神木隆之介の辞書に「苦労」の文字はなかった

2歳で芸能界入りし、今年で芸歴23年。映画やドラマに欠かせない存在となっている実力派俳優――神木隆之介、25歳。

実年齢を聞くと驚く人も多いのではないだろうか。4月21日にスタートする日曜劇場『集団左遷!!』(TBS系)では、初のサラリーマン役に挑戦する。

人気子役として活躍すると、年を重ねても子役のイメージから抜け出せず、大成しないと言われることもあるが、神木は違う。

それは才能ゆえか、努力ゆえか。本人は「周りの人や作品に恵まれているだけ」と、あくまでも謙虚な姿勢を崩さない。

探ってみると、その大きな理由のひとつは、大変だった経験を苦労と思わず、誰かと自分を比べて嫉妬したり落ち込んだりすることもない、“ポジティブマインド”にありそうだ。

撮影/アライテツヤ 取材・文/井ノ口裕子

今も、心は17歳。だけど身体が追いつかない

子役時代からずっと見ているからなのか、神木さん=国民の弟的な存在だと思います。なので、サラリーマン役と聞いたり、実年齢は25歳と聞くと驚いてしまうのですが(笑)。
そうですね。子供の頃は、自分が25歳になるって想像もしなかったです(笑)。
年齢を実感するのはどんなときですか?
走っていて息切れしたりして、身体はちゃんと疲れるんだな、痛くなるんだなとわかったときです(笑)。高校生の頃はそんなことなかったのに。
疲れを知らなかった?
はい。今も心は17歳で、無限に走れると思っているんですけどね。だけど身体が追いつかないから怪我をします(笑)。
25歳は大人だと思いますか?
自分はまだ大人じゃないなと思います。しっかりしないといけないのはわかってはいるんですけど、まだ高校生の気分なので(笑)。

でも、僕が20歳のときに5歳上といったらすごく年上で、話している話題とかも別世界という感じで憧れていましたから。後輩から見て、そんな25歳になれていたらいいなとは思います。
学生役など、実年齢より下の役を演じることはどう思いますか? ぶっちゃけ学生服はもうキツいと思っているとか?
逆に僕は学生服を着たいです。映画『バクマン。』のときに、(佐藤)健くんが今の僕と同じ年くらいで、「学生服キツいなぁ」って言っていましたけど、僕はまだ高校のノリとかも抜けていないので全然いけると思います(笑)。
もっと大人の役をやりたいとか、イメージを変えていきたいとか考えますか?
今までも考えたことはないですし、これからも考えないかもしれません。仕事はマネージャーさんに決めてもらっているから、次は社会人役か学生役か、台本を渡されるまでまったくわからないんです。
自分からこういう役をやりたいとかこの作品に出たいとか、言ったことは一度もないんですか?
基本的にはないです。映画『るろうに剣心』だけは、「瀬田宗次郎をやりたい!」と言いました。あとは自分の好きな漫画とかで、ファンとして「これやりたい」と言っているだけで。

どんな役でも、演じてみるとやっぱり楽しいですし、今後の作品選びもマネージャーさんを信頼しています。

42歳で定年を迎えたら、会社員として働きたい

『集団左遷!!』で神木さんが演じる銀行員・滝川晃司は、かつては幹部候補だったが、ある事件がきっかけでドロップアウトした“奈落のエリート”。サラリーマン役を演じるにあたり、どういう準備をされましたか?
銀行員の日常がわからないので、営業時間外のみなさんの様子とか、どういうふうに作業をしていらっしゃるのかを知るために、資料を読んだり。実際に銀行へも行かせていただき、表からは見えない仕事を見せていただいたりしました。
サラリーマンの友達に話を聞いたりもしましたか?
公務員をしている地元の友達から「毎日、朝起きて役所に行って、作業をして、定時に帰ってくるっていうルーティンだからね」という話を聞いたことがあって、僕らとは全然違う世界だなとは思いました。
物心つく前に芸能界に入られた神木さんですが、会社勤めをする自分を想像したことはありますか?
ここ最近あります。やっぱり不安定な職業ですから、正直不安なんです。いつ仕事がなくなるかわからないですしね。
そんなことはないと思いますけど(笑)。
長く続けていても、たとえば課長とか部長とか役職につけるわけではないし、お芝居も自分の価値観だったり感性だったり考え方だったりで変わりますし、安定しているものってあんまりないなと、ここ最近すごく思っていて。

