歌広場 淳はなぜイケメンを語るのか? 「推し道」を行く男が、全オタクに伝えたい言葉

写真拡大 (全21枚)

イケメンを愛し、イケメンを推す男、歌広場 淳。彼が行く道は、何物にもかえがたい幸福感がある。

昨年末に行ったインタビューでは、歌広場 淳はなぜイケメンを推すのか、どんなタイプのイケメンが好きか、熱く語ってもらった。世の中に定着した「推し」という言葉についても、さらに深く掘り下げる記事となった。

2019年は歌広場にとって、早くも波乱の年となっている。推しのひとり「松本 潤」が所属する国民的アイドルグループ「嵐」が、2020年末に活動を休止することを発表。そして同じく推しである宝塚歌劇団星組トップスター「紅 ゆずる」もまた、今年10月13日の公演をもって退団すると発表された。

楽しいこともあれば、悲しいこともある。それでも私たちは、推しを推さずにはいられない。愛と哀しみの生き方について改めてインタビューしたところ、この長く険しい道を歌広場はこう名付けた。

「推し道」、と――。

撮影/斎藤大嗣 取材・文/大曲智子
デザイン/桜庭侑紀

イケメン好きと言い続けたら、自然と時代が合っていた

前回に引き続き、歌広場さんと「イケメン」について語り合いたく取材を申し込ませていただきました。こうしてイケメンを語る機会が増えていることを、率直にどう思われていますか?
時代に合っているのかもなあ、と思います。こう言っては元も子もないんですけど、多くのメディアは、効率よくバズれるものを探しているんじゃないかと感じました。SNSなどで多くの人が関心を持ちやすい話題を投下することがバズるのには効率がよいわけですが、そこで興味を引きやすい話題ってあまり多くはないんでしょうね。
「イケメン」は、多くの人を引き付ける最大公約数的なテーマだった。
もしかしたら、ですけれどね。だから告知や番宣ではなく、むしろご本人とも関係のないところで理由なくイケメンたちについて騒いでいる自分を、もしかしたら世間が面白がってくれたのかも知れません(笑)。
こうして仕事につながっていることは、歌広場さんにとっては嬉しいことなんでしょうか。
嬉しいことではあるのですが、そもそも僕は別に仕事にしたくて、イケメンを推していたわけではないんですね。もともとイケメンが好きで、周りの人も興味を持っていて、そのタイミングが2010年代後半の今、ちょうど合っただけ。

ちなみに僕は2000年代からずっとイケメン好きを公言していたのですが、当時は見向きもされないどころか気持ち悪がられてましたからね。
歌広場さんの昔からのファンの方には、イケメン好きはよく知られていると思います。
そうですね(笑)。たとえばK-POPは時代によって人気のグループが入れ替わりますが、僕はそういうの関係なく、好きになったものから順番にワーワー騒いでいました。

今や誰もが知るワールドスターとなった防弾少年団(BTS)ですが、デビュー直後から注目していて、「カッコイイなぁ」とつぶやいていたら、後になって「歌広場さんは昔からBTSのことを好きだったらしいぞ」と誰かが掘り返してくれて、知らずにシンパシーを得ていたという、不思議な状況もたまにあります(笑)。
イケメンを大々的に推す中で弊害はありますか? 本当はこの人が大好きだけどちょっと言えないときもある……とか。
それはないですね。好きなものを隠す意味はないですし、そういう気持ちを隠そうと思っていても、僕はどこかしらで発しちゃっていると思います。

推しの布教は、自分と考え方が近い人間に伝えるのが最効率

歌広場さんは、推しへの愛を積極的に言葉にしているイメージが強いです。
好きなものは言ったほうがいいと身をもって体験しているので、できるだけ声に出すようにしています。僕は周りがどう思うとか関係なく、「好きになるものを自分で選んだ」という実感があるんです。
自分で選んでいるのでリスクなんかどうでもいい。納得できるっていう気持ちがあるんでしょうね。逆に、先ほどの弊害についての質問にも重なるのですが、自分で選んでいないものを好きだということはとても難しいです。
なるほど。
僕がこうして推しについて話すのが面白がられているのって、同じように推しについていろいろ考えているのに、うまく言葉にできない人が多いからなのかなと思っています。

