“好き”でいてくれる人のために描く。『だかいち』桜日梯子の精緻を極めたBL創作論

シリーズ累計350万部を突破した大人気BLコミック『抱かれたい男1位に脅されています。』(以下、『だかいち』)。芸能界を舞台に、「抱かれたい男ランキング」1位の新人俳優・東谷准太と、5年連続首位だったベテラン俳優・西條高人との恋愛模様が描かれている。

BLコミックは1〜2巻で終わる短い作品が多い中、本作は現在第7巻まで発売。2018年にはアニメ化、2019年には劇中劇『紅葉鬼』が舞台化された。

個性的なキャラクター、予想できないストーリー展開、濃密なエッチシーン……BL好きが歓喜する要素が満載の作品を手掛ける桜日梯子は、2012年のデビューからヒット作を連発している。デビュー作『年下彼氏の恋愛管理癖』と『抱かれたい男1位に脅されています。』を発売したのが2014年。翌年の『このBLがやばい!』では、両作品TOP10の入賞を果たした。

桜日の作品は、なぜ、これほど読者を魅了するのだろうか。そこには、これまで多く語られることのなかった、キャラクターやストーリー制作の裏側、読者への想い、そして並々ならぬキャラクターたちへの“愛”があった。

取材・文/阿部裕華

読者の性癖に刺す。タイトルを決めた担当編集のひとこと

本日は取材ありがとうございます! 桜日先生の作品はデビュー当初から大好きなので、いろいろお伺いできれば幸いです。
ありがとうございます……! よろしくお願いします!
桜日先生、もともとお芝居がお好きなんですよね?
はい、演劇部だったのもあって、高校を卒業してすぐ舞台にハマりまして。エンタメの楽しさは舞台から教えてもらった気がします。
『だかいち』の設定は、そういった舞台やお芝居がアイデアとなったのでしょうか?
芸能界モノにしようと考えていたわけではなくて。最初は、リブレさんの『b-BOY 超キチク エリート陵辱特集』というアンソロジーで描かせていただいた24ページの読み切りでした。

お話をいただいたとき、私の中でエリートのイメージは「高学歴で大手企業に勤める人」だったんです。
たしかに、そういうイメージありますね。
でも、それだとほかの作品と被ってしまいそうだなと。なので、立場や学歴が上の人ではなく“男として上”というエリートの設定で描けないかと考えました。

そのタイミングでテレビを見ていたら、ベテラン俳優さんが若い俳優さんにたじたじになられていて、その様子がすごくよかったんです。同時に「なるほど! この切り口があったか!」と思いました。お芝居も好きだったので、結果的に自分の趣味も組み合わせられるなって。
▲第1話より。抱かれたい男ランキング第1位の東谷准太、第2位の西條高人の関係が一目でわかる構成になっている。
そんな経緯で『だかいち』の設定が生まれたんですね! ちなみに、タイトルは担当編集の方の案だそうですが、ほかにどんなタイトル案があったのか教えてください。
私自身、『だかいち』がふたつ目の作品だったので、タイトルの付け方に慣れていなくて……担当さんと私でタイトルを持ち寄って決めていたのですが、私はやたらカッコいいタイトルをつけようとしていました。「アクター」とか「カタルシス」とか入れてたかな(笑)。恥ずかしい(笑)。
オシャレで素敵ですが……。
そしたら、担当さんが「“抱かれたい男1位”で」と。
作品の内容がひと目でわかるようなタイトルをつけられたんですね。
当時駆け出しで、読者の方たちも私の作風をわからないため、タイトルはわかりやすいほうがいいと判断されたのかなと思っています。BLは性癖で選ぶ方がたくさんいますし、担当さん、さすがです(笑)。
読み切りの作品が、ここまでシリーズとして続くと思っていましたか?
まったく思ってないです! ただ、1話を描き終わったとき、担当さんから「次もこのふたりの話でお願いします」と言われて。『b-BOY 超キチク』アンソロジーへの描き下ろしで2〜3話と続いて、いつのまにか連載になっていましたね(笑)。あとで担当さんから聞いた話では、3話目ですでに連載にしようと決めていたそうです。
▲第2話より。高人が東谷の名前(准太・じゅんた)を呼ぶ際、噛んでしまうシーン。以来、東谷のことを「チュン太」と呼ぶことに。

