1年半の充電期間が私に教えてくれたこと。久保ユリカが明かす、迷いと決断
「もっとパワーアップした自分にならないといけないと思う」
2017年5月、バースデーライブのステージで、音楽活動の休止を発表した。ファンのみんなには、自分の口で直接伝えたかった。
『ラブライブ!』シリーズの小泉花陽役で声優デビュー。μ’sの一員として活躍の場を広げ、2016年にはソロデビューを果たす。1年半弱で3枚のシングルとアルバムをリリース。傍目には順調に見えた音楽活動だった。
しかし久保ユリカは戸惑い、悩み、活動休止を決意する。
そこから1年半を経た2019年2月13日。充電期間を経て、ミニアルバム『VIVID VIVID』で音楽活動を再始動。ビジュアルや楽曲、MVの雰囲気も大きく変化した新生・久保ユリカは、どこへ向かうのだろう。
スタイリング/中田有紀 ヘアメイク/大久保沙菜
「自分にはできない」と認めることが第一歩
- まずは、おかえりなさい! 音楽活動の再開を待っていました!
- ありがとうございます!
- 約1年半の充電期間中は、歌から離れ、声優業に専念するということでした。
- 「久保ユリカとして歌う」というところから離れても、声優のお仕事をしていると、キャラクターソングなどを歌う機会はあったので、完全に歌から離れることはなかったんですが。
1回休みたいと言った理由も、声優の活動を中途半端にしているような気がしていたからなんです。声優としての部分をちゃんと詰めていきたいという気持ちが強かったんですよね。 - お休みされたのは、そういう理由だったんですね。
- 「声優を突き詰める」ということは、1年2年でできる話じゃないんですけど、少なくとも2年前の自分よりは、ひとつひとつの作品に丁寧に向き合ってこれたので、自分にとって必要な時間だったと思います。
- 久保さんはすごく真面目なんですね。
- 真面目……というか、考えすぎちゃって、自分で自分の首を絞めちゃってますよね。これでいいのかわからないですけど、頭が硬いことに最近気がつきました(笑)。
- 声優業とアーティスト業を両立されている方は多いですが、久保さんは同時にいろんなことをするのが苦手なタイプなんでしょうか?
- そうなんです! 充電期間中に「自分は器用じゃない」ということを実感しました。
みんなができているのに自分がやれないなんてありえないし、やらなきゃいけないと思って走り抜けてた20代で……。でも、どこかですごく違和感があったんですね。
「両立できている人がいるんだから、逃げてるだけじゃないの?」って思われても仕方ないし、自分自身もそう思っていたからこそ、ずっと苦しかったんですが……。 - 傍から見ていると、両立できているようでしたが。
- なんとなくできているのかもしれないけど、その「なんとなく」が一番無責任な気がしたんですよね。90%はできているけど、100%じゃない。その10%を埋められないのが自分的には複雑な気持ちで。
まわりの方は、いろんなことをやりながら、それぞれの分野で100%の力を出すことができている。それなのに、私はできないのかって……。
でも充電期間に入ってから、「私はできないんだ」って認めてあげることができたんです。 - そこを認められると、一段階進めそうですよね。
- そうなんです!「私はできない」→「じゃあどうする?」って考えられるようになった。自分ができないことを認めることはすごく恥ずかしいし、できる人を見るとすごくつらいけど、「じゃあどうする?」って前を向ける段階に進むことができました。
歌をやっている期間は、歌を優先的にやる。でも自分にとって、あくまで声優の活動がメインだから、歌はマイペースにやっていきたいと思いました。 - 声優の活動が久保さんの軸なんですね。
- はい。声優のお仕事をさせてもらえている自分だからこそ、歌や写真を撮っていただくお仕事もできていると思います。そこがブレると、自分自身も混乱してしまいそうで。
- マイペースに、というお話でしたが、活動休止以前のアーティスト活動では、2016年にデビューしてから、10ヶ月でシングル3枚というハイペースでしたよね。
- 正直、自分に無理をしていたところもあります。ただ、あのときの年齢、環境ではあの形が正解だったんだろうな、とも思うんですよね。
そのうえで、ここからはひとつずつ向き合って、「いいものを作りました」って胸を張って言いたいです。
活動再開を喜んでくれる人が、こんなにもいるなんて
- 音楽活動を再開するタイミングは、いつ頃から考えていたんですか?
