「蜷川さんへの思いは絶対に消えない」岡田将生、夢のシェイクスピア劇に臨む覚悟

「本当にいいんですかね?」

ハムレット役が決まったとき、岡田将生は天国の蜷川幸雄にそう問いかけた。初舞台にして主演を務めた、蜷川演出作『皆既食 -Total Eclipse-』から5年。本人は「何も成長していない」とあくまで謙虚に振る舞うが、蜷川から学んだことは今でも胸に刻まれている。

蜷川に「君とシェイクスピアをやりたい」と言われてから、舞台出演は多かったわけではない。でも、いつかやりたいと思っていた。願いは叶い、5月9日から上演されている『ハムレット』の主演を務めることに。

台本を自身に取り込む中で、いろんな考えが駆け巡る。それでも、岡田は力強く言葉にする。「蜷川さんへの思いは絶対に消えない」。

撮影/ヨシダヤスシ 取材・文/馬場英美 制作/iD inc.
スタイリング/大石裕介 ヘアメイク/FUJIU JIMI
衣装協力/シャツ¥40,000(HENRIK VIBSKOV)、
ジャンプスーツ¥98,000(HAUD)、シューズ¥60,000(Paraboot)

舞台のノウハウを教えてくれたのは蜷川さんでした

5月9日から上演されている舞台『ハムレット』は、岡田さんにとって初めてのシェイクスピア劇となります。
初めて舞台をやらせていただいたのが蜷川幸雄さんの演出で、そのときに蜷川さんが「君とシェイクスピアをやりたい」と言ってくださいました。シェイクスピア作品に出演するのは、そのときからの夢だったので、決まったときは本当にうれしかったです。
2014年上演の、フランスの詩人ランボーを主人公にした『皆既食 -Total Eclipse-』ですね。蜷川さんからの言葉で印象に残っているものはありますか?
相手を“立たせる”ときに、自分はどういう引き方をすればいいのか、ということですね。今でも舞台に立つときは意識しています。

僕にとって舞台に挑戦すること自体が初めてで、当時は舞台での立ち方や発声の仕方がまったくわかっていなくて。それをひとつずつ丁寧に教えてくださったのが蜷川さんでした。
蜷川さんといえば厳しい演出で知られていますが、どう感じられましたか?
毎日叱られて、怒鳴られていましたよ(笑)。でも、すごく優しくしていただいた思い出もあります。

この舞台の出演が決まったときに、心の中で蜷川さんに「本当にいいんですかね?」と問いかけました。でも、今回は演出家のサイモン・ゴドウィンさんと作る『ハムレット』なので、それだけは忘れちゃいけないなと思っています。

もちろん、蜷川さんへの思いは絶対に消えないので、今でもどこかで蜷川さんに手を合わせているところがあります。

ハムレットの姿は、意外と現代にも通じるものがある

サイモンさんはロンドンを拠点にされていて、イギリスの三大舞台劇場のひとつ、ロイヤル・ナショナル・シアターのアソシエイトディレクターも務められています。岡田さんは本作の稽古に入る前に、サイモンさんのワークショップを受けられたとか。
ワークショップでは、「自分の感情を違うものにたとえて、みんなに伝わるように表現してくれ」と言われました。あと、お芝居でのコミュニケーションの取り方を、身体を使って表現してくれとも言われました。

たとえば、キャッチボールをするときも、相手によって投げるときの気持ちが違うし、それによって動きも変わってきますよね? そういうことを丁寧に教えてくださいました。

ほかには、何人かにわかれて15分ぐらいで『ハムレット』の1シーンを演じたり、自分たちで動きを考えて演じたりもしました。今までそういう経験がなかったので、すごく新鮮で面白かったです。
『ハムレット』という作品の魅力をどこに感じていますか?
復讐劇といえばそうなんですけど、それだけではない部分もあると思うし…。

台本をずっと読んでいるんですけど、だんだんわからなくなってくるんです。でも、それでもいいのかなと感じるところもあって。まだ稽古に入っていないので(※取材が行われたのは3月下旬)、今は頭が混乱している状態です(笑)。
では、役としてのハムレットの魅力とは?
このあいだ、サイモンさんに「ハムレットは、君にとってどういう人?」と聞かれました。

ハムレットといえば狂気の人という印象が強いかもしれませんが、ひとりの人間として弱いところもあって、そこから奮起しようとする姿や人とのコミュニケーションの取り方は、意外と現代にも通じるものがあるのかなと思いました。ハムレットを演じられることにすごく魅力を感じています。

シェイクスピア劇の大先輩・吉田鋼太郎からの助言

シェイクスピアの作品、とくに『ハムレット』はセリフが多いことで知られています。それを覚えるだけでも大変だと思いますが…。
たしかに、セリフの量だけで言えばほかの作品と比べて圧倒的に多いのですが、量だけにとらわれるのはよくないなと思っています。読んでいくと、セリフのリズムがすごく大切だとわかってくるんです。