表情が映える顔立ち。高人さんの目は特別なものに

『だかいち』のメインキャラクターである西條高人(以下、高人さん)、東谷准太(以下、東谷くん)の魅力が本作の魅力にもつながっていると思います。ふたりはどのように生まれたのでしょうか?
▲4巻カラーイラスト。右:東谷准太、左:西條高人。
『b-BOY 超キチク エリート陵辱特集』と『抱かれたい男1位』のふたつのテーマからキャラクターをつくりました。抱かれたい男1位と2位になりそうな、タイプの違う男らしいキャラクターを考えましたね。高人さんも受けだからといって、簡単に受けにはならないような見た目にしようと意識しています。

たしか、最初に高人さんを描いて、そのあとに受けに似合う攻めを描いていったかな。
高人さんは目の描き方にこだわられているんですよね。
目の描き方は高人さんだけ変えています。

高人さんのビジュアルはそんなに特徴がないように描いているんです。というのも、とある漫画家の先生が「主人公のビジュアルはあえて特徴的にしなかったから、はじめは描くのがいちばん難しかった」と言っているのをたまたまテレビで見て、カッコいいなと。影響を受けています(笑)。

高人さんは正統派な俳優さんとして描きたくて。男前で美形ではあるけど、個性的な顔にならないようにしました。とくに目は、つり目やたれ目にしてしまうと、人を選ぶ個性的な顔の印象になると思ったので。
高人さん、つり目の印象がありますが……。
そういう読者の方も多いと思いますが、それは表情から来る印象なんですよね。絵で描くときは、つり目にならないようにしています。
高人さんはどの表情も映えるなぁと感じていたのですが、顔立ちから来ているイメージなんですね。
表情でキャラクターの性格を表現できたらいいなと。高人さんは性格が激情型で、表情がコロコロ変わるので、そこまで突飛なキャラクターデザインにしなくても表情で個性をつけることができます。

とはいえ、メインキャラクターなので、その人だけの特徴は欲しいと思い、目の描き方は高人さんだけのものにしました。
▲第4話より。高人の素直な性格と表情がよくわかる。東谷と高人の目の違いにも注目。

無邪気に見えて共感性がない? 東谷くんが持つギャップ

一方、東谷くんはあまり感情が読み取れないキャラクターですよね。
東谷くんは「この人、何を考えているんだろう」と思われてもいいのです。そのぶん、高人さんがとてもわかりやすい人間なので(笑)。

私は基本的にキャラクターデザインからキャラクターの性格を発掘していくので、今回も「このビジュアルだったらこの性格だろうな」とキャラクターをつくっていきました。

東谷くんのビジュアルのキャラクターを高人さんタイプのキャラクターの横に並べる場合、明るいワンコ系の性格にしてしまうと、“オスみ”がなくなってヘタレ攻めみたいになってしまいます。それより、フラットな性格にして、そんな人間がひとりに対して“オスみ”を出しているところを描きたかったんです。
▲第8話より。高人を寝取った疑惑が浮上している新人俳優・綾木千広へ、東谷が牽制するシーン。東谷の気迫に思わず背筋が凍った読者もいるに違いない……。
見た目と性格のギャップを感じます。
ギャップはつけるようにしています。東谷くんをあの見た目で元気系にしてしまうと、意外性がないと感じたんですよ。高人さんにせよ、東谷くんにせよ、見た目のイメージとは反する要素が欲しくて。高人さんは正統派イケメンだけど中身はスポ根、東谷くんは明るく無邪気なイケメンだけど中身は共感性がない。「このビジュアルなのに、この性格……?」みたいにしたかった。
東谷くんの内面は最初から作り込んでいたのでしょうか?
彼の内面の詳細を詰めていったのは連載が決まってからです。東谷くんの過去編までは、東谷くんにはモノローグをつけないと決めていました。
▲東谷が高人に執着するようになった理由が描かれた0章第1話より。初めて東谷のモノローグがつけられている。

