「自他共に認めるオタク」Jean-Ken Johnnyが語る、MAN WITH A MISSIONとアニメの関係

頭はオオカミで体は人間という異色のビジュアルをもつ5人組ロックバンド・MAN WITH A MISSION(マン・ウィズ・ア・ミッション、以下「マンウィズ」)。

究極の生命体ゆえ氷河で氷漬けにされていた彼らだが、冬眠中に世界中の音楽を吸収し、2010年に氷が溶けるとさっそくバンド活動を開始。さまざまな音楽的要素を取り込んだセンス抜群のロックミュージックを武器に、瞬く間にシーンを駆け上がってきた。

ところが彼らが冬眠中に影響を受けたのは音楽だけではなかったらしい。『AKIRA』や『攻殻機動隊』、『機動戦士ガンダム』など、日本が世界に誇るアニメカルチャーもまた、マンウィズを形作るひとつのピースとなっているというのだ。

今や数多くのアニメ主題歌を手がけるマンウィズ。TVアニメ『ヴィンランド・サガ』のオープニングテーマである最新楽曲『Dark Crow』の話も絡めながら、フロントマンのJean-Ken Johnny(ジャンケン・ジョニー)に「アニメへの思い」を聞いた。

※発言はすべて、編集部で日本語に翻訳しています。

撮影/後藤倫人 取材・文/岡本大介

自分は“自他共に認めるオタク”

これまで数多くのアニメ作品の主題歌を担当されていますが、そのことについては率直にどう感じていらっしゃいますか?
自分は“自他共に認めるオタク”で、日本のアニメーションが大好きなんです。ですので当然ながら、アニメの主題歌を手がけることには一切の違和感も抵抗もありません。というより、むしろすごく光栄ですし、嬉しいことですよね。

これは我々の音楽に限らずですが、そもそもロックミュージックとアニメーションのオープニングというのはとても親和性が高いと感じていますので、担当させてもらえたときには毎回ワクワクしながら楽曲を作っています。
歌詞やアレンジなどに、絶妙なバランスで作品の世界観を取り入れていますよね。作品とマンウィズの世界をミックスするうえでの苦労などはありますか?
とてもありがたいことに、お話をいただく作品は、我々がもともと好きだった作品が多くて。リンクさせることがさほど難しくはないといいますか、むしろ共有している部分のほうが多いんです。

たとえば『ガンダム』はもはや自分にとってバイブル的存在ですし、『いぬやしき』の奥浩哉先生は昔から大のファンですし。我々の音楽そのものが、それらの多くのマンガやアニメ文化の血脈を受け継いでいるとも言えるんです。なので、作品の世界観をそこまで強く意識せずとも、自然とシンクロしてくることが多いんですよ。
なるほど。では逆に、アニメの主題歌を担当したことによって、たとえばライブのファン層が変わってくるなど、バンドを取り巻く環境の変化のようなものは感じますか?
ファン層の変化で言えば、日本国内ではまったく感じません。一方海外では、これはファン層の“変化”というより“拡大”と言ったほうが正しいんですけども、如実に感じます。つい先日もメキシコでライブをさせていただいたんですけど、まあ熱気がスゴかったですね。
海外の方はアニメ作品を通じてマンウィズを知る人が多いんですね。
そうなんです。友達のバンドからもよく聞く話なんですけど、アニメ主題歌の演奏となると、国内の動員よりも海外の動員のほうが多いこともあるそうですよ。
へえ。ではアニメという存在が、日本から海外への足がかりを作るケースもあるんですね。
足がかりどころか、現状の日本の音楽業界を考えると、アニメコンテンツは、海外へ進出するもっとも有効な突破口と言えるんじゃないでしょうか。日本のアニメーションというのは、日本に住んでいると気付きにくいかもしれませんが、それほど世界中で人気があるんですよね。
マンウィズは英詞も多いのでとくに海外人気が高いと思うのですが、音楽性の面でもバトルやファンタジーなど大スケール作品のオープニングを手がけることが多く、それも特徴的ですよね。
自分たちの楽曲は冒頭からテンションがブチ上がる曲が多いので、おっしゃるようにバトル系作品との相性はいいのかなと、客観的にもそう感じます。もちろん制作側もそれを求めているのでしょうし、我々としてもそのほうがやりやすいのは事実ですね。

