5月30日、都内某所で株式会社ハイ(東京都渋谷区)主催による一日限定「クズ養成講座」が開催されました。
初めて耳にした時、聞き間違えかと思いました。なに、その講座……。

公式HPには、こんな謳い文句が並びます。
「もう、世の中にエリートはいりません。クズの方が面白い。本講座は、クズになりたいけど周りにクズがいない、どうやったらクズになれるのか分からない。そんな方たちに向けた講座です」
意図がわからないし、講義の内容も妙に気になる。というわけで、私も受けに行ってきましたよ!

教室内へ入ると、そこには約30人ほどの受講生が授業の開始を今かと待ち望んでいます。しかも、その中には女性が4人も……。どうして!?
そんな驚きも束の間、いよいよ長い一日が始まる模様。講師は“その道のプロ”が務めるのではなく、プロに成りきれない“本物のクズ”が担当するみたい。楽しみですね。

■【1限目】パチンコスロット

今日はパチンコ・スロット未経験者も多数参加しているようなので、まずは玉の買い方、パチンコの打ち方の説明から始まりました。そして、以下のようなアドバイスが続きます。
【どのような気持ちでパチンコ・スロットに向き合っていけばいいか】
「初めてパチンコ打つ方は怖かったりドキドキしたり、いろんな心持ちで打つと思います。でも私は、“無心”で打ちます。もし過度な期待をしてしまってハズれた場合、パチンコ・スロットを嫌いになってしまうと思うんですよね」

【パチンコ店内の“うるささ”について】
「店内にはおよそ90デシベルの音量が流れています。台の前に座ると100デシベルくらいの音が耳の中に入ってきます。これは飛行機のプロペラの前に立っている音量とほぼ同じです。この音を防ぐのに耳栓をする方もいると思うんですけど、僕個人のオススメは、パチンコ玉を耳に入れるか、この音が心地よくなるまで店に通う。通って、大当たり引くことにより、『気持ちいいなあ』と感じるようになります」

【「ノリ打ち」について】
「『ノリ打ち』とは、他の人と一緒に打つことを指します。例えば1人が1000円、もう1人が2000円投資すると計3000円になります。結果、投資額は1人当たり1500円に。ノリ打ちすると、投資した額も勝ち分も全て半分になります。この講習中でも構わないんですが、ぜひノリ打ちの相手を探してみてはいかがでしょうか? 僕個人の意見としては、ノリ打ちの相手に“クズ”の方をオススメしています。なぜなら、クズがいちばんクズの気持ちをわかるからです」
「クズという人種は、人の大きな心によって助けられている部分が多いです。僕も、何度も助けられています。皆さんも他の困っているクズがいたら、手を差しののべてあげてください。ぜひ、ノリ打ちをしてあげてください」

【勝ち方について】
「釘とか入りやすい方法とか、色々あるかもしれませんが、基本的にパチンコは運です。『8割の運と2割の引き』だと僕は思ってるんですが、要するに両方とも運なんですね。だから10割、運です。なので、自分の運を信じて打ち続けてください」

■【2限目】麻雀

まずは初心者に向け、こんな説明が。
「麻雀は、『メスを集めてハーレムを作るゲーム』と言えます。14個の牌を組み合わせますが、“3P×4”に“ハメ撮り×1”です」
その上、「索子」を白人、「筒子」を黒人、「萬子」をアジア人に喩え、この表現を元に“役の作り方”が説明されました。「ポンはダサい行為。他人が捨てた女(牌)を取る、最低な行い」「国士無双は、ブスも可愛い子も関係なく女性を愛する男」と、不思議なロジックが展開されます。ただ、あまりにスレスレな内容なのでここでは書けませんね……。

■【3限目】競馬

受講者に競馬新聞のコピーを配布し、実際に行われたレースを予想してマークシートに書き込む練習が行われました。この流れで競馬新聞の見方、賭け方、そして競馬の楽しさ一気に学んでしまうというのが、3限目のねらい。
「予想を書き終えましたら、周りの方と『どのような理由で、どの馬を買ったか』と話し合ってみてください。ウインズなど馬券を買える場所に行くと、話しかけてくるおじさんがイッパイいます。“クズコミュニケーション”を楽しめるように、皆さんも是非!」

【競馬の魅力とは】
「競馬は見てて楽しい、応援して楽しい。あと馬、騎手、天候、芝、ダート含め、いろんな条件を参考に予想するのが楽しいという要素があります」
「競艇、競輪との差は、出走馬(数)が多いので、その分、配当が多い。お金儲けに打ってつけ! そこが競馬の魅力であります」