キャラクターの行動には従う。自分の都合だけでは描かない

桜日先生が個人的に好きな『だかいち』のキャラクターは誰ですか?
うーん、単純に「好き」と言えるのは、週刊冬文の田部さんや長谷川さんですね(笑)。このふたりの会話を描いているときはすごく楽しかったです。
▲第15話より。週刊冬文の田部さんと長谷川さんの会話シーン。
脇を固める人たちがお気に入りなんですね(笑)。メインのキャラクターたちは先生にとってどのような存在ですか?
メインのふたりや綾木、卯坂(和臣)さん、在須(清崇)先輩はストーリーを回してくれる人物なので、「好き」とかではなく感謝しかない。『だかいち』の世界をつくってくれる人たちという存在です。
先生がストーリーをつくっているのではなく、彼らがストーリーをつくっているという感覚ですか?
ストーリーを勝手につくってくれる、とは思っていないですけど……いつも悩みながら描いているので(笑)。ただ、この人はこの場面だとこうやって行動するし、こういうことを言うだろう、と。キャラクターありきでセリフや行動を選択して動かしているみたいな。
なるほど……?
「こういうふうにストーリーが進んでいきますけど、どうですか?」とキャラクターに聞く感じです。そこで納得できないとキャラクターの性格がブレてしまうと思うので。それは漫画を描くうえでずっとこだわっていることですね。キャラクターの行動には従う。自分の都合だけでは描かない。

このストーリーを絶対に進めたいという理由で、無理やりストーリーにキャラクターを合わせて描き進めていこうとすると“不自然”になるだろうし、キャラクターのセリフや行動がブレてしまうと、読者の方もきっと不自然だとわかりますからね。

“箱庭BL”ではない、サブキャラクターの重要性

ストーリーの枠組みは、どのように作り込んでいるのか教えてください。
必然的に描く必要のある場合と、キャラクターに与えてみたい場合のふたつのやり方で、ストーリーを考えています。

3巻の「出会い編」、6巻の「スペイン編」は必然的に描く必要があったストーリー。2巻の「当て馬ギギギ編」、4〜5巻の「パパラッチ+ハワイ編」、7巻の「黒い繋がり編」は、このストーリーを与えたらキャラクターたちはどう動いてくれるかな、楽しく動いてくれるかな?と考え、作り込みました。
キャラクターに与えてみたいストーリーのテーマは、どのようにアイデアを出しているんですか?
たとえば、7巻の“黒い繋がり”編は、私の中でそろそろわちゃわちゃした展開にしたいという気持ちがあって、担当さんと何のネタを絡ませたらおもしろいかな?と、かなり話しました。

6巻ではずっとスペインに行っていたので、日本に戻ってメインキャラクターが出演する作品『血の婚礼』の仕事をしている姿を描かなきゃいけない。その中でどんな問題を起こそうかと考えたとき、担当さんが「そろそろヤ●ザとかどうですか? BL好きな人でヤ●ザ嫌いな人っているんですか?」と言い始めて(笑)。それで決まりましたね。
▲6巻 次回予告より。大きく書かれた「893」の文字。不穏な空気が漂う次章。いったい次章がどうなったのか?がわかる最新7巻は6月10日発売済み。
BL界にはありとあらゆるヤ●ザキャラクターがいますもんね。
私、浅田次郎先生の『プリズンホテル』という小説がすごく好きなんです。ヤ●ザが経営するホテルのお話で、キャラクターのポップさややり取りの楽しさが詰まっていて。そんなヤ●ザの楽しい部分を描いて、とにかくわちゃわちゃさせたかったんですよね(笑)。

シリアスだけとかコメディだけにはしたくなくて、お話の中にどちらも入れていきたいといつも思っています。
桜日先生ご自身、いろいろな要素の入った作品がお好きなんですか?
好きです! あと、群像劇も好きなので、いろんなキャラクターが主人公たちに絡んでほしいと思っています。主人公たちの新しい面が見えてきますし、物語もマンネリにならないかなって。
『だかいち』で、メインのふたり以外にも個性的なキャラクターがたくさん登場するのは、それが理由なんですね。BLでは“ふたりだけの世界”を描く作品が多いので、ほかの作品とは異なる魅力を感じます。
箱庭みたいにはしたくないと思っています。主人公たちと絡むキャラクターを登場させると作品の世界観が膨らみますからね。いろんなキャラクターを登場させたいです。
▲「パパラッチ+ハワイ編」より。ハワイで偶然会った俳優4人(東谷、高人、綾木、成宮)が、ビーチバレー対決。それぞれの性格や新しい一面が見えてくる。
とはいえ、メインキャラクターは増やしすぎないように、とも思っていて。主人公たちの登場する割合が減ると話の根幹がブレてきてしまうので、バランスは考えています。
高人さんと東谷くんの物語という軸はブレないようにしているんですね。ちなみに桜日先生の中で『だかいち』のストーリーの結末は決まっているのでしょうか……?
初めから長編だと決まっていたら、結末を考えていたかもしれませんが……読み切りから始まって流れで連載が決まったので、終わりはキャラクターたちに任せています。結末が見えてきたときが、終わりを目指すときなのかなと。
ということは、彼らのドラマはまだまだ見られると期待してもいいんですね!?
許していただける限りは、描き続けたいと思っています(笑)。