『AKIRA』なんて、そりゃ世界中が虜になりますよ

“自他共に認めるオタク”のジョニーさんですが、個人的に好きなジャンルなどはあるんですか?
好き嫌いはなくて、どんなジャンルも嗜みます。
たとえばマンガであれば、絵、ストーリー、キャラクターなどいろいろな要素がありますけど、ジョニーさんは主にどんなところに注目して読みますか?
自分の場合はセリフがとくに重要ですね。セリフが何かしら胸に刺さるものでないとなかなか作品世界に入れないので、結果的にあまり好きになれないんです。逆にセリフが琴線に触れれば、それがどんなジャンルであろうが、どんなテーマであろうが好きになっちゃいますね。
最近の作品で、オススメのマンガって何かありますか?
小学館のアプリ「マンガワン」が好きでいつも読んでいるんですけど、最近は『堕天作戦』(著:山本章一)というダークファンタジー作品にハマっています。
『堕天作戦』…?
そうなりますよね(笑)。たしかにあまり有名ではないと思いますけど、面白いのでぜひ読んでほしいです。まだまだ物語の全貌も見えないのですが、小難しい設定も含めて大好きで、これはもっと人気が出てほしいなと思っています。
ではオールタイムベスト作品と言うと?
これは口に出すのもおこがましいと言うか、恥ずかしいくらいなんですが、やっぱり『AKIRA』ですかね。
マンガですか? それともアニメですか?
どちらも大好きなんですけど、海外への影響という点ではアニメですかね。もちろんそれまでに作られていた日本アニメも魅力的だと思うんですけど、日本のアニメーションが一気に世界に知れ渡ったのって『AKIRA』の影響が大きいですよね。僕自身もメチャメチャ衝撃を受けました。
まさにジャパニメーションの金字塔ですからね。
そうですね。あの常軌を逸した描き込み具合、作り込み具合は、そりゃあ世界中が虜にもなりますよね。その流れで言えば『攻殻機動隊』も大好きなんですけど、『AKIRA』は日本のアニメって偉大だなと改めて気付かされた作品ですね。
ではTVアニメのマイベストは?
先ほど言った『ガンダム』シリーズで、とくに無印(『機動戦士ガンダム』)です。今思えば、あんなに哲学的なアニメをよく子ども向けに放送したものだと思いますね。
お話を伺っていると、マンウィズの音楽から感じるハードボイルドさやクール感って、『AKIRA』や『攻殻機動隊』、『ガンダム』のような大人向けアニメに通じる部分があるような気がしますね。
先ほど我々の音楽が“日本のサブカルチャーの血脈を受け継いでいる”と言いましたが、おそらくそういう部分は色濃く流れていると思います。ただあまりハードボイルド感を強調して『週刊少年ジャンプ』から声がかからなくなるといけないので、これ以上は口をつぐみます(笑)。

絶望や葛藤から得る人生観は”美しい”

ではいよいよニューシングル『Dark Crow』の話をお伺いします。こちらはTVアニメ『ヴィンランド・サガ』の新オープニングテーマですが、そもそも原作をご存知だったんですか?
もちろん存じていましたし、原作も読んでいました。そのうえで改めて第1期のアニメーションを拝見しました。ただオープニングテーマだけは極力聴かないようにしていましたね。第1期を担当していたサバプロ(Survive Said The Prophet)は友達なんですけど、彼らの曲に引っ張られてしまうのが正直怖くて(笑)。
ちなみにタイトルの『Dark Crow』ですが、カラスというモチーフはどこから出てきたんですか?
名付け親は作曲したKamikaze Boy(カミカゼ・ボーイ)で、そこについてくわしくは聞いていないんです。ただ私が思うに、カラスは不吉の前兆であり、災いを運ぶ象徴ですよね。原作でもカラスはところどころで印象的に描かれているので、そういう意味だと解釈しています。

