世に出した作品がどんな評価を受けるか、そこに怖さはない

「愛して、よかった。」というキャッチコピーと予告編の映像から、本作を恋愛モノと思って劇場に向かった人は、予想外の展開に驚くだろう。これまでの岡田作品と共通して、キャラクターたちがもがき続ける話ではあるが、そこに描かれているのは恋愛だけじゃない、もっとたくさんの“関係性”だ。
時間によって変化していく、人と人との関係性や、そのなかで自分自身の役割とは何か、突き詰めて書かれたとのことですが、とくに印象深かったのが“親子”の関係性でした。
親子を描きたいというのもあったんですけど、それ以上に、相手に対して自分の役割とか、自分の孤独とかをある意味で押し付けるというか、ある意味で救われるというか。狂ってしまうものがあったり、得るものがあったり。そういう強い関係値を描いてみたかった。恋愛も相当強いと思うんですけど、そういう責任みたいなところって違ってくるじゃないですか。

結局、人生って、完全に守らないといけない人なんていない。みんなひとりひとり生きていくわけだから。だけど赤ちゃんや子どもって、確実にこっちが守らないといけない存在ですよね。だから親子という関係性って、ほかと比べられないなぁって。
ひとりのキャラクターの人生を最初から最後まで見届けるという、これだけ壮大な物語を2時間で見せ切ることについては、いかがですか?
そこ、挑戦したかったんですよ。この作品に限らず、シナリオを書くなかで試していきたいことがあるんです、ずっと。今回の作品では、「感情ってどれだけシーンを重ねなくても伝わるものなんだろう」というのを試してみたかった。たとえばイゾル(CV杉田智和)なんてほんの数セリフしかないんですけど、それでもこの人がどういう人か伝わるように書くにはどうしたらいいか、とか。
説明セリフを減らして、シーンで見せる。
そうですね。うまくいってるかはわからないんですけど……。やっぱりどうしても長い時間の物語なので、短縮していかないといけないじゃないですか。でも短縮って考えないで、むしろこの短さだからこそ伝わる内容にしたいなと。説明することで逆に混乱しちゃうこともあると思っているので。
「ここで観客を泣かせよう」とか、そういうことを意識されながら、脚本を書かれましたか?
普段シナリオを書くときは、もちろん見てくださる人のことを考えながら書くんですけど、その前に、本読みのメンバーに通じないといけないっていう。たとえば自分は「こっちのほうがお客さんが喜んでくれる」と思って書いても、監督からNGがきたら書き直しなんですよ。

でも今回は監督が自分なので、自分でジャッジができるところがあって、そうなると、自分がグッとくるホンを書くというのが、まずある。なので、「ここで泣かせたい」とかっていう気持ちはすごく薄かったですね。自分が見たいものを書きました。
自分でジャッジできるからこそ、大変だった部分もあると思います。
自分でジャッジできるとは言ったけど、いつもよりもいろんな人の意見を聞きましたね。「これって本当にいいと思いますか?」って。「いい」って言ってもらっているのに、書き直しちゃったり。

脚本のときは、監督と意見が食い違い、言い争いになってすごくショックを受けたりとか、シナリオが完成したときに「最初のほうがよかったな」と思うこともあったんですけど。結局、いろんな部署の人たちに、この作品はこうだって伝えていく窓口が監督になるので、監督が100%理解できないシナリオは通してはいけないんだ、と。今回、監督の気持ちがすごくよくわかりました。
ご自身が書かれたものについて意見が衝突したときなどにショックを受けるとおっしゃいますが、映画公開後は作品についていろんな意見が飛び交いますよね。それに対して、怖さを感じたりはしませんか?
そこはないです。まったくないと言ったら嘘になりますが。完成したものって、いろんなスタッフの思いが入っているから。やっぱり……好きなんですよね、できあがった作品が。今回の作品はすごく愛着があるし、スタッフのみんなががんばっているのを隣でずっと見てきたから、そこに関してはスタッフ代表として、怖がっちゃいけないと思ってます。

