報われないこともあるけど、努力しなきゃ始まらない。夢を追う人へ福原 遥からのエール

「子どもがなりたい職業ランキング」で上位に挙げられる「声優」。しかし、実際に声優になれるのはおよそ1000人に1人だけ……。現在放送中のドラマ『声ガール!』(朝日放送・テレビ朝日系)では、華やかだけど厳しく険しい声優業界をリアルに描いている。同作にて主人公の新人声優・菊池真琴を演じるのが、福原 遥。弱冠10歳にして、子ども向け料理番組『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!』(NHK Eテレ)でブレイクした彼女が、真琴と同様に夢を追いかけている人たちへ、心温かいメッセージを贈る。

撮影/すずき大すけ 取材・文/照沼健太 ヘアメイク/肥沼美代子

新人当時は、上手くできなくて涙をこらえたことも

主人公の真琴が、仲間たちと切磋琢磨しながら声優を目指すストーリーですが、福原さん自身のこれまでと重なる部分も多いのではないかと思います。真琴を演じるにあたって、どのように役作りをしましたか?
監督やスタッフのみなさんと最初に話し合ったんですけど、「あんまり役作りとかしなくていいよ」と言ってくださいましたし、真琴は私に似ている部分もあるので特別な意識はなかったです。でも、八百屋の娘として接客業をしてきたキャラクターなので、滑舌をよくしたり、性格的にキラキラしたところを表現できるように頑張ってやっていたところはありましたね。
福原さんと真琴は、どういうところが似ていると思いますか?
ちょっと抜けているところもありつつ、でもやりたいことが見つかったときはそれしか見えなくなるところ。そういう部分が似てるかなーと思いました。ふふふ。監督さんも似てると思ったから、そんなに役作りをしなくていいって言ってくれたのかな? もしかしたら私、考えすぎてよくないときがあるので、それを気にしてくれたのかもしれないですけど(笑)。
真琴はスカウトされて芸能界に足を踏み入れます。福原さんは小学1年生のときに事務所に入られたとか。それは自ら望んで?
もともとちっちゃい頃、ダンスをやっていたんです。それで新しくダンススクールを探していたら、同じ幼稚園の子が「自分が通っているところは?」って勧めてくれて。そこは芸能事務所だったんですけど、習いごとのひとつとしてやってみようかって感じで始めました。
子役というと「お母さんが芸能ママ」みたいなイメージがありますが、習いごとみたいだったんですね。
私は人前に出るのが苦手で、人の目を見て話すこととかもあんまり得意じゃなくて、ずっとお母さんの後ろに隠れているような子だったんです。だからお母さんとしては、そういう性格を直せるんじゃないかとも思ったみたいです。
福原さんは子ども向け料理番組『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!』にて、当時10歳で本人出演パートと吹き替え声優パートの両方を担当されていました。まいんちゃんの経験が、今回のお仕事に活かされているのでは?
経験として活きている部分は絶対あると思います。でも、まいんの頃は声優パートも実写と変わらない感覚で収録させてもらっていて、当時は声優というものをよくわからないままやっていたんです。だからそのときに考えていたものと、実際の声優さんの世界は全然違うものだと感じましたね。
そうした違いに気づいたのは、2017年に『キラキラ☆プリキュアアラモード』で声優デビューしてから?
そうですね。現場に行ってそう思いました。本当に基本なんですけど、キャラクターの口の動きにセリフやブレスを合わせるということをちゃんとやったのも、それが初めてだったんです。周りには先輩声優の方々がいらっしゃるので、もう全然違いましたね。だからプリキュアで声優のお仕事の現場を経験したうえで、『声ガール!』をやれたのは大きかったと思います。
ドラマでは、福原さん演じる真琴が新人声優として奮闘する姿が描かれています。福原さんも新人当時や、まいんちゃん時代の苦労などを重ねられる部分はありましたか?
当時は自分が上手くできないことが本当に悔しくて、涙をこらえながらやっていたこともありました。でも、いろんな人に教えてもらったり、私が楽しくできるように、みなさんが助けてくれたりしたので、また今とは違った感じだったなと思います。
大人たちばっかりの現場で、苦労されることはありませんでしたか?
その頃の現場は同年代の子が多くて、一緒にワイワイやるっていう感じで、すごく楽しい雰囲気でしたね。マイクが4本用意されていたら、2本くらいは子ども向けに下がっているような感じの現場だったんです(笑)。

「プリキュアになりたい」七夕の短冊に書いた夢が現実に

福原さんはもともと「アニメに携わりたい」とか、「声優の仕事をやってみたい」と考えたことはありましたか?
声優の仕事がしたいとは思っていなかったんですけど、プリキュアには憧れていました。小さい女の子の憧れですし、私も「プリキュアになりたい」って七夕の短冊に書いてました(笑)。アニメは、ジブリ作品や『サザエさん』とか『ちびまる子ちゃん』が好きで見ていました。
今回のドラマで先輩声優として出演されている戸松 遥さんも、ジブリが好きだったことが声優になるきっかけだったそうですよ。
そうなんですね! 戸松さんとふたりのシーンが多かったので、お芝居の話や好きなものの話をしていて、「今度ご飯行こうね」って約束して。それが今日(※取材日)、ようやく行けることになったので、すごく楽しみなんです。ふふふ。今日そこでジブリのお話をしたいなと思います。
私、個人的に『ソードアート・オンライン』とか戸松さんの作品を見ていましたし、戸松さんのCDも持っていて憧れの存在だったので、今回のお仕事は本当に嬉しかったんです。
僕もさっき戸松さんを取材して、「あれ? この可愛らしい人が『妖怪ウォッチ』のケータなんだよな?」と不思議な気持ちになりました。
そうですよね! 話していても、「あのキャラクターだ!」って全然わからないんです。『声ガール!』でも声色を変えて演技するシーンがあるんですけど、それを見てて「こんな素敵な声優さんになりたいなー」と思いました(笑)。
そもそも声優として『キラキラ☆プリキュアアラモード』への出演が決まったときは、どう思われましたか?
子どもの頃からプリキュアへの思い入れがすごく強かったので、びっくりしました。お母さんも喜んでくれたし、出演してからは「毎週見てるよ」ってみんな言ってくれるから、本当に嬉しいなーって思います。グッズとか見たらすぐ買っちゃうし(笑)。
自分が演じている役のグッズを買っちゃうんですね(笑)。
はい、ふふふ。先日、フォトブックのお渡しイベントがあったんですけど、キュアカスタードの衣装を着て「カスタードが大好き」って遠方から来てくれている子もいて、すごく嬉しかったです。そんなふうに小さい子が会いに来てくれると、「スゴいなプリキュア!」って思います。
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