全人類と友達になりたい! 俳優・山田裕貴は、人とわかり合うことをあきらめない

10代で大ブレイクすることも珍しくないこの世界で、早咲きか遅咲きかで言えば、山田裕貴は後者だろう。着実にキャリアを重ね、演技力に定評はあったが、知名度という点では決して「誰もが知る」存在とは言えなかった。

転機とも言える『HiGH&LOW』シリーズが始まったのが4年前。岩田剛典や黒木啓司、林 遣都、窪田正孝と共に、物語の軸となる5人に選ばれた。山田が演じた村山良樹は、シリーズを重ねるにつれて『HiGH&LOW』屈指の人気キャラクターへと成長していく。

そして20代最後の今年、NHK連続テレビ小説『なつぞら』で、広瀬すず演じるヒロインの幼なじみ・小畑雪次郎役に抜擢。現在は3年ぶりとなる舞台『終わりのない』に出演している。

悔しい思いはたくさんしてきた。同世代どころか年下の共演者が次々と脚光を浴びていくのも、知名度で周囲の目が変わるのも見てきた。だからこそ、「全人類と友達になりたい」という山田の目標は変わらない。「あきらめるなよ!」と周りを、自分自身を鼓舞し続ける。

撮影/祭貴義道 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.
ヘアメイク/小林純子

朝ドラの影響はありがたい半面、複雑な思いもある

9月で『なつぞら』が最終回を迎え、映画『HiGH&LOW THE WORST』も公開。10月29日からは舞台『終わりのない』が始まるなど、お忙しい日々を過ごされているかと思います。
仕事があるのはありがたいので、忙しいと思ったことはないですね。ハードではありますが、それが日常になったのはうれしいですし、「忙しくてイヤだ!」と感じることはありません。
映画『あゝ、荒野』や『万引き家族』など話題作への出演が続き、今年は『なつぞら』でも注目を浴びました。周囲からの反響も大きかったかと思いますが、変化は感じていますか?
以前ならおそらく出られなかったであろう番組に出演させていただいたりと、そういう部分での変化ですかね。

ただ、朝ドラに出たことで「朝ドラの影響はいかがですか?」と聞かれるだろうとは思っていましたが、僕の中では、朝ドラや他の作品でも、作品に対する熱量はまったく変わらないんですよね。

だから“朝ドラ俳優”になったことで自分を見る目が変わるというのは、ありがたい半面、正直、複雑ではあります。
さまざまな作品に出演し、年齢も重ねたことで、内面的な変化や成長に関してはどう感じていますか?
自信はついたのかな…? いろんなことが怖くなくなってきたというか。
周りの目を気にしないようになったとか?
それに関してはわりと早い段階できっかけがありまして。24、25歳くらいの頃、『ストロボ・エッジ』という映画に出たときに、「自分は自分で良いんだな」と気づいたんです。

そこで感じたことを試したのが『HiGH&LOW』。メチャクチャ自由にやってみたらどうなるんだろう?と。作品のテイストにもよりますけど、案外、自分の意見や個性を出していったほうが良いんだなと学びました。

それから『あゝ、荒野』ではボクサーの役をやったんですが、ボクシングを頑張ることで役が自分の中に入ってくるという経験をしたんですね。『二度めの夏、二度と会えない君』ではベースを演奏して同じような感覚を味わって…。
「作品に対する熱量は変わらない」とおっしゃっていましたが、俳優を続けていくうえで、大切にしている“軸”は何でしょうか?
「人が好き」ということですね。人間って孤独だなと思うし、他人の気持ちを完璧に知ることは不可能だと思うけど、それでも僕は他人が何を考えているのか知りたいんです。「知る」というのは「つながる」ってことだと思うから。

この仕事をしていて気づいたんですけど、俳優は、ウソを本物にしていく仕事なんですよね。その人(=役柄)そのものにはなれないけど、その隙間をどう埋めていくか考えて、考えて「この人はこう思ってるんじゃないか?」って導き出していく。

だから、本物にはなれないという思いと、なりたいという思いのあいだでいつも葛藤するんです。
他人を知ることが、お芝居につながっているんですね。
「あぁ、いまお芝居になっちゃったな」とか「自分が出ちゃったな」とわかってしまう瞬間もあるけど、本当に入り込んでいるときは、自分だのお芝居だのを考えずに、自然と言葉が出てくるんです。