- 2018年の頭から、私は事務所を離れてフリーランスになりまして、フリーになったタイミングで、ポニーキャニオンさんにお話をいただきました。
そこから話し合っていくなかで、「2019年の2月にしよう」と。2月はソロデビューした月なので、そこに合わせるのが一番いいんじゃないか、ということになって。 - 1年間の準備期間があったんですね。
- 担当ディレクターさんたちが、「時間をかけて作れる環境でやりたい」という私の気持ちをすごく汲んでくださったので、本当にありがたいなと。再出発に踏み切ることができました。
- 2018年5月のファンクラブイベントで活動再開を発表されましたね。ファンの方の反応はいかがでしたか?
- こんなに喜んでくださるんだ……!って。だって、雄叫びがスゴかったんです。「ウォオオオー!!」っていう反応にびっくりしましたし、みなさんに支えられてるんだなってすごく実感しました。
活動休止の発表も、2017年5月のバースデーライブでお知らせしたんですね。自分が想像していたよりもずっと多くの方がショックを受け、落胆する姿が目の前にあって。言葉が不適切かもしれないけど、お通夜みたいな……。自分としても申し訳なさを感じたし、つらい、切ない気持ちになったことを覚えています。 - ファンの方の一喜一憂する姿を自分の目で見たわけですね。
- 活動休止と再開、両方とも自分の口で伝えられたのはよかったと思います。伏線を回収できたというか、あぁ、ちゃんとここまでセットになってよかったなって。
- 活動休止中にファンが離れていってしまうかも……という不安はなかったですか?
- それは、まったくなかったです。そもそも、休止を発表したタイミングでは復帰する予定もなかったので。ファンの方に対して「待っててね」っていう気持ちもなかったし、それをお願いするのも違うと思うし。みなさんが、ほかに応援できる人を見つけられるなら、それは素敵なことだと思ってました。
- ではむしろ、以前と変わらず応援してくれるファンの方がこんなにいるんだ、ということに驚いた?
- そうですね。待っててくださっていた方はもちろん、自分が声優業に集中していた1年半のあいだに、作品を通じて私を見つけてくださった方が新たにいらっしゃるなら、それもとてもうれしいです。
「自分が見せたい自分」でいたい。イメージを一新する決断
- 今回の再始動では、ビジュアル面も大きく変わりましたよね。
- 前までの音楽活動では、可能な限りたくさんの方に喜んでもらえる、みんなが平均的に好きであろう私を見せなきゃ、って思ってたんです。誰にでも好きでいてもらえるというか、誰が見ても嫌な気持ちにならないものを目指していて、ナチュラルな雰囲気がテーマになっていたんですけど。
- そこから、充電期間中に意識の変化があったんですね。
- はい。せっかくもう一度音楽をやるのだったら、「自分が見せたい自分」を出したいなと。「自分が楽しんでる姿を見て、お客さんも楽しんでくれたらうれしいな」って思うようになったんです。
- その“新生・久保ユリカ”へのファンの方の反応は、気になりませんでしたか?
- むちゃくちゃドキドキしました。『VIVID VIVID』のジャケット写真を出すときは、とくに。
今回のジャケットについては、初回盤より通常盤のほうが賭け、というか。顔がはっきり見えるものではないので。正直、見えるもののほうが喜んでもらえる可能性は高いんですけど。
本当は封入ブックレットの表紙の予定だったんですが、「この写真はすごくいいと思うから、ブックレットで終わるのはもったいないので、できればジャケ写に」って私が言ったんです。 - 今までの久保さんなら、みずから言い出せなかったのでは。
- そうかもしれないです。でも、あとから「本当はこうしたかったんですよね」って言うくらいなら、提案してみようと思って。売ってくださるのはポニーキャニオンさんなので、「やめておこう」って言われたら自分も納得できるし、最終的なジャッジはお任せすることにしました。
そしたら「じゃあこれで行きましょう!」と言ってもらえたので、「これは……ファンの方からの評価が悪かったら切腹だな」と。 - 侍に(笑)。そんな覚悟をされていたんですね。
- 『VIVID VIVID』のMVをアップしたときは、「残念です」みたいなコメントがたくさん来ることを予想してたんです。でも、思っていた以上に喜んでいただけて。安心しました。
- ファンのみなさんは、私が思っている以上に、私に対してずっと寛大なんですよね。もちろん、いろんな意見があって当然なんですけど。
- 久保さんにとってファンはどんな存在なんでしょう?