『ヴィンランド・サガ』は壮大な英雄譚であると同時に復讐劇でもあって、それでいて志半ばにしてその復讐を断念せざるを得ないという、なかなかにエゲツないドラマ展開ですよね。主人公のトルフィンの心情を考えると、“闇”の比喩表現としてもピッタリなモチーフじゃないかなと思っております。
冒頭で民族楽器が鳴り響くことで、一気に作品世界に引き込まれます。
あれはバグパイプ(スコットランドの民族楽器)ですね。楽曲の入りというのは、聞いている皆さんが無防備な状態ですから、イントロで心を掴むというのはすごく効果的なんです。北欧のヴァイキングと言えば何だろうと想像してみたら、これはもう瞬時にバグパイプとかホーンだろうと。
作品世界を意識した楽器編成やアレンジというのは、これまでもいろいろとやられていますよね。
そうですね。バンド編成でできるアレンジには限りがあるんですけど、自分たちはわりとサンプリングを多用するバンドなので、そこはよりわかりやすく作品世界に入ってもらうことができるのかなと思っています。
たとえば『Raise your flag』(『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』オープニングテーマ)や『Seven Deadly Sins』(『七つの大罪』オープニングテーマ)など、楽曲冒頭にシンガロングが入ることが多いのも、作品世界に引き込むためですか?
そうです。もともとシンガロングは観客との一体感を高めるための手法なんですが、それがアニメのオープニングになった場合は視聴者さんが作品世界に没入できる手助けにもなるのかなと感じていて、それでよく使っていますね。
アニメ監督の籔田修平さんとは『いぬやしき』でもご一緒されていたかと思いますが、今回はどんなことをやり取りされましたか?
籔田監督からは、楽曲を通じて表現してほしいメッセージやテーマ、フレーズなど、一通りの要望をいただきました。そのほとんどは、もともと自分たちが表現しようと考えていたことと同じだったんですけど、そういえば一点だけ省いたことがありましたね。
それは何ですか?
言っていいものかどうかわからないですけど、“臓物を取り出せ!”って歌詞を入れてくれと(笑)。
ずいぶんと過激なオーダーですね(笑)。
これは完全に憶測ですけど、あの人、絶対にデスメタルファンだと思います(笑)。まあ、結局その歌詞は入れなかったんですけど。
歌詞を拝見すると、タイトルの通りの不吉さとともに、自分で選択して決断することの大事さも伝わってきて、ネガティブとポジティブが混在しているのが印象的です。
トルフィンって、とくに序盤では狂気じみた圧倒的な意志で突き進んでいきますよね。それがたとえ復讐のためだとしても、その前へ進んでいく姿、生き延びようとする姿というのは主人公としてすごく力強くて、我々もそこに共感したんです。

なので結果的に、復讐がもたらす悲劇的な未来と、前へと進んでいく力強さの両方を楽曲に込める形になりました。そこの部分までを表現できたのは、もともと作品のファンだったことが功を奏したなと感じますね。
復讐が正しいわけじゃないけども、気力を失ってしまうのも正しくないと。
実際にトルフィンって、あることが原因でプツンと切れちゃうじゃないですか。じつはあのシーンがいちばん印象に残っているんですよ。トルフィンとは比べられないにしても、現代に生きている我々だって、生きる意味を見失ってしまうことっていくらでもあるじゃないですか。それはすごく悲しいしやり切れないけど、同時に“美しい”とも感じるんですよね。