たとえば、日本人ってよく英語のリーディングやリスニングはできるけど、ライティングやスピーキングができない、みたいに言われることがありますよね。国語のテストなんかでも「このときの登場人物の気持ちを読み取れ」みたいな設問も多いです。

要は僕たちって気持ちを読むことは訓練してきても、気持ちを外に出すこと、意見を主張することはあまり訓練してきていないんですね。
よく「推しを表すための語彙力がない!」なんて言いますよね。
「語彙力がない」って、いつの間にかいい意味の言葉として使っていますけど、本当はたくさんあると自分でもわかっているはずの推しの魅力を「尊い」でしか言い表せないのでは、めちゃくちゃ極端な言い方をすれば、社会全体がよくない方向に向かうと思います。
「尊い」で終わらせず、もっと言葉にしたほうがいい、と?
というか、推しが「尊い」のは当たり前じゃないですか(笑)。もしここで「それはそう」と思われた方がいたら、推しへの想いをいつもと違う言葉で出してみるといいかもしれません。僕の場合はこうやってインタビューしていただく機会もあるので、そのたびに考えつつ、推しの魅力について改めて気づくことも多いです。

……ですが、推しへの愛を誰かに伝えるってすごく難しいんですよね!(苦笑)
歌広場さんはかなり上手だと思うんですが……。どうしてそう思われるんですか?
推しの話のみならず、自分にとって大事な話を誰かに効率よく伝えるには、いきなり全体に向けて語りかけるよりも「この人だったらわかってくれるかも」という中間地点の人に教えていくことが重要なことに気がついたんですね。「魂の距離」が近い人というんですかね……。まずはそういう相手に専門用語をちょっとだけ少なめに説明すると、相手もだんだん知識が増えていく。そうやってバケツリレーのように知識を近くの人に伝えていけばいいと思うんです。

それを繰り返していけば、自分としてもうまく言葉で表す訓練になるし、相手としても「ちょっと何言ってるのかわかりません」みたいなことが減るので。それは自分の推しや生息するコミュニティ、その延長線上にある社会にとってもいいことですよね。

でも、今はその中間にいる人の声があまり届いていない気がします。言ってみればバケツリレーができていなくて、知識のある人とない人の二極化が進んでいる状態です。
たしかにそうですね。
僕の話を聞いてもまったくわからないっていう人もいるんですけど、それはたぶん、僕と魂の距離がかなり遠いから。

一方で「歌広場の言ってることわかる!」と言ってくれる人もいます。わかり合える人同士、自分なりの言葉でどんどん伝えていく。そうやって議論を深めてわかるようになっていくことが、最終的に推し方の向上になると思っています。

このインタビューが配信されて、読んでくれた人が何かを学びとって、伝える技術が上がったのちにあなたの推しの魅力が僕のところまで回ってきたら最高ですね。

「推し」を「推す」スタイルには3種類のパターンがある

歌広場さん自身、推しについて考える機会が増えてきたんだろうなということがよくわかります。
でも僕、近年あまりにも推しについて人に話す機会が多すぎたので、ちょっと普通の人の理解が及ばないところにまで行っちゃったんですよ……(笑)。
どういうことですか?
ちょっと語っていいですか? 僕が見ている中で誰かがイケメンを推した際、すごくやりがいを感じていそうなときと、あまり感じていなさそうなときがあると思ったことがあって。

もしかしたら、これは「推しがい」というものがあるのではないかと考えたんです。
「やりがい」ではなく「推しがい」ですか?
はい。「推しがい」があるときとないときがある。
推してよかったと思うときは、「推しがい」があったと。
すごく単純に考えて、「何かを推す」というひとつのアクションに対して、目に見えるもの、目に見えないものに関わらずリターンがたくさんあった場合は、これは推しがいがあったのではないだろうかと。