新しい擬音を模索中…無我の境地で挑むエッチシーン

『だかいち』はエッチシーンも魅力のひとつだと感じています。桜日先生がエッチシーンで意識されていることがあれば、ぜひ教えてください……!
1〜2巻のときは、ひとつのお話のうち4分の1はエッチシーンを入れると自分の中で決めていました。読み切りでしたし、何より「キチクBL」というテーマでしたし(笑)。
▲第6話より。息遣いや擬音に色気が際立つ。常に新しい擬音を模索しているそう。
3巻からは流れに任せるようにしました。無理やりエッチシーンを入れていくとテンポが悪くなってしまうので、「ここでヤルな…!」と思うところにエッチシーンを入れています。
自然な流れを意識されているんですね。先生ご自身「エッチシーンはとことんエロくしよう!」と意識されてますか?
濡れ場もちゃんと楽しんでほしいと思って描いています。

ただ、濡れ場を描くのは難しいです。普通の会話や、やり取りのシーンを描いているほうが自由度が高くて……喜怒哀楽の感情を表現する自由度も高いですし。
濡れ場は自由度が高くない……?
濡れ場という括りの中で、引き出しをつくるのが大変なんですよね。“漫画家あるある”だと個人的に思っているんですけど、「以前描いたアングルと同じアングルを描いている」「同じ擬音ばかり使っている」ということに気づいて焦ってしまう。

服を脱いでいるのでトーン作業が大変ですし、デッサンに誤魔化しが効かないし、あまり綺麗に描きすぎても硬くなって勢いのない濡れ場になっちゃうし……じつは大変なんです。無我の境地で描いています。もしかしたら、いちばん職人顔をしているときかもしれません(笑)。
▲第22話より。ふたりの吐息だけが描かれた性描写。

さながら脚本家。漫画づくりの難所は“プロット作業”

ほかにも漫画を描くうえで、大変だと感じる作業はありますか?
プロットを書くときは、いつも大変というか難しいなと感じています。私は、プロットの段階でキャラクターの行動や会話を含めた構成を作り込んでいくのですが、煮詰まることが多いです。
プロット作業とは、脚本を書くような感じでしょうか?
そうですね。キャラクターがどこにいてどういう行動を取ってどんなセリフを言うかを、文章で書いています。見開きの配置場所や、ページを開いたときの右ページにいいコマを配置するためにプロットを作り込むんです。なので、ページ割までプロットに書き込んでいます。
すごく緻密に考えられているんですね……!
私の場合、そこまでしないと、ネームがガタガタになってしまうので……。読みやすさを考えつつ、詰めすぎないようにスカスカにならないように、と構成を組んでいくのですが、難しいです。

私、煮詰まっているときは気晴らしができなくて、ずっとそのことに鬱々としてしまう。仕方ないですよね……漫画家さんは、月の半分は鬱じゃないかと思っています(笑)。
そんな中で素敵な作品を生み出していただけること、読者として感謝しかないです……。逆に漫画を描いていて楽しいと感じる瞬間は?
いろいろな節目の瞬間ですね。プロットが書き終わった、ネームが描き終わった、「ここを描きたかった!」と思う場面に差し掛かっているときとか。

あとは、すっごくツラいけど、ネームでキャラクターを動かしている作業は好きです。すっごくツラいけど……!(笑)