■【4限目】友人からのお金の借り方

この授業、個人的にこの日のハイライトでした。ちょっと重点的に、振り返ります。
「借金と言ったら皆さん、まずは『消費者金融』を思い浮かべるのではないでしょうか? ただあそこは無尽蔵にお金を借りられるわけではなく、限度額が設定されております。これは大概、低いです。そしてあっという間に『これ以上借りられない』という額に辿り着き、行き着くところは友人……という状況になるでしょう」
「他に、扶助金というものがあります。生活保護だったり、医療扶助、住宅扶助など。クズから見ると喉から手が出るほど欲しいものですが、選ばれた精鋭たちしか得られませんので、泣く泣くクズは諦めるという形になります」
「今回は消費者金融、生活扶助、いずれでもなく“友人からのお金の借り方”にフォーカスして、お話したいと思います」

【“友人からの借金”のメリット】
「友人からお金を借りる場合、ほとんどの場合、利子がつきません。さらに、人からの借金は『コミュニケーションを育む』ことにもなります。お金を借りるときは、会わないといけない。返す時も会うわけですから、暗黙のアポイントメントにもなる。このように、“友人からの借金”はいいこと尽くめ」

【“友人からの借金”の注意点】
「お金を借りた時、感謝の気持を忘れないでください。これ、意外とできないものです。人からお金を借りる時、『無い』と言われたら『なんでだよ』と腹が立ってしまう。イコール、感謝ができていない証拠かなと思います。『そもそもお金を貸してくれなくて当たり前だ』という心持ちの元、お金を借りるようにしましょう。なぜ、ここまで口を酸っぱくして言うかというと、しっかり感謝すればまた貸してくれる可能性が上がるからです。心から『ありがとう』と言いましょう」

【“友人からの借金”のタブー】
「コンビニで『12円無いから貸して』と端数を狙ったり、『サイフを忘れたから少しだけ貸しといて』と借りておいて忘れたり。これらを、我々は“小技”と呼びます。ちょっと得した気分になるのですが、その代償として“小さな不信感”がドンドン積もってまいります。いざお金を借りる時にこの不信感が障壁になりかねませんので、小技を使わず借りるときは“ドン!”と大きく借りましょう」

【“友人からの借金”でのお願い法】
「お金を借りる際、皆さんが一番気になるのは“お願いの仕方”ではないでしょうか。100万円欲しいと考えた場合、どんなお願いをしますか? 例えば『身内に不幸があった』と同情を誘ってみたり、『来月25日に給料が入るから100万円貸してくれ』と言ったり、様々ありますが、効果的な方法の一つとして『相手の得になることを提示する』がございます。簡単に言えば『105万円にして返すから、100万円貸してくれ』。こちら、サイコパスがよく使う常套手段でして、相手の目の前にエサをちらつかせる手法になります。皆さんも友人の目の前に美味しそうなエサをちらつかせて、ドンドンお金を引っ張りましょう」

【“友人からの借金”で心理学を利用する】
「心理学で言うところの『foot in the door』。これは小さなお願いごとから入っていき、後々に本命の大きなお願いごとに行き着く。最初は『100円を貸してくれ』と言い、次に会った時に『500円貸してくれ』、その次会った時に『1万円貸してくれ』、最終的に『100万円貸してくれ』。皆さん聞いてて思ったはずですが、この手法、かなり早い段階で大体の人が『こいつ、金を釣り上げてきてる。クズだ』と思うはずです。ですので、あまり使えないでしょう。それに対し『door in the face』は最初に『500万円貸してくれ』と断られる想定で大きく出て、無理だと言われたら『100万円でいいから』と申し出る。すると、成功率が上がる。これ、1回限りなら使えるのではないでしょうか」
「『ローボールテクニック』を、ご紹介しましょう。『foot in the door』に少し似ていますが、まずあまり面倒でない要求を提示し、それを受け入れさせる。その後、本命のもっと面倒な依頼をして成功率を上げるという手法でございます。最初から『100万円を貸してくれ』とは言わず、『50万円貸してくれ』と切り出す。本命のお願いよりも受け入れやすそうな金額を言い、向こうからOKが出たら『50万円じゃ足りなかった。ごめんなさい、100万円貸してください』と言う。こうすれば相手にとって、断りづらいこと山のごとし」
「人は、相手の期待に応えようとします。例えば女性に『あなたってすごくオシャレだね』と言われたら、次回その女性と会う時はいつも以上にオシャレに気を使ってしまう。その人の前では“オシャレな男”だと思わせ続けたい、というのが人間の心理でございます。それを利用し、目をつけた友人に『あなたは私をいつも助けてくれるね』『あなたは私のお願いごとを無下に断ったりしないよね。本当に頼りにしてるよ』と日々言い続けましょう。すると、お金を借りる際の成功率はグッと上がります。オススメです」