そう考えたとき、そもそも僕がやっていたのはコストやリスクを考えずに推しへの愛を叫ぶこと。それが結果的にメリットになった場合でも、推しがい、リターンを求めていたわけではないことに気がついたんですね。

そして「推しがい」について考えたときに、応援の仕方に3種類あると思ったんです。
学会のようになってきました。ぜひ解説をお願いします。
推し方は大きく「完結型」「環境型」「貢献型」の3種類にわけられるんです。……いや、突然すみません(苦笑)。でもこれ、それぞれメリットとデメリットがあって……。
まず完結型は、推すこと自体が好きというタイプです。推しからエネルギーをもらって元気になる、毎日を頑張れる。推しと自分の間だけで関係が完結しています。

推しを「見るエナジードリンク」と捉えて、細かいことは抜きにして幸せになれる。この推し方は、効率がすごくいいです。嫌になったとしたら摂取するのを止めればいいだけ。

デメリットは、元気の源である推しがいなくなってしまったら心が折れてしまうこと。ただ、このタイプの方にはきっとまた違う推しが現れます。ちなみに僕は完結型です。
続いて、環境型は?
推している現場が楽しい、推し仲間が好きというタイプですね。推す楽しさと現場の楽しさが近い価値を持っている。仮に推しのことが嫌いになったり、推しがいなくなったりしても、そこで出会った仲間が好きなので、楽しい気持ちは倍になるし、辛い気持ちもひとりで背負わずに済む。

こう考えるとデメリットがないようですが、環境型はその名の通り環境に依存しているので、そもそも完璧に自分に合った環境を見つけたり、作り上げられる可能性が低いです。また、ちょっとした要因で環境が激変することもあります。そのぶん出会えたら最高なので、大事にしたほうがいいと思いますね。

「推しに貢ぐ」という考えは日本の社会問題に似ている

そして3番目の貢献型は?
「辛いけど推しのため」や「事務所に貢ぐ」といった表現をしているタイプです。
あれ? でもそういう方って結構いますよね。
そうなんです。本人的にはいつも通りに推しているのですが、周囲からは「なんか大変そうだね……」と思われがちな人っていませんか? 僕、この貢献型の構造がとある社会問題と似ている気がしてならないんです。
その問題って?
これって少し前に話題になった、東京オリンピックのボランティアとまったく同じだと思うんです。
大会ボランティアに対して「やりがい搾取」の声があがっている問題ですね。
これは繊細な問題ですけど、端的にいえば「社会貢献なんだから無償無給でも我慢しろ」と捉えることもできると、そういう意味で問題になりましたよね。

推し方に当てはめると「推しのための課金は義務」とか、「このグループが好きだから、同じ事務所の新人グループもとりあえず推さなきゃ」と言っているのに近いと思いませんか?
好きでやっているならいい気もしますが、ダメでしょうか?
「好き」ならばもちろんいいんです。でもそこまでして初めて「楽しい」となる推しって「めちゃくちゃハードコアだけど大丈夫!?」って話なんですよ。

これは邪推かもしれないので、当てはまらない場合も多々あると思うのですが……いっぱいお金を使うことは一見すると推しのためになっているようで、どこか自分のためにやっているんですね。

自分で稼いだお金なのでそれ自体はなんの問題もないし、むしろ「すごい愛の深さだ」となるのですが、それが「どこかで納得していない過分なコスト」の場合は、推しからのリターンで何とか回収したい気持ちになってきます。そこまでくると自分の気持ちを「推し付け」ているだけ。
たしかにそうですね。
重ねていいますが、それが幸せだと言う人もいるし、貢献型には他のタイプにはない圧倒的な快感があるので、否定はできません。ただ、コストとリターンの仕組みだけがあり、そこに納得できない不満が生まれる余地がある。

それがやりがい搾取のような日本の社会問題の構造に似ていると気がついたとき、貢献型に特化した推し方は果たして「大丈夫か!?」って思うんですよ。「やりがいのある仕事なんだから、月給5万円でもいいよね?」と言われたら「いやさすがに」ってなりませんか?