だから42歳で定年を迎えたら、事務所の社員になろうかなっていうプランは考えています。
42歳?
2歳でデビューしたので、40年働いたら定年かなって(笑)。
事務所の社員になって何をしたいですか?
若い子たちに芝居を教える先生になります。それで仲のいい監督から呼ばれたらたまに俳優もやるという(笑)。

ちょっと自分勝手な感じなんですけど、そういうふうにしたいなって。会社に自分のデスクがあって…とか、想像しますもん。会社員の方々からしたら、「いやいや、そんなに楽じゃないよ」という感じでしょうけどね。
完全無欠なイメージのある神木さんですが、“ダメ社員”役ということで、「自分ってダメだな」と思う一面はありますか?
私生活はダメダメですよ、僕。食生活もそうだし、睡眠のルーティンも守れていなくてダメですし、部屋の片づけもやる気ないときはまったくやらないし。
部屋が汚くても忙しいときはほったらかしですか?
そうそう。それであまりにも散らかりすぎて絶望したときに片づけます(笑)。
ひとり暮らしの食生活で“これだけは飲む”とか、最低限何か心がけていることは?
………現場でいただくお弁当を食べて栄養とっています(笑)。マイペースだから気分で動いてしまうので、決まったルーティンもあまりないし。だから完璧でもなんでもないです。

絶対的リーダーとしてのましゃ兄の統率力はスゴい

滝川を演じるうえで大切にしていることは?
「自分はできると思っているんだろうな、コイツ」というのが、もう目に見えてわかる人間なんです。そんなエリート銀行員の滝川くんが、じゃあなんで廃店が決まっている支店に飛ばされてきたんだよという理由が、毎話、毎話、追っていくうちに徐々にわかっていただけるように演じています。
初めは片岡(洋)支店長(演/福山雅治)のこともあまり認めないですし、「頑張るってなんですか?」という態度なんですけど、じつはカッコつけているだけで、人間くさいところもたくさんあって可愛げのある人間だと思うので。

片岡さんにツッコめるキャラクターとして、いい意味でのトゲというか毒を出せる存在になっていけたらなと思っています。
福山雅治さんは事務所の先輩であり、プライベートでも親しい間柄ですよね。初共演が決まったときはどう思いましたか?
すごく嬉しかったです。だって、毎日カッコいい福山雅治さんを間近で見られますから。
福山さんが演じるのは、50歳を目前にして廃店決定の銀行支店の支店長にされた主人公の片岡 洋。おふたりが上司と部下の関係で共に“絶対的権威”に挑むというドラマですが、実際に共演して感じた、撮影現場での福山さんのカッコ良さとは?
ましゃ兄がスゴいのは統率力です。もう、絶対的リーダーって感じがします。この人についていけば大丈夫なんだという安心感があります。そして、ついていこうと思わせるようなリーダーシップとカリスマ性を、お芝居の動きひとつひとつから感じます。それに一番は愛情の強さです。
何に対しての愛情でしょうか?
キャストやスタッフみんなに対してもそうですし、役を通しても僕が演じる滝川に対して愛情をかけてくれるので、さすがだなと。人間としての器が大きいましゃ兄だからこそ、片岡ができるんだと思います。このドラマでは、カッコいいだけじゃない泥臭い福山雅治さんが見られると思います。
副支店長・真山 徹役で香川照之さんも出演されていますが、一緒にお芝居をする中で「スゴいなぁ」と感じるのはどんなところですか?
香川さんもスゴい。本当に敵わないです。回転の速さといい、記憶力といい、頭の良さもそうですし。俯瞰的視線、多角的にものを見る力とか…すべてがスゴい人です。ムードメーカーなので場を盛り上げてくださって。なおかつ現場を巻いてくれたりするので(笑)。香川さんがいると現場の士気があがります。