アニメ1話を見たとき、心の底から安心して喜ぶことができた

2018年に『だかいち』はアニメ化されていますが、アニメ化が決まったときの心境はいかがでしたか?
うれしかったんですけど、それ以上に緊張しました。制作の工程が見えてくればくるほど、関わる人の数が多くて「うわ〜……こんなにたくさんの方が…」って(笑)。漫画を描いていているときも、出版社さん、書店さん、印刷会社さん、いろんな方が関わってくださってますけど、描く作業自体はひとりでやっているので、これだけ多くの人が自分の作品に関わることへのありがたさと、みなさん大変ではないか、不安と緊張がありました。
©DO1 PROJECT
アニメ化に対して心の底から喜びを実感できたのは、完成した1話を見たときです。とてもうれしかったですし、本当にありがたい機会をいただけたと思いました。
アニメ化の際に、桜日先生から何か意見や要望を伝えましたか?
シナリオ会議には全部参加させていただきました。『だかいち』のアニメには、シリーズ構成の成田良美さんを筆頭に3名の脚本家さんが入ってくださって、初めにみなさんの脚本を見せていただいて。脚本に対してアイデアを出していく作業では、みんなで「ここはもっとこうしたらどうだろう」と意見を出す感じでした。
どのようなお話をされたんですか?
構成に対してはほとんど何も言うことがないほど、脚本家のみなさん、本当によくしてくださったので……私からは、高人さんは気兼ねなくおちょくって書いてください、東谷くんは気兼ねなくホラーみを出して書いてください、と(笑)。

実際、最終話の東谷くんのホラー感は本当に素晴らしかったです! とくに龍輪(直征)監督の案の、よく見るとじつは画面にいる東谷くんの演出は、完全にホラーでした!(笑)
アニメのエンディングでは、東谷くんと高人さんの「ちゅんたか(東谷の愛称 “チュン太”と西條“たかと”を組み合わせた呼称)ダンス」がとっても可愛くて、ファンのあいだでも話題になりましたが、桜日先生のアイデアですか?
ダンスは、監督のアイデアなんです。まさかふたりが踊るとは……。

監督が『だかいち』のアニメ化をするにあたって、芸能界のリアルさを入れたいと、いろいろこだわってくださって。ダンスもダンサーさんに実際に踊っていただいた映像をアニメーションに落とし込んで、つくってくれたみたいです。
そこまで意識されて作り込まれていたんですね。
本物の俳優さんたちが物語を繰り広げているのを見る感覚で楽しんでもらいたいと思っていたので、監督の意向はとてもありがたかったです。

出版社からのメールに疑心暗鬼「まさか漫画家になるとは」

先生は小さい頃から絵や漫画を描いていたんですか?
幼稚園に入る前くらいから絵を描いていました。家に黒板があって、そこに2足歩行の猫のキャラクターをやたら描いていて。猫のキャラクターを1匹描いたら、その子の友だちや家族、恋人を描いたり、字が書けるようになると吹き出しにセリフを書くようになったり。その頃からキャラクターを動かすことを楽しんでいたのかもしれません。

漫画を初めて描いたのは、小学3年生くらいのときからだったと思います。
当時、影響された作品はありますか?
小学生のときは少女漫画かな。中学生のときは少年漫画、『(週刊少年)ジャンプ』を読んでいました。クラスの誰かが『ジャンプ』を買ってきて、回し読みしていましたね(笑)。

高校に入ると部活ばかりになって、高校卒業後は舞台にハマり出したので、漫画からは少し離れていました。
漫画をずっと描いていたわけではないんですね。
ずっとは描いていないですね。高校卒業してからまた描き始めた感じです。

でも、学生時代も、文集の表紙とか諸々たのまれたものを描いていました。大学のパンフレットのカットを描いたこともあります。
漫画家になろうと思ったことはなかったんですか?
なかったです。そういう人生の選択があると思っていなかった(笑)。

出版社の方からメールでお声がけいただいてデビューが決まったのですが、最初にメールを見たとき疑いました。「もしかして、お金取られる……?」って(笑)。
▲桜日梯子ファンブックより。これまで描かれた作品のキャラクターたち。

恋愛以外の“心のつながり”を描けることがBLの魅力

BL以外のジャンルで漫画を描きたいと思ったことはありますか?
ジャンルにこだわりはないです。お声がけいただいて、描かせていただけているのがBLだったので、BLを描いている。今はこうやってシリーズも持たせてもらえてますし。

