あの“クズ役”で話題の鈴木伸之、20代後半は違う顔で勝負する!

今年の春クールのドラマで、もっとも嫌われた男…。『あなたのことはそれほど』(TBS系)で、主人公の不倫相手を演じ、注目を浴びた鈴木伸之。「悪役とクズ役が多くて…」と苦笑を浮かべるが、そんな彼が映画『東京喰種 トーキョーグール』では、理想と正義に燃えるまっすぐな男を熱演している。『HiGH&LOW』シリーズなどに出演する一方、近年では外部作品での活躍も目立ち、彼がEXILE TRIBEの一員であることを知らなかったという人も多いだろう。

撮影/川野結李歌 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

大人気漫画の映画化に「責任感半分、楽しみ半分」

見た目は人間と同じだが、人間を食料とする“喰種(グール)”。彼らが抱える葛藤や苦悩、そして人間との戦いを描く、石田スイさんによる人気漫画を原作とする映画『東京喰種 トーキョーグール』への出演が決まったときの心境は?
まず、どうやってこの漫画の世界を描くんだ!? って思いました。(人間を食べたり、残虐に殺したりなど)描きづらい描写もたくさんあるけど、それをきちんと表現できたら、すごく面白い映画になるだろうとも思いました。
大人気漫画の実写化ということでプレッシャーや恐怖はなかったですか?
責任感半分、楽しみも半分という感じですかね…? 「やってやるぞ!」という気持ちが強かったです。もちろん、不安もありましたが、萩原(健太郎)監督と一緒に役を作り上げていけました。
CGによる描写も多く、撮影中もどんな映像に仕上がるのか、わからないシーンも多々あったかと思いますが…。
実際、完成した映像を見せていただいたら、漫画のイメージ通りに実写化されていて驚きました。赫子(カグネ/喰種が人間を捕食したり、戦う際に体内より放出する器官。個体ごとにさまざまな形質を持つ)もまるで生きて動いているように見えましたし、原作の世界観そのままだなと思いました。
鈴木さんが演じたのは喰種の“天敵”であるCCG(喰種対策局)に所属する捜査官・亜門鋼太朗ですね。演じるうえでは、どのように役作りを?
原作に描かれている、さまざまな背景を掘り下げていきました。また、監督が親身になって相談に乗ってくださいました。この映画を観たほうがいいよ、など参考としていくつか動画や映画を教えてくださったり、たくさんヒントを与えていただきました。
主人公・カネキ(窪田正孝)は、普通の人間であったのに、喰種の臓器を移植され“半喰種”となってしまった青年。あくまで物語は彼の視点で進みます。正義に燃える捜査官・亜門ですが、映画では主人公たちにとっては対峙する“敵”ですね。
そうなんです。正義や信念のすれ違いも大きなテーマだと思います。自分の正義で思っていたことが、視点や立場が変わるとまったく見え方が違ってくる。亜門自身、2時間の映画の中で大きく成長していきますし、一本筋の通った人間ではあるんだけど、ぶれそうになったり、心が揺れ動くこともある。そうした部分を大切に演じました。

「いままででもっともキツかった」壮絶アクション

アクションもかなり激しいですね。単に肉体を駆使するだけでなく、クインケ(捜査官が使用する武器。喰種に対抗するために開発されたもので、喰種の細胞を加工し制作される)も使うなど、バラエティに富んだ動きが見られます。
アクションはかなり大変でした。間違いなく、いままででもっともキツかったです(苦笑)。CGの赫子の動きを想像しながらの動きも初めてでしたし、ハーネスをつけてワイヤーでつられて飛んだりもしたし。30メートルくらいの高さに吊るされたこともあったんですが、じつは、僕は高いところが苦手で…(苦笑)。
それは大変でしたね。
ビュッと飛んだかと思ったら、人がどんどん小さくなっていって…(笑)。ただ、戦いのシーンに関しては、やはり生身の人間がどう空間を使って表現できるかが重要ですが、窪田さんがそれをきちんと作ってくださって。本当に赫子が襲いかかっていたかのように感じながら、演じられました。
捜査官の同僚とのやりとりも多かったかと思います。上司の真戸呉緒(まど・くれお)を大泉 洋さん、支部捜査官の草場一平を前野朋哉さんが演じていらっしゃいますね。
大泉さんは、想像通りの素敵な優しい兄貴肌の先輩でした。演技のアドバイスもくださるし、娘さんの溺愛話もお話してくださり(笑)。大泉さんと真戸のスイッチを自在に切り替えられるので、こっちは振り回されました!
草場役の前野さんとは以前、映画『桐島、部活やめるってよ』でも共演されていますね。
誰が草場を演じるんだろう? と気になっていたんですが、前野さんと聞いてすごくうれしかったです。前野さんにしか出せない、いい味が出ています! ちょっとポンコツな草場の存在は、若きエリートである亜門の成長にも大きく影響しますし、ときにコミカルでときに真面目なふたりの関係性をぜひ見てほしいです。

社会人役が増えて…「学ランを着る機会が減って寂しい」

映画『桐島、部活やめるってよ』のバレー部員や『HiGH&LOW』シリーズのヤマトなど、これまで直情型の一本気な男を演じる機会が多かったように思います。今回の亜門は熱いですが、内面に複雑な思いを抱えた男。『あなたのことはそれほど』では、まったくタイプの違う優男と、求められる役の幅が広がっているように感じます。
それこそ、少し前まで学園ドラマばかりでしたしね。それがいきなり、不倫ものに出演することになって…(笑)。年齢と共に学ランを着る機会が減って寂しくもありつつ、いろんな役を演じられるのがうれしいです。成長を感じながら、仕事をさせていただいてます。与えられた役の中で、自分の可能性をどんどん引き出していきたいです。
次々と話題の作品に出演されていますが、ご自身の中で俳優という仕事への意識、役に向き合う姿勢などで変化は感じていらっしゃいますか?
変わった部分、変わらない部分、両方あります。僕は、監督と一緒に役を作り上げていきたいタイプではあるんですが、数年前から、そろそろ自分でしっかりと役を作っていけるようにならないといけないなという思いは持っています。
数年前?
ドラマ『GTO』(フジテレビ系)に出させていただいた頃は、言い方は悪いけど、“役作り”というよりは、みんなとワイワイ仲良くなって、その雰囲気でやっていた部分が多かったんです。でも『ルーズヴェルト・ゲーム』(TBS系)の悪役あたりから、自分で役をしっかりと担って、どう表現するか考え、提示しなくては…という意識が出てきたと思います。
先ほど、前野さんとの再共演の話が出ましたが、『あなたのことはそれほど』でも、『桐島』で共演された東出昌大さんと再共演されていますね。こうした再会は大きな刺激になるのでは?
すごくうれしいです。『桐島』のときは、高知県で丸1カ月を一緒に過ごして撮影したんです。その仲間と違う形で一緒にできるのは楽しいです。今回の前野さんともそうでしたが、そのときの下積みがあるから、お互いの仲をゼロから作らなくてよくて。こういう再会は、この仕事の面白さです。今回の窪田さんとは2回目ですが、ここまでガッチリご一緒したのは初めて。そうやって、どんどん新しい方と知り合っていくのも楽しいです。
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