歌広場がイケメンを推すときの、「たったひとつ」の基準

歌広場さんが「推し」を「推す」基準って何ですか?
それはもうハッキリしています。というか、さんざん偉そうなことを言ってきたのに申し訳ないんですけど……。
けど?
股間がうずくかどうかです!
えええ。でもそれって誰しもうずくものでしょうか?
いや、もちろん「概念としての股間」ですけど(笑)、絶対あると思いますよ。僕が敬愛する漫画家でありコラムニストでもあるカレー沢 薫先生の言葉に、「ガチャは股間で回す」(カレー沢 薫『カレー沢 薫の廃人日記〜オタク沼地獄〜』より)っていうのがあるんですけど、本当にその通りだと思いました。僕も似たようなことを思っていたから。

推しも、もう素直に股間がうずくかどうかで選べばいいんですよ。股間がうずかないのにお金を使っているから、「損した」という気持ちになるんです。
なるほど……。
だけど逆に考えれば、股間さえうずけばどうにでもなっちゃうもの。先ほどの分類で貢献型に当てはまった人は「はぁ!? 余計なお世話だし!」となったと思いますけど、ぶっちゃけ股間さえうずいていれば僕は「失礼しました!」と頭を下げるしかありません。

むしろ、そういう推し方をしている人は無条件に尊敬します。体中から血が吹き出しているのに絶対に止まらない8トントラック。本能むき出しで歩いていく姿は美しいと思います。……すみません。品のない言葉を連呼しているうちに僕が暴走していました……。

推しを前に「尊い!」と泣くのは、自分が楽しんでいるだけ

ちなみに歌広場さんはお仕事で推しに会うこともありますよね。観劇などプライベートで会いに行くときと、仕事のときで、心持ちに違いはありますか?
じつは僕もそういう状況で、「必要以上に崇めて逆に距離ができてしまった」みたいな失敗をたくさんしてきていて……(苦笑)。

推しを前にして、「ヤバイ! 好き!」とか、「尊い〜!」と号泣したりするのって、エモーショナルだし楽しいから、ついついしちゃうんですよね。でもある日、それで楽しんでいるのって自分だけなんだと気づきました。
何かわかります。
だから対策として、「相手が楽しいことをする」ようにしていますね。日頃、これだけ推しに幸せにしてもらっていますから。

もしも推しと接する機会があったら、その時間は少しでもお返しをしてあげたいと思うので、推しが喜んでくれそうなことをします。仮にそれで楽しませることができなかったとしても、そういった気持ちの元に行動したことは伝わるはずですから。

そして重要なのは、推しと直で接することによって、普段の自分の推し方も肯定できる。仕事で会うのは抜き打ちテストのような感覚ですね。どれだけ偉そうなことを言っていても、抜き打ちテストで赤点の人が言っていることは聞いてくれないじゃないですか。
歌広場さんでも推しを前にして緊張するんですか?
もちろん緊張しますよ! だからそういうときは「本当にすみません。あなたが僕に緊張するなと言っても無理なことを踏まえたうえで、僕なりにあなたの素晴らしいと感じている点をどうしてもお伝えしたいので、お話を聞いていただいてもよろしいですか!?」みたいに臨みます。めちゃくちゃ気持ち悪いですね(笑)。
もし推しに会ったら、「ファンだって伝えたいけどあまり言うと引かれるかな」とか考えちゃいそうです。
大丈夫です、「あなたのことが好き」だと言われて嫌がる推しはひとりもいないはずです。

僕はきょうの取材で、初めてお会いしたカメラマンさんに「その角度いいね! サンキュー! ナイス!」とビックリするくらいたくさん言われましたけど、嫌だとは思いませんでした。それはどれもいい言葉だったから。「嫌じゃないかな」と勝手に思っているのは、相手のことを決めつけているのと同じです! 嫌がられたら謝って止めればいいんです!