私としては、これだけいいものが作れたんだから、見ていただきたいという気持ちでいっぱい。それだけです。

息抜きが下手。つねに、もやもやしてるんです……

『あの花』が放送された2011年。同時進行2本目のオリジナル『花咲くいろは』、さらに『放浪息子』や『GOSICK -ゴシック-』のシリーズ構成まで手掛けるなど、その絶対的な生産量と速筆ぶりでも注目を集めた。岡田にとって「書くこと」とは? 書き続ける原動力とは?
岡田さんの「書く」環境に興味があるんですが、こだわりがあったりしますか? たとえば音楽やラジオを流してないと落ち着かないとか、逆に無音じゃないとダメとか。
音楽は聴かないですね。あとは……うーん……あ、暖房をつけない。暖房がきいてると、頭がぼーっとしちゃうというか、なんとなく思いつかなくなっちゃうので、寒くても暖房はつけないんです。だから家で作業しているときに、手がかじかんじゃうことはあります(笑)。
仕事場でも「書く」ことに追われながら、プライベートでも日記も書かれているとか。
そんなに、きちんとしたものじゃないですけど。自分の気持ちを文章にすると明確になってくることとかもあるし。あと、ごはんを食べてるときとか、頭の中に『ミスター味っ子』風のセリフが浮かぶことってあるじゃないですか?
えっ!?
あ、ないですか(笑)。「この麺のもちもち感…!」「だが、ひとつ失敗したところがあるぞ」とかそういうセリフがバーッと浮かんできて、それを書き留めたくなるんです。外で思いついたことはスマホに。家に帰ってからPCに打ち込んだりもします。あとは手帳にも。1日1枚書けるやつがあるじゃないですか、あれに。なんか、どうでもいいことほど文章にしたいんです。
そのメモが仕事に活かされることもありますよね。
はい。たいてい、あとから読むと意味がわからないことばかりですが、ごくまれに使えるものが(笑)。街中で、小説や映画の感想とかを話してる人がいますよね。その断片的な感想から作品の内容を想像したりとか。
つねにアンテナを張り巡らしていると思いますが、書いたり考えたりしない、オフの時間ってありますか?
猫と遊んでたりするときですかね。基本、腰が重いんです。
猫と遊ぶ時間が、オンとオフの切り替えに?
切り替えができないんですよね。息抜きとか下手で。つねにもやもやしてるんです……。
過去のインタビューで、「書くストレスを、書くことで発散している」というのを読みました。
ああ、けっこう前のインタビューですよね? 読んでいただいてありがとうございます。そうなんです。仕事で煮詰まったときは、別の仕事を書くとはかどるというか……。でも最近は、煮詰まりっぱなしかもしれません(笑)。
岡田磨里(おかだ・まり)
1976年生まれ、埼玉県出身。1996年にビデオシネマで脚本家デビューを果たし、以降も漫画原作やゲーム、ラジオドラマなどの脚本を手掛ける。98年に『DTエイトロン』でアニメ脚本を手掛けてからは、アニメを中心に数々のヒット作品のシリーズ構成・脚本を担当。主な作品に、『とらドラ!』(08年)、『true tears』(08年)、『花咲くいろは』(11年)、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(13年)、『心が叫びたがってるんだ。』(15年)、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(16年)など。

    監督作品

    映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』
    2018年2月24日(土)ロードショー
    http://sayoasa.jp/

    ©PROJECT MAQUIA

    サイン入りポスタープレゼント

    今回インタビューをさせていただいた、岡田磨里さんのサイン入りポスターを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

    応募方法
    ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
    受付期間
    2018年2月20日(火)12:00〜2月26日(月)12:00
    当選者確定フロー
    • 当選者発表日/2月27日(火)
    • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
    • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから2月27日(火)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき3月2日(金)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
    キャンペーン規約
    • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
    • 賞品発送先は日本国内のみです。
    • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
    • 応募内容、方法に虚偽の記載がある場合や、当方が不正と判断した場合、応募資格を取り消します。
    • 当選結果に関してのお問い合わせにはお答えすることができません。
    • 賞品の指定はできません。
    • 賞品の不具合・破損に関する責任は一切負いかねます。
    • 本キャンペーン当選賞品を、インターネットオークションなどで第三者に転売・譲渡することは禁止しております。
    • 個人情報の利用に関しましてはこちらをご覧ください。
    ライブドアニュースのインタビュー特集では、役者・アーティスト・声優・YouTuberなど、さまざまなジャンルで活躍されている方々を取り上げています。
    記事への感想・ご意見、お問い合わせなどは こちら までご連絡ください。