「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」など有名なセリフがあるので、どう言うべきなのかはいろんな方にお話を聞いています。
たとえば、どなたに?
吉田鋼太郎さんですね。鋼太郎さんはシェイクスピア劇の代表と言っても過言ではない方なので、基本的なことから相談に乗ってもらっています。
吉田さんに言われて印象的だったことはありますか?
セリフを音として捉えるということですね。鋼太郎さんの舞台を見に行ったときにもすごく感じたことで、シェイクスピア劇をやるときにはすごく重要なことだと言われました。

でも、台本を読めば読むほど『ハムレット』に対する自分の気持ちが変わってくるんです。

こういう感じでセリフを言いたいなと思ったのが、3日後ぐらいにはまた別の感じに変わってくる。それが正解か、不正解かはわからないですけど、自分の中で日に日に変化していくんです。今はその変化を楽しんでいるところです。

『落語心中』で学んだ言葉のリズムが、役に活かせる

初舞台から5年。自分が成長したなと感じる部分があれば教えてください。
成長したなと思う部分は本当にないんですけど、台本の読み方とか、捉え方は変わってきています。その日の自分の体調や機嫌で感じ方が違ってくることがあるんです。

5年前は、目の前のことでいっぱいいっぱいで、共演者の方に迷惑をかけないように、としか考えられなかったんです。なので、稽古に入る前から自分のコンディションの変化を楽しめるようになったのは、ある意味、成長と言えるのかなと思います。
ご自身のターニングポイントとなった作品はあるのでしょうか?
『ハムレット』を演じるにあたって、昨年『昭和元禄落語心中』というドラマをやらせていただいたことは大きかったかもしれません。
ドラマの面白さはもちろん、岡田さんが劇中で披露された落語も話題を呼びました。
落語はすごくリズムが大切で、相手に聞かせるのがいかに難しいかを学びました。自分の“間”でお客さんを引き込んだり、心を動かしたりしないといけないのは『ハムレット』も同じなので、それを落語の師匠方に教えていただけたのは、本当にいい時間だったと思います。
『昭和元禄落語心中』で共演された山崎育三郎さんにインタビューした際、「映像メインの俳優さんはセリフ覚えが早い」とおっしゃっていました。しかも、少しリハーサルをしただけですぐに本番が始まるので、「舞台よりもライブ感がスゴい」と。
たしかに現場でもそんなことを言ってました。僕からしたら舞台をやっている人たちのほうがスゴいと思うんですけど、そういう意味ではドラマとかで瞬発力が鍛えられているんですかね?
舞台は稽古に加えて本番が何回もあり、それが大変だと思われる俳優さんもいるみたいですね。
僕は好きですね。それだけ時間をかけてお芝居をできるのは贅沢なことだと思います。瞬発力でやっていく映像のお仕事も楽しくて面白いけど、舞台のようにじっくりと時間をかけて作っていくのは僕の性格に合っている気がします。
では、映像のお仕事では感じられない、舞台だからこその面白さとは?
コントロールできないものをコントロールしている瞬間ですかね。ときに暴走する人がいたりして、それがいい方向に転ぶこともあれば、悪いほうに転ぶこともあって。それが日々変わっていくのが面白いです。

あと、芝居にどっぷりつかっている自分がいる一方で、それを客観的に見ている自分がいるのも感じていて。その感覚は忘れたくないです。その瞬間こそが舞台の醍醐味だと感じています。
岡田将生(おかだ・まさき)
1989年8月15日生まれ。東京都出身。AB型。2006年に俳優デビューし、翌年の映画『天然コケッコー』で注目を集める。2009年の映画『ホノカアボーイ』で初主演を果たし、『告白』と『悪人』で第34回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞した。2014年に蜷川幸雄演出の『皆既食 –Total Eclipse-』で舞台デビュー。主な出演作は、映画『銀魂』シリーズ、『伊藤くん A to E』、ドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)、『昭和元禄落語心中』(NHK総合)など。NHK連続テレビ小説『なつぞら』にヒロイン・なつの兄役で出演中。8月2日からは舞台『ブラッケン・ムーア 〜荒地の亡霊〜』の出演が控える。

舞台情報

シアターコクーン・オンレパートリ―2019 DISCOVER WORLD THEATRE vol.6
『ハムレット』
【東京】5月9日(木)〜6月2日(日)@Bunkamura シアターコクーン
【大阪】6月7日(金)〜11日(火)@森ノ宮ピロティホール
https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/19_hamlet/

サイン入りポラプレゼント

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応募方法
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受付期間
2019年5月10日(金)18:00〜5月16日(木)18:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/5月17日(金)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから5月17日(金)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき5月20日(月)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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