そういう瀬戸際で生きてきたからこそ、他人を「知る」ってスゴいエネルギーなんだって気づきました。まず近くにいる人たちに自分を知って好きになってほしいから、普段からメチャクチャ人に会いに行きます。
「他人とつながりたい」というのは「俳優として好かれたい」という思いではなく?
決して「モテたい」とか「好感度を上げたい」とかではなく、人間として。「全人類と友達になれば、絶対に世界は平和で戦争は起きないだろう」と。

吉沢 亮の大河出演に「時代がひとつ変わる」と感じた

人と接していて、ネガティブな感情を抱くことはないんですか?
あきらめてしまっている人を見て、そういう思いを抱いちゃうことはありますね。「無理だって」とか言っているのを見ると「わかんないじゃん!」と思うし。それは過去の自分への思いなんですよね。

僕自身、「プロ野球選手にはなれない」と思って野球をあきらめてしまった経験があって、そんな昔の自分が嫌いだから、あきらめたくないんです。
俳優の道を歩み始めてからは、あきらめたことはない?
あきらめそうになったことはあります。「いいよ、俺なんて…」「あんな作品、俺は出れねぇよ」とふてくされたり(笑)。オーディションでも「合格者はあとふたり? 絶対俺じゃないでしょ」とか。
でもあきらめずにやってきた?
どこかで「いつか見とけよ」と思っていましたね。

そこで周りが変わっても俺は変わらずにいたいし、人に対しても「この人、俺の立場が変わったら見る目を変えたな」とか思いたくないんですよね。だからこそ“仲間”になりたくて。そんなネガティブな思いを抱きたくないから。
ときに役を争うこともある同世代の存在はどんなふうに見ていますか?
彼らも仲間ですね。

以前は同年代の活躍を、ネガティブな感じで思っていましたが、いまは仲間として「(吉沢)亮が大河主演? スゲぇっ! また時代がひとつ変わるぞ!」って、素直に思えています。

大河ドラマにあれだけ若い主演俳優が出てくることで、見る側の年齢層も変わってくるだろうし、そういう意味でも吉沢 亮ってベストな人材だなと思うんです。「よし。これでまた盛り上がるぞ」と感じましたね。

普段から、宇宙や精神について考えるのが大好き

舞台『終わりのない』は、のちに映画化もされた『太陽』や『散歩する侵略者』などを生み出してきた前川知大さんによる作品です。山田さんは、2016年の『宮本武蔵(完全版)』以来の舞台出演ですね。
以前から前川さんが主宰する劇団イキウメや、前川さんが演出された作品が大好きだったので、出演が決まったときは本当にうれしかったですね。

『散歩する侵略者』は、宇宙人が人間から“概念”を奪い、侵略していくという物語でしたが、僕も以前、同じようなことを考えたことがあったんです。僕は普段から、概念とか精神とか、宇宙のことばかり考えているんですよ。だから、前川さんに対しても「きっと話が合うはずだ!」という感覚で(笑)。
「いつか前川さんの作品に出たい」と思っていた?
いやいや、僕はただのファンで、「出たい」なんておこがましくて言えなかったです。好きだからこそ触れられないというか。自分がその中に入るなんて想像すらしていませんでした。
それが期せずして“中の人”に…。
なっちゃいました(笑)。前川さんは『宮本武蔵(完全版)』を見て「良いな」と思ってくださったそうです。
今回はホメロスの叙事詩『オデュッセイア』をベースに、日常と宇宙をめぐる“旅”が描かれます。
量子論やパラレルワールドを扱う物語なんですけど、僕の趣味にドンピシャで。
お稽古についてはいかがですか?
僕の中で、舞台の稽古ってもっとキツいものという感覚があったので、正直、こんなに楽しい現場は初めてです。こんなに優しい、穏やかな空気が流れている稽古場があるのかと。

お芝居は“引き算”。でもキレイにしすぎてもダメ

舞台に立ち、観客の前で演技をすることに関してはどんなふうに感じていますか?
もういいかげん、人前に立つことに慣れてくれよ!って思います…(苦笑)。お客さんが見えていることへの不安はいまだにありますね。
前作から、成長できたと思える部分はありましたか?
(舞台『宮本武蔵(完全版)』の脚本・演出を務めた)前田(司郎)さんの芝居をやらせていただいて良かったなと感じるのは、「ある程度の不安定さが必要なんだ」と思えたことです。