芸歴23年。「大変」なことはあったけど「苦労」とは思わない

人気子役として活躍すると、年を重ねても子役のイメージから抜け出せず、大成しないという“子役ジンクス”を打ち破り、活躍を続けられています。ご自身ではこれまでの俳優人生をどのように分析していますか?
もう本当にありがたいことに、そのときどきで素敵なお仕事に巡り合うことがたくさんあったなと思います。中学生のときも『風のガーデン』というドラマで、すごく壁が大きい演じたことのない役に出会って。大変でしたけど勉強になりましたし。

そうやって何年かに一回、大変なお仕事をやらせていただいて、いろいろと勉強させていただくことができたので、周りの人にも作品にも仕事を選んでくれている事務所にも、本当に恵まれているなと思います。
子役時代から心がけていることはありますか?
とくに考えたことはないですね。親から、「現場に入ったら年齢は関係ない。あなたはプロなんだから、礼儀正しく周りに迷惑をかけないようにしなさい」と言われて、「はい!」ってそれを守っていたぐらいです(笑)。
「可愛い」とか「いい子」と言われることが多すぎて、思春期の頃に反発心が芽生えたりすることってありましたか?
反発心はまったくなかったです。褒められるほうがうれしいし、素直に喜んでいました。

「いい子だね」と言われると、「俺いい子ですか!? ありがとうございます!!」って思う。「やったー、いい子じゃん!」って。ホントにそんな感じです(笑)。
(笑)。はたから見れば順風満帆な芸能生活のようですが、神木さん自身としては「こんな苦労があった」と思うことは?
各作品のそれぞれの役で、習い事はいっぱいありました。ピアノ、料理、乗馬、殺陣とか。そういう技術的なことを身につけるのは、もちろん毎回すごく大変だったけど「苦労」と思ったことはないです。
今回のドラマの役では挫折を味わいますが、挫折した経験はありますか?
まだないです!
プライベートでも?
はい。学生生活もめちゃめちゃ楽しかったですし。

ただ、仕事の現場で監督とかに怒られたりしたら、普通に落ち込みます。でも、だからといって役者を辞めたいと思ったことは一度もありません。

「他人と比べない」両親の教えが今も生きている

挫折を味わって反撃していくことを、ドラマの役を通して初めて経験することになりますね?
そうですね。でも、僕は何事に対しても「くそー! 倒してやる!」みたいな感情を抱くことってないんです。オーディションでふたり残って最後に落ちてもなんとも思わない。自分とその役が合わないだけだと思うので。
落ちたら悔しいと思いそうですが。
それは、たぶんうちの教育方針のせいかもしれません。人を否定したり、「誰かに負けちゃいけない」とか、他人と比べるようなことを親が言わなかったんです。

「勉強をやれ」と言われたこともないです。「成績が危なくなったら自分でやるんじゃない?」という感じでした(笑)。うちの親が通知表でいちばん大事にしていたのは、どういう人柄なのかという部分の評価でした。
神木さんがいつお会いしても穏やかで、ポジティブな理由がわかったような気がします。
ネガティブな感情は、僕の辞書には載っていないようです。平和に生きています(笑)。

とにかく芝居が楽しくて仕方ない。役作りとかをどういうふうにしたらいいんだろうと考えている時間が今いちばん楽しいです。
神木隆之介(かみき・りゅうのすけ)
1993年5月19日生まれ、埼玉県出身。B型。1995年芸能界入り後、1999年、ドラマ『グッドニュース』(TBS)で俳優デビュー。映画『桐島、部活やめるってよ』、『3月のライオン』、主人公の声を務めた『君の名は。』など話題作に出演。現在、NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』に出演中。映画『屍人荘の殺人』、『Last Letter』の公開も控えている。

作品情報

日曜劇場『集団左遷!!』
日曜よる9時放送
(4月21日 初回85分SP よる9時〜10時19分)

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、神木隆之介さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
受付期間
2019年4月21日(日)12:00〜4月27日(土)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/4月29日(月・祝)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから4月28日(日)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき5月1日(水)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
  • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
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