それまで自分がやってきたことはすべて無駄なのか、無駄ではなかったのか。そういう絶望や葛藤からしか得られない人生観もありますし、そこに人生の美しさがあると思うんです。トルフィンを見ていると、そんなことまで感じさせてくれますね。
ちなみに『Dark Crow』のカップリングとしてシングルに収められている『Reiwa feat. milet』では、エンディングテーマを歌われている miletさんとコラボを果たしています。これは今回の主題歌つながりだったんですか?
くわしくは覚えていないですが、おそらく違ったと思います。たしか主題歌の話をいただく前から miletさんには注目していて、「ちょっと圧倒的だな」と思っていたんです。ほかのメンバーにも「この子ヤバくないですか?」って聴いてもらっていましたから。
そのタイミングでの、同じアニメでの共演。運命的ですね。
たしかに奇跡的なタイミングですね。当初は、カップリング曲に女性ボーカルを迎えるつもりはまったくなかったんですけど、デモ音源を作る際に遊び心で女性の声を入れてみたらそれがすごくハマっていて、だったら本当に女性の方に歌っていただこうかとなったんです。そのときにmiletさんの声が浮かんで、満場一致でお願いしようということになったと思います。

トルフィンと同じく、我々も葛藤の最中にいる

来年の2020年にはプロジェクト始動から10年目を迎えます。現在のところ、ジョニーさんが考える“MISSION”の遂行達成度はいかがですか?
正直な気持ちを言うと、まだ何も成し遂げられていないと思っています。音楽を通じて皆さんと共感し合いつつ、そのムーブメントをどんどんと大きなものにしたいと思っていますが、まだまだ始動当初に思い描いていたスケールには至っていない。

もちろん、ファンの皆さんに支えられつつ、我々の想像を超えるスピードでとてもいい景色を見させてもらえていることには感謝していますが、同時にまだまだこれからだなとも思っています。
マンウィズにとってのヴィンランド(到達地)はどこなんでしょうか?
我々が氷河の中で聴き、憧憬の念を抱いていたアーティストや楽曲たちというのは、もっともっとパワーに満ち溢れていたものばかりだったような気がします。それに比べると、現代のロックバンドはなかなかそのパワーを届けるのが難しい時代に突入している気がするんです。我々が思い描いている到達地に届くかどうか、そういう意味では作中のトルフィンと同じく、我々も葛藤の最中にいるとも言えますね。
80〜90年代のロックバンドの熱量を、もう一度この令和の時代に蘇らせることが最終目標ですか?
そうですね。そしてそれは決して夢物語ではないとも思っています。我々はまだまだロックバンドの可能性を信じていますし、ほかの多くのバンド仲間もきっと同じ考えでしょう。みんなでもっとジャンルとしてのロックを盛り上げていきたいと思っています。
MAN WITH A MISSION(マン・ウィズ・ア・ミッション)
Tokyo Tanaka(Vo)、Spear Rib(Drums)、Jean-Ken Johnny(Gt, Vo, Raps)、DJ Santa Monica(Djs, Sampling)、Kamikaze Boy(Bass, Cho)の5人からなる、頭はオオカミ、体は人間のロックバンド。2010年より日本で音楽活動を開始。2011年にメジャーデビューを果たし、以降シングル10枚、アルバム5枚をリリース。日本国内のみならず、海外人気も非常に高く、アジア、北米、欧州など世界中で精力的にライブを行っている。また2020年には音楽ドキュメンタリー映画『MAN WITH A MISSION THE MOVIE ‐TRACE the HISTORY‐』が公開予定。

CD情報

ニューシングル『Dark Crow』
10月23日(水)リリース!

左から初回生産限定盤[CD+DVD]、通常盤[CD]、アニメ盤[CD+DVD]

初回生産限定盤[CD+DVD]
¥1,800(税抜)
通常盤[CD]
¥1,200(税抜)
アニメ盤[CD+DVD]
¥1,800(税抜)

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、MAN WITH A MISSIONのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2019年10月23日(水)16:00〜10月29日(火)16:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日10月30日(水)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから10月30日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき11月2日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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