何気ない日々を過ごすことが愛おしい。長澤まさみ、30代を迎えたからこそ思う幸せ

10代から主演女優という冠を背負い、女優業を邁進してきた長澤まさみ。さぞプレッシャーを感じてきたのではと思いきや、「すべてはいい経験でした。女優を辞めたいと思ったことはありません」と語る。凛とした佇まいと力強い語り口に嘘はない。

インタビューでも肩ひじを張らず、自然体。こちらを優しい瞳で見つめ、ひとつひとつの質問に「うんうん」とうなずきながら、まるで友人と会話をするように自分の思いをまっすぐに伝えてくれる。女優・長澤まさみは、等身大で生きる魅力的な女性であった。

撮影/祭貴義道 取材・文/馬場英美 制作/iD inc.

自分が芝居しやすい環境を作る。現場で見た木村拓哉の姿

1月18日から公開中の映画『マスカレード・ホテル』は、連続殺人事件の現場と予告された一流ホテルを舞台に、宿泊客にまぎれた殺人犯をあぶりだしていく東野圭吾さんの小説を原作にしたミステリーです。長澤さんが演じられたのは優秀なホテルマンの山岸尚美。彼女にどのような印象を持たれましたか?
自分が思っていた以上に、原作の印象で演じていたところが大きかったんだなと思いました。

原作を読んだときに、山岸は堅物で、仕事への忠誠心がものすごくある人だと思いました。彼女はホテルマンに憧れてこの職に就いたので、過去というか、仕事に対する思いを真摯に表現することが大切だと思って。なので、演じるうえではストーリーよりも、キャラクターを重要視しているところがありました。
たしかに、山岸は「お客様(のおっしゃること)がホテルのルール」と主張していて、そこまでやらなくてもいいんじゃないかと思うぐらい、利用客のわがままに対応しているのがスゴいなと。
ホテルマンになりたくてなった人なので、ホテルマンとしての誇りをすごく持っているんです。なので、余計に「お客様のために」という思いが強いのかもしれません。

実際にホテルマンを指導してらっしゃる方に所作を教えていただいたときも、(指導する方の)お客様に対する思いが、山岸とそのままで本当にスゴいなと思いました。
ホテルに連続殺人事件の捜査のため潜入するのが刑事・新田浩介。演じるのは木村拓哉さんです。木村さんとは今回が初共演ですか?
以前、CMで共演させていただいたことがあって。あとはバラエティ番組でご一緒したことがあったくらいで。ここまで深い役柄での共演は初めてでした。

以前は本当に1、2時間ご一緒させていただいただけだったので。今回はたっぷりと一緒にお芝居ができて、本当にうれしかったです。
現場でご一緒されてみて、いかがでしたか?
大先輩ですから緊張するところはありましたね。木村さんは本当に真面目な方で、現場でも無駄話をしないんです。役に集中されていることもあって、良い意味で緊張感のある空気をまとっていて。

でも、(殺人事件を追う刑事という)役のテンションを完璧に保つために、そういう雰囲気を出していたんだろうと思っていたので。

“お客様第一”のホテルマン・山岸と、“ホテルのお客様であっても犯人を捕まえることが第一”の刑事・新田とでは、立場も考え方も違いますからね。
緊張感にも意味があったということですね。
あと、木村さんは誰よりも早く現場に入られていたのですが、それもセットを見てどう動くかなど、自分が芝居しやすい環境を作るためなのかなと。本番は基本NGを出さず、一回でパーフェクトなものを見せたい、合理的なタイプの方。

……合理的というより、NGを出さないことは役者として当たり前のことなんですけれど。

撮影が進んで現場に慣れてくると、悪い意味で緊張がほぐれていく場合もあって。カメラ前での一瞬のために集中力をどう使うかは役者の力量だと思うので、その集中力と空気作りをされているのは素晴らしいなと思いました。“威厳があるのには理由がある”というか。それを一緒に仕事をして感じました。
映画の宣伝活動で一緒に取材を受けられることもありますが、むしろそうなってからのほうがふたりで話すことも多そうですね。
そうです、そうです。本当に宣伝活動をし始めてからですね。

現場では木村さんのプライベートを、小日向(文世)さんから聞くほうが多かったくらいですから(笑)。「木村くんって、こうなんだよ〜」って。小日向さんがとりとめもない話をたくさんしてくれて、場が和みました(笑)。

仕事を始めてから、女優を辞めたいと思ったことはない

山岸はホテルマンになりたくてなった人。そういう意味では、長澤さんも「女優になる」という夢を叶えた人では?
いや、私は女優に憧れていたわけではないんですよね。
そうなんですか?
私はもともとモデルに憧れていて。子どもの頃に身長が高かったり、運動神経がよかったりしたのもあって、周りから「モデルさんになれるんじゃないの?」と言われて。そういった声を真に受けて、オーディションを受けたところもあったのかもしれません(笑)。
でも、長澤さんが受けられたのは、モデルではなく女優の登竜門とされる第5回「東宝シンデレラ」オーディション。しかも、それでグランプリに。
このオーディションを受けたのは、母親が「モデルとして食べていくのは難しいだろう」と、女優さんのほうが良いのではないかと思い、これなら応援してあげられると思ったからみたいです。
それは女優・長澤まさみ誕生という意味では、お母様のありがたい助言だったかも。
どうなのかわかりませんが(笑)。このオーディションを受けようと思ったのは、(事務所の先輩である)水野真紀さんがお菓子作りをされる姿が好きだったからなんですよね。

当時、私は小学校6年生で、お菓子作りのできる“きれいなおねえさん(水野さん)”に憧れていたんです。
※編注…水野さんは調理師免許を持ち、お菓子作りが得意。過去に女性誌でお菓子の作り方を紹介するページを連載していた。
長澤さんは芸能界入りされてから、2003年の映画『ロボコン』で初主演、2004年の映画『世界の中心で、愛をさけぶ』で注目されたりと、デビュー以来、挫折知らずの女優人生に見えます。
自分でも恵まれていると思います。
とはいえ、弱冠16歳のときに『ロボコン』で映画主演を務められ、背負うものが大きかったのでは?
取材や番組で映画の宣伝をさせていただくときもちゃんと話せなくて、インタビュアーさんを困らせてしまったこともありました。監督とふたりで地方を20ヶ所近く回って宣伝活動をしたときもそうだし、たとえば取材で「趣味は何ですか?」と聞かれても、沈黙……みたいな(笑)。

照れ屋だし人見知りだし…ということはあるけれど、自分のお芝居もまだまだの状態。性格的に嘘をつくのがあまり好きではなく、正直に生きたいタイプなので、「自分がこの映画で伝えたいこと」をちゃんと理解して、自分の言葉で伝えられるか苦しい思いをしていた時期もありました。

ただ、そうした経験が積み重なって、だんだんとしゃべれるようになっていって。経験のすべてが今に活きているような気がしますね。
経験を重ねてからこそ、わかったこともあったのですね?
でも、お仕事に関しては、若い頃から責任を持ってやっていきたい思いは強くありました。なので、女優という仕事を本気で辞めたいと思ったことはないですし、わりと先をイメージしていくところはあったのかもしれませんね。

「きょうは天気がいい」とか、何気ないことが楽しい

そういう意味では、大根 仁監督の映画『モテキ』や、初舞台となった『クレイジーハニー』に出演された2011年が、長澤さんにとって大きな転機となったのでは? 
大根さん、(『クレイジーハニー』で共演した)リリー・フランキーさんと出会えたのは、私の人生において重要な出来事だったと思います。

でも、女優としての考え方がそこで変わったわけではないですし、誰かと出会ったとしてもそこで人生が大きく変わるタイプではなくて。もし私を見ている方が転機と感じてくださっているのならば、それは作品を積み重ねてきたからなのかなと。

私は仕事に邁進できるタイプで、過去を振り返ることがないんですよね。過去をやり直すことはできないから、過ぎてしまったことに後悔しないというか。芸能界は結果を求められる世界だと思うので、失敗も含めて経験と考えるようにしています。
10代から芸能界に入り、現在31歳。30代になって見えるものは変わってきましたか?
どうなんでしょうね。俳優というのは華やかに見えるけど、じつは地味な仕事ですので。もちろん、お客様に喜んでいただくのが一番ですが、昨年末までやっていた『メタルマクベス』(新感線☆RS『メタルマクベス』disc3)という舞台でも、最後に残ったのはひざの痛みで(笑)。

でも、自分で選んで進んできた道なので、仕事を含めて楽しい30代を過ごせればいいなと思っています。
長澤さんにとって楽しい30代とは?
毎朝起きてきょうは天気がいいな、一日の終わりにきょうはいい日だったなと思える日々ですね。

20代は刺激を求めがちで、何てことのない日常をつまらなく思うかもしれないけれど、今はそんな何気ない日々が愛おしくて。なので今を思いっきり楽しみたいと思います。
長澤まさみ(ながさわ・まさみ)
1987年6月3日生まれ。静岡県出身。A型。2000年に第5回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞し、同年の映画『クロスファイア』で女優デビュー。2003年の『ロボコン』で映画初主演を務め、2004年には大ヒット作である映画『世界の中心で、愛をさけぶ』に出演。各映画賞を受賞した。主な映画出演作品に、『海街diary』、『銀魂』、『散歩する侵略者』、『嘘を愛する女』、『50回目のファーストキス』など。出演映画『キングダム』が4月19日公開、『コンフィデンスマンJP』が5月17日公開。

    出演作品

    映画『マスカレード・ホテル』
    2019年1月18日(金)よりロードショー中
    http://masquerade-hotel.jp/

    ©2019映画「マスカレード・ホテル」製作委員会 ©東野圭吾/集英社

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    応募方法
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    2019年1月24日(木)18:00〜1月30日(水)18:00
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    • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから1月31日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき2月3日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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