作品ですし、コンテも『犬夜叉』で覚えました。そういう意味では、本当に思い出深い作品なんです。
冒頭のお話で、「『犬夜叉』とつながる仕掛けを入れている」というお話もありましたが、第9話〜第12話ではまさに『犬夜叉』に登場した妖怪が次々に登場し、話題になっていました。
仲 あの辺りは魍魎丸に食われたシリーズですね。『犬夜叉 完結編』が駆け足になってしまったので、そこでしっかりと出せていなかった妖怪を少しでも使えたらと思って出させていただきました。
佐藤 冥王獣は、魍魎丸が鎧甲を取るシーンしかなかったですからね(笑)。
仲 Twitterの公式アカウントでは「今回登場した妖怪は、じつは『犬夜叉』に出ているんですよ」ということも解説しているんです。『半妖の夜叉姫』を観て、『犬夜叉』にも興味を持ってくださる方がいたらうれしいですね。
佐藤 そこにもまた素晴らしい作品世界が広がっていると思うので、ぜひ『犬夜叉』も観ていただきつつ、こちらの『半妖の夜叉姫』も楽しんでもらえればと思います。
▲写真左から金禍(CV:興津和幸)、銀禍(CV:大須賀 純)
▲毒蛟(CV:木内太郎)

注目のエピソードをピックアップして解説!

ここからは、放送済みのエピソードについて振り返っていただきます。印象的だった話数を何話かピックアップさせていただきましたので、制作秘話やアフレコの思い出、印象に残ったシーンなどを教えてください。
ありがとうございます。最後に、今後を楽しみにしている読者に向けて、メッセージを。
仲 ちょうど1クールが終わって、2クール目に入り、ここから知りたかったことがわかってくると思います。謎の解明を楽しみにしてもらいつつ、とわとせつなともろはがどう成長をしていくのかを見届けてもらえたらと思います。
佐藤 第15話を経てから、“各キャラクターがやるべきこと”がどんどんとはっきりしていき、それを追いかけていく話になっていきます。そのうえで3人がどうなっていくのかという部分を楽しみに観ていただけるとすごくうれしいです。
佐藤照雄(さとう・てるお)
7月17日生まれ。神奈川県出身。アニメ監督。1998年に『SHADOW SKILL −影枝−』で演出家デビュー。これまでに関わった作品に、『犬夜叉』、『アイカツスターズ!』、『結界師』、『テイルズ オブ ジ アビス』など。
仲 寿和(なか・としかず)
3月6日生まれ。東京都出身。プロデューサー。2005年にサンライズ入社。これまでに関わった作品に、『陰陽大戦記』、『犬夜叉 完結編』、『機動戦士ガンダムUC』、『Gのレコンギスタ』、など。

    作品情報

    テレビアニメ『半妖の夜叉姫』
    読売テレビ・日本テレビ系で毎週土曜夕方5:30〜放送中! ※一部地域を除く
    関西エリア毎週月曜深夜MANPAにて再放送!
    公式サイト
    http://hanyo-yashahime.com/
    Twitter
    https://twitter.com/hanyo_yashahime

    ©高橋留美子/小学館・読売テレビ・サンライズ 2020

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    受付期間
    2021年1月16日(土)18:00〜1月22日(金)18:00
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