- うーん……。言葉にするのは、難しい存在です。
ただ、ファンの方がいないと続けられない仕事なのは、たしかなこと。実力がなきゃいけないのはもちろんだけど、ファンの方の支持がゼロだと表には出られない仕事をしている自覚もあります。
応援してくださる方の存在は本当にありがたいですし、自分が可能な限り、大切にしなきゃいけない存在だと思ってますね。 - ファンは、推しの幸せを願っています。
- ありがとうございます(笑)。以前までのナチュラルなスタイルが好きだったみなさんは、さびしがってるかもしれないですけど、でもその気持ちを忘れさせるくらい、ファンのみなさんを喜ばせたいです。
事務所を離れ、フリーになって1年以上。内面にも変化が?
- 充電期間を経て、ビジュアルだけでなく、内面も大きく変わったんですね。以前よりも強くなったのでは?
- そうかもしれないです。やっぱりフリーランスになって一番思ったのは、ひとりでやる大変さと難しさ。事務所の人にたくさん助けてもらっていたんだなって、改めて感謝しています。
- フリーになれば、事務処理からすべて自分でやらないといけないですもんね。
- そうなんです。でも1年以上フリーでやれているのは、現場でお会いするクライアントさんや、ほかの役者さんや、その事務所の方、そして今一番近くでお仕事している、ポニーキャニオンのスタッフさんたちのおかげです。
みなさん、とても温かくて。「実現できないかもしれないけど、まずは自分の意見を言ってみて」って、私の気持ちを汲み取ろうとしてくださる方が多いんです。
そこから一歩ずつ踏み出せるようになって、『VIVID VIVID』では、私が渡した種を、ディレクターさんやプロデューサーさんが育ててくださる形になりました。 - 種、というのは?
- 種の中身は秘密です(笑)。
- わかりました(笑)。TAKAROT、ANCHOR、ヒゲドライバーといった個性的なクリエイター陣をむかえていますが、そのリクエストも久保さんからですか?
- 音楽面では素人なので、そこはお任せしました。でも、上がってきたものが、まったく間違いがないものだったので。信じてお任せしてよかったなと思いました。
声優の歌が上手なのは、当たり前ではないんです!!(笑)
- 改めて、『VIVID VIVID』のコンセプトを教えてください。
- 前回活動していたときに、ライブが苦手っていうのがあって。アーティスト活動をしているのにライブが苦手っていうのは、問題があるなと思うんですけど……(笑)。
正直、自分の歌に自信がないんです。声優さんは男性も女性も、歌が上手な方がすごく多いじゃないですか。それを当たり前のようにみなさん受け止めていますけど、それってスゴいことなんですよ!?って大声で伝えたい!!(笑) - おっしゃる通りです(笑)。
- 自分は歌い上げるタイプじゃないし、見せ方も含めて苦手意識があって。ただ、その苦手意識も受け入れたうえで「じゃあどうする?」と。
歌自体が嫌いなわけじゃない。ライブはファンのみなさんと過ごせる大切な時間。自分も観客としてライブに行くのは好き。
それで、自分らしさを出しながら、自分自身もライブをもっと楽しめるようになるには、どうしたらいいんだろうと考えて、「魅せる」ことにもっと力を注ぎたいなと。ダンスとか、魅せるパフォーマンスですね。 - リード曲『VIVID VIVID』のMVではまさに、“魅せる”ダンスパフォーマンスがありました。
- ダンスはもともと得意なわけじゃないんです。でも「中途半端に“踊ってる風”になるなら、マジで踊ります! その代わり練習はめっちゃさせてください!」とお伝えして。通常の倍くらい、1曲でがっつり3日間、振りの練習をさせてもらいました。
- 経験者なのかなと思うくらい、本当にカッコいいです。
- よかったですー!! 完成した映像を見て「あー、ここちょっと早かったな」って反省する部分もたくさんあったんですが……。
でも、以前の私だったら「間違った! 終わった! 最悪だー!!」って落ち込んでいたところが(笑)、「ライブではこうすればいいんだな」とか、間違ってるところにへこみつつも、次につなげる見方ができるようになりました。 - MVでも目立つのが、圧倒的なスタイルのよさですよね。趣味はラーメン屋巡りとのことですが、本当にラーメン食べて、今のスタイルを維持されているんですか?
- それが……最近はさすがに食べなくなりました。やっぱり、ちゃんと年齢を重ねてるんですよね(笑)。
- またまたー(笑)。
- 「またまたー」って言うじゃないですか! でもホントなのよ!!っていう(笑)。
だから去年末くらいから、食生活に気をつけるようになりました。ラーメンを週2で食べていたら、健康にもよくないだろうし。 - 昨年末まで週2で食べてたんですか(笑)。
- そうなんですよね(笑)。でももう、大人になりました!!