自分の歩む道に誰かが入ってきたら、戦争の始まり

個人的な質問ですが、いわゆる同担(※編注)の人と会ったときに、好きの解釈が違うことがあるんです。推しのすべてをベタ褒めするタイプもいれば、「ダサい」とか貶しながら愛する人もいる。同じファンなのにあまりに好きの解釈が違うとき、歌広場さんはどうしていますか?
編注:「同担」はキャラクターやアイドルグループの中で、推す(担当する)対象が一緒になったファンのこと。
ありますね。これもややこしい話になりますけどいいですか?

日本には古来より「○道」ってありますよね。剣道、書道、華道など。どうして「道」という言葉がついているのか? 僕なりの考えですが、その道を通ることで、自己のより深い精神性にたどり着けるから。たぶん剣道って別に剣が強くなること自体は目的じゃなくて、剣の道を通して人間とは何たるか、自分とは何かを考えることだと思うんです。
その通りだと思います。
そして僕は、「推し道」もあると思います。なぜならば、今まで話してきたように、僕は推しという存在を通じ、より深いところで自分を語るきっかけをもらったからです。そして道ということは、その道を歩いているときに誰かが横から入ってくることも当然あるんですよ。
その人も自分の推し道を歩いている。
そうです。推し道の角度によって、人はぶつかったり、平行線なら永遠に交わらなかったりします。解釈違いというのは、推し道の角度によって人とぶつかってしまうことですね。
自分はただ道をまっすぐ歩いているのに、向こうから入ってきたわけですから、それはもう戦争になりますよね。僕の場合は「ちょっとそこに座れ」となります。
(笑)。ルールを守って道を歩いているのに横入りされたら、怒るしかないと。
まあ、真面目に話すと、自分の道に突然誰かが入ってきて、「お前の推し方どうなの?」とか言われたら、相手の道を尊重しつつ「俺はこういった考えの下にこの道を歩んでいるんだ」とディスカッションします。

もちろんそれによって道が変わったり、引き返したりすることもあります。ただ、横入りの衝撃のみで自分の道を変わってしまうことはありません。それは自分で選んでいないことになるからです。

逆に、意図せず自分から他人の道に入ってしまうこともあります。そのときは全力でその場からいなくなるようにしています(笑)。
ぶつかったときは客観的にならないといけないわけですね。もしかしたら自分が間違えているのかもしれない、って。
でもきっと、推し道に正解はないんですよね。そこが救いです。推し道は、コストを支払って推すことにより、リスクを負っているすべての人間に開かれた道です。それゆえにリスクを負っていない人が自分の道を遮っているときは全面戦争になりますけど(笑)。

たくさん恩恵をもらったから、推しには100%感謝しかない

推し道を行く者なら避けて通れない、「推しとの別れ」について伺います。「嵐」が2020年での活動休止を発表したり、宝塚のスターが続々と退団したり……。そんな推しとの別れに関する第一報を聞いたとき、歌広場さんはまずどのように受け止めますか。
答えは簡単で、受け止めるしかないです。突き放したような言い方になりますが「受け止められない」と言っているのは、今までの自分の推し方を否定しているのと同じです。そして受け止めきれないことはあっても、最終的にはみんな受け止めているはずです。
僕はよく「後悔しないように一生懸命推す」と言うんですけど、そんなの当たり前なんですよね。「そんなこと言うなよ恥ずかしい!」って自分でも思っているのですが、これはすごく忘れがちなことなので(苦笑)。
前回のインタビューでも、「紅 ゆずるさんがトップスターになった時点でXデー(退団)のことを考えていた」とおっしゃっていましたね。宝塚のスターを推す以上、退団は避けて通れない。
紅さんがトップになった瞬間から、あとはいずれ退団されるのみ……というのはわかっていますからね。宝塚はシステム上そういうものだし、そこが悲しくて魅力的なところでもあるんですけど。

僕、紅さんにすごく会えているかというと、そんなことはなくて、全然会いに行けていないんです。でも、僕は後悔しないようにしてきたと思っています。(言葉を探して)……紅さんに会っている時間は、できる限りの五感すべてを使って楽しんでいるんですね。

紅さんがくださった何かしらの感覚、感覚では受け止めきれないほどの感動は、どんなときでも僕の中に残っています。
なるほど。
これが最後になっても後悔しないように、これが最後でも「楽しかった!」って言えるように、推しのすべてを見逃さないようにしているんだと思います。

でもそれって、これが最後になっても後悔しないようなステージを、推しは見せてくれているということでもあるんですよね。こんなに素晴らしいことはないですよね!?