人ってキレイなものをずっと見ているとつまらなくなるけど、不安定で歪んでいるものは、いろんな角度から見たら面白いかもしれない、と探すんですよね。

あと、前田さんは普段のごく自然な会話を台本に起こしているので、話すようにセリフを言う感覚を磨かせてもらいました。前田さんに教わったことを、改めていろんな形で試してきたのが、この3年半の僕のお芝居だったなと思います。
稽古が進んでいく中で、新たな挑戦だと感じる部分は?
まだいろいろ試している段階ですが、お芝居は“引き算”なんだということ。無駄を削ぎ落して、伝えたいことだけを伝える。でも、それが完全にツルツルでキレイになっちゃったらダメで、そのバランスを探すというチャレンジですね。

もうひとつ、今回面白いなと思うのは、キャストみんなでディスカッションをする時間があることですね。僕は「なぜ?」を考えるのが好きな人間なので、役に向き合いつつみんなで「なぜこのキャラクターはこうなったのか?」と考えながら作っていくのがすごく楽しいです。

30歳の自分に一言。「お願いだからちゃんと恋をして!」

来年30歳を迎えますが、30代に向けたビジョンや意識されていることはありますか?
えーと…、結婚できるかな?とかそういうことですかね?(笑)
仕事面ではなくそっちですか?(笑)若い頃と比べて、役柄も少しずつ変化しているかと思いますが。
当たり前のことなんですけど、この仕事って「やりたい」と思っていることばかりが舞い込んでくるわけじゃないんですよね。

これは僕の良くないところだなと思うんですけど、僕から「やりたいです!」と発信するよりも、「一緒にやりたいです」と言われるほうが燃えるタイプといいますか。必要とされないとつまんなくなっちゃうんですよね。
それは「自分の新たな一面を引き出してほしい」というわけではなく、必要とされたい?
「力を貸してほしい」と言われたい(笑)。
「いつか見とけよ」と言いながら、原動力になっているのは「人が好き」という思い。さらに「他人から必要とされたい」と。自分で自分が面倒くさくならないですか?(笑)
面倒くさいんですよ(笑)。だから「結婚できるかな?」って。
結婚願望は強いのでしょうか?
いや、そんなに「したい」と強く思ってるわけじゃないんですけど。でも子どもがすごく好きで…父親役を演じると、子役がかわいくて仕方がないんですよ! 仕事でもこうだから、実生活になったら…って心配で(笑)。

子どもができたとき、自分がどうなるのかを見てみたくもあって…。「こういう状況の俺って、どうなるんだろう? どんな感情を抱くんだろう?」って。そこまでいくと職業病ですよね(笑)。
俳優という職業のためなのか、好奇心を満たしたいだけなのか(笑)。
ヤバいですよね。「お願いだから、ちゃんと恋してくれよ、俺!」って願っています(笑)。
山田裕貴(やまだ・ゆうき)
1990年9月18日生まれ。愛知県出身。O型。2011年に『海賊戦隊ゴーカイジャー』(テレビ朝日系)で俳優デビュー。2016年に『宮本武蔵(完全版)』で舞台初主演を果たし、『HiGH&LOW』シリーズへの出演でも注目を集めた。近年の主な出演作に、映画『あゝ、荒野』、『万引き家族』、ドラマでは『ホリデイラブ』(テレビ朝日系)、『健康で文化的な最低限度の生活』(フジテレビ系)、主演映画『あの頃、君を追いかけた』など。2019年はドラマ『大全力失踪』(NHK BSプレミアム)、ドラマ『特捜9 season2』(テレビ朝日系)、NHK連続テレビ小説『なつぞら』などに出演。2020年1月31日には出演映画『嘘八百 京町ロワイヤル』が公開。

舞台情報

舞台『終わりのない』
上演中〜11月17日(日)@世田谷パブリックシアター
https://setagaya-pt.jp/performances/owarinonai20191011.html

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、山田裕貴さんのサイン入りポラを抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2019年11月7日(木)12:00〜11月13日(水)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/11月14日(木)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから11月14日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき11月17日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
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