ただ、バトルが好きなので、アクションシーンは描いてみたいですね。命のやり取りをするような熱いやつ。ホラーも描いてみたいです!
桜日先生は怪談がお好きですよね。
怪談、大好きです。あと、民俗学も好きで、風習や民話、妖怪が絡むような物語も。そういうのが好きなので、高人さんと綾木が出演する舞台『紅葉鬼』の設定をつくっていました。
ほかのジャンルを描きたいと思えば、『だかいち』の中で劇中劇として描けるかもと思っているんですよね。役者モノを描いている利点です(笑)。
いろいろなジャンルがお好きかと思いますが、その中でもBLを描く楽しさはどんなところにありますか?
恋愛をする人たちが同性同士なので、恋愛以外の関わり合いを濃く描けるところですかね。同性ならではの同じ土俵で生きている感じや、わかり合えたり反発し合ったり牽制し合ったり……恋愛以外の“心のつながり”を描けるんです。

守り守られの間柄でもない。性差がないからこそ起こるドラマがある。それがBLの魅力だと思います。
▲第22話より。すれ違っていたふたりの絆が深まる、感動的な場面。

「好き」と言ってくれる人に寄り添いたい

最近、BLが一般的になってきたように感じます。桜日先生から見て、なぜ、このような変化が起こっていると感じますか?
BLが広く楽しまれるようになった理由はふたつあると思っています。

ひとつは、今までBLに関わってくださった作り手のみなさんがさまざまな作品を生み出して、BLの楽しさをコツコツ広めてくれたから。BL作品を描いている先生や映像作品をつくってくださった方たちのおかげです。楽しさが広まったことで、私は気軽に作品を描かせてもらっているので……先人のみなさんには感謝しかありません。
今は、漫画や小説だけでなく、映画やドラマなど、さまざまな形のBL作品があって、楽しみ方が増えていますよね。ふたつ目は何でしょう?
みんなが、“好き”の多様性を許容したほうが楽だと思うようになったことだと思います。何か拒絶を表に出してしまうと、巡り巡って自分の行動の首を絞めるじゃないですか。だから、楽しみを許容し合ったほうが生きやすい。そう思う人が増えている気がしています。

「嫌い」と言っている人たちの方向を見るより、「好き」と言ってくれる人たちの方向を見ているほうが健康的かなと。だから私は作品を描くとき、「好き」と言ってくれる人、楽しんでくれる人のために描きたいと思っています。
桜日梯子(さくらび・はしご)
12月20日生まれ。2012年、『ラブトモ』でデビュー。初の連載作品『年下彼氏の恋愛管理癖』をスタートさせ、2013年には『抱かれたい男1位に脅されています。』の連載がスタート(いずれもリブレ)。『抱かれたい男1位に脅されています。』は2018年にアニメ化され、2020年現在、累計350万部を突破している。

作品情報

『抱かれたい男1位に脅されています。』第7巻
6月10日(水)発売
659円(税別)
● 桜日梯子先生よりメッセージ
スペインから無事帰ってきたものの、色々わちゃわちゃしている”ちゅんたか”をお楽しみいただけたら嬉しいです!
● STORY
「なんで 抱かないんだよ…」
二人舞台『血の婚礼』の稽古が順調に進む中、どこか様子がおかしい東谷。Hを寸前で止めてしまう東谷に、高人はとうとうしびれを切らし!?
一方、卯坂は大学時代の先輩・在須との再会を果たす。封じ込めた過去の苦い記憶がふたたび蘇り――…。
謎の加工ジェンダーレス男子も登場で、大波乱の芸能界“黒い繋がり”編が幕を開ける!
描き下ろしは裸エプロンH♥

©Hashigo Sakurabi/libre

サイン入り色紙プレゼント

今回インタビューをさせていただいた、桜日梯子先生のサイン入り色紙を抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
受付期間
2020年6月11日(木)12:00〜6月17日(水)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/6月18日(木)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから6月18日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき6月21日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
  • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
  • 応募内容、方法に虚偽の記載がある場合や、当方が不正と判断した場合、応募資格を取り消します。
  • 当選結果に関してのお問い合わせにはお答えすることができません。
  • 賞品の指定はできません。
  • 賞品の不具合・破損に関する責任は一切負いかねます。
  • 本キャンペーン当選賞品を、インターネットオークションなどで第三者に転売・譲渡することは禁止しております。
  • 個人情報の利用に関しましてはこちらをご覧ください。
ライブドアニュースのインタビュー特集では、役者・アーティスト・声優・YouTuberなど、さまざまなジャンルで活躍されている方々を取り上げています。
記事への感想・ご意見、お問い合わせなどは こちら までご連絡ください。