僕はこうやって推しへの愛をあちこちで語っていますし、それによっていいことも悪いこともたくさんありました。信じられないような奇跡も経験してきました。そして、ふと振り返ったとき、推しは自分でも意図していないところで、たくさんのものをくれていたんです。だから推しには100%感謝の気持ちしかないですし、推しがやめると言うなら、「今まで本当にありがとう」としか言えないですよね。
それでも、推しとの別れをなかなか受け止められない人のほうが多いと思うんです。
なぜ多くの人が苦しんだり悔やんだりしているのかを掘り下げてみると、自分または推し、どちらかがよくなかったんだというところに行き着きます。

つまり、推しが「これが最後だったら後悔する」ようなステージングをしてしまって、自分にとって本当にそれが最後になってしまったパターン。また、推す側も「これが最後になったら後悔する」という推し方をしていて、推しがいなくなってから気づくパターン。「推したくても推せない」という人がたまにいますが、そういった中でも思いっきりやりきった、という気持ちがあれば受け止められるのではないでしょうか。

でもそれじゃあもう遅い、「やめます」と言われてから気づいてしまった――という場合はどうするかということなのですが……いや、遅くはないんです。できることはあるんです。

残された時間がわずかだとしても、先ほど話したように推しへの愛を書き記す! 言い伝える! それこそがこれから去っていく推したちに対してできる、ほぼ唯一のことなんです!(力説)

「自分が思っていた推しと違う!」はただの幻想

先ほどの「自分の好きなものはどんどん発信したほうがいい」という話につながりました! とはいえ嵐さんのように、永遠だと思ってたものが突然いなくなってしまうという事態もありますよね。
そうですね、嵐さんに関しては本当に衝撃的だったし、本気で永遠だと安心しきっていたことを思い知らされました。恥ずかしいくらいに傲慢ですよね。でもこの件を通してまたひとつ成長したような思いです。

別に嵐さんは僕を成長させるために活動しているわけではありませんが、30歳を過ぎた傲慢な男をまたひとつ成長させてくれた嵐さん、やっぱり素晴らしすぎます!
ずっと続くものだと思い込んでいました……。
でも本当にさすがです、むしろ完璧だと思います! だってこれを会社員に言い換えると、ある社員が退職を申し出たら、上司に「じゃあ引き継ぎしてからな。引き継ぎ期間は2年!」って言われたようなものですよ!?

嵐さんは引継ぎ期間を2年もやってくれるんです。それで文句を言う人います?(笑)
たしかに(笑)。一方で、推しがスキャンダルに巻き込まれることもあります。犯罪に絡んだり、人としてあるまじきことをしてしまったり……。自分が見てきた推しとは違う一面を知ったとき、歌広場さんならどうしますか?
そういう場合にショックを受けるのって、「こんなことしないと思っていたのに」ということですよね。

「思っていた彼と違う」というのは、幻想です。冷たい言葉に聞こえますが、相手のことを知ったような気持ちになっていただけ。人間って本当に勝手なので、自分に都合のいいものしか見ない。知ったような気持ちになっている人が世の中にどれだけいたかが、浮き彫りになっただけです。
表の顔だけがその人のすべてじゃないと。
そうです。そして重要なのですが、裏の顔もすべてではないですよね?
たとえば僕は今「歌広場 淳」ですが、実家に帰ると「淳」と呼ばれます。弟からは「兄貴」と呼ばれます。同じ僕だけれど、全員違う僕と接している。誰にでもいろんな顔がありますし、それが普通ですよね。

「裏の顔にショックを受ける」のは、それらが全部同じだと思い込んでいるからなんですよ。

推しを推すことで、自分自身を見つめ直すことができる

勉強になります。歌広場さんのTwitterを見ていると、北海道や愛媛に行ったり、長崎まで歌劇を観に行かれたりと、ちょっとした時間ができると遠征されていますね。どうやって時間を作っているのでしょうか?
推す時間を作るには何かを削らなきゃいけないんですけど……。正直に言うと、睡眠時間を削っています(笑)。
睡眠を削ってでも推しを追うことを、1日のスケジュールに組み込んでいるわけですよね。
組み込まなくてもいいかもしれないけど、組み込んだことで僕はよりよく生きることができた。なのでこういうふうにお仕事させていただいてるんですよ。僕が忙しいとしたら、それは推しのおかげなんです。
どういうことでしょう?
(少し悩んで)……どんなに忙しくても、食事をとらない人っていないですよね? なぜならば食事はとらないと死んでしまうから。
これは推しを摂取しないと死ぬという話ではありません。推しって、生きるうえで別になくてもいいんですよね。じゃあなんでわざわざ推すのかといったら、僕は推しと出会ったことによって、よりよく生きれるようになったという実感があるからなんです。

推しって、「スゴいものと出会ってしまった。こんなスゴい人がいるんだったら、俺はもっと頑張らなくちゃいけない」という気持ちにさせられるんです。僕は推しと接した瞬間に生き方が変わりました。

推しのおかげで成長できているから、こうして何度もインタビューしていただいている。何も変化していない人にまた話を聞こうとは思わないでしょう?
こうしてお話していると、自分自身を見つめ直せそうです。推し道っていいですね。
でもこれって、みなさんとっくに気づいていることなんですよ。「ファンを見ればその本人がわかる」って言うでしょう? 推しを推すことで自分を見つめ直しているという感覚が無意識にあるんですね。自然と生き方や考え方が変わっていくんです。

推し道は、自分自身と密接につながっているということだと思います。

スペシャル動画

今回、インタビューにご協力いただいた歌広場 淳さんに、Twitter上で「#歌広場淳に聞きたくて」のハッシュタグで集めたさまざまな質問に答えていただきました!

中には「1日だけ松本 潤さんになれるなら?」や「自分が女性だったらゴールデンボンバーの誰と付き合いたい?」といった気になる質問も……!? イケメンを愛し、イケメンを推す男、歌広場さんならではの名回答をどうぞお楽しみください!
歌広場 淳(うたひろば・じゅん)
1985年8月30日生まれ。千葉県出身。O型。2007年、ゴールデンボンバーに加入。2009年、ゴールデンボンバーとしてリリースしたシングル『女々しくて』が大ヒット。2012年より4年連続で『NHK紅白歌合戦』に出場を果たす。2013年、第55回日本レコード大賞にて特別賞を受賞。4月1日に発表された新元号に合わせて制作した『令和』を発表。ソロでも『月刊TVnavi』で「イケメンがなきゃ生きていけない!」を連載するなど精力的に活動中。

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、歌広場 淳さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
受付期間
2019年4月12日(金)18:00〜4月18日(木)18:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/4月19日(金)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから4月19日(金)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき、4月22日(月)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
  • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
  • 応募内容、方法に虚偽の記載がある場合や、当方が不正と判断した場合、応募資格を取り消します。
  • 当選結果に関してのお問い合わせにはお答えすることができません。
  • 賞品の指定はできません。
  • 賞品の不具合・破損に関する責任は一切負いかねます。
  • 本キャンペーン当選賞品を、インターネットオークションなどで第三者に転売・譲渡することは禁止しております。
  • 個人情報の利用に関しましてはこちらをご覧ください。
ライブドアニュースのインタビュー特集では、役者・アーティスト・声優・YouTuberなど、さまざまなジャンルで活躍されている方々を取り上げています。
記事への感想・ご意見、お問い合わせなどは こちら までご連絡ください。