あのフィッシャーズもハマる「ナンジャモンジャ」、販売会社も知らなかった心温まる誕生の秘話

謎のキュートな生き物に名前を付けるゲーム『ナンジャモンジャ』。

もともと、日本では風変わりなカードゲームとして、一部の層に知られていたのですが、YouTuberのフィッシャーズ、元・東大生クイズ王の伊沢拓司さん(QuizKnock)が紹介したことで、中高生や若者にも広く遊ばれるようになりました。

言い間違いやすく、しょっちゅう笑いが起きるこのゲームはロシア生まれ。ロシア人声優のジェーニャさんが、作者のリーベディバ・アリョーナさんに、この不思議なキャラが誕生した背景を伺いました。

撮影/笹井タカマサ 取材・文/坂中愛実 デザイン/桜庭侑紀 取材協力/すごろくや
▲1度出たカードに名前を付け、あとで同じものが登場したら素早くその名前を呼ぶ。早く言えた人がカードをゲット。山札がなくなったときに手持ちの枚数が多いプレイヤーが勝ちになる。

作者は6児の母。ワーキングママの愛ある視点から快進撃が始まった

▲ロシア在住の作者・アリョーナさん
ジェーニャ:初めまして。アリョーナさんは、普段ゲームデザイナーではなく別のお仕事をメインにされているそうですね。
アリョーナ:本業は助産師で、産前〜産後のサポートをしています。私自身にも6人の子どもがいて、末っ子が13歳。最近では小・中学生の支援活動もしています。
▲日本在住のロシア人声優・ジェーニャさん
ジェーニャ:私は『ナンジャモンジャ』を『隣の家族は青く見える』(深田恭子・松山ケンイチが出演した、フジテレビ系テレビドラマ)で知りました。
アリョーナ:テレビドラマで取り上げられるくらい人気なんですね。嬉しいです。
ジェーニャ:アリョーナさんは、日本で『ナンジャモンジャ』が流行っていることは前から知っていましたか?
アリョーナ:昨年のクリスマスにボードゲームの版元「SIMPLE RULES(シンプルルールズ)」に聞いて知りました。びっくりして、手を叩いて喜んでしまいました。
ジェーニャ:カナダから南アフリカまで、約20カ国で発売されているそうですが、最初から世界でヒットすると思っていましたか?
アリョーナ:まさか! 私の子どもが「絵を描いて名前を付ける」遊びをよくやっていたから、どの子も自然にやることなんじゃないか、そんなに斬新なアイデアではないんじゃないかしらと思っていました。
▲アリョーナさんの末娘・アニシアさん。彼女が描いたイラストが、謎の生物「ナンジャモンジャ族」の原案。
ジェーニャ:はじめは、アリョーナさんのお子さんの絵から着想を得たそうですね。
アリョーナ:はい。ふたりの娘が6〜10歳の頃に描いたイラストを、今でも家の壁に飾ってあります。中には『ナンジャモンジャ』のキャラクターに似たものもありますよ。
▲壁紙として飾られている謎の生物たち。たしかに左は『ナンジャモンジャ シロ』、右は『ナンジャモンジャ ミドリ』に登場するキャラクターに似ている。
▲製品版の『ナンジャモンジャ』イラスト
ジェーニャ:お子さんの描いた原案を見て、イラストレーターのフェドトヴァ・ナヂェズダさんが仕上げてくれたんですよね。実際にカードになったキャラクターを見てどう思いましたか?
アリョーナ:子どもたちの絵はとっても感情が爆発している感じなの。母親としては、自分の子どもの絵をすごくかわいいと思ってしまうんですけど…(笑)。イラストレーターさんが、キレイにまとめて多くの人に受け入れられるようにしてくれました。
ジェーニャ:親子の愛情から生まれたゲームなんですね。すてきです。「シンプルルールズ」のディレクター、ダーリャ・エマルコヴァさんとの出会いについても教えていただけますか?
アリョーナ:ダーリャは最初、私の出産サポートサービスのお客さんでした。妊婦さんとして来てくれて、仲良くなったの。今ではすっかりサウナ友達です。バーニャ(ロシア式のサウナ)で会って、気付くと3時間くらい話し込んでいます。
▲ボードゲーム会社「シンプルルールズ」の創業者でディレクターの、ダーリャ・エマルコヴァさん