芸歴17年。仕事を辞めたいと思ったこともあるけれど…
- 久保さんは2002年に雑誌『ニコラ』のモデルオーディションでグランプリを受賞し、芸能界入り。芸歴は17年と、とても長いですよね。
- そうですね。
- モデル専業時代から声優に憧れがあり、当時の所属事務所に黙って声優事務所のオーディションを受けに行ったこともある、というのはファンのあいだでは知られた話ですが。
- 勝手に他の事務所のオーディションを受けるとか、ありえないですよね(笑)。15年以上経った今だから話せるんですけどね、っていう……。
当時のほうが今よりはやんちゃだったのかな。長く仕事をしてきて、いろんな方と出会って、いろんな経験をするうちに、大人になったんですね。大人になったらなったで、今度は気を使いすぎたりして、自分の気持ちをうまく伝えられなくなって……。 - 今、ちょうどいいバランスに。
- やっと、ですね(笑)。
- でも、そのあいだも「声優の仕事をやりたい」という気持ちはブレることはなく、今に至るわけですよね。
- 不思議ですよね。当時はモデル系の事務所に入っていたので、声優への夢から遠のいた時期もあったんですけど。
声優養成所の特待生オーディションを受けに行ったときも、まわりには何回も受けに来ている方がたくさんいて、熱量の高さを感じたし、「こんなにちゃんとしたエチュードするの?」というくらい難しくて、基礎が大事なんだと実感したり。もっともっと力をつけてからこういう場に来なきゃいけないんだ、と思って。 - 声優デビューは『ラブライブ!』の小泉花陽役でした。
- 『ラブライブ!』のオーディションは、声優としてというより、タレントを2〜3人入れるよ、っていう中のひとりだったので、こんなふうに声優のお仕事をできるようになるとは思ってもいませんでした。
それでもこうやって、めぐりめぐって今「声優です」って、自分でもちゃんと言えるところまで来ることができたのは縁だなぁって。私はまわりの人に生かされているって、本当に思っています。 - 浮き沈みの激しい芸能界で17年も生き続けて……、「普通の女の子に戻りたい」と思ったことはありませんか?
- 何回もありますよ! 実際に辞めようとしたこともあります。でもそのたびに、当時の自分にとって大きなお仕事が入ってきたり、導いてくれる方……現場のクライアントさんだったりマネージャーさんだったり、スタッフさんとの出会いがあって。
だからさっきも言ったとおり、私はまわりの人に生かされてるんです。辞めようとするタイミングでお話をいただいて、気づいたら「あれ? 続けてる」っていう(笑)。 - 久保さんを芸能界に引き戻す、不思議な力が働いてるんですね(笑)。
- 都度、出会ってる方に助けられてるんですよね、ありがたいことに……。不思議な縁が、私をここまでつなげてくれたんだと思っています。
- 久保ユリカ(くぼ・ゆりか)
- 1989年5月19日、奈良県出身。A型。2002年『ニコラモデルオーディション』でグランプリを受賞し芸能界入り。2010年、『ラブライブ!』小泉花陽役で声優デビュー。2016年2月、1stシングル『Lovely Lovely Strawberry』でソロデビュー。2017年5月に1stアルバム『すべてが大切な出会い』をリリースした直後に音楽活動を休止。2019年2月に再始動を発表。2019年5月11日に東京・豊洲PITにてバースデーライブイベント、5月19日には奈良・なら100年会館・中ホールにて誕生日会イベントを開催予定。
CD情報
- コンセプトミニアルバム『VIVID VIVID』
- 2019年2月13日(水)リリース!
左から初回限定盤、通常盤
・初回限定盤(CD+Blu-ray)3,200円+税
・通常盤(CD only)2,500円+税
サイン入りポラプレゼント
今回インタビューをさせていただいた、久保ユリカさんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。
- 応募方法
- ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
\ミニアルバム『#VIVIDVIVID』2/13リリース!/#久保ユリカ サイン入りポラを3名様にプレゼント!
— ライブドアニュース (@livedoornews) 2019年2月12日
・フォロー&RTで応募完了
・応募〆切は2/18(月)18:00
インタビューはこちら▼https://t.co/bFfULEdXOF pic.twitter.com/WgYyOt01yu- 受付期間
- 2019年2月12日(火)18:00〜2月18日(月)18:00
- 当選者確定フロー
- 当選者発表日/2月19日(火)
- 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
- 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから2月19日(火)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき2月22日(金)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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