【逆に、友人から「お金を貸してくれ」と言われた場合】
「友人と一緒にカジノへ行き、負けのこんだ友人が『軍資金が失くなったから、お金を貸してくれ』と頼ってきたとします。ここで、『いつも借りてるから』と貸してはいけません。お金を借りてギャンブルをした際、なぜかわからないんですが“お金を貸してくれた人を恨む”というムチャクチャな心理が働くことがあります。身銭を切ってお金を貸したのに『あの時、金を貸してくれたから負け額が増えたんだ。どうしてくれるんだ』なんて思われたら、たまったものではございません。お金は借りる、でも人には貸さない。そんなスタンスを貫き通したら、正真正銘のクズは目の前だと思います」

■【5限目】酒・タバコ

この日の最後の授業、「酒・タバコ」」がいよいよ始まります。
【酒のメリット、デメリット】
「デメリットは、『アルコール依存症』があります。でも、依存症になっても困らないのでは? と僕個人は思うのですが。また『お金がかかる』という点については、好きなことにお金をかけるのは素敵なことですし、先ほどの講義にもありましたがお金は借りられます。『体型が悪くなる』というデメリットも囁かれますが、何でもお酒のせいにするのは良くない。仮に飲み過ぎたとしたら、すぐに吐けばいい」
「メリットは、人間関係が広がります。世の中で一番簡単なコミュニケーションは、“飲みニュケーション”だと思います」

【タバコのメリット、デメリット】
「デメリットに『お金がかかる』がありますが、借りればいいし、好きなことにお金を使って何が悪いんだという気がします。それに、タバコは何万円もするものじゃないです。『健康に悪い』という声もありますが、こればっかりは仕方ないんじゃないでしょうか。皆さん、老いていく人生ですので。『ニオイが気になる』という要素についてですが、これは貴方次第じゃないですか? タバコを吸っていても、いいニオイをする奴はいます。ファブリーズが何とかしてくれますし。『歯が黄色くなる』という人は、ちゃんと歯を磨いてるのか? なんでもタバコのせいにするのは良くないです」
「メリットは、気分転換ができる。あと、“タバコミュニケーション”。これは、本当にあることですね。喫煙所で交わした雑談が、その後のビジネスに繋がったという話も聞きます。非常に生産的な時間の使い方ではないでしょうか。『食欲を抑える』というメリットもある。小腹がすいた時、お菓子を食べるのではなくタバコを吸うことで空腹が収まる。お酒を飲むと食欲が増し、タバコで食欲が収まる。いいですね」

……というわけで、本日の講座は終了。実になったかならないかはさておいて、インパクトは絶大! 1限から5限目まで、クズのような講義が嵐のように過ぎ去っていきました。
それにしても、真意が知りたい。どうして、このような講座を開講したのか?
「昨今、飲む打つ買うをしない若者、コミュニケーションをうまくとれない方、たくさんいらっしゃると思います。そんな中、パチンコ・スロット・競馬・酒・タバコ、間違いなくコミュニケーションツールになると思います。何事も“し過ぎる”は良くないことでして、クズになり過ぎる、タバコを吸い過ぎる、お酒を飲み過ぎるというのも、良くないことだと思います。ただし、ある程度の“遊び”があった方が人間は楽しいんじゃないか。そう思い、今回の『クズ講座』を開催させていただきました。何かの取っ掛かりにしていただけると幸いでございます」(担当者)ちなみに、次回開催については未定。今回の参加費は、3,400円/1名でした。

最後に、「クズ養成講座」というネーミングについて。コミュニケーションツールとして有効な「酒」「タバコ」「麻雀」「パチンコ・スロット」「競馬」等を並べると「クズだな」という印象を受けたので、後付けで「クズ講座」とネーミングしたのだそう。
それにしても……。「クズ講座」なんて学びの場、おそらく史上初でしょう。
(寺西ジャジューカ)