「あなたの人生はあなたのもの」ママ友に起業を決断させた、女同士の友情

ジェーニャ:ダーリャさんに会社を設立することを勧めたのもアリョーナさんなんですよね?
アリョーナ:話の中で、彼女の問題解決能力を褒めたことはあります。でもボードゲーム会社をつくるずっと前のことですよ。もう十数年来の友達なので…。

彼女には4人の子どもがいるんだけど、起業を決断したのは3人目の出産のとき。

当時ダーリャは数学の教授で、学生を育てているのに自分の子どもの教育には無頓着なように見えたの。それで私、妊娠中の彼女に「もっと自分の人生を考えたほうがいいよ!」とおせっかいを言いました。

そうしたら、産後40日くらいで「会社を作ります。準備しました」という連絡が来ました。
ジェーニャ:大学教授という名誉ある職を捨てて、突然ボードゲーム会社を立ち上げる勇気がスゴいですね。
アリョーナ:妊娠中ず〜っとボードゲームの話をしていたから、ついに来たかという感じでしたよ(笑)。最初はふたりで10個くらいゲームのアイデア出しをしました。
ジェーニャ:友達が起業に失敗したらどうしよう、と不安になりませんでしたか?
アリョーナ:ボードゲームを作るのは、ずっと前からの夢だったので、怖さよりワクワク感のほうが強かったですね。ふたりとも勢いがありました。
今もダーリャと会うと爆発したようにアイデアが湧いてくるので、どんどん作りたくなりますね。
▲『ナンジャモンジャ』はミドリ(左)とシロ(右)の2種類。ルールは同じで絵柄が異なる。

旧ソビエト連邦育ち。娯楽が限られていた時代を知っているから、子どもたちには夢見る気持ちを持ってほしい

ジェーニャ:ダーリャさんが会社を始める前から『ナンジャモンジャ』の構想があったんでしょうか。
アリョーナ:私も自分たち夫婦でおもちゃ屋さんを作りたいと思ったけど、諦めたことがあるんです。2008年のリーマン・ショックや不景気で、うまくいかなくて。このゲームのアイデアはずっと温めていたから「臨月だけど、なかなか産まれない!」みたいな、もどかしい気持ちを数年抱えていました。
ジェーニャ:アリョーナさんが最初にボードゲームに興味を持ったのはドイツに行かれたときですか?
アリョーナ:はい。「ニュルンベルク国際玩具見本市」に行って衝撃を受けたんです。今まで知っていたゲームとは全然違っていて。
ジェーニャ:旧ソ連時代を知っている人は、外国のカルチャーに憧れを持ちやすいですよね。私も8歳のとき、初めてチェコ(当時はチェコスロバキア)に行ってカラフルなおもちゃに感激したことがあります!

ロシアではボードゲームって、ちょっと下世話なものというか…トランプ賭博や、お酒を飲みながらやるようなダーティーなイメージがありましたよね。ひと昔前は子ども向けではなかった。
アリョーナ:ええ。私の小さい頃は、母にカードゲームで遊んではいけないって禁止されていました。でも、ドイツでは本当にボードゲームが盛んで、たくさんの種類があって、大人も子どもも健全に楽しんでいる。すごく印象的でした。
▲趣向を凝らしたブースが並び、たくさんの人が訪れるドイツのおもちゃの展示会「ニュルンベルク国際玩具見本市」。
ジェーニャ:ロシアでも最近はボードゲーム・カードゲームのイメージは変わってきています。「シンプルルールズ」と『ナンジャモンジャ』がロシアのボードゲーム市場を広げたんですね。本当にスゴいです。
アリョーナ:実は、知り合いが「面白いもの見つけたよ」とプレゼントしてくれた包みを開けたら、自分が作ったゲームだった…という経験が何度かあるんです。

友人知人が何も知らずに買ったゲームに自分が関われているなんて、感激です。
ボードゲーム業界に貢献している、ということを自然に実感できるので、そういうハプニングはうれしいですね。
ジェーニャ:『ナンジャモンジャ』は、日本では大人や、大学生などの若者にも人気があるんですが、ロシアでは子ども向けのゲームという認識ですか?
アリョーナ:主に小さな子どもですね。ロシアには今まで大人がボードゲームをする習慣がなかったので…ここ数年で少しずつ、プレイヤー層が広がってきているみたいです。

ダーリャも私も、自分の子どもたちからゲーム作りのヒントをもらうことは多いです。今度日本版が販売になる『さまことば』というゲームもそうですよ。
▲いくつかのキーワードに共通するものを挙げていく連想ゲーム『さまことば』©sugorokuya
ジェーニャ:子どもの遊びってユニークですもんね。『ナンジャモンジャ』の主要なルール、「名前を付ける」という行為はとてもクリエイティブだし、子どもの成長に役立ちそう。
アリョーナ:「名前を付ける」ことで、自分の身の回りをしっかり観察しないといけないですし、そのモノの特性を理解することにつながっていると思います。精神的な発達を促しますね。

日本で受け入れられた喜びと、これからの夢

ジェーニャ:どうして日本でこんなにブームになったと思いますか?
アリョーナ:「すごろくや」という、いい配給会社にプロモーションしてもらえたからですかね(笑)。
それに、日本人は順番を守るとか、みんなで協力し合うとかが得意な国民性と聞いているので、このゲームのルールが受け入れられやすかったのかも知れません。

残念ながらまだ日本に行ったことはないんですけど、先日、日本に住んでいるロシア人の妊婦さんがお客さんとして来てくれたんです。彼女に日本の産婦人科のことや、日本のカルチャーについて教えてもらってすごく興味が湧いていますね。

私は片付けが好きではないので、日本人の家をテレビで見掛けるとキレイだな〜って思います(笑)。
ジェーニャ:日本にずっと住んでいると、そうでもない人も多いってわかってきますよ(笑)。
▲「私も子どもがいるので、部屋が散らかって仕方がないです」と笑うジェーニャさんと、娘のえみりちゃん。
ジェーニャ:今後はどんなボードゲームを作っていきたいですか?
アリョーナ:スマホなしでも楽しめる「ミニ革命」を起こすゲーム。
ロシアでも大勢がスマホゲームやデジタルな世界に没頭しているのだけど、ボードゲームを遊ぶ間は「脱スマホ」できる。

スマホがない世界を前提に、プレイヤー同士の相互理解が深まるゲームにしたいです。Aさんが「“有名な場所”で待ち合わせしましょう」と言ったら、他のメンバーが「Aさんにとって“有名な場所”ってどこかな?」と想像するような。
ジェーニャ:「脱出ゲーム」みたいなイメージですか?
アリョーナ:ちょっと似ていますね。ロシアでも「リアル脱出ゲーム」は流行っているんだけど、うまくボードゲームに落とし込むことができればと思います。
ジェーニャ:これまで協力したボードゲームの中で、お気に入りのものを教えてください。
アリョーナ:『LAUNDRY DAY(お洗濯)』でしょうか。
子どもが6人いるので、靴下がいっぱい散らかって大変なんです。でもこれを「色柄をペアで揃えるゲーム」と考えると楽しくなりますよね。
▲『お洗濯』はキャラクターに合った靴下を選ぶゲームで、神経衰弱の要素もある。※日本未発売。
『Homo Sapiens(ホモ・サピエンス)』もにぎやかで楽しいですね。
※プレイヤーがそれぞれ担当する動物を「鳴き声」で演じるゲーム。(※日本未発売。)

あとは『Jobz(お仕事)』というゲーム。私の子どもたちが何日もぶっ続けで遊んでしまうほど熱中しています。(※日本未発売。)
ジェーニャ:では、日本の『ナンジャモンジャ』ファンにメッセージをお願いします。
アリョーナ:このゲームを通して、政治家にはできない、ロシアと日本のカルチャーの交流を起こせてうれしいです!

日本とロシアとのカルチャー交流は進んできている

ここからは、ジェーニャさんにロシアのおもちゃ事情を教えていただきます。ロシアには有名なおもちゃ屋さんがあるんですよね?
ジェーニャ:首都のモスクワにある "ジェーツキー・ミール (Детский мир)"という老舗の子ども百貨店が代表的です。7階建ての大きなショッピングモールで、ゴーカートやメリーゴーラウンド、フードコートもあるんですよ。世界最大級のおもちゃ屋さんで、とっても華やかです。
ジェーニャさんは日本のアニメを見て声優を目指したとのことですが、ロシアと日本では子どもの遊びや娯楽に差があるんでしょうか?
ジェーニャ:今はあんまり差がないですね。あえて言うなら、日本では「アンパンマン」や「ミッキーマウス」「ドラえもん」など、キャラクター系のおもちゃが多いけど、ロシアでは「レゴブロック」のように、シンプルなものが人気かも。

昔のロシア、とくに旧ソ連時代のおもちゃは木製とか鉄製とか…すごく地味で、「バービー」や「シルバニアファミリー」みたいなキレイな人形は売ってる場所も少ないし高価だったので、買うのは難しかったです。

海外のアニメ情報も手に入りづらかったから、私が自作のホームページで発信していた内容に興味を持ってくれる人がたくさんいました。最初はそのご縁で日本に招待してもらったんです。
その後、再来日して移住されたんですよね。
ジェーニャ:もう14年住んでます。アニメ映画『エヴァンゲリヲン新劇場版:破』で声優デビューして、好きなアニメに少しずつだけど関わってこられて嬉しいですね。
今回えみりちゃんと『ナンジャモンジャ』を初めてプレイしてみて、どうでしたか?
ジェーニャ:色も絵柄もかわいくて、2歳のえみりでも興味を持っていました。でもまだ話せる単語数が多くないので、名前をきちんと呼ぶのは難しそうでしたね(笑)。
▲「同じカードを見つける」というルールは、小さい子どもでもわかりやすい。
本来は4歳から対象のゲームなので、遊べただけでスゴいと思います。
このゲームは「歴史上の人物の名前オンリー」など、命名ルールを設定してプレイする人もいるんですが、えみりちゃんも付ける名前が「いちご」「みかん」みたいに自然にフルーツ縛りになってましたね。
ジェーニャ:お菓子や動物が好きなので、呼びやすいのかな。
今どんどん言葉を覚えている時期なので、もう少し大きくなったら改めて一緒に遊びたいです。
Alyona Lebedeva(リーベディバ ・アリョーナ)
1966年旧ソ連ウクライナ生まれ。産婦人科医・助産師/ゲームデザイナー。航空宇宙産業に関わったあと、開業医として独立。
    Jenya(ジェーニャ)
    1981年旧ソ連生まれ。声優・タレント・歌手。劇場版アニメ『ガールズ&パンツァー』クラーラ役、テレビアニメ『怪盗ジョーカー』レディー・ダウト役、語学番組「ロシアゴスキー」(NHK Eテレ)などで活躍中。

    サイン入りポラプレゼント

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    応募方法
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    受付期間
    2019年3月29日(金)20:00〜4月3日(水)20:00
    当選者確定フロー
    • 当選者発表日/